その他
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その他 2015年07月20日 12時00分
【コンピューターゲームの20世紀 54】ファミコン最後のミリオンタイトル『星のカービィ 夢の泉の物語』
家庭用ゲーム機の歴史は意外に古く、初めて商品化されたのは1972年に発売されたマグナボックス社の『ODYSSEY』である。その後は様々なハードが登場し、スマッシュヒットを記録したハードもいくつか存在するが、ゲームの歴史を変えたマシンと聞いて誰もが真っ先に思いつくのは、1983年登場の『ファミリーコンピュータ』であろうことは疑いの余地がない。事実、ファミコン登場以後、ゲーム業界は加速度的に進化を続けていくこととなったのだ。 ファミコンはとても息の長いハードで、20年に渡って生産され続けた。上位機種である「スーパーファミコン」や、ライバルの「PCエンジン」「メガドライブ」などが発売されてもなお、戦い続けたのである。無論、古いハードなのでそれらに比べると性能は格段に劣るわけだが、長年研究され続けたハードだけあって、後期にはマイナーだが良質のゲームが多数発売されている。 その代表格ともいえるのが、かつて当連載でも紹介したことのある『メタルスレイダーグローリー』であろう。ファミコン唯一となる最大容量8MbitのROMを採用した本作。従来のゲームとは比較にならないほどの美しいグラフィックと豊富なアニメーションパターンで、多くのゲームマニアを唸らせた。 本作を手掛けたのは、先日急逝した任天堂の岩田社長も在籍したあのHAL研究所である。マイコン(この単語の響きも懐かしい)時代からの老舗メーカーだが、後に任天堂ハード向けのゲーム開発へとシフト。懐かしの名作『マッハライダー』や『バルーンファイト』、スーパーファミコン『MOTHER2』など、様々なゲームの開発に携わった。1992年には経営危機に直面したものの、任天堂の支援を受けた直後に発売した『星のカービィ 夢の泉の物語』がファミコン最後のミリオンセラーを達成。同社は見事再建を果たしたのである。 前置きが長くなったが、今回紹介するのはファミコン版の星のカービィ。初代は1992年にゲームボーイ用ソフトとして発売された。ゲームボーイらしからぬ軽快なアクションに加え、その愛らしいキャラも支持され、世界中で大ヒットを飛ばす。そして満を持して発売したのが、ファミコン版というわけだ。 前述のメタルスレイダーグローリーほどではないものの、本作もファミコンのハードの限界にチャレンジした作品として知られ、キャラの動きは非常に滑らか。また、擬似3D表示や多重スクロールなど、ファミコンとはとても思えないようなあっと驚く仕掛けもたくさん用意されているにもかかわらず、ほぼ処理落ちしないという抜群の安定感を誇る。また、ゲームボーイ版では「吸い込む」「吐き出す」のみだったカービィのアクションにも、新たにコピー能力が付与。この能力は以降のシリーズにも継承され、実質上、カービィ第二弾となる本作で、シリーズの方向性が確立されたといっても過言ではないだろう。さまざまな敵の能力をコピーしまくるだけでも楽しい本作。アクションゲームとしての難易度は低いので、難しさを求めている人には少々物足りないかもしれないが、ゲームバランス自体はシリーズ最高峰。ゲームボーイ版から大幅に増えたステージも好印象で、長く遊べる一作に仕上がっており、ミリオンヒットも納得の完成度であった。 しかしながら、本作のミリオンヒットもハード寿命の延命には繋がらず、翌1994年の発売本数はたったの1本。一方、後継機のスーパーファミコンは1992年に『ドラゴンクエストV』『ファイナルファンタジーV』、さらにはあの『スーパーマリオカート』を発売し、ミリオン続出の大盛り上がりを見せていた。こうして長きに渡ってゲームファンに愛されたファミコンは、静かにその役目を終えたのである。が、Wii(WiiU)や3DSでバーチャルコンソールの配信が始まると、本作を始めとする時代を彩った名作たちが手頃な価格で楽しめるようになり、ファミコンブームが密かに再燃している。 ちなみに夢の泉の物語については、2002年にゲームボーイアドバンスで『夢の泉デラックス』としてリメイクが行われ、また2012年からは3DSで『3Dクラシックス版』がダウンロード配信されている。ファミコン版と比べてゲーム内容に大きな違いはないものの、細かな調整が行われているので、その違いを探してみるのもまた一興だ。 今や任天堂を代表するBIGタイトルの1つとなった星のカービィは、これからも世界中で愛され続けることだろう。そしていちゲームファンとして、これまで数多くの作品で我々を楽しませてくれた岩田社長に、哀悼の意を表します。(内田@ゲイム脳=隔週月曜日に掲載)DATA発売日…1993年メーカー…任天堂ハード…ファミコンジャンル…アクション(C)1993 HAL LABORATORY,INC.(C)1993 NINTENDO
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その他 2015年07月19日 12時00分
【幻の兵器】量産に成功していたら…毎分10発の速射が可能だった五式十五糎高射砲
太平洋戦争開戦当時、日本陸軍は野戦機動が可能な十一年式七糎半野戦高射砲と八八式七糎野戦高射砲、陣地固定用の十一年式七糎半陣地高射砲に十四年式十糎高射砲、九九式八糎高射砲を保有、あるいは装備していた。だが十一年式高射砲は野戦、陣地とも完全に旧式化していたため全く戦力にならなかったし、大型の十四年式十糎高射砲も発射速度や初速が低く、戦力価値は限られたものだった。 しかし1942年にドーリットル中佐が率いる爆撃機隊が東京をはじめとする日本各地を空襲、損失なく逃亡した。爆撃の被害自体は皆無に等しかったが、日本陸軍は本土防空能力の欠如を痛感させられた。 陸軍はあわてて本土の防空兵力を増強すると同時に、各種高射砲の開発を強力に進めた。また、その過程でアメリカが開発に成功した超高高度を飛行する爆撃機の情報を入手したことから、陸軍はさらに優れた能力を持つ高射砲を開発する必要があると判断した。このような情況の下で、五式十五糎高射砲は開発されたのである。 しかし、当然ながら高射砲は大きな仰角で射撃することがほとんどで、大きくて重い砲弾を装填する装置は、非常にごつく、しかも複雑な機械であった。ただ、自動装填装置といっても、弾薬庫から運び出した弾を揚弾機に載せるまでは、人力でこなさなければならなかった。重さ90キロの弾薬筒を運ぶには複数の装填手が必要で、それでもほとんど限界に近い重量だった。だが、いったん弾薬筒が弾薬台から揚弾機に載せられると、レバー操作で装填板、自動起動機、装填機が動きだし、自動的に薬室に装填されるのみならず、装填中に信管が測合されるしくみになっていたのだ。 これにより、毎分10発という速射が可能になっていた。そのうえ、高射砲弾は空中で爆発することで敵機を撃墜するため、発射前に時限信管のタイマーをセットする作業、測合を行う必要があり、装填装置はますます複雑なものとなった。ただし、複雑な装置ではあるものの、開発の障害になるようなことはなかった。 問題は、高射砲の砲身そのものにあった。当時、日本の冶金技術はまだまだ発展途上にあった。そのため、発射の際に生じる巨大な圧力や、砲身内で燃焼する火薬ガスによる焼損に耐え、しかも発射弾頭が水平に近い弾道を描くという、高度な要求を実現するために必要な全くゆがみのない、丈夫な砲身を製造することが困難だったのである。しかも、五式十五糎高射砲は、日本軍の装備した火砲の中でも屈指の長砲身火砲であり、これを上回る口径の火砲は、海軍の六五口径九八式一○糎連装高角砲ぐらいしか存在しない。 不眠不休の努力の末、完成した砲身の重量は約10トンとなり、方向旋回体(砲台の回る部分全体)の総重量は45トンという巨大なものだった。このため、照準は電力と水圧を利用して機械的におこなう一方、人力による照準も可能なようにした。 マリアナが1944年に陥落し、アメリカはそこを拠点として日本本土への空襲を本格的に開始した。高高度を飛行する米爆撃機に対して、旧式の八八式七糎野戦高射砲は全く無力で、三式十二糎高射砲でさえ能力不足と考えられた。そのため、日本陸軍は総力をあげて五式十五糎高射砲の完成を急ぎ、ようやく1945年に大阪造兵廠と日本製鋼所広島工場でそれぞれ1門ずつ、計2門の五式十五糎高射砲が完成、東京の久我山に据えつけられた。巨大高射砲は1945年8月2日に2機のB29を撃墜したものの、新型高射砲の存在を知った米軍は久我山付近を避けて通るようになった。その上、半月後には日本が降伏したため、その他の戦果は全くない。敗戦後、その2門から日本製鋼所の製造した1門がアメリカに接収されたが、その行方は明らかになっていない。 もしも日本軍が本当に五式十五糎高射砲の量産に成功していたら、米爆撃機に深刻な打撃を与えることも夢物語ではなかったろう。とは言え、戦後にそれらの火砲を接収した米軍はほとんど興味を示さなかった。ドイツが開発を進めていた誘導対空ミサイルの方がより重要で、かつ将来性に富んでいるというのが、その最大の理由であった。(隔週日曜日に掲載)■五式十五糎高射砲重量:砲身9.2t、方向旋回体総重量45t寸法:砲身長9m(60口径)高低射界:0〜+85度方向射界:360度最大射程:26,000m最大射高:19,000m
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その他 2015年07月17日 12時00分
【不朽の名作】アイドル映画の究極“閉じコン”「CHECKERS in TANTAN たぬき」
1985年に『CHECKERS in TANTAN たぬき』という映画が放映された。当時、大人気だったバンド・チェッカーズを主役に抜擢したアイドル映画だった。この作品だが、色々な意味ですごい。究極のアイドル映画といってもいい作品だ。 この作品では、チェッカーズのメンバーが実名で登場するのだが、まず、「チェッカーズは実は人間に化けた、たぬきだった」というとんでもない設定の作品となっている。 どうしてこういう設定になったのか、おそらくは70年代から続く超能力ブームの影響を受けて、なにか特殊能力があった方が面白くなりそうと思ったのだろう。もしくは、制作スタッフにたぬき好きがいたからとかか…? まあ、設定の推測はこの際どうでもいい。なぜなら、殆ど設定の詳細な説明などないからだ。自身が「たぬきである」という葛藤もこの映画のストーリーの中心ではない。チェッカーズのメンバーの「アイドル性」だけでとにかく話の展開を押し切る。それがこの作品のメインテーマで、最近の言葉でいえば、閉じたコンテンツ(閉じコン)の最たる例の作品といっていい内容だ。 とにかくこの作品、キャラクターの説明が皆無に等しい、普通は、会話中で説明しなくても、シーン中行動にそのキャラクターの性格を匂わせたりするのだが、それもない。なぜなら、主役は当時絶大な人気だったチェッカーズだからだ。最初から見る人が、藤井郁弥や高杢禎彦など、メンバー7人の魅力を知っている前提で作られている。ファンならば、スクリーンの向こうでメンバーがワイワイ騒いでいるだけで楽しめてしまうのだ。逆にファンではない人が見ると、やってることすべてが意味不明とはいかないまでも、限りなく駄作に近い印象を持ってしまう。 まず、この作品で化けたぬき設定のチェッカーズメンバーは、米国の謎の超能力研究機関に追われているのだが、とにかくこの研究機関のシーンは、なんの伏線にもならない、無駄な会話シーンが多すぎる。他にも、チェッカーズ登場以外のシーンは、「駄作映画あるある」ともいえる、とりあえずオカルト的な雰囲気だけ出そうという、意味不明な演出の数々が、観賞者を襲うことになる。ちょっと気になる点といえば、財津一郎演じるオカルト好きの番組ディレクターが、矢追純一のオマージュなんだろうなと思う程度だ。肝心のチェッカーズのシーンも前述したように、ファン以外は「確実に切り捨てにかかっている」と思うシーンばかりだ。しかし、この切り捨てが悪い訳ではない、むしろこの切り捨てこそこの作品の肝だ。 実は、このファン以外を完全に切り捨てた作品構造は、かなり凄いことなのだ。例えば、現在でも男性のトップアイドルの地位にいるSMAPが全員揃って出演した映画『シュート』(1994年公開)は、作品の展開はアイドル映画だとしても、マンガという原作を借りて、一応ファンではない層も狙っている。今でいえば、AKB48のドキュメンタリー映画、「DOCUMENTARY of AKB48シリーズ」が近いかも知れないが、これも厳密にいえば違う。なぜならば、この映画にはドキュメンタリーという性格上、出演者達の「アイドル性」を壊す、苛酷さや葛藤や苦労あるからだ。アイドル性とは真逆の、ただの少女としての「生」の部分を見せてしまっている。 90年代や2000年に入ってからのアイドルとは違い、この作品は「アイドル性」を壊した状態のチェッカーズを見せずに、作品を成立させてしまっている。これは80年代や70年代のアイドルでしか出せない魅力といってもいいかもしれない。「生」の部分をあえて見ずに、「アイドル性」そのものだけを愛し、内々しか楽しめないノリを共有できるファンの数が、圧倒的に現在より多いから出来た作品形式だろう。 2015年現在で一番近いノリの作品を探すとすれば、実写ではなく、アニメ映画の『ラブライブ! The School Idol Movie』だろうか。この作品の、ニューヨーク旅行シーンは、地上波放送時に、作中のスクールアイドルグループ「μ's(ミューズ)」キャラに魅力を感じてファンになった人の為に、各々のキャラの性格を最大限に引き出した演出が図られている。その時の、「にこにー(にこちゃん)カワイイ」、「エリーチカかしこい(笑)」とファンが思うような、内々ノリの演出と同様のものを、『CHECKERS in TANTAN たぬき』では、「フミヤかわいい」、「ユーチャン(大土井裕二)おもしろい」という具合に実写でやってしまっているのだ。これは80年代アイドルが、アニメキャラに近い偶像的な、色々な意味での強烈な魅力を持っていた証明でもあるだろう。ラストシーンの、膨大なエキストラの数が、それを物語っている。 そして、おそらく当時のファンは、チェッカーズの歌を大画面で見ることを心待ちにしていただろう。その辺りは、オープニングのバーのシーンや、終盤のライブシーンでかなり丁寧な演出がされている。もうこの時点で、ファンなら100点満点をつけるだろう。そういった意味でこの作品は、チェッカーズそのもの魅力を信用した、究極のアイドル映画といえるのだ。チェッカーズが解散した今見ると、メンバー7人が仲良さそうに、ワイワイ騒いでいるシーンを見て、どこか虚しい気持ちにはなるが…。あと、序盤で謎の超能力研究機関に捕まった他の変化たぬきはどこに行ったんだろうか? 捕まったままなのか? フミヤを助けた後に、せめてその描写くらいはして欲しかったぞ!(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年07月10日 12時00分
【不朽の名作】宮沢りえデビュー作『ぼくらの七日間戦争』に見え隠れするモノ
1988年に鮮烈な女優デビューを飾った宮沢りえ。そのデビュー作品となったのが、『ぼくらの七日間戦争』だった。この作品で、新人とは思えない存在感を発揮した宮沢は、この年の日本アカデミー賞新人賞を受賞。スターの道をかけあがる。今回はその作品を紹介したいと思う。 映画の大枠は「子供たちの反乱」という形になっている。同作の原作である宗田理の同名小説の発行は1985年。当時は「管理教育」「校内暴力」「不良」「体罰」などなど、学校教育の問題がクローズアップされていた時代だった。という訳で本作でも、「大人たちはわかってくれない」という鬱屈感が作品の全般にあり、それに反抗する子供たちの痛快さを楽しむ作品になっている。 原作を読んだ人は知っていると思うが、同作の原作は、基本としては中学生の冒険小説のような作りになっているが、所々に70年代の学生運動を暗に匂わせる文章がある。そういった経緯もあってか、この映画でも、反抗した子供たちが廃工場に立てこもり、バリケードや罠で教師を撃退。最終的には警察の機動隊まで来て戦うので、ゲバ棒と放水車がないだけで、引きの構図は学生運動の記録映像のような感じになっている。しかし、映画には「全共闘」とか「学生運動」「安田講堂」などの言葉は出てこず、映画向けに程よく見やすいようになっている。原作が子供たちにとっての「学生運動」ならば、映画は子供たちにとっての「忠臣蔵」といった感じだ。 「忠臣蔵」とはいっても、主君のために仇を討つとか、そういう面でのことではない。忠臣蔵の元となった、元禄赤穂事件が発生した時代は、徳川綱吉の治世の時代で、悪法で不満もあったが、生活はそれなりに安定していた時代でもあった。その、多少不満はあるが天下泰平の世の中で、「自分はやりたくないけど、誰かがかわりに痛快なことをやって欲しい」という欲求を満たす作りになっているという点に対してのことだ。この作品が放映された時代もバブル景気で物質的には豊かだったが、不満がない訳ではなかった。特に当時の子供は学校で色々不満がたまっていたことだろうと思う。それらの不満のはけ口を代行してくれるような作りに、この作品はなっている。 例えば、忠臣蔵では見る側に罪悪感を与えないように、討たれる吉良上野介が、徹底的に悪役に描かれるが、この作品ではその役割を中学校の教師たちが担っている。とにかく、「さすがにこんな教師いないだろ」と思うほどのクズ教師ばかりだ。演じている俳優陣は、金田龍之介、佐野史郎、笹野高史、大地康雄、倉田保昭など。特に佐野は、今でも映画やドラマでクズキャラ、ゲスキャラの演技が印象的な俳優として知られるが、他の俳優も、とにかくステレオタイプのクズ教師になりきっている。その演技の完璧さは、小中学校教師に対し、トラウマが少なからずある人なら、その時の様子を思い出してしまうほどかと思う。これで子供たちが立てこもった際に、少しでも心配する教師ならばいいのだが、口を開けば内申書や受験の話をし、生徒を脅すなど、とにかく救いようがないクズ連中なのだ。 こんなクズ教師どもが中学生の返り討ちに合うのだから、同世代の子供はもちろん、学生時代に教師にトラウマがある人にとっても、とても痛快な描写に映る。それこそ、元禄期の江戸庶民が熱狂した忠臣蔵のように。しかし、一点だけ不満が、この作品には赤穂浪士にはあった「切腹」が決定的に欠けている。 これは大人しか感じないことなのかもしれないが、当事者の気持ちはともかく、悪いことはしたのだから、とりあえずなにか報いは受けて欲しい。映画では、籠城した子供たちが教師を倒し、さらに警察の機動隊まで倒して秘密基地を守りぬき、最終的に花火を打ち上げて終了という形になっている。原作では秘密基地がブルドーザーに蹂躙されるシーンがあるので、せめて機動隊に捕まりながら打ち上げ花火を見るとかにして欲しかった。そうすれば、保護者が花火を見て「さすがだな」と呟くシーンももっと印象的なシーンになる気もするのだが…。 一応終盤に、体育教師役の倉田保昭が、「お前らいい加減にしろ」と、それまでの頭ごなしに怒鳴るシーンとは明らかに違うトーンで叱るシーンがあるにはる。しかし、子供たちはなにも感じていなかったようで、ラストカットで、「これはほんの小手調べさ!」などと話し、最後に菊地英治役の菊池健一郎が、「うーん狙うは…、国会議事堂だ!」といい放ちエンドロールとなる。「え、君たちまだやんの!?」とさすがに困惑して、それまでの痛快さが一気に冷めてしまう感じがしてしまう。しかも、「国会議事堂」という言葉が、「60年安保闘争」を連想させて、ここまであえて外してきた、原作の学生運動的な面を一気に表へ出してしまうことも気になる。 とはいっても。子供はもちろん、大人も楽しむことが出来る娯楽映画にはなっていると思う。あと、この作品には、『戦国自衛隊』(1979年放映)の劇中で使われた、レプリカの61式戦車が登場していている。同作の劇中では中山ひとみ(宮沢りえ)がエレーナと命名して、花火の打ち上げ台となり、その前にも走行シーンなどもあって、ゲスト登場の割には、結構目立つシーンが多いので注目だ。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年07月06日 15時00分
【コンピューターゲームの20世紀 53】斬り合いゆえの一撃必殺性「サムライスピリッツ」
『サムライスピリッツ』は1993年にSNKから発売された対戦格闘ゲーム。同社はカプコンと並ぶ格ゲーの老舗メーカーだが、当初はその2社の差は非常に大きかった。1991年3月にカプコンから『ストリートファイターII』が発売され、その8か月後の11月にSNKから『餓狼伝説』が発売される。この2作品は格ゲー黎明期を代表するゲームとして有名だが、両作品をプレイしてみると、その大きな差に驚く。はっきり言って操作性からゲーム自体の奥の深さ、グラフィックまで全て『ストII』の方が勝っている。その後、SNKは『餓狼伝説2』『龍虎の拳』と立て続けに格ゲーを制作するが、その差はなかなか埋まらなかった。 しかし、1993年に発売された『餓狼伝説スペシャル』の人気が爆発。同作は粗が多い作品だが、キャラの多さや派手な技、そしてヤケクソ的な連続技など爽快感あふれるゲームであった。そして、この年になって初めてSNKは名実ともにカプコンと二大巨頭を形成し、以降の格ゲームーブメントの中心となっていった。 本作はそのSNKの躍進を支えたゲームで、武器を使った格闘という新ジャンルを(前年にアルュメから『ブランディア』が発売されているがあまりにマイナー)切り開いた作品。忍者や侍、騎士などが戦う独自の世界観で人気となった。ただ、本道ともいえる『餓狼伝説』が必殺技を中心に戦うスタンダードな作品なのに対し、本作の必殺技はかなり使い勝手が悪く、飛び道具で飛ばせて対空技で落とすといった戦いはやりにくい。その代わりに攻撃の中心となっているのが各キャラの武器を使用した「斬り」攻撃なのである。基本的に本作の蹴り攻撃は判定が強い代わりに威力が弱くなっており、主力になり得るのは一部のキャラのみとなっている。格ゲーで最も有効な攻撃の1つである足払いも万能ではなくなっているのだ。また、斬り攻撃の中でもボタン同時押しで出せる強斬りは威力が絶大で、これを決める快感から本作のファンとなったプレイヤーも多い。こういった特性に加え、ジャンプの軌道が緩やかで遅いキャラが多いため、必然的に地上での斬り合いの機会が増える。ゲームとしての特性をシステム面が後押ししている形だ。SNKらしいキャラ設定の上手さも充分に生かされている。 と、ここまでは手放しで褒めてきたが、問題も少なからず存在する。飛び込みが弱く必殺技が使いにくい本作では相手に待たれると、それを崩すのが難しいのだ。もちろん工夫次第で何とかなる問題ではあるものの、待ちが有利なゲームとプレイヤーに認識されたのは大いなマイナスポイント。斬り攻撃の当たり判定が独特で、特にジャンプ攻撃がスカってしまうのもプレイヤーを困惑させた。また、CPU戦の難易度が高すぎなのも困ったことで、これは後の格ゲー全般で問題になっていったことでもある。これらの欠点により、特に稼働初期に本作のイメージはあまり良くないものと認識されてしまい、結果として評価の割にはヒットに繋がらなかった。ただし、ゲーム性を正しく理解できたプレイヤーからは高く評価され、それが続編『真・サムライスピリッツ』のヒットに繋がった。派手なコンボ技などはほとんど存在しないが、真剣による一撃必殺の快感を持つ本作は、乱立する格ゲーの中から生み出された一種の奇跡。このゲーム性が後世には伝わらず、格ゲーがコンボ重視のマニア御用達ゲームになっていったのは非常にもったいなく感じられてしまう。(須藤浩章=隔週月曜日に掲載)DATA発売日…1993年メーカー…SNKハード…アーケードジャンル…対戦格闘ゲーム(C)1993 SNK CORPORATION
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その他 2015年07月06日 12時30分
『攻殻機動隊 新劇場版』の素子の愛銃がエアソフトガンで登場!
ライラクスより『攻殻機動隊 新劇場版』で草薙素子やバトーが使用しているアサルトライフル、「シュレーディンガー」がエアソフトガンとして7月下旬に発売される。 エアソフトガンのカスタムパーツメーカーらしく、実際のサバイバルゲームでも使えるクオリティを目指し、各所に納得のギミックを搭載。 電動エアソフトガン用メカボックス組込済みのデラックスVer.と、ユーザー自身で組み込む事が出来る外装のみのスタンダードタイプの二種類を用意。攻殻機動隊ファンのみならずエアソフトガンユーザーにも納得の出来に仕上がっている。 同社担当者の話によると今回の商品では、従来のコラボ商品では不十分だった、質感をより追求して開発したとのこと。特徴は実銃に則した金属パーツで、手触り感は、かなり実銃に近い仕上がりになっている。また、非金属部分のパーツも、作品スタッフと打ち合わせを重ね、剛性の高いポリマーフレームを使用。劇中のシュレーディンガーが、現実にあったらこうなるだろうという、近未来的なフォルムを再現している。 実銃さながらの本格的なパーツを使用したことで、激しく動くサバイバルゲームにも問題なく使える商品となっている。また、よりリアルな質感ということで、作品のコスプレをする際の、アクセサリーパーツとしても確かな存在感を見せることが出来る。 価格は「シュレーディンガー スタンダードVer.」が、99,800円(税別)で、「シュレーディンガー デラックスVer.」158,000円(税別)で発売予定。作品ファンで、エアソフトガン初心者の人には、細かい組み立てが不要な、デラックスVer.をオススメする。なお、デラックスVer.の対象年齢は18歳以上で、18歳未満は購入不可となっている。
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その他 2015年07月05日 12時00分
【幻の兵器】ソビエト侵攻戦後にひとつの伝説を生んだ「試製41cm榴弾砲」
大正最後の年となった15年(昭和元年)、大阪砲兵工厰内火砲第一工場において、日本陸軍史上空前の巨大火砲が竣工した。仮に「四一センチ榴弾砲」と呼ばれていたその砲は、第一次世界大戦に登場した各国の巨砲(ドイツの38センチ砲やドイツの42センチ榴弾砲、フランスの52センチ榴弾砲)に刺激を受けた日本陸軍が開発したもので、敗戦に至るまで帝国陸軍最大の火砲であり続けた。 だが、四一センチ榴弾砲は完成する前に存在意義を失っていた。 というのも、四一センチ榴弾砲は沿岸防備要塞用と考えられており、本土防衛用の切り札として東京湾に設置される予定だったが、ワシントン軍縮会議により日本海軍が多くの戦艦を廃棄することとなり、余った戦艦の主砲を「沿岸要塞用」として陸軍に移管することとなったのである。そのため、四一センチ榴弾砲は射撃試験を終了した段階で、試製のまま無用の長物と化してしまう。結局、昭和12年になって陸軍予算が大幅に増額され、ソ連との戦争をにらんだ軍事力の整備が可能となるまで、四一センチ榴弾砲は倉庫で眠り続けた。 しかし、予算の増額にともなう対ソ戦整備が決まったことから、四一センチ榴弾砲も満州へ送られることとなり、竣工後に実用化された各種新技術が大幅に取り入れられた近代化改修も行われた。特に照準装置に新式のレオナード式制御を導入したことと電動揚弾、装填装置の採用によって、命中率、発射速度とも大きく向上し、兵器としての有効性を一段と高めている。改修れた四一センチ榴弾砲は、満州東部国境の最前線であり、最強の要塞である虎頭要塞に配備されることとなった。軍艦と対決する必要のない陸上要塞として考えた場合、四一センチ榴弾砲のような大口径火砲の配備は他に例を見ない。しかし、日本陸軍には秘密の計画があった。 要塞の東にはウスリー河をはさんでソ連領イマンがあり、シベリア奥地からウラジオストックにつながる重要な交通路であるシベリア鉄道とスターリン街道の中継点となっていた。さらに、イマン市街のすぐ北にはシベリア鉄道のイマン鉄橋があり、イマンの街を占領できないまでも、鉄橋を破壊するか砲撃で市街を制圧できれば、ソビエト軍の物資輸送に深刻な影響を与えることが可能と考えられていた。 日本陸軍最大の火砲であり、虎頭要塞最大の火力を誇る四一センチ榴弾砲は、イマン鉄橋破壊の切り札として送り込まれたとされている。加えて、要塞内部に渡河攻撃隊を収用して、敵の反対砲火から保護することも要塞の大きな任務のひとつだった。つまり、虎頭要塞は単なる国境要塞ではなく、イマン渡河侵攻部隊の途方もなく巨大な出撃基地であり、極めて攻撃的な重砲撃陣地でもあったのだ。 ところが、日本はアメリカの戦争を始めてしまい、対ソ戦どころの騒ぎではなくなっていた。そして、運命のソビエト侵攻を迎えることになる。昭和20年(1945)8月9日午前零時、要塞に対する重砲の集中砲火を皮切りに、いよいよソ連軍による侵攻が始まった。要塞守備隊は砲火のどかない四一センチ榴弾砲による反撃を開始し、イマン鉄橋の破壊に成功、日本軍最大の火砲は、見事その任務を全うしたのである。 さらに、四一センチ榴弾砲は砲身の加熱によって射撃不能となるまでソ連軍へ射撃を続け、大損害を与えたとされる。とは言え、翌日にはウスリー河を渡河したソ連軍歩兵による本格的な攻撃が開始され、早くも要塞の一角がソ連軍に占領されてしまう。結局、守備隊に敗戦が知らされた段階では要塞の主要部はほぼ占領されており、降伏を拒否した将兵も自爆、要塞内部に取り残された小部隊も掃討された。ソ連軍に大きな打撃を与えた四一センチ榴弾砲も、砲塔陣地の砲口部に撃ち込まれた敵弾が内部の火薬に引火し、陣地ごと破壊されたという。 だが、この時の四一センチ榴弾砲の戦いぶりは、戦後にひとつの伝説を生んだ。四一センチ砲弾がソ連軍のスターリン重戦車に直撃し、跡形もなく吹き飛ばした、という物語である。もちろん、これは単なる伝説に過ぎないが、秘密兵器、陸軍最大の巨砲という存在に対する、人々の期待を色濃く反映したエピソードではないだろうか。 結局、要塞守備隊は逃げ込んだ居留民共々ほぼ全滅し、極わずかな生存者たちだけが、その最後の有り様を現在に伝えるのみである。また、虎頭要塞のシンボルともいえる四一センチ榴弾砲は、戦後ソビエトが持ち去ろうとしたが、アムール川を渡る際にフェリーが砂州に乗り上げてしまい、そのまま回収不能となって朽ち果てたと伝えられている。(隔週日曜日に掲載)■試製41cm榴弾砲重量:砲身75.8t、放列砲車318.0t寸法:口径410mm、砲身長13.4m高低射界:-5〜+75度方向射界:360度最大射程:20,000m弾量:1,000kg
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その他 2015年07月03日 12時09分
【不朽の名作】世界に先駆け作られた本格実写ロボットアクション映画「ガンヘッド」
1989年という、バブル景気真っ只中の時代に、とある野心的な映画が製作された。タイトルは『ガンヘッド』。特撮技術に定評のある東宝と、『機動戦士ガンダム』など、アニメによる巨大ロボット作品を得意としたサンライズがタッグを組み、まだCGもない時代に作り上げた本格的な実写巨大ロボットアクション映画だ。 同作のロボデザインは、当時アニメ『超時空要塞マクロス』などのメカデザインを手がけ、売れっ子デザイナーとなっていた河森正治氏が担当。監督・脚本には「スター・ウォーズシリーズ」などで、日本語版吹替版の演出を担当した、原田眞人氏が抜擢された。さらに、後に「VSゴジラシリーズ」でも、多くの演出を手がけることになった川北紘一氏が、特撮技術監督として特撮部門の指揮を担当するなど、当時このジャンルの実力者と目される人物たちが結集して制作した映画だった。 今でこそハリウッド映画には「トランスフォーマーシリーズ」や『パシュフィック・リム』など、有名な巨大ロボットアクション映画はあるが、これらのジャンルが本格的に登場したのは1990年の『ロボ・ジョックス』からだった。という訳で、この映画は世界に先駆けて放映された巨大ロボットアクション映画となるのだが、興行的に成功と言えるものではなかったようだ。 特撮がショボかったから、人気が出なかったという訳ではない。川北氏の特撮演出はすばらしく、ガンヘッドの無骨なデザインをよく活かした演出が随所に見られる。これより少し後に公開された『ゴジラVSビオランテ』を見ればわかると思うが、当時は操演(ピアノ線などで、人形などを動かす技術)やミニチュアセットなど、東宝のアナログ特撮技術が最高峰に達していた時期といってもいい。若干映像が暗いシーンが多めだが、爆発の中を進むガンヘッドの走行シーンや変形シーン、誘導ミサイルや建物破壊の演出などで、現在では再現不可能なのではと思われる技術がこれでもかと使われ、重厚感や迫力を出している。 それではなぜ人気が出なかったのか? これは個人的な見解になってしまうが、オリジナル作品としては冒険しすぎた感のある、複雑なストーリーにあったのではないだろうか。 複雑とはいっても、よくダメな映画にありがちの唐突に変な設定が出てき困惑という状態ではない。各シーンを“注意して”見ていれば、その背景がわかるようにはなっている。例えば、高嶋政宏演じる主人公・ブルックリンと、ミッキー・カーチスが演じるトレジャーハンターのリーダー・バンチョーとの関係性だが、バンチョーは序盤にあっさり死んでしまうので、なんの注意もなく見ている視聴者には「あ、死んだ」くらいの感想しか湧かない。しかし、注意して見ていると、ブルックリンはバンチョーと同じシガレットケースを、にんじんスティック入れとして愛用しており、ガンヘッドで出撃する際も、何かを決心したかのように、バンチョーの愛用していた飛行帽をかぶって戦うので、ブルックリンにとって親がわりような存在だったのではとようやく予想できる。同作では、人間関係以外にも、数多く登場するSF設定などにもこの“注意して”確認することが要求される。 もともと原作などで説明済みならいいが、この作品は、完全オリジナル作品となっているので、それも望めない。普段から映像作品の細部まで見るクセのある人には、かなり楽しい作品になるが、それ以外の人にとっては、「わかりにくい」という印象しか残らない作品になってしまう。加えて、この作品は無国籍を意識したのか、海外展開を考えていたのか、日本語と英語が入り混じって会話が展開される。その影響で、唐突に入ってくる字幕も注意して見なければならず、余計にストーリーを理解することを困難にさせている。現在の邦画なら、おそらく説明セリフのひとつやふたつは入れているところだろう。 こうした状況でも、万人受けするように、面白くするやり方は、あるにはある。とりあえず作品の目玉である巨大ロボットを序盤から登場させて、有無を言わせないほどに激しく暴れて、勢いで乗り切る方法だ。しかし、この作品ではタイトルにもなっているガンヘッドがなかなか出てこない。ようやく出てきても最初は修理シーンで、動いているシーンはというと、100分ある本編の中で30分程度あるかないか。敵メカである、人類に反旗を翻したコンピューター「カイロン5」が操る「エアロボット」との対決となると、もう殆ど時間が用意されていない。修理シーンも、細かなメカなどが見ることができて楽しいは楽しいのだが、これではメカ好きの視聴者だけの支持しか得られないかと思う。ここまで商売的に成功の難しい、冒険的なオリジナルシナリオでも、企画が通ってしまうのが、バブル景気の力なのだろうか。例えば、80年代にアニメで流行った『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』の実写化に同様の技術を活かしていれば、世界初といってもいい実写巨大ロボアクション映画の評価も変わったものになっていたかもしれない。 さて、ストーリーが複雑と散々言ってきたが、悪い部分だけではないので、そのあたりも解説しようと思う。ブルックリンが搭乗する、ガンヘッド507には、戦闘用AI(人工知能)がついているのだが、こいつがなかなか皮肉の効いているAIで、ブルックリンとの掛け合いがかなり面白い。同じ80年代の作品でいえば米国ドラマの『ナイトライダー』のキッドや、最近でいうとアニメ『翠星のガルガンティア』のチェインバーのように、機械のはずなのに、所々で人間臭い言葉を主人公に浴びせて、苦笑いさせたり、奮い立たせたりするのだ。あと、作中BGMもかなり印象的。たしかこの作品のBGMは、某警察のドキュメンタリー番組などでも多用されていたので、知らずにBGMだけ聴いている人も多いと思う。 ちなみにこの作品には、地上波で放送された際に英語の部分を含めて、全ての部分を吹き替えた「吹替版」が存在する。吹き替えだと、字幕で不十分だった情報も、付け足した状態で入ってくるので、かなり良いのだが、現在発売しているDVDでは残念ならが未収録となっている。2010年代に入ってから、20年以上の時を経て、作品のメーキングDVDや、ガンヘッドのプラモデルが発売されるなど、再評価の動きのある本作なのだから、そろそろブルーレイなどを発売した際などに、本編と同時収録して欲しい気もする。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年06月26日 12時00分
【不朽の名作】恐竜ブームの最中に登場した「REX 恐竜物語」とは何だったのか
1993年というのは異様なほど「恐竜」が流行った年だった。地方・都市問わず恐竜関連のイベントは盛況。映画『ジュラシック・パーク』のヒットはもちろんのこと、同時期に公開されたアンパンマンの映画も『それいけ! アンパンマン 恐竜ノッシーの大冒険』、ドラえもんでも、本編と抱き合わせ公開されたドラミちゃんの映画の題名が『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』といった状況で、みんな恐竜に夢中だった。NHK教育(現・NHK Eテレ)の、『天才てれびくん』の枠内で放送され、オタク用語の「萌え」の語源はこの作品の主人公・萌ではないかと、一時期噂されたアニメ『恐竜惑星』も1993年の放送だった。そんな恐竜ブームの最中、「恐竜」を題材とした作品のなかでも、ひと際異彩を放つ作品が誕生した、それが今回紹介する『REX 恐竜物語』だ。 この作品は、子役時代の安達祐実が主演していることで有名で、当時はメディアミックス戦略が功を奏し、かなりのヒット作となった。『ジュラシック・パーク』を引き合いに出し、日米恐竜対決と煽る報道も当時あったような記憶がある。しかしこの映画、「恐竜」を題材とした映画なのに、恐竜である必要がまったくない作品なのだ。 ストーリーをざっくり解説すると、以前に紹介した『北京原人』とほぼ同じような展開で進む。それこそ北京原人がストーリーをパクったのではないかと疑うほどに。類似している部分を挙げると、「よくわからない設定で古代生物を復活させる」、「復活させたが、どう接するかで苦戦する」、「別の組織から横槍が入り、古代生物を奪おうとする」、「最後は本当の故郷があるからと、古代生物を原野に帰す」、「佐藤蛾次郎がよくわからない役で出演している」などだ。しかし、作品的には、“親子の絆”、“恐竜と少女の絆”というテーマが大枠としてあるので、『北京原人』よりは、遥かに映画として見られる作品にはなっている。しかし、このテーマなら、別に恐竜でなく、北京原人でも宇宙人でも、妖怪でもなんでも、とりあえず成立してしまうストーリーだ。 同時期に放映・放送された恐竜を題材にした作品には、それぞれ恐竜を扱う意味があった。『ジュラシック・パーク』では、最新の学説と、当時最先端の技術を使い、恐竜のリアルな描写を実現していた。さらには、それまでスポットが当たりずらかった「ヴェロキラプトル」などの、小・中型恐竜の知能の高さや獰猛さ細かく表現し、それらの恐竜の名前をメジャーなものとした。『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』でも、当時の学説としては、恐竜の中では珍しく子育てをするといわれていた「マイアサウラ」にスポットを当て、しっかりとストーリーを組んでいる。『恐竜惑星』は、量子コンピューターの暴走により、人類とは別の世界で進化した恐竜人類たちと、ヴァーチャル世界を通じてどう向き合うかという、ハードSFな設定になっていながら、主な物語の舞台を、中生代を再現した地球という設定にし、当時の最新の学説を参考にした、三畳紀〜白亜紀までの恐竜を数多く出すことで、教育番組としての要素も持っている。 さらに、『それいけ!アンパンマン 恐竜ノッシーの大冒険』でも、完全に児童向けの作品でありながら、当時怖いイメージのあった恐竜を、童話のキャラクターにして、可愛らしく描くという意外性で勝負している。しかし、『REX 恐竜物語』はというと、主人公・千恵の父親である、古生物学者・立野昭良を演じる渡瀬恒彦が、場末の居酒屋で隣の席に「知ってるかぁ?」と絡んでくるオッサンのウンチクかと思う程度に、恐竜の学説を話すくらいだ。しかも恐竜の専門家のはずなのに、千恵や、その母親で、大竹しのぶ演じる伊藤直美が、肉食恐竜の子供と思われるレックスに、ピーマンを食事として与えることに、なんの疑問も挟まない。さらに、ムー大陸の古代文明や、アイヌの神の話など、ぶっ飛んだ設定が、説明もなく数多く登場するので、一体これはなんの映画だかわからなくなる。 最後の砦である恐竜・レックスの造形も、当時の技術であっても、もっと何とかなっただろうと思うような、微妙な造形だ。同時期の他の恐竜を題材にした他の作品には、大なり小なり、恐竜を活かして面白い作品作ろうという気概が感じられるのに対し、この作品には、とりあえず恐竜が流行っているから、なんか作ろうという雰囲気が、作品のそこかしこから伝わってくる。 恐竜という題材を持ちだした意味を問うと、この作品はかなり微妙だ。しかし、その設定に目をつぶれば、見どころはあるにはある。ひとつは、なんといっても子役離れした安達祐実の演技力だろう。各シーンでの動き方やセリフ回しなどは子役とは思えない、規格外の存在感を放つ。表情の作りかたも神がかっており、レックスを叱る際に威圧するように見下ろす時の表情は必見だ。 もうひとつは、劇中にレックス視点のシーンが結構あること。よく未知の生物と、子供の触れ合いを描く作品だと、子供側の視点を多用しがちだが、この作品では、レックスからの視点のシーンが効果的に使われており、レックス側も未知の世界にいるのだということを教えてくれる。細かい設定が気にならなければ、それなりに楽しめる作品だとは思う。特に子供に見せる映画として考えた場合は、ドタバタ劇やコミカルな描写もかなりあるので、退屈はしない作品にはなっている。あと最近では、恐竜に「鳥のような羽毛が生えていた」という説もあるので、リメイクすれば、羽毛でモフモフしたレックスの姿が可愛いと人気が出るかもしれない。だれもしないだろうけど…。 ちなみに同作の原作はムツゴロウさんこと、作家の畑正憲氏の『恐竜物語〜奇跡のラフティ〜』となっている。原作小説の方は、かなりシリアスな展開で評価は高いようだ。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年06月26日 11時45分
『太鼓の達人』15周年発表会にスタジオジブリ・鈴木敏夫氏が登場
25日、バンダイナムコエンターテインメントは、人気アーケードゲーム『太鼓の達人』の15周年を記念したアニバーサリー企画詳細を、都内のバンダイナムコエンターテインメント本社で発表した。 今回の15周年記念に際し、スタジオジブリが記念ショートアニメーションを担当。発表会に登壇した代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫氏は、今回の仕事を受けた経緯について、「ジブリの中に、ちょうど稼げる仕事をやりたいというやつがいまして…」と冗談混じりに語り笑いを誘った。 実は鈴木氏は、この企画を仕掛けた鵜之澤伸アニメコンソーシアムジャパン代表取締役社長兼バンダイナムコホールディングス執行役員と、徳間書店時代からの腐れ縁だそうで、「昔、ピピン(過去にバンダイとアップルが共同開発したゲーム機)をタダでもらったことがあって、そのお返しをしなきゃと思っていた」と明かした。 また、同じく発表会に登壇していた鵜之澤氏は「ジブリはゲーム嫌いで有名で、門前払いされる」と語っていたが、鈴木氏によるとそれは違うとのことで、「正確に言うと、あんまりよくわかってないんですよ。僕と宮崎駿は将棋なんぞはやるんですけど、デジタルゲームのことは、さっぱりわからないんですよ」と弁明していた 他にも15周年企画として、シリーズ初の世界大会「ドンだ−!世界一決定戦2016」の開催も発表。さらにEXILEのMAKIDAIと関口メンディーが15周年タイアップアーティストに就任することが発表され、会場では両名の就任コメントが流れた。なお、スタジオジブリが担当した記念ショートアニメは、今後テレビCMなどで放送予定だ。(雅楽次郎)
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