ノアの中心に立つのは、やはり三沢だった。
今年9月に第9代王者・秋山準を破り、新時代の扉をこじ開けた天才王者・丸藤。3月には田上明を倒し、4月には鉄人・小橋と互角の勝負を展開した。残るは三沢の首ひとつ。だが、かつての師匠でノアの象徴である男の壁はとてつもなく分厚かった。
序盤は丸藤のヒザ攻めに苦しんだ。三沢の得意技・フェイスロックも極められた。だが、本紙に予告していたタイガー殺法でペースを取り戻した。エルボースイシーダ、ウルトラタイガードロップと立て続けに空中殺法をさく裂させた。
天才児が放った、花道から場外への不知火という想定外の大技で大の字になる場面もあったが、大「ミサワ」コールがキングを後押し。雪崩式タイガースープレックス85、タイガードライバー91と封印していた殺人技を立て続けに浴びせ、最後は雪崩式のエメラルドフロウジョン。武道館には悲鳴がこだまし、丸藤も3カウントを聞くしかなかった。
03年3月以来、3年9カ月ぶりに頂点へ返り咲いた。「やっぱりうれしいよね」と素直に喜びを爆発させた。戦前は、世代交代が声高に叫ばれ、4度あった前哨戦では王者の好調ぶりばかりが目についた。それでも、大一番での勝負強さは、やはり三沢だった。
「まだまだくじけちゃいないしね。オレらの世代でも強い人間はまだまだいるよ」。新時代を期待する声に対し、キッパリ言い放った。オレたちの世代。そこには、この日、189日ぶりにリングに立った小橋がいた。
GHCの歴史をともに築いた盟友は、病魔に冒されながらも必死にリング復帰の道を手繰り寄せている。「焦ってほしくないけど、オレたちの試合をみて、いい意味で早く復帰をね、『よし、がんばろう』と思ってくれればいいよね」と三沢らしいエール。小橋からも「ケガしないようにがんばってください」とのゲキがあった。第5代王者時代、三沢のベルトを奪ったのが小橋で舞台は同じ武道館。絶対に負けるわけにはいかなかった。
次期挑戦者には森嶋が名乗りを上げ、三沢も呼応。来年1・21武道館大会での初防衛戦が決定的となった。今年覚醒した次代の怪物である。それでも三沢は、「小橋が戻ってくるまで防衛する?そこまでは保障できないな(笑)。でもそれぐらいの気持ちでやりますよ」と、冗談交じりで王座死守を約束した。
盟友・小橋への思いを胸に、三沢がノアの頂点に立ち続ける。