スポーツ
-
スポーツ 2017年08月11日 16時00分
「変化球をイメージした」オリックス吉田正尚、西武菊池を攻略で2カード連続勝ち越し!
▽10日オリックス4-2埼玉西武(京セラD)オリックス10勝7敗観衆22,940人オリックスは初回、西武のエース菊池からマレーロの第9号ソロ本塁打で先制。しかし2回に先発の松葉が西武打線に捕まり、栗山のタイムリーで同点に追いつかれるが、3回、安達の第2号ソロ本塁打で再び突き放すと、7回まで菊池に2本の本塁打だけの2安打11三振と打線が沈黙。松葉は6回で降板。7回を黒木が無失点で抑えると、8回に登板した近藤が二者連続三振の直後、浅村に第13号ソロ本塁打を浴び同点。しかしその裏、好投を続けていた菊池が四球から乱れ、吉田正がレフトオーバーの2点タイムリー二塁打を放ち再び勝ち越し、最終回はこの日、ファームから昇格した“守護神”平野が圧巻のピッチングで復活のセーブを挙げた。勝利投手は近藤でこれがプロ初勝利。オリックスは2カード連続の勝ち越し。■福良淳一監督一問一答ーーあれだけ菊池にやられると…「そうですね。良かっただけにですね。厳しいというか、まぁあの2発は大きかったですね」ーーマレーロは(菊池に)強いですね?「そうですね。これで3本目ですかね。あとは合ってなかったですけど、効果的で。安達の一発も大きかったですよね」ーー吉田正も3打席目までは…「全然合ってなかったんですけどね。そこはやっぱり修正してくるというか、そういうところはありますよね」ーー逆方向というのはチームバッティングの打撃?「いや、そこは…正尚に関してはそういうのはないですね。本人がいろいろ考えた中で…じゃないですか」ーー松葉はよく6回まで投げてくれたという感じですか?「よく投げたんですけどね。やっぱり…フォアボールですよね(苦笑)。もうちょっと行って欲しいというか。ストライクとボールの数が同じくらいですからね(苦笑)。そういうところじゃないですかね。それが行ってくれたら、もう少し長いイニング行けるんじゃないですか」ーー結果的に、近藤にプロ初勝利がついたが?「そうなんですか?またプロ初勝利ですか(笑)。良かったです。近藤は良かったけど、一球もったいなかったですね。ちょっと選択ミスかなというのはあったんですけどね。良い真っ直ぐを投げてただけにですね」ーーシーズン途中から近藤が加わってここまでの評価は?「頼りにしてますよ!8回を任せても大丈夫かなというところまでは来てるんじゃないですか」ーーきょうは黒木が7回で、近藤が8回だったが、このまま行く?「そこはまだわからないですね。その2人に関してはどっちにするかというとこやないですか」ーー近藤の評価が上がった?「というか、黒木の状態が上がってくるまではということで7回にしてたんですけど。きょうのボール見る限りでは大丈夫かなっていうのはあったんですけどね」ーー平野は自ら志願してファームに降格していたが、きょうのピッチングを見る限りでは?「大丈夫だと思いますよ。セーブもついたし、本人もこれで行けるんじゃないですか」ーー自信持って投げてる姿は戻ってた?「それはありましたね」ーー監督が一番気にかけられていたのはその部分?「そうですね。1点差でも平野は行く予定でしたからね。9回は」ーー最後に平野がいるというのは…「大きいですね。ヘルメンも使い勝手がいいですからね。菊池から勝ってウチには大きいです」■吉田正尚選手一問一答(8回、レフトオーバーの2点勝ち越しタイムリー二塁打で、ヒーローに)ーー3打席目までは菊池のボールに苦労していたように見えたが?「そうですね。前のカードから苦労してましたね」ー4打席目で工夫したところはあった?「いや、チャンスだったので初球から。追い込まれたらチャンスはないと思ったので。自分が振れるカウントで勝負に行ければなと。入りは少し変化球をイメージしながら打席に入って、そこをしっかり引っ掛けず、逆らわずに打ち返せたのが、結果として出たのかなとは思います」ーースライダー?「そうですね。外に(流れる)」ーー楽なボールではなかった?「そうですね。外の低めくらいですか。きっちり。やっと芯に捕えられたかなという。今までは詰まったり、上がらなかったりしてたので。いい場面で試合を決められて良かったですね」ーーチームにとっても個人としても大きな一打だったのでは?「そうですね。やっぱりチャンスで、ここ一番で打てるバッターになりたいと思ってましたし、そういう意味ではチャンスメイクしたら返す、一発もあると。そういうバッターがいいバッターじゃないかなと思うので。そこを目指して頑張りたいですね」ーー8月に入って好調の要因は?「何ですかねぇ…。要因…。まあいい時もあれば悪い時もあるので、そこは別に…。一日一日やれることを毎回やるというのが大切なんだなと思うので、なんか抜きながらじゃないですけど、自分の中でメリハリを持って、一日過ごして行ければなと思います」ーー試合前の練習でバッティングピッチャーにスライダーを投げてもらっていたが?「そうですね。スライダーを最初打ってました。それが結果になったのはたまたまですけど、そういう一日一個テーマを持っていることが、きょうはそういうテーマで入っただけで」ーー試合中の集中力の仕方は?「もうやっぱり切り替えて、さっきの打席三振して悔しいですけど、次の打席が来るので、準備をしてまた打席に入ったら、引きずってしまうとダメなんで、フラットじゃないですけど、そういう面でまあ、いい時もあれば悪い時もあるので、次、次という考えで」ーー6回の打席で2ボールからスライダーを一球見て、ファールで…「まああれは真っ直ぐを待っていたので、別に読みと違ったからスッと切り替えれたので。最後に振り返るとチャンスはあの一球だったのかなと。凡退したあとベンチで振り返りました。迷って狙ってて手が出なかったら、たぶんダメだったんでしょうけど、真っ直ぐという頭だったので。そこに関しては切り替えることが出来ました」ーーチャンスの場面のほうが集中力は高まる?「チャンスでこそ冷静になれるようにとは思ってます。バッテリーはどうやって入って来るのかとか、こういう状況で打ち気なバッターだと思われてると思うので、どういう配球をして来るのかとか。インコースの使いかたとか。配球の勉強をしながら、ただ単に振るんじゃないというのは、そういうところで自分があるんで、そこは状況に応じて、打席で幅を広げたいというのはそういうところであるので。ピッチャーも変わればチームも変わるという感じで、変わって来る部分はたくさんあるなと思いますけどね」ーーTシャツがたくさん売れそうですね。「買います?(笑)」ーー(11日に)Tシャツが発売するまでずっと打ち続けると発言していたが?「よく覚えてますね。(良い宣伝になったのでは?)いやらしいですね(笑)。でもみんなが着てくれたら嬉しいですよね。ユニフォームを持ってくれてるのも嬉しい。それには結果で応えるのが一番なんで頑張りたいですね。ホントに」■松葉貴大投手の降板後談話(先発6回、被安打3、失点1の内容)「序盤からフォアボールが多く、テンポの悪い投球になってしまいましたが、バックの守備にも助けてもらい、何とか最小失点で粘ることができました。」■安達了一選手のホームラン談話(3回、左中間スタンドへ第2号勝ち越しソロ本塁打)「打ったのはスライダー。すごくいい感覚でバットを振りぬくことができました。今年一番の当たりだったかもしれませんね。とにかく勝ち越すことができてよかったです!」■クリス・マレーロ選手のホームラン談話(初回、左中間スタンドへ第9号ソロ本塁打)「打ったのはストレート。初球から積極的に行こうと思っていた。低めのボールだったけど、しっかりと自分のスイングができたよ。」取材・文・写真/どら増田(オリックス番ライナー)
-
スポーツ 2017年08月10日 12時45分
夏の甲子園「舞台裏」③ 高校野球が郷土対抗ではなくなる日
今年の夏の甲子園大会は、出場校49校のうち、公立校が8校。あとは私立高校だ。初出場校は6校だが、公立校で代表の座を勝ち取ったのは福井県の坂井高校だけ。福井県予選を振り返ってみると、初戦で昨夏の代表校・北陸に勝ち、準決勝で春夏合わせて39回の出場を誇る福井商を破ってのファイナルステージ進出だった。 開校4年目の同校を優勝候補に推す声も聞かれていた。同校の前身は春江工、ソフトバンクの栗原陵矢を擁して2013年のセンバツに出場しており、現野球部の監督、部長は当時のままだ。14年に4校が再編してできた高校だが、同年、春県大会でいきなり優勝している(連合チームで出場)。昨秋の県大会は決勝、今春の同大会は準決勝進出。一目置かれる存在だったのだ。 総務省の『人口推計』によれば、この10年間で高校生の人口は約70万人も減っている。地方予選に目を移せば、100人近い野球部員数を持つ強豪私立もあれば、ベンチ入りメンバーの20人を割り込む公立校もある。部員数が確保できず、出場を辞退する高校もあった。日本高等学校野球連盟(以下=高野連)が少子化対策で連合チームによる出場を認めて久しい。97年、近く統廃合となる学校同士の“合同チーム化”が許され、今日に至っている。坂井の甲子園出場は、少子化対策のモデルケースにもなるだろう。 なぜ、そこまでして野球部を存続させたいのかと聞かれれば、日本人は高校野球を見て、郷里を思い出す。その高校の出身でなくても、郷里の代表校を応援したくなる。だからこそ、越境入学に批判的なファンも多いのだが、球児たちは親元を離れ、ケータイの使用も制限され、コンビニにも行けない集団生活まで覚悟してきたのだ。その意味では、彼らを応援してやりたいとも思う。 しかし、越境入学のやりすぎはいけないが…。中学の硬式野球クラブの指導者がこんな話をしてくれた。 「将来、プロでやっていけるだけの素質を持った子もいます。そういう球児は高校に進んでから『手抜き』をします。天才だから、努力しないんです。本当に素質のある子は天才集団のなかで自尊心をヘシ折られ、そこから這い上がってやるという環境に行ったほうがいい。野球以外、何もすることがないってくらいの」 硬式野球クラブの盛んな大阪の中学生が北海道、東北、九州などの全寮制の高校野球部に進むのはそのせいだろう。 また、学校側も「知名度を上げるチャンス」とし、野球部の強化に力を入れているところも多い。2000年代前半、かつての女子校が少子化対策で男女共学となったが、同時に有名指導者を招いていた。四国の某私立校を取材した際、その学校経営者は変更した学校名を浸透させるにあたって、「いちばん効果的なのは、野球部とサッカー部が全国大会に出場すること」とはっきり言い切っていた。 「高校野球は来年、100回目の夏の大会を迎えますが、時代とともに変貌したところもあります。スタンドの応援、金属バット、そして、昨今検討がされているタイブレーク制です」(関東圏私立校指導者) タイブレーク制の導入もそうだが、通信制の高校が甲子園出場を果たしたのは衝撃的だった。センバツだが、84回大会(12年)、地球環境高校(長野県)が代表に春夏通じて初めて「通信制の代表校」となった。同校野球部員25人(当時)は寮生活で、学校側は“野球漬け”ではない指導を強調していた。昨夏、北北海道代表として、同じく通信制のクラーク国際高校が勝ち上がり、「創部3年」なる急成長ぶりにも驚かされた。 インターネットの普及により、学校教育の在り方も変わりつつある。少子化対策にしても、公立、私立を問わず、生徒数を確保するため、教育プログラムに特徴を付けるなどし、どの高校も生き残りに必死だ。そう考えると、高校野球は“郷土対抗”を維持できなくなるかもしれない。 試合の前後、両チームがホームベースを挟んで『整列、礼』をする。この儀式は小・中学校、大学、社会人はもちろん、草野球でも当たり前のように行われているが、実は、高校野球が発案提唱したものなのだ。 明治後半から大正時代に掛け、野球競技を批判的に捉える国民も多かった。この風潮を変えなければならないと思った当時の野球大会運営者が、「野球は教育の一環」を観る者に印象づけるため、『整列、礼』を始めさせたという。こちらは永遠に変わらないだろう。変わるところと変わらないところ…。高校野球は時代を映す鏡でもあるようだ。(了/スポーツライター・飯山満)
-
スポーツ 2017年08月10日 00時10分
「勝負にならない」オリックス“鬼の”福良監督 11四死球の投手陣に呆れ顔
▽9日 オリックス 4-8 埼玉西武(京セラD)オリックス9勝7敗 観衆21,679人 3連勝中のオリックスは2回、中島の第7号ソロ本塁打で先制する。しかし、5月19日の日本ハム戦(札幌D)以来、今季2度目の先発となる山田が踏ん張れず、3回に2失点を許すと4回に二者連続で四球を与えたところで福良監督は山田を諦める。山田の後を継いだ2番手の山崎福も制球に苦しみ、マレーロのエラーなども重なりこの回も2失点を喫してしまう。 3点差をつけられたオリックスだが、4回裏に西武の先発、岡本の攻略に成功。ロメロ、小谷野、中島、小島の4連打で3得点をあげ一気に追いつき、今季無敗の岡本をマウンドから引きずり降ろすも、二死満塁の場面で登板した2番手、武隈にT-岡田が三振。勝ち越しのチャンスを逃す。 5回も続投した山崎福は簡単に二者を打ち取るが、金子侑のサードゴロを小谷野が悪送球。その後、秋山、源田、浅村が襲いかかり、三者連続タイムリーで再び勝ち越しを許し万事休す。 投手陣が今季最多の11四死球と制球に苦しんだオリックスの連勝は「3」でストップした。敗戦投手は山崎福で4敗(2勝)。■オリックス福良淳一監督 一問一答ーー3点差を追いつきましたが?「でも、四死球ナンボですか?」ーー11です。「勝負にならないでしょ。それだったら」ーー先発の山田も逃げているような、もう少しバッターに向かって行く姿勢があれば…「勝負出来てないですよね」ーー相手打線が強力だというのもわかるのですが…「どことやっても一緒でしょう。自分の自信あるボールを投げないと。そこは。どこが相手でも。投げるところ(機会)がなくなってきますよね。せっかくのチャンスですからね。やられるのは全然問題ないんですけどね。逃げてたらどうしようもないですよね」ーー打つほうで(4回の)満塁のところでTが選べたらというのはありますか?「まぁそうでしょうね(苦笑)。あそこで追い越していたらまた違う展開になったかもしれないですけど。いつも言うように追いつくまでは行くんですけどね。追い越さないことには…」ーーきょうは守備のミスもありましたが、四球の多さが敗因?「そこでしょう。今日は」■オリックス先発、山田修義選手の降板後談話 (先発3回0/3、4安打、4失点の内容)「早いイニングに降板してしまい、試合を作ることができず、チームに申し訳ないです」取材・文・写真 / どら増田(オリックス番ライター)
-
-
スポーツ 2017年08月09日 17時00分
広島追撃に集中できない 金本監督を悩ますFA残留交渉
金本阪神は巨人3連戦の初戦を落とし、首位広島にマジックナンバー33が点灯した。これで終わりではない。阪神は広島よりも消化ゲーム数が少ない。4試合多く残しているので、8月中にゲーム差を縮めることができれば、可能性は見えてくる。金本知憲監督(49)が「2位狙いの守り」に切り換えない限り、総力戦が続けられるだろう。 そんな阪神に「カネの掛かりそうな難題」が発生した。残留交渉である。 「大和と俊介が国内FA権を取得しました。2人とも慰留の方向で交渉に入ることが確認されていますが、まさか、現状維持の年俸で引き止めるわけにはいきませんからね」(在阪記者) 2人だけではない。途中獲得したジェイソン・ロジャースも活躍している。契約は今季終了までだったので、助っ人に相応しい年俸額で残留交渉をしなければならない。しかし、「お金の問題」だけではなさそうなのだ。 「まず、大和ですが、目下、ショートでの華麗な守備でトラ投手陣を助けています。14年は外野でゴールデングラブ賞を獲得したように、内外野のどこでも守れます。大和は今オフのFA市場において『裏の主役』とも目されていました」(球界関係者) 表の主役は、日本ハムの主砲・中田翔。残留説もあるが、「権利行使する」となれば、どの球団も興味を示すだろう。阪神については昨年オフの時点から「相思相愛の関係」もウワサされたほどで、有事の際は一塁のポジションを空けての交渉となる。その一塁を守っているのが、予想以上の活躍をしたロジャース。ロジャースばかりを気にしていたら、中田の動向を見誤ることにもなりかねない。今秋のドラフト会議においても、清宮幸太郎(3年=早実)の進路はまだ見えて来ない。プロ入り表明となれば、一塁はやはり空けておきたい。「一塁・中田翔」となれば、清宮を“二軍で寝かせておく”ことになり、ファンの期待も裏切ってしまうだろう。 また、好打の原口文仁もいる。昨今、坂本誠志郎がマスクを被って結果を出しているところから考えると、これからも一塁手として育てていくべきだろう。 「シーズン終盤には糸原も帰って来ます。大和の前にショートを守っていた糸原の打撃力は惜しい。使わなければもったいない。二塁を守らせるとなれば、今季成長した上本をベンチに引っ込めることになります。二遊間には北條もいます」(前出・在阪記者) 大和の推定年俸は5000万円。その守備力は、WBCでメジャースカウトも認めた広島・菊池涼介にも匹敵するものがあり、他球団流出はあってはならないことだ。50%増は覚悟しなければならない。 「40歳という福留の年齢、故障を抱えた糸井嘉男のことを考えると、外野の雄・俊介(推定年俸2400万円)は残しておきたいはず」(前出・同) ロジャースの推定年俸は30万ドル(約3300万円)。倍額提示だろう。交渉が長引けば、日本球界への適応能力からして、他球団は1億円からの交渉スタートは必至。そのときは大砲流出となる。 先の関係者によれば、この時期、どの球団も「解雇リスト」の作成に入るそうだ。昨年の今頃だが、金本監督が「有事の際は…」とフロントにお願いし、糸井のFA獲得に備えた。補強はフロントとの話し合いだが、解雇については、現場指揮官に判断を仰ぐケースも多いという。残留交渉の優先順位、金本監督は広島追撃に集中できそうにない。
-
スポーツ 2017年08月09日 16時00分
中日 閑古鳥&チーム低迷で急浮上した闘将・星野仙一カムバック
中日新聞社の社長に創業家の一つ、大島家直系の大島宇一郎氏が就任。成績低迷で観客動員が伸びない中日・森繁和監督(62)の続投に黄信号が灯った。トップ交代により、大島派の筆頭格である星野仙一氏(70)の下でのドラゴンズ再建案が急浮上している――。 中日ドラゴンズの親会社である中日新聞社は6月5日の取締役会で、大島宇一郎常務の社長昇格を決めた。大島氏は創業家出身で、元社長でドラゴンズオーナーでもあった大島宏彦最高顧問の長男。政治部、経済部の記者や管理局人事部などを経て、2015年から東京本社代表を務めてきた。 ドラゴンズのオーナー代行にも就任し、いずれは白井文吾本社会長兼球団オーナー(89)からバトンを引き継ぐことになるという。 中日新聞社は元々「新愛知」と「名古屋新聞」の二つの新聞社が母体である。そのため、今も創業家の大島家(新愛知)と小山家(名古屋新聞)が社主を務め、それぞれの派閥による二元経営が続いている。 ドラゴンズオーナーも両家から交互に就任させる方式をとっている。具体的にいえば、落合博満―森監督は“小山派”の白井オーナーが後ろ盾で、元監督の星野仙一氏や高木守道氏は“大島派”だった。本社および大島派の球団OBたちは今回の宇一郎氏の社長就任を心待ちにしていた経緯がある。 そんな中、前半戦を37勝44敗3分けの5位で終えた森監督は、7月13日に恒例のシーズン中間報告を行った。その席で白井オーナーは「契約は2年。続投以外、考える必要はない」と来年も森体制で行くことを示唆していたが、ドラゴンズの方はその直後、7月22日の広島戦からまさかの7連敗。この間、26日のヤクルト戦では10対0のワンサイドゲームから大逆転負けの赤っ恥をさらすなど(結果は10対11)、森監督の評価は急下降していた。 「ドラゴンズにとって何より頭が痛いのは、チケット売り上げの減少です。セ・リーグが発表した前半戦終了時点での観客動員数は、昨年同時期の1試合平均観客数と比べて2.6%増の3万2397人。トップは阪神で2.4%増の4万970人。ドラゴンズは最下位で7.3%減の2万5731人でした。ドラゴンズにとってドル箱だった巨人も9.3%減の3万9862人で、かつてのお荷物球団であるDeNA、ヤクルトはそれぞれ5.6%、27.5%と数字を伸ばしており、セ・リーグにおいてはドラゴンズの独り負け状態なのです。営業面ではすでに“危険水域”に入っています」(地元テレビ局) そこで急浮上してきたのが、かつての“闘将”星野待望論である。星野氏は大島派の代表的存在だが、小山派のドン、白井オーナーと折り合いが悪く、'01年オフに阪神監督に転身した経緯がある。だが、大島家が中日新聞社の中枢に復帰したことで、監督招へいの動きが一気に活発化しているのだ。 星野氏も、中日新聞本社の動向は察知している。ナゴヤドームで行われたオールスター第1戦の試合前、野球殿堂入りの表彰式で、「甲子園も仙台もいつも満員。ここだけがガラガラ。もっとドラゴンズを応援して下さい」と、古巣のファンへ声をからげて訴えた。復帰へ向けた強烈なデモンストレーションである。 「絶大な人気を誇った星野氏が中日の監督を追われたのは、海外キャンプや大型補強で、球団経費が莫大に膨れ上がったのが一番の原因。その反省から、落合時代に選手年俸を大幅に削り、FA選手獲得を見送り、ドラフトも省エネですごしてきた。落合氏の手腕は高く評価されたが、その反動で選手層が薄くなり、選手の士気もファンのボルテージも下降。そこで大島派が蜂起して、もう一度、星野氏の下で、強くて人気の高いドラゴンズを取り戻そうとしている」(中日OBの野球解説者) 現在、東北楽天の球団副会長を務める星野氏だが、チームは今季、リーグ優勝が濃厚。つまり、花道を飾るには最高のタイミングだ。健康面や年齢の問題もあり、監督ではなく、GMとしての復帰も検討されているが、1シーズン限定の監督復帰も期待視されている。 ドラゴンズでは落合、谷繁元信、森と外様監督が続いたことで、他球団のコーチばかりが優遇されてきた。星野氏が中日を去った後、この15年間で生粋の中日OB監督は高木守道氏が指揮を執った2シーズンだけ('12、'13年)。とりわけ大島派のOBたちはコーチにも就けず、不遇の時代が長く続いていた。それだけに今回のチャンスに賭けているのだという。 大島派の象徴である星野氏の監督復帰で、大きくドラゴンズの流れを変えることができれば、立浪和義、山本昌らの「名球会組」が監督に続いて就任可能。昨年、谷繁監督が成績不振を理由に休養に追い込まれたのは8月9日。お家騒動の「Xデー」が近づいている。
-
-
スポーツ 2017年08月09日 12時45分
夏の甲子園「舞台裏」② 「強くなるにはカネが掛かる」の悲鳴
関西大学の宮本勝浩名誉教授がまとめた発表によると、夏の甲子園大会の経済波及効果は総額約351億円に上るという(8日付各紙報道)。過去5年の平均入場者数約84万人をもとに推計し、直接的な消費支出の総額は約162億円。うち選手と学校関係者は約34億円とのことだった。 その数値から、こんなことも考えられる。ちょっと乱暴な推計だが、夏の甲子園大会の出場校は49校。「34億円÷49校」で、1校あたり7000万円近くを消費したことになる。しかし、過去に出場した高校によれば、7000万円は、さほどかけ離れた額ではないようだ。 出場校全てにそんな準備資金があるのだろうか。潤沢な経営資金を持たない公立校はとくにそうだ。 甲子園の常連校、初出場校ともに苦労させられていたのが、『応援団の遠征費』だった。また、出場各校は移動バス、食事、グッズなどの費用を用意しなければならない。応援団員、ブラスバンド部、チアガール、ベンチ入りから漏れた野球部の補欠、引率職員はもちろんだが、ここにOBや父母会が加わると、約1000人が移動する計算になる。応援団は試合の行われる日に合わせて、当日早朝、もしくは前日夜、甲子園に向けて出発し、その日のうちに帰ってくる。 関東圏の高校によれば、移動バスはチャーターで20台を確保し、「往復ともに車中泊としても、高速代を含めて1台あたり約30万円」が掛かったという。仮に2回戦まで進んだとして、「30万円×20台×2試合=1200万円」となる。ここに、食事代、帽子、メガホン、横断幕、「アルプススタンド席の入場料300円×1000人×2試合=60万円」が加わり、春のセンバツ大会ならば、防寒用のウインドブレーカー、夏の大会ならTシャツを人数分制作しなければならない。 また、寄付をしてくれた地元関係者、OB、父母へのお礼として、キーホルダー、タオルなどの記念グッズも学校が製作しなければならず、これらの経費が800万円強。ほかにもまだある。 野球部員が使う練習用具のほか、打撃マシン、ブラスバンド部が手荷物として運べない大型の楽器などの運搬費も計算しなければならない。さらに、雨天順延となったときも想定し、予備宿泊費も計算に入れておく。しかも、大半の高校は甲子園本番に備え、ユニフォームを新調する。バッグ、グラウンドジャンバー、汗だしのウインドブレーカーなども同時注文するため、野球部員1人あたり、「約10万円」の出費となるそうだ。 平成11年に取材したものだが、同年センバツ大会に出場した関東圏の某私立高校は「2回戦進出を想定し、総予算7800万円」の予算を組んだ。同じく、平成10年夏の甲子園に初出場を果たし、次のセンバツ大会3回戦まで進んだN高校は9200万円以上を出費したという。 そのN高校の職員は、自嘲ぎみな口調でこう話していたのが忘れられない。 「関東圏の高校が決勝戦まで進めば、1億円強の出費は当たり前じゃないですか…」 こうした“多額の甲子園費用”は学校予算だけでは当然賄えない。学校OB、地元企業、父母会の寄付のほか、学校職員が地元自治体に頭を下げまくって、補助予算を組んでもらって対応する。先の関東圏の私立高校の場合は、地元自治体が200万円を、お隣の県の公立校の地元は500万円を出した。 「一連の不況もあったので、地元企業、商店街の財布のヒモは固かったですよ。でも、最後は応援してくださって…」(前出・N高校職員) 出場校の大半は寄付金を自治体や地元関係者に頼っていたが、宗教法人系の学校、伝統校は「寄付金を集めやすい」とされている。 この寄付金集めの際、高校は「地元」の言葉を強く意識させられる。野球留学生の多い高校は寄付を頼みにくいからだ。だが、出場校を応援すれば、自ずと地元の宣伝にもなる。そう考えると、高校野球は町おこしだ。球児たちには地元関係者が「応援して良かった」と思えるよう、頑張ってほしいものだ。(スポーツライター・飯山満)
-
スポーツ 2017年08月08日 17時30分
夏の甲子園「舞台裏」① ドラフト候補生を絞り込むヒミツ査定法
夏の甲子園大会(第99回全国高校野球選手権大会)は、ドラフト候補の有望球児を見極める絶好の機会ともなる。 だが、甲子園での活躍や勝敗結果で「指名」が決まるわけではない。スカウトは練習も見ている。極端な話、12球団のスカウトは中学時代から目を付けていた「金の卵たち」が高校に進んでどれだけ成長したかを確認しているのであって、たとえ試合本番で無安打に終わったとしても、練習態度がマジメで、向上心も持っているのなら、ドラフト会場に持ち込む最終名簿に名前を残すという。 「様子を見ましょう」 近年、スカウトの間では、こんな言葉がよく使われる。指名リストに残すか否かのボーダーライン上にいる球児に対し、判断が付きかねるときに発するのだ。言ってしまえば、指名リストに残らなかったわけだが、大学、社会人に進んでからも野球を続けるのは間違いない。最終判断は「次のステージ」まで持ち越そうという意味だ。 また、ストップウォッチやカメラ、スピードガンなどの測定器を持ち歩くスカウトもいるが、近年では、数字はあくまでも“参考程度”。投手を例に出せば、たとえ130キロ台しか投げられなくても、「ある基準」を満たしていれば、指名候補に残すそうだ。その「基準」とは――。 「体格にも恵まれているのであれば申し分はないが、ダルビッシュ有のように190センチ以上の大柄な投手もいれば、170センチそこそこの投手もいます。体格に恵まれた投手が欲しい。一方で、170センチそこそこでもプロで活躍している投手もいます。投手のどこを見ているかといえば、肩の稼働域の広さ、股関節の柔軟性ですよ」 在京スカウトの一人がそう言う。 同様に、スカウトは「修正可能か?」という評価基準も持っている。これは大学生の話だが、2015年、阪神は明治大の高山俊外野手を1位指名したが、東京六大学リーグでその高山に勝るとも劣らないと高い評価を受けていた谷田成吾外野手(慶応大)が指名されなかった。それは、彼の打撃フォームを見て、「修正が難しい」と判断されたからだという。 「今のままで通用する選手なんて一人もいません。打撃フォーム、投球フォームを微調整しなければなりません。プロ野球コーチがそれを指摘したとき、適応できるのかどうか、また、修正することによって長所が死んでしまう選手もいます。投げるとき、打つときに無駄な力が入っている選手はダメ」(前出・同) とくに判断が難しいのが、高校生捕手の評価だ。一般的に、高校野球フリークは「若い選手を獲って、プロで育ててほしい」と思っている。しかし、現実論として、捕手はそうもいかない。二軍戦で高校卒捕手が配球サインを出すと、先輩投手は怒る。「こっちは生活が掛かっているんだ。何で、新人の勉強に付き合わされなければ行けないんだ!?」となり、担当コーチがベンチからサインを送ることになる。谷繁元信のように高卒でも一流捕手に上り詰めた捕手もいるが、それは当時の球団首脳陣が「特例」を各位に訴えたからで、優勝を狙う球団では、二軍でもそういった環境を作れないそうだ。大学、社会人を経由した捕手に対しては、先輩投手も「大人扱い」してくるので、トラブルにはならないそうだ。 「高校生捕手は意図的に指名を見送るときもある」(在阪スカウト) 現場スカウトは“衝撃的な現実”も口にしていた。「誰に教わったかが重要」――。プロで成長できるか…。それは学生時代に良き指導者に巡り逢えたかどうかで決まるといっても過言ではない。間違った教育をする指導者はいないが、その後伸び悩んだ球児の大半は、この傾向にあるという。高校卒業後の次のステージを意識した指導者は、基本にうるさい。甲子園で活躍する球児は少年野球のころから「天才」だ。しかし、その天才のなかには身体の成長が早いだけで“オイシイ思い”をしてきた者も多く、知らず知らずのうちに、技術的な基礎を怠っている。「基本」をしっかり教えられる指導者の下で野球を学んだのかどうかも、チェックしているのだそうだ。 ファインプレーよりも堅実な守備。ネット裏のスカウトは、対象球児が基本に忠実であるかどうかをチェックしているようだ。(スポーツライター・飯山 満)
-
スポーツ 2017年08月08日 16時00分
史上初! 全12球団競合もあり得る「清宮幸太郎」ドラフト“怪物獲り”狂騒曲
清宮幸太郎の史上初ドラフト12球団の全1位入札もあり得る。日本プロ野球のドラフト会議における最多球団指名競合選手は、1989年の野茂英雄(新日鉄堺)と、1990年の小池秀郎(亜細亜大)の8球団指名があるが、全12球団が指名というのは未だかつてない。 西東京大会で“怪物”早稲田実業・清宮幸太郎の短い夏が終わった――。7月30日、高校野球の地区予選では異例となる“決勝戦の前売り”も行われ、満員のスタンドは怪物の打席に見入っていた。 打率5割、4本塁打を放ち、改めて周囲にスターであることを証明した怪物は、9月1日から始まるU-18ワールドカップメンバーに招集される予定だ。そこで本塁打の記録更新となりそうだが、公式戦終了後、“NGワード”が解禁された。 「詳細は聞けませんでしたが、進路に関する質問が許されたのです。『考えていない』と答えましたが、大会中『本人が迷っている』との情報も流れていた」(球界関係者) 同大会準々決勝、日本学園戦のネット裏では、11球団が複数体制で怪物を視察していた。驚いたのは、ヤクルトの衣笠剛球団社長兼オーナー代行の姿もあったことだ。球団社長自ら地方大会に足を運ぶのは超異例。同社長は「(清宮指名を)ウチだけじゃないでしょ? 12球団が思っているから」と打ち明けた。史上初、12球団の1位入札の快挙もあるかもしれない。 「彼がプロ入りを決心すれば、本当にあり得るかもしれません。今年のドラフトは社会人投手の当たり年なので、抽選に外れてもダメージは少ない。オリックス、阪神、巨人など競合を嫌う球団は『消極的な姿勢がチーム編成、営業面の両方を悪化させた』との反省があり、10年に1人出るか出ないかの怪物を獲りに行くとの姿勢をファンに示す必要があるでしょう」(同) ヤクルトも競合を嫌う側だった。その球団トップが「欲しい」と公言したのだから、12球団競合は可能性が高いと見るべきか。 また、12球団は“別の有事”にも備え始めた。'09年の菊池雄星以来となる公開プレゼンも予想されているのだ。指定の日時、場所で、指名予定の球団が順番に説明&アピールしていく。その上で進学か、プロ入りかを判断してもらうものだ。 ガラス張りの交渉は学校側も断る理由はない。当時、メジャー志望の強かった菊池を説得した実績もあるだけに、プロ側にとって、公開プレゼンは望むところ。 「公開プレゼンとなれば、父・克幸氏も同席します。克幸氏と接点のある楽天の星野仙一副会長、ソフトバンクの王貞治会長らも乗り出すかも」(ベテラン記者) もし、12球団競合となると、12分の1の確率は約8.3%の低確率だ。それでも全球団は“怪物”清宮を獲りに来る!?
-
スポーツ 2017年08月07日 19時40分
バース対桑田で幕開け!! ビールと「夢の球宴」に酔う『サントリー ドリームマッチ 2017』
『サントリー ドリームマッチ 2017 in 東京ドーム』が開催された(8月7日)。“架空のモルツ球団”は同社のビールCMで火が点き、1995年からプロ野球OBによるイベントとしてスタートし、今年で22回目を数えた。今回は、田尾安志監督率いる「東北・ジャパン ヒーローズ」が「ドリーム・ヒーローズ」とチーム名を一新。山本浩二監督が指揮を執る「ザ・プレミアム・モルツ球団」と対戦した。 ヒーローズは巨人、DeNA、メジャーリーグで活躍した左腕・高橋尚成、福島県出身で、「走塁のスペシャリスト」として活躍した元巨人の鈴木尚広、元巨人捕手の加藤健を補強した。対するモルツ球団は前中日監督の谷繁元信、メジャーマウンドも経験した川上憲伸を獲得し、さらにパワーアップ。マサカリ投法の村田兆治、ランディ・バース、代打職人・川藤幸三などテレビCMでもお馴染みの選手も登場した。 注目は侍ジャパンの監督に就任した稲葉篤紀。ザ・プレミアム・モルツ球団の3番・中堅で出場。1回裏、無死一・二塁の好機で打席が回ってきたが、セカンドゴロ併殺。続く4番のランディ・バースの登場に球場は大いに沸いたがショートゴロに倒れた。ドリーム・ヒーローズの先発、桑田真澄が踏ん張った。 試合は、ドリーム・ヒーローズが先制点を挙げ、続く3回表も1番・右翼の鉄平にソロアーチが出て主導権を握った。 4回、村田兆治vs中畑清の対決が実現。村田が中畑をショートゴロに仕留めるも、ショート野村謙二郎の送球ミスで悠々セーフになるなど波乱の展開となった。 同日はキッズ特別招待で選手とキャッチボールができるイベントも行われた。また徳光和夫氏が司会進行を務め、女優・石原さとみが始球式を行い、試合に花を添えた。 東尾修、大野豊、山本昌、槙原寛己、中畑清、下柳剛、山崎武司など往年のスター選手が“現役復帰”するのも同イベントの魅力だが、得点圏に走者を置いたピンチでも、「クサイところを付いて四球」なんて逃げはナシ。完全決着の真っ向勝負が行われていた。ビールを片手に、野球観戦。往年のスタープレーヤーたちの熱気が、ザ・プレミアム・モルツの味をさらに引き立てていた。(敬称略)(スポーツライター・飯山 満)※写真:ランディ・バース
-
-
スポーツ 2017年08月07日 16時00分
プロレス解体新書 ROUND61 〈勝敗を度外視した流血戦〉 ムタvsカブキ“最狂”の親子対決
流血戦の名勝負は多々あれど、その中でも猟奇性やおぞましさで群を抜くのがグレート・ムタvsザ・グレート・カブキの一戦だ。カブキが自らの額から噴き出した血を、まるで花に水をやるかのようにムタに向かって振りかける。そんな地獄絵図に戦慄を覚えたファンも多かっただろう。 プロレスにおける見世場の一つに“流血”がある。ガッチリと関節技がきまっても、モニターのない会場では観客に分かりづらいが、流血であればその痛みとダメージが客席の最後列にまでしっかりと伝わる。 「それでいて、意外とやられた側のダメージは大きくなかったりもする。一度、取材中に乱闘に巻き込まれて額を切ったことがあるけれど、あるレスラーに『ゆで卵の殻と白身の間の薄皮を貼れば大丈夫』と教えられて、その通りにしたら薄皮がチュルチュルッと縮んでピタッと血が止まった。それで病院にも行かず、翌日も普通に取材ができました」(スポーツ紙記者) つまりレスラーにとっての流血は、アピールする力に優れ、それでいて肉体的ダメージの少ない優れた演出と言えよう。 「嘘か誠か、アブドーラ・ザ・ブッチャーは超高血圧だから、流血した方が動きがよくなる、なんて話もありました」(同) だが、そんな流血マッチも近年は減少傾向にある。これには、まずWWEの影響が考えられよう。 「エンターテインメントを標榜するようになってからのWWEは、青少年への悪影響を考慮して演出としての流血を禁止にしている。2015年のレッスルマニア31でブロック・レスナーvsジ・アンダーテイカーが大流血戦となった際にも、直後に“刃物で額をカットした演出上の流血”であることを否定するコメントを発表し、両選手には罰金が科せられたとの話もあります」(同) コンプライアンスや企業倫理をうるさく言われる昨今においては、仕方のない処置ともいえよう。もっともメジャー団体のそうした方針の裏で、ド派手な流血を売りにして、コアなファンの人気を集めるインディー団体もあるわけだが…。 加えて、血液を媒介とするウイルス性の感染症、AIDS(エイズ)や肝炎などの危険性が問題視されるようになったことも、流血戦が減少した理由と考えられる。過去には試合中の怪我を原因とする敗血症で、キング・イヤウケアが下半身麻痺になっている。 「ジャンボ鶴田の肝炎と流血との関連は不明ですが、これが発覚した'85年あたりから、全日本プロレスでは流血試合が激減しています」(プロレスライター) さらに、流血戦では想定外の“事故”の恐れもある。 「長州力がアントニオ猪木との試合中に、なぜか手首から多量の出血をしたことがあり、あれは手首に巻いたバンテージに額をカットするためのカミソリを仕込んでいて、それが試合中にズレて切れてしまったものといわれています。ブルーザー・ブロディが猪木との初対決において、自分で足をカットする姿がテレビカメラに映り込み、八百長疑惑が持ち上がったこともありました」(同) もちろん流血戦の名勝負も数多くあり、今となっては懐かしく思うファンも多いだろう。それらの中から今回取り上げるのは、最狂流血戦となった'93年のグレート・ムタvsザ・グレート・カブキだ。 アメリカマットでトップヒールとして名を馳せたカブキと、その息子という触れ込みで売り出したムタのいわゆる“親子対決”で、最初の顔合わせは5月のWAR大阪府立体育館大会。 「初対決の話題性からダブルメインイベントとはされたものの、当時、絶頂期にあったムタとロートルのカブキでは役者が違い、試合内容への期待はさほど高くなかった。実際の試合も、結果だけ見れば、ムタがレフェリーに暴行を加えての反則負けだが、ある衝撃場面のおかげで今も語り草となっています」(同) ムタの攻撃で額を割られたカブキは、よほど傷が深かったのか“ピュッピュッ”と勢いよく血を噴出させると、その血を倒れたムタの体の上からかけた。まるでスプラッター映画さながらの攻撃を披露したのだ。 「事前の仕込みか、偶然の事故を利用したのかは分かりませんが、試合後のムタはそれがよほど嫌だったのでしょう。思わず“日本語がしゃべれない”との設定を忘れて『パパはもう時代遅れだ』との捨てゼリフを残しています」(同) その評判から6月の新日武道館大会で再戦が組まれると、ここでもカブキは額に力を込めて血を噴き出してみせた。このときは、前回のように体の上からでなく、背中に向けて血をかけたのはムタ側の要望か。 しかし、それでもあまりに不穏当ということで、テレビでは〈これ以上放送できません〉とテロップの入った編集映像が流されるにとどまったのだった。 レスラーの格ではすでに追い抜かれた“息子”に対し、勝敗を度外視して観客に絶大なるインパクトを残したカブキ。昭和レスラーの意地を見せた一戦だった。
-
スポーツ
ハッスル消滅!? 小川H軍休止宣言
2006年12月27日 15時00分
-
スポーツ
大みそかボビー弟と対戦 金子賢 前田道場入り
2006年12月14日 15時00分
-
スポーツ
珍指令 KID 秒殺禁止
2006年12月12日 15時00分
-
スポーツ
生還小橋に捧ぐ 三沢 GHC奪還
2006年12月11日 15時00分
-
スポーツ
猪木 緊急提言 想定外プロレスをやれ!
2006年12月05日 15時00分
-
スポーツ
1・4東京D「レッスルキングダム」 新日本 全日本“乗っ取り”へ秘策 長州3冠戦出撃
2006年11月16日 15時00分
-
スポーツ
復活1・4東京D大会へ秘策 新日本最終兵器サイモン猪木 IWGP挑戦!?
2006年11月07日 15時00分
-
スポーツ
来春ビッグマッチ パンクラス芸能人最強決定戦 坂口憲二 今田耕司 押尾学
2006年10月31日 15時00分
-
スポーツ
大みそか参戦ほぼ決定 芸能人対決 金子賢vs押尾学
2006年10月10日 15時00分
特集
-
岡平健治「19」解散は「お金の問題じゃない」 岩瀬敬吾、地元に戻るのを「止められてよかった」 今後はバラエティーで「ポンコツっぷりを見て笑ってほしい」
芸能
2025年08月05日 23時00分
-
野球人生“燃え尽きた”元プロ野球選手・宮國椋丞氏 今後は「周りの人に頼られたり、笑顔にしたい」
スポーツ
2025年07月25日 23時30分
-
-
豊ノ島、YouTubeチャンネルで若乃花とコラボ熱望 タレントとして相撲番組で「冠番組」持ちたい
芸能
2025年07月21日 12時00分
-
宮迫博之「雨上がり決死隊」再結成は「蛍原さん次第」 ドジャース始球式の裏話も明かす
芸能
2025年07月14日 17時00分
-
元ザブングル松尾陽介、沖縄で芸人のセカンドキャリアサポート 芸人引退に「心境の変化」
芸能
2025年04月28日 19時03分