プロレス界の両翼が強力タッグを結成だ。
この日、決戦の地となる東京ドームで行われた会見には新日プロのサイモン猪木社長と親会社ユークスの谷口行規社長に加え、全日プロの武藤敬司社長が出席。会見ではサイモン社長が「テーマは決意。何が何でも成功するという強い決意で臨みます」と語り、谷口社長も「お客様に夢のあるカードを用意します」と決意を述べた。
同大会は来年ともに創立35周年を迎える全日プロとの“合同興行”で、IWGPヘビー級王座と3冠ヘビー級王座の両団体の看板タイトル戦の開催も決定。武藤社長は「ユークスさんとは業務提携している仲ですし、ウチも新日本も35周年。大きな祭りができればと思い全面協力することになりました」と完全バックアップを約束した。
いわばマット界の2大メジャーが“強力タッグ”を結成したワケだが、至宝を懸ける以上は生ぬるいことばかり言ってられない。会見終了後になるとサイモン猪木社長は表情をガラリ一変。眉間にシワを寄せながら早速「IWGPと3冠のタイトル戦を行うことになりますけど、ウチの選手に勝ってもらう」とケンカ状を叩きつけた。
そればかりか「早めに3冠に挑戦する選手をリストアップしたい。絶対ウチが勝つためにネ…」と完全に全日プロの至宝を強奪する覚悟なのだ。となれば、現3冠ヘビー級王者の鈴木みのるからタイトルを奪還するという大役を務めるのは誰になるのか。新日プロのフロント幹部は次のように言う。
「3冠獲りにはみのるとの確執があるIWGPのV10王者永田裕志や天山広吉、12・10でIWGP戦を行う棚橋と中邑の負けた方などがピックアップされていますが、実は候補はそれだけじゃないんです。本腰で3冠獲りを考えるならば適任なのは長州現場監督をおいてほかにはいないでしょう。やっぱり大舞台にはめっぽう強い方ですからね」
長州はここにきて棚橋弘至が保持するIWGPヘビー級タイトルに挑戦をほのめかすなど、コンディションの上昇とともにまさかのタイトル戦線復帰をちらつかせ始めている。全日本在籍時の1986年4月にPWFヘビー級タイトルを奪取した実績があるものの、3冠挑戦は初。しかも、ドーム大会の成功を握る目玉カードとなれば、レスラー人生最後の“革命”としてこれ以上のシチュエーションはない。自ら腰を上げる可能性は十分と言える。
傍若無人に王道マットを荒らしまくる鈴木から新日本勢が3冠を取り戻したとなれば、手をこまねいていた全日本の面目は丸つぶれどころか、看板に大きな傷跡を残すことになりかねない。一見、友好的なムード漂う3冠、IWGPの同日タイトル戦決定は、ともすれば事実上の“乗っ取り合戦”に発展するキナ臭さを含んでいる。舞台裏では早くも激しい駆け引きが始まっている。