その他
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その他 2015年06月21日 12時00分
【幻の兵器】敗戦まで日本最大射程の火砲として君臨し続けた「九○式二四センチ列車加農砲」
巨大な火砲は必然的に大きくて重く、移動が困難であったが、鉄道をうまく使えば、巨大火砲を陸上で高速移動させることも可能となる。もし、鉄道車両に巨大火砲を取りつけたら、火力と機動力をあわせ持つ夢の兵器が誕生する。それが列車砲であった。そして、第一次世界大戦が始まると列強諸国は相次いで列車砲を実戦に投入し、大戦末期には両陣営が巨大火砲を撃ち合う大砲撃戦が展開された。 第一次世界大戦で列車砲の大きな威力を目の当たりにした各国の陸軍は、戦後も列車砲の開発を進めた。日本も例外ではなく、紆余曲折を経て列車砲先進国のフランスから導入したのが九○式二四センチ列車加農砲である。ただ、日本陸軍も始めから外国兵器の導入を考えていたのではなく、当初は海岸要塞用の27センチ加農砲を流用する計画だった。ところが、海岸要塞の27センチ加農砲の射程が16kmなのに対し、フランスのシュナイダー社が提案した24センチ列車砲の射程は後の戦艦大和すらしのぐ50km以上だったから、転用計画はあっさり放棄され、フランスから購入することになった。もちろん、先進技術を解析し、あわよくば模倣するつもりもあった。 そのような経緯で1925年(大正14年)に購入決定、完成した砲はマルセイユから出荷され、横浜に到着したのは1929年(昭和4年)3月のことだった。砲は分解梱包されたまま千葉の富津射場へ送られ、現地で組み立てられた。射撃試験では50kmの最大射程でも弾着誤差100m以内という優秀な性能を示し、試験員は大変感心した。 結局、日本陸海軍は敗戦までこの二四センチ列車加農砲を超える射程の火砲を製造できず、日本最大射程の火砲として君臨し続けたのである。さておき、日本陸軍が長射程の列車砲を導入したのは上陸する敵から首都を防衛するためだったようだが、昭和に入って満州(現在の中国東北部)を支配し、傀儡国家として満州国を打ち建てた後は、運用目的が大きく変わっていった。広大な大陸で長い射程を活かすことが求められ、砲は1941年(昭和16年)末に満州へ送られた。 大連に陸揚げされた二四センチ列車加農砲は、ハルピンで極秘裡に組み上げられ、これまた極秘裡に夜間移動して、満ソ国境近い水克陣地へ到着した。日本の属国である満州国はソ連と長大な国境を接しており、日本陸軍はソ連を仮想敵国として警戒していた。そのため、日ソ開戦の折にはシベリア鉄道を破壊して増援部隊の到着を阻止すること、および後方を撹乱して敵兵力を分散させることが求められたが、射程の長い九○式二四センチ列車加農砲はうってつけだったのである。 だが、その時はなかなか来なかった。日本陸軍は独ソ開戦後の1941年夏に関東軍特種演習と称する対ソ戦をにらんだ軍事動員を行ったものの、同時期に対米関係が悪化したことから開戦は見送られた。結局、日本にはソ連相手に事を起こすだけの国力はなかったし、対独戦のまっただ中にあったソ連も対日戦は避けたかったのである。 ずっと後、ついに「その時」が来たのは、ドイツ降伏後の1945年(昭和20年)になってからだった。しかし、迫り来るソ連軍を前にしたそのとき、間の悪いことに九○式二四センチ列車加農砲は分解整備中で使いものにならなかったのである。そのため、わが国で唯一の列車砲は、ついに実戦参加せずおわった。 列車砲はソ連軍に捕獲され、のちに本国へ運ばれたともいうが、くわしいことは知られていない。 陸軍の想定では九○式二四センチ列車加農砲をトンネル内に秘匿し、射撃時のみ引き出して、発射後は直ちに戻すという計画だった。そのため、もし計画通りの運用がなされていたら、ソ連軍は発見することさえ困難な長距離砲によって大打撃を受けたであろう。とはいえ、戦局の推移から九○式二四センチ列車加農砲のトンネル陣地が包囲下で孤立したであろうことも間違いなく、砲弾を撃ち尽くした後は玉砕する運命にあったことも間違いないのだ。(隔週日曜日に掲載)■90式24cm列車加農砲重量:砲身35.0t、放列砲車136.0t寸法:口径240mm、砲身長12.8m高低射界:0〜+50度方向射界:360度最大射程:50,120m弾量:165kg
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その他 2015年06月20日 16時52分
押井守監督『攻殻機動隊』続編への意欲を語る
19日、TOHOシネマズ 新宿で『攻殻機動隊』シリーズ25周年と、『攻殻機動隊 新劇場版』公開を記念した前夜祭オールナイトイベントが行われ、同シリーズの監督を務めた押井守氏、神山健治氏、黄瀬和哉氏の3人が、初めて公の場で顔を揃えた。 第1作の映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)と、その続編『イノセンス』(2004年)を監督した押井氏は同作の監督に決まった時の様子を、「(原作・攻殻機動隊の)マンガ読みながら、いつかこの作品をアニメにするんだろうなと感じていた」と予感があったと明かした。 同シリーズ1作目は、まだインターネットが普及していなかった当時に、ネットワークへの接続が日常になった近未来を描いた作品として、国内外のクリエイターに大きな影響を与えた。しかし制作当時は、かなり手探りだったようで、押井氏は、「まず、インターネットを知らないでやってましたからね。電脳ってなに? 義体って? と作中の言葉や設定すらよくわからなかったんですよ。こんなものだろうという妄想だけで『GHOST IN THE SHELL』を作りました」と回想した。 2002年から『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』を始め、テレビ放送シリーズの監督を担当した神山氏は、難解なSF設定をテレビ用にわかりやすくする苦労があったようで、「当時は(作中に登場するキャラの)頭の中に電話が入っているという感じで作っていた」と語った。 また、会場には同作のシリーズを制作している、プロダクションI.G石川光久社長や、13年より同作の脚本を担当している作家の冲方丁氏も登壇した。石川社長は、「25年前はちょうど『パトレイバー』を作るときで。押井さんの絵コンテにはしびれましたね。しかも次が攻殻。プロダクションI.Gは押井さんのためにあるんじゃないかと思っていた」とコメントした。しかし直後に、「それが、『イノセンス』あたりからおかしくなってきた。それで今、押井さんに言いたいのですが、借金を返してほしいんですよ!」とぶちまけ、場内の爆笑を誘った。 その後、20日から公開の新作の感想を求められた押井氏は、「想像したよりも全然面白かった。テンポがいいし、お話もよくできている。黄瀬の絵は良くて当たり前だから、冲方さんの脚本が良かったんだろうな」と称賛した。 さらにトークイベントの最後に押井氏は、「この3人はケンカもしましたし、いろいろありました。でも結果が良ければいいかなと。25年続いた作品なので、もしかしてまだ続きがあるかもしれない。それなら1周してまた最初に戻るのかなと」次回作への意欲もほのめかした。(斎藤雅道)
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その他 2015年06月19日 12時00分
【不朽の名作】スキーの魅力語る上で欠かせないが負の部分も「私をスキーに連れてって」
1987年公開の『私をスキーに連れてって』は、歌手の広瀬香美やダンスユニットのZOOなどと並び、日本のスキーブームを語る上で欠かせない作品だ。映画としても、バブルの好景気まっただ中の世相をよく表していることもあり、結構評価の高い作品となっている。が、当時このブームで迷惑を被った人がいない訳ではない。ブームの時は、どこでもある現象だが、純粋にスキーを楽しんでいた従来のユーザーが多大な迷惑を被った。というわけで、当時のそんなスキーヤーたちの怨念も若干込めながら、本作を紹介したいと思う。 まずこの作品、スキーでのかっこいい滑走シーンが最大の魅力だが、かなり上手い人が吹き替えで滑っているのを忘れてはならない。当時は映画の影響で、「トレイン走行」または「むかで」と呼ばれた、3〜5人がくっついて並走する走行法が流行ったが、あれは先頭に相当上手い人がいないと成立しない技だ。当時はこれを作品でいうところの「ミーハー」な人々が集まってやるので、かなり迷惑だった。 ブーム当初は、映画のオシャレな雰囲気に習って、苗場スキー場や作品の舞台にもなった、志賀高原スキー場など、俗に「西武系スキー場」と言われる、当時コクドが運営していたスキー場でよくこの光景が見られた。しかし、リフトの混雑などの影響で、東京から比較的近いということから、それまで穴場だった新潟・群馬・長野の各県の他のスキー場にまでこの現象が波及することとなり、各スキー場ではトレイン走行禁止などのルールを作った。とはいっても、今では恥ずかしくてやる人はいないだろうが。 また、この映画はスキーが格好良く感じる部分しか見せていないことに注意しなければならない。劇中に出てくる三上博史演じる、矢野文男のように楽々と滑るには、それこそ長い時間が必要になる。まず最初はリフトなんて乗ってはいけない。斜面の登る為に「カニ歩き」と呼ばれる、斜面に対して体を横向きにし、スキー板のエッジを立てながら歩く基本を学ばないと、色々大変なことになる。当時どころが、映画公開から数年経った後でも、この基本が不十分なスキーヤーが多く、若干坂のあるリフト乗り場で迷惑をかける人が多かった。 このカニ歩きをクリアしても、最初に滑る方法は板をハの字にする、通称「ボーゲン」と呼ばれるプフルークボーゲンだ。これがまた、劇中の颯爽とした滑り方とは違い、鈍重で格好がつかない。当時はロシニョールやK2などの有名メーカーの最新モデルスキー板を買って必死にボーゲンをする姿が見られた。これらの面倒な練習を何度もして、しばらく慣れてからようやく劇中の様にパラレルターンで滑れるようになる。スキーはとにかく面倒なのだ。この数年後、ヘタクソでも、とりあえず様にはなるスノーボードが登場し、ビギナーユーザーはボードにことごとく切り替えたが、そうなるのも仕方ないとは思う。今度はゲレンデの座り込みなので迷惑行為をする事にはなるのだが…。 さらにスキーに慣れて調子に乗って、上級者コースに経験者を伴わず行くとこれまた大変なことになる。上級者コースの最大斜度は30°〜35°、もっと急なコースの場合40°近いものもある。映画ではそれこそ爽快に滑っていたが、ああいうコースはゲレンデの上から見下ろすともはや崖にしか見えない。しかも必ずといっていいほど雪がコブになっている。コース取りを間違えると、そのコブに腰などを強打することになる、これはかなり痛い。自信のない人は迂回路があるので、そこを通って行くのだが、ごくたまに、無謀にも挑戦してスキー板を斜面の終わりまで吹き飛ばす人や、骨折する人などもいた。それこそ、三上みたいな経験者にコース取りを教わらないと、ちょっとスキーに自信のある程度では滑ることもままならない。 しかし、この映画では、スキーの滑走での行動以上に問題な点がある。それは劇中での車のシーンだ。矢野の車が凍った路面に対応出来ず、チェーンを装着するシーンがあるのだが、そこで矢野の女友達が、「所詮四駆の敵じゃないよね」と言い放つ。これには、「雪山なめんな! 死ぬぞ!!」と大きな声でツッコミを入れたくなる。矢野の女友達の愛車は劇中では4WDタイプのスポーツカーという設定になっている。多分常時四輪駆動の「フルタイム式」4WDだと思う。確かに山道には強いが、スタッドレスタイヤを履いているからとは言え、それは滑りにくいだけだ。雪山の悪路を全速力で飛ばすには、それこそWRCレーサー並みの技量を必要とする。しかしこの映画ではかなりの速度で雪山を飛ばしており、当時これを真似して、スリップしてガードレールにぶつけたり、林に突っ込んだ車も多かったのではないだろうかと心配になってしまう。 『私をスキーに連れてって』は、たしかにスキーブームを巻き起こした。映画としても、スキーの演出や、シーンごとに効果的に入れられた松任谷由実の歌などは、この作品を魅力あるものにしている。しかし、華やかな部分ばかり見せすぎて、スキーが結構大変なスポーツであるという、負の部分を殆ど見せていない。まあ、娯楽映画としてはそれで正しいのだが、正しくスキーを理解したスキーヤーが増え、従来のスキーヤーも含めてみんな幸せとならなかったのが、若干悔やまれる。 散々文句をいってきたが、この作品はバブルがとっくに崩壊した後に生まれた人に、ぜひとも見てもらいたい。当時のバブリーなノリについて行けない部分もあるかもしれないが、スキーを含めた当時の熱狂というものを感じられるはずだ。そしてこの作品の話を親に話すと意外とその世代で、スキーを通じて親子関係を深められかもしれない。そしてスキー場に足を運べば、低迷続くスキー業界の活性化にも繋がるので。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年06月15日 12時00分
【コンピューターゲームの20世紀 52】ゲームオーバー画面はプレイヤーのお葬式『たけしの挑戦状』
テレビゲーム史上最悪のクソゲーと評されるアタリ2600の『E.T』。そのリリース年は1982年だから、クソゲーの歴史はかなり長い。「あまりにも売れなくて、アタリ社は埋め立て処分を行った」という都市伝説も誕生するほどのクソゲーだった。 2014年、その真偽を確かめるべく、海外のドキュメンタリー番組を通じて『E.T』発掘作業が行われたのだが、結果、かつて我が国で毎週のように放送された徳川埋蔵金とは正反対に、この都市伝説は事実であることが判明する。アタリショック(北米のテレビゲーム市場崩壊)の間接的要因という称号に加え、またも新たな栄冠を手にした『E.T』。伝説的なクソゲーとして、未来永劫語り継がれることだろう。 さて、同作品は海外製のゲームだが、国産ゲームにおいてもクソゲーは山ほど存在する。自分が子供だった頃をよく思い出してみてほしい。誕生日やクリスマスに買ってもらったゲームに、どれだけのクソゲーが混じっていたかを。当時はそう感じなくても、大人になった今冷静に考えると、「あれはクソゲーだったな」と思うゲームが次々と思い浮かぶのではないだろうか。 ファミコンが大流行していた1980年代は、名作ゲームとの抱合せ販売も決して珍しいものではなかった。結果的にクソゲーを掴まされる機会も増えるわけだが、特に危険なのは芸能人とのタイアップである。その大半がクソゲーといっても過言ではなく、中でもゲーム開発のノウハウがない音楽メーカーから発売されたゲームに限定すると、そのヒット率は格段に上昇する。こういった、子供だましのゲームが80年代には氾濫していたのだ。 しかしながら、今回紹介する『たけしの挑戦状』の発売元はタイトー。『スペースインベーダー』で日本中を席巻し、それ以外にも名だたる名作の数々を世に送り出した、名門中の名門である。開発自体は外注とはいえ、企画会議には当然タイトーの人間も出席しているはず。では何故、あのようなクソゲーを作ってしまったのか。その真相は簡単で、ビートたけし本人が開発に深く携わったからというもの。たけし本人はほとんど記憶にないようだが、打ち合わせの席では、アイデアを次々に出していたと、後年関係者が語っている。本人の意向をないがしろにすることもできず、その多くを採用したところ、とてつもなくカオスなゲームになってしまったのだ。 「赤信号、みんなで渡れば恐くない」「気をつけよう、ブスが痴漢を待っている」等、ギリギリ…というか現在では完全にアウトなギャグを連発し、芸人としてノリにノッていた時代である。当然、本人が出すゲームのアイデアも奇想天外なものばかり。街金業者が入った古びた雑居ビルにパチンコ店、カラオケスナックにヤクザ映画を上映する映画館と、本作の雰囲気はどこか退廃的だ。これも全てはたけしのアイデアを優先させた結果だという。ただ、何となくだが、北野武監督が作る映画の世界観を彷彿させるのがまた面白くもあり、ヤクザが随所に登場するのも、世界のキタノに通ずるものがある。 ちなみにこのゲームでは、全てではないが、点在する街の施設に入ることが可能。カラオケ店では、IIコンのマイクで実際に歌うことができ、そのバリエーションも演歌にポップス、民謡に童謡と多種多様。同様に、パチンコ店では古き良き時代のパチンコを堪能することもできる。 そんな本作は、主人公の職場である「にこにこローン」の社長室からゲームがスタート。ここから先は辞表を提出し、家に戻って妻と離婚という順序でストーリーが進む…のだが、ここまでノーヒント。しかも、妻との離婚はスナックで酔いつぶれて、家に搬送されるという煩雑な手順を踏まなければならない。その他、「宝の地図」の謎を解くために、その場でゲームを1時間放置(=あぶりだし)といったような、自力では到底攻略不可能な謎が幾つも散りばめられている。一応は攻略本が発売されたものの、それを読んでもクリアできない人が続出し、出版社には批判の電話がひっきりなしにかかってきたという。あまりにも数が多いため「担当者は死にました」という前代未聞の言い訳で、この難局を無理矢理乗り切ったそうだ。 数々の伝説を作り上げた本作。発売当時は雑誌のレビューも軒並み低かったものの、たくさんの奇抜なアイデアが散りばめられたゲーム性に先見の明があったということで、今では再評価もされており(クソゲーとして)、バーチャルコンソールでの配信も行われているほど。もし本作が現在の技術で蘇ったとしたら、あるいは『グランド・セフト・オート』のように、世界中で大ヒットする箱庭ゲームになるかもしれない。(内田@ゲイム脳=隔週月曜日に掲載)DATA発売日…1986年メーカー…タイトーハード…ファミコンジャンル…アクションADV(C)TAITO CORP./ビートたけし 1986
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その他 2015年06月12日 12時00分
【不朽の名作】エンタメ要素これでもかと詰め込んだ「二代目はクリスチャン」
映画のエンタメ的な要素をこれでもかと詰め込んだ「二代目はクリスチャン」 1985年公開の『二代目はクリスチャン』といえば、当時はつかこうへい原作・脚本で大きな注目を集めた。そして現在では、映画『パッチギ!』などで知られる井筒和幸監督作品としても有名だ。同作を含め、この時代の角川映画は、もはや語りつくされている感があるが、今だからこそあえて扱いたい。なぜなら、エンタメとしての映画の楽しさを、これでもかと教えてくれる作品だからだ。 そもそも、この作品、ヤクザを題材とした映画なのに、主役が至って普通の教会のシスターが、やがてヤクザの2代目を襲名するというかなり突飛な設定なのだ。いちいち設定に説明をつけようとすれば、無駄な話の多い、とても退屈な作品となってしまう確率が高い。そこでこの作品では、最低限必要な説明だけを、シーンの中に盛り込み、見る側が映像に集中できるような、娯楽作品として演出が光っている。 まず、この作品は1本の映画ではあるが、実は2部構成であることに注意して欲しい。前半は志穂美悦子演じる美人シスター・今日子、そして警察官で実家が仏教寺の神代と、ヤクザの天竜晴彦の三角関係をめぐるラブコメディーとなっている。しかし後半では打って変わり血で血を洗う完全なるヤクザ映画の展開が待っている。たとえばこの作品を連続ドラマでやったとしたら、前半5話くらいはコメディ展開、後半5話が主要キャラに死人続出の、鬱々とした暴力展開の連続となってしまう。たぶん、最初のコメディ展開を好きで見ていた人には「どうしてこうなった?」という疑問しか残らないと思う。しかし、この作品は、限られた時間で物語を伝えることが必要な映画であることを活かし、とにかく見る側が疑問を挟む余地のないほどの、すさまじい勢いでストーリーを展開させる。 前半は、晴彦と子分が今日子の気を引くために、必死にキリスト教を学ぶ姿や、そのことを他のヤクザや、警官の神代にバカにされるシーンなどのコメディ要素が、さりげない背後関係の説明と共にドタバタと展開される。そして視聴者は、前半のコメディノリに笑っている勢いのままに、気がつくと、今日子が結婚式で凶刃に倒れた夫の晴彦のかわりに、天竜組の2代目襲名をするシーンを見ることとなる。ここからヤクザ映画のノリが強くなるのだが、既に他の組との因縁の説明などは、コメディシーン中に済ませてあるため、大きな疑問もなく視聴者は次の展開に引き込まれる。むしろこの2代目襲名のシーンで、今日子の死んだ父親が、神戸の街を救った伝説の侠客だったことが他の組の親分衆から明かされ、その後のヤクザ映画展開がどうなるのかワクワクするほどに。 しかし、後半開始時のここで、この映画唯一とも言っていいタメが入る。今日子がシスターという聖職者であるため、始めは夫を殺した愛人や、その背後にある黒岩会を許そうとするのだ。子分たちもその教えを守り、「右の頬殴られたら左の頬を差し出せ」という聖書の教えそのままに、黒岩会の嫌がらせに耐えるが、黒岩会の行動がエスカレートし、子分たちが次々と凶弾に倒れ、命を散らしていく展開に。最終的に教会にもロケット砲が撃ち込まれ、めちゃくちゃになるが、キリスト像の後ろから父親が残した日本刀を発見し、さあ、復讐だと流れになる。 このタメのおかげで、我慢に我慢を重ねてブチギレた今日子に感情移入ができる。この後のカチコミでは、悲しみと共に、爽快感を覚えることだろう。カチコミ時の今日子を演じる志穂美の、「てめーら! 悔い改めてぇやつは十字を切りやがれ!」のセリフはかなり印象に残るはず。 あとこの作品、出演する役者たちの演技が素晴らしい。突飛な設定と強引な展開の数々に、普通なら胸焼けを起こしそうだが、それもアリな気にさせてくれるほど、キャラが立っているのだ。のんきなボンボンだが、締めるとこは締める、天竜晴彦を演じる岩城滉一。常に軽いノリでズルいが、情には脆い警官の神代を演じる柄本明。敬虔な修道女かと思いきや「私なんて抱かれた男、5人じゃ足りないわ」など、下世話な話を展開する、月丘夢路演じる、今日子の育て親であるマザー・ゴルガンなど、とにかく皆キャラが立っており。飽きさせない展開を提供してくれる。 そんなキャラのなかでも特に印象に残るのが、蟹江敬三演じる天竜組のまとめ役の磯村と、博徒の英二を演じる北大路欣也だ。蟹江の演技は前半のコメディでも光るが、それ以上に後半が凄い。今日子らをかばって倒れるまで、全て見せ場のシーンを、主役を喰う勢いで持って行ってしまう。北大路は、最初から終盤まで、この作品がヤクザ映画であることを確信させるかのように、極道の要素をセリフや動きの端々にこれでもかと見せつける。散り際は特に見どころだ。 個人的な意見だが、この映画には、映画の娯楽としての良さが集約されていると思う。人を楽しますには、まずノリが大事だと教えてくれる。どんな強引な設定だろうが、とりあえず深く考える暇を与えないほどの勢いがあり、役者の技量が高ければかなり面白くなるのだ。そう考えると、最近説明セリフを喋りすぎで、変な風に小難しくなっている邦画が多くなっていないだろうか?(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年06月07日 12時00分
【幻の兵器】当時の日本機としては破格の高性能だった「震電」
戦局挽回の期待を担いながら、不運にもその能力を発揮することが無いまま敗戦を迎えた、いわゆる幻の高性能機はいくつかある。中でも、この震電はエンテという特異な形式を採用したこととあいまって、多くの航空機マニアから特別な存在と認識されている。 もともと、震電の開発は鶴野技術少佐をはじめとする一部の技術者が空技廠内で進めていたもので、あえて言うなら空技廠のプライベートベンチャーであった。そのため1939年に立案された海軍の実用機試製計画には震電となる十八試局地戦闘機がなく、開戦後の1943年にまとめられた陸海軍共同試作機計画にも登場しないが、同時期には航空本部で開発が決定されていたようだ。というのも、同じ1943年にはソロモン方面のガダルカナルから撤退を余儀なくされており、中部太平洋方面にアメリカが拠点を確保した場合、日本本土までもが爆撃圏内に入る恐れがあった。そればかりか、帝国陸軍情報部が予想した米新型爆撃機の性能を考慮すると、当時の日本には陸海軍のいずれにも迎撃可能な戦闘機が存在しておらず、一刻も早く高高度迎撃機を開発する必要があった。 しかし、当時の日本には高高度飛行に不可欠である実用的なターボ過給器エンジンが存在していないなど、開発には大きな困難が予想された。そのため、これまでの常識にとらわれない、革新的な迎撃機を開発せねばならないとも考えられていた。もちろん、エンテ形機は革新的な迎撃機となりうる可能性を大いに秘めており、開発に期待を寄せる関係者もいたが、他方であまりにも革新的過ぎる形態であるがゆえに、実用化を危ぶむ声も少なくなかった。 翌44年になり、ようやく十八試局地戦闘機として九州飛行機へ開発が内示されたが、戦闘機の開発経験が全く無い九州飛行機へ開発を内示したのは、三菱や中島といった主要メーカが軒並み多機種の開発や現用機の改良で手一杯だったためで、空技廠自体も既存機の改良で多忙を極めており、開発余力が無かったというのがその理由であった。 要求と同時に正式名称も「震電」に決し、通常ならば設計段階だけでも1年半はかけるところを、わずか3か月で終了させるというスケジュールに対して、九州飛行機のスタッフは文字通り不眠不休の突貫作業で応えた。そのかいもあって1944年11月には試作機の製作に着手するなど、基本的には順調に開発が進行していた。だが、開発作業はしばしば空襲によって中断を余儀なくされ、下請けに発注した各種電装品などの重要部品も生産が滞りがちになった上、同年12月に発生した東南海地震によって名古屋の三菱が被害を受け、エンジンやプロペラの生産も滞るという事態に直面した。 しかし、翌年には6月にはついに原型初号機が完成し、翌7月末には鶴野技術少佐自らが操縦桿を握って最初の飛行試験も行われたが、地上滑走中にプロペラを破損して飛行は中止された。不幸中の幸いだったのは、既に工場には完成間近の原型2号機と3号機があったため、プロペラを取り寄せられたことだった。修理が終わった初号機は無事に飛行したが、残念ながら全力飛行試験は実施されないまま敗戦を迎えた。肝心の速度性能については未知数のままとなったが、試験段階で特に目立った問題も見つからなかったため、実用性に関しても大いに期待の持てる機体だったとされている。 ただし、問題は実際に予定性能を発揮できたかどうかで、率直に言って悲観的にならざるを得ない。特に問題なのはプロペラ効率が著しく悪化している可能性が高いことで、主翼後縁から発生する乱流がプロペラの吸い込み効率を下げているうえ、小直径のプロペラで大馬力を吸収するため六翅としたこともあり、エンジン出力の割に推進力は低かった可能性が高いのだ。よく、エンテ形の利点としてプロペラを推進式に配置することが容易で、推進式プロペラは後流が機体によって妨げられないため効率がよいとされるのだが、後流が妨げられない代わりに吸い込み効率が悪化するため、よほど機体や主翼の設計に配慮しない限り、後流による効率上昇分を上回る損失が発生するためである。 結局、ひいき目に見ても速力は600キロ台の後半から700キロそこそこに落ち着いたのではないかと思われるが、もちろんそれでも日本機としては破格の高性能であり、実戦に参加していれば30ミリ機関砲の威力とあいまって、戦史にひとつのエピソードを提供しただろう。 結局、震電は全速飛行試験を実施しないまま敗戦を迎え、資料の大半は焼却、廃棄されたほか、完成間近だった原型二号機と三号機も破壊された。ただ、原型初号機のみはアメリカ軍に接収され、現在はアメリカ国立航空宇宙博物館のポール・E・ガーバー維持・復元・保管施設にて分解状態のまま保存されている。(隔週日曜日に掲載)
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その他 2015年06月05日 12時00分
【不朽の名作】当時のサッカーへの熱狂ぶりを感じられるSMAP出演「シュート!」
若手のアイドルグループが出演する映画というのは、そのグループのPV的な要素も強い。今回紹介する1994年公開SMAP出演の『シュート!』も、マンガ作品として、同名の原作が存在するが、原作再現というよりはSMAPのメンバーの魅力をアピールするPV作品のような形となっている。しかし、この映画、現在では別の意味で魅力あるものとなっている。同作はサッカーを題材にした作品で、公開された前年は国内サッカープロリーグ「Jリーグ」の創設年にあたる。その関係もあり、当時のJリーグを含む、「サッカー」という世間的には得体の知れないスポーツへのイメージや、熱狂がどういったものかを教えてくれものとなっている。それに加え、現在はオートレーサーとして活躍している元メンバーの森且行も出演しており、6人での出演という貴重な映画でもある。 まずストーリーについてだが、原作でいうところの第一部序盤の山場、久保嘉晴による「奇跡の11人抜き」の後、久保が白血病で亡くなり、主人公のトシこと田仲俊彦が、10番を受け継ぐまでの話となっている。映画ではトシを中居正広が、久保は木村拓哉が演じており、評価はともかく、11人抜きのシーンも再現されている。 原作は「少年マガジン」誌連載だった影響か、当時のマガジンの特徴とも言えた、ヤンキー要素が若干はあるのだが、映画はそれとは違うなにかを感じる。登場人物がほぼ高校生だけのはずなのに、どことなくバブルの匂いがただようのだ。これは当時の人が特にJリーグのサッカー選手に感じていたイメージかもしれない。 例を出すとすれば、当時ヴェルディ川崎に所属していた武田修宏のような選手の存在だ。武田は雑誌の特集にスーツ姿で登場し、サッカーの他に、ファッションや、遊びについて語るインタビューが当時かなりあった印象がある。現在横浜FC所属の三浦知良選手や、サッカー解説者の北澤豪なども華やかではあったが、その中でも特に武田は、試合でのプレイ以外の面で、サッカー選手の華やかさを象徴していた。それこそ、今の方がサッカーの話をしているような気がするほどに。 この映画では、その華やかなイメージを高校生である、SMAPの6人が演じる主要キャラクターたちに与えている。例を挙げれば高校生にもかかわらず、バーで酒を飲むシーンや、オシャレなビリアード場で、ゲームをする姿などだ。原作でも多少は飲酒のシーンはあるにはあるのだが、普通の居酒屋で場末感があって、こんなにオシャレではなかった。こういったところで、「夜遊びがオシャレ」という当時のサッカー選手にイメージを感じることができる。この数年後には、テレビのインタビューなどで、多くを語らない中田英寿氏など選手の登場で、サッカー選手にストイックなイメージがついたが、創立当初とにかくアイドル扱いで、全体的に遊び人な印象が強かったのではないだろうか。 さらに、本編では、当時は大ブームだった「ジュリアナ東京」に行くシーンや、コンドーム専門店「コンドマニア」と思われる店舗に高校生だけで行くシーンなどもある。今考えると、よく設定が高校生で、しかもアイドル映画だった本作に、飲酒シーンや夜遊びのシーンにOKが出たなと思う。今だったら確実にネットは炎上するかと。ちなみに、この数年後に放映された『スワロウテイル』などでは、子供が偽札を使うシーンが問題となって、映倫がR指定をかけている。映倫の判断基準がいまいちわからない。 はっきり言ってサッカーをまじめにやっている人が見れば、「サッカーなめてるのか?」と怒り出しそうなシーンがこの映画には多い。しかし、当時の状況を考えると、これは仕方ないかと思う。Jリーグ元年までは、多くの人にとって未知のスポーツと言えたのだから。例えば、稲垣吾郎演じる、ライバル校のエース・馬堀圭吾の凄さを表現するために野球ボールでリフティングをするシーンなどは、当時サッカーよく知らない人に技術の高さを感じてもらうために、必死で考えたのではないのだろうか。今なら「それ関係ないだろ」とツッコミが入りそうだが、当時は説明セリフを作るにも受けて側に知識が少なかった人が多かったのだ。 また、本編中にあるヴェルディ川崎と清水エスパルスの試合のシーンは、別撮りではあるが、Jリーグ創設期の熱気あふれるスタジアムの雰囲気よく感じることができる。現在でも浦和などに行けば、同様の熱狂を見るだろうが、この当時はJリーグが地域密着体制に変わる前で、プロサッカークラブがない地方でも、全国規模でこの熱狂があったのだ。さらに、このシーンでは、当時ヴェルディ川崎の10番だったラモス瑠偉が、用具入れに忍び込んで試合を観戦していた、トシらを叱るシーンなどもある。演技はともかく、この時のラモスの背中には注目だ。当時の報道ではあまり見ることができなかったサッカーにかけるストイックな姿を、この背中が無言で表現していると言ってもいい。しかしこれらのシーン影響か、肝心の本編は、インターハイ準決勝までをバッサリとカットしてしまっているので、原作の展開を見たかった人には不満かもしれないが。 作品全体として本作は、Jリーグが始まったことによる、サッカーに対しての熱狂ぶりというのもかなり感じる作品だ。また、まだ駆け出しの頃のSMAPを知るアイドルPV作品としても、効果的に当時の楽曲が挿入歌として入っており、最良の出来ではないかと思う。ひとりだけライバル校の選手という都合上、稲垣の出番だけ極端に少ない点は気になるが。他にも、注意して見ていると、後にV6としてデビューする井ノ原快彦や長野博、KinKi Kidsのふたりなども確認できるので、その辺を楽しんでもいいかもしれない。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年06月01日 12時00分
【コンピューターゲームの20世紀 51】最後までだれない奇跡のゲームバランス「水滸伝 天命の誓い」
水滸伝は中国四大奇書の1つに数えられる物語で、宋代の腐敗した政権に対する好漢達の反抗が描かれている。主人公達は108の魔星の生まれ変わりとされており、中国各地で悪官吏に貶められ犯罪を犯した者たちが梁山泊と呼ばれる水塞に集まっていく。その過程が物語の中心なのだが、忠義を美徳としている三国志などとはかなり価値観が異なっており、好漢達はかなり自由でモラルも低い。これをどう捉えるかは人それぞれだが、興味を持った方は一度読んでみることをオススメする。 本作は水滸伝の物語をテーマにしたシミュレーションゲーム(SLG)。同ジャンルを得意としていた光栄から発売されている。しかし、一般にも知名度の高い『信長の野望』や『三國志』シリーズと比べると本作はマイナーな存在で、セールス的にも振るわなかったようだが、プレイヤーからは高い評価を得ている。その要因は原作がフィクション(部分的には事実も含まれているらしいが)であることから、歴史的事実に囚われない自由な作風が可能であったことによる。また、一介の好漢達が国を動かすほどの人気と力を得ていった経過が上手く再現できていることもあるだろう。そして、何よりもその全てが絶妙なゲームバランスのうえに成り立っていることが素晴らしい。数多く存在する光栄のSLGの中でも、本作は最高峰ともいえる完成度を持っているのだ。 『三國志』や『信長の野望』で主人公となっているのは各地を治めている君主(大名)であり、領地からの収入があれば付き従う武将や兵士も存在する。そのうえで同等の立場である他の君主を倒して天下を統一すれば目的達成というシステムが採用されている。しかし、本作では選択可能な主人公(好漢)のほとんどは罪人であり、逃亡者として転々としている。彼らには治める領土もなければ配下の武将もいない。まさに己の身一つでゲームが始まるのである。 それに対し、本作の最終打倒目標である高俅(こうきゅう)は中国大陸の大部分を治め(宋の皇帝を丸め込み政権を牛耳っている)、兵力・配下の数・経済力で圧倒的な存在だ。この一見無理目な設定こそが本作のおもしろい部分で、プレイヤーは逃亡先の空白地で旗揚げし、奉仕を行うことで人気を得てようやく一地区の支配者として認められる。その後は支配地を広げながら人気を得て仲間を増やしていくのだが、先にも述べたとおり本作の目的は全国統一ではなく高俅の打倒である。そのため領土を広げるのは目的ではなく人気を得るための手段になっている。そのため、辺境の地まで足を運び版図を埋めるという作業は必要がない。それどころか無駄な領土の拡大によって高俅の支配地と接すれば賄賂を要求され、断れば官軍による討伐を受けてしまうのだ。 光栄のSLGの欠点はプレイヤーが一定の勢力になる頃には国力が他を圧倒し、以降のゲームが作業になってしまうというものがある。しかし、本作では先述のように全国統一の必要はない。しかも初めから国力差が大きいこともあり、プレイヤーがそれなりの版図を得てようやくCPUと同等になれる具合。こういった理由から本作は最後まで緊張感を持ったプレイが可能で、作業感がかなり薄くなっている。そのうえ、本作には時間制限もあるのだ。史実では宋(北宋)は1126年に金(満州地域にあった女真族の国家)に滅ぼされるのだが、本作でも同様の年代に到達すると金の侵攻によりゲームオーバーとなってしまう。この仕様も緊張感を途切れさせない一因になっている。また、SLGにつきものの戦闘シーンも特徴的で、季節によってマップに変化が起こるなどの工夫が取り入れられており、飛び道具・一騎打ち・火計・妖術など多彩な攻撃方法も戦闘を盛り上げる。これが今から四半世紀以上前に制作されていたのだから驚きだ。 本作はとにかくSLGファンには是非とも遊んでほしい作品で、かなり古いゲームながら面白さは保証付きである。本来はPC-88などで発売されていたゲームだが、ファミコンやPSにも移植されておりWin版も存在する。そのうえ、コーエーのゲームシティではブラウザ上でのプレイも可能になっている。便利な時代になったものだ。 余談だが本作には続編『水滸伝・天導一○八星』も存在し、こちらも傑作としてファンから高評価を得ている。同作ではリアルタイム性と箱庭マップを採用し、後のコーエーのSLGの方向性を先取りした形だ。ただ、こちらはコンシューマー移植のセガサターン版とPS版がともに簡易版になっており、オリジナルのWin版は入手しにくく現行のOSでの動作(XPでは動く)も保証できない。マイナー作品ゆえにリメイクや現行ハードへの移植も期待できないのは残念なところだ。(須藤浩章=隔週月曜日に掲載)DATA発売日…1988年メーカー…光栄ハード…PCジャンル…シミュレーション※写真はPS版のものです(C 1988 KOEI CO.,LTD.)
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その他 2015年05月29日 12時00分
【不朽の名作】いろんな意味で“迷作”の「北京原人 Who are you?」
はじめに断っておくが、この作品、どう考えても「不朽の名作」ではなく、「迷作」にあたるものだ。タイトル名は『北京原人 Who are you?』。1997年放映で、製作総予算は約20億円。東映、テレビ朝日、バンダイ、東北新社が共同製作にあたり、なぜこの作品を作ったのか? 未だに疑問の多い作品だ。 作品の話をする前に、サブタイトルの「Who are you?」について、ちょっと説明したい。実はこのサブタイ、放映当時は重要な意味を持っていた。当時は北京原人を誰が演じるかが伏せられており、映画公開までお楽しみとなっていたからだ。ちなみに、公開前に北京原人役の1人である、俳優の本田博太郎がトーク番組中に暴露してしまったことでも話題に。さらにどうでもいい情報かもしれないが、子供の北京原人役は、現在は、アニメ『黒子のバスケ』の黒子テツヤ役などで知られる、声優の小野賢章が演じている。 あらすじをざっくり解説すると、第二次大戦中に密かに中国から日本軍が回収した北京原人の化石のDNA使って、現在の日本でクローンを生み出すというもの。そこに、情報キャッチした、中国やアメリカも介入し、各国の思惑が交錯する中、緒形直人が演じる佐倉竜彦たち研究員が、どう北京原人に向き合うかという作品になっている。 そもそもこの作品、まじめに見ることはおススメできない。普通に見ようとすると高い確率で寝てしまうからだ。実際に筆者も過去に2回ほど途中で寝オチしている。しかし、「北京原人」という謎の多いテーマに挑んだ作品としては注目するべき点もある。実は、現在の人類を含むヒト属の研究というのは、恐竜以上に進んでいない。化石の発見数がとにかく少ないからだ。現在、北京原人が属する種と言われているホモ・エレクトスの化石数は、ビル・ブライソン著の『人類が知っていることすべての短い歴史』の言葉を借りれば世界中の化石をかき集めても、「スクールバス1台分(の人数に)に満たない」そうだ。それっぽい設定を作るのにも、化石研究なので情報が豊富な恐竜を扱った『ジュラシックパーク』よりもはるかに難しいのだ。 また、当時は、現在主流の、アフリカで20万年ほど前に旧人から進化した新人が、約6万年前から世界中に拡散した「出アフリカ説」の他に、原人が180万年ほど前にアフリカから出て、ユーラシア各地で進化したという「多地域進化説」というものそれなりの支持を受けていた。映画では「多地域進化説」に習って、北京原人がモンゴロイドの進化に関係していたという確信の元、ご先祖様の生態を知るために、再生実験が行われる。しかし、現在では、DNA研究などでこの今の人類と北京原人は全く関係ない種という結果がでている。というわけで、現在の説ではこの映画の目的自体が無意味になってしまうのだが、一応、今後作られることはないであろう意欲作とは思う。なので、どうしても最後まで観賞したいという人には、寝オチしないよう、無理にストーリーを追わずに、「笑い所」や「ツッコミ所」を探すことをオススメする。いくつか例をあげるので参考にしてほしい。 まず序盤だが、研究所の責任者である、大曽根を演じる丹波哲郎のヅラがものすごく気になる。前髪の縮れ具合が不自然すぎる。それに加え、佐藤蛾次郎のアフロ頭(こっちは自毛)まで登場して、北京原人の計画とはまた別の、マンモス再生実験の話までしだすので、色々気になりすぎて話が整理できなくなってくる。しかし、それで正しい。この設定は聞いてもあまり意味はないので。序盤はとにかく丹波哲郎に注目して欲しい。ノリノリで演じているので、見所満載でかなり笑えるキャラになっている。特に、北京原人の再生実験がひとまず成功して「いよいよ人間が神になる! 神になるぞー!」と叫ぶシーンでは、よく創作物で出てくる悪人ではないが、どうしようもない学者像というのをよく表現している。 肝心の北京原人再生計画なのだが、宇宙に行くというよくわからない方法で行う。どうやら「時間変異プロジェクト」という謎プランで、北京原人の成長を早める為に宇宙に行く必要があるらしい。ここでは無重力のシーンに注目しよう。ワイヤーで人を吊るしているのだろうが、結構それっぽくなっている。ちなみに、ここで国産スペースシャトルとして出てくる「ホープ」は資金難で計画倒れとなったが、実際に航空宇宙技術研究所(現在はJAXA)で計画のあった機体だ。もっとも、有人ではなく無人を想定して計画をされていたが。 さて、この映画一番の注目がこの宇宙での北京原人再生成功の後、事故で沖縄の離島に原人たちを乗せたベビーシャトルが落下した時のシーンだ。ここで緒形直人扮する佐倉竜彦が、同じ生き物であることを見せて原人を保護するために、なぜかパンツ一丁になる。理由は落ち着かせるためらしい。「いや、お前が落ち着けよ」とツッコミたくなるが、この後、「私も」と助手の竹井桃子役の片岡礼子まで上半身裸になる。そのおかげで、オッパイ丸見えの状態シーンがしばらく続くので、ここで男性は凝視して眠気を覚まそう。 この辺りを過ぎると、思わずツッコミをしたくなるような、気になる展開が満載で、逆に最後まで観賞したくなってくることだろう。まず男性・女性・子供の3人の原人に竹井が「タカシ、ハナコ、ケンジ」とそれぞれ適当な名前をつける。もっとちゃんと考えた方がいいのではと思っていると、今度はタカシに竹井がレイプされそうになる。この後の大曽根のセリフに注目だ。「なんで逃げてきた! もし子供ができれば彼らが我々の祖先だということが証明できるんだぞ!」とトンデモないセリフを吐く。いくらなんでもひどすぎる。 この後もギャグでやっているとしか思えない展開が続く。研究所が、実業団の陸上競技大会に北京原人のタカシ・ハナコを出場させるという暴挙に出るのだ。もう、ちょっとどころではないおかしさだ。笑いどころとしてはかなりの破壊力がある。さらにここで、中国政府が絡んできて北京原人は中国のものと主張し、タカシとケンジをさらってしまう。その途中、中華街で引田天功のマジックショーがあり、北京原人消失イリュージョンをやるなど、意味不明な展開が続く。 いろいろすったもんだの末、舞台は中国に移る。撮影スタッフが万里の長城を撮りたかっただけなのではという疑問もあるが、ここで何を思ったのか、ケンジが叫んで、序盤の話で出たシベリアの再生マンモスが中国に向けて激走する。テレパシー的な何かに反応したのか、マンモスが逃げ出した理由は謎だ。そもそもシベリアからどう中国まで行くのか、そんな疑問の説明もある訳なく、最後はそのマンモスと一緒に北京原人たちは、化石が発見された山に帰ってしまう。しかも佐倉の「あそこには本当の自由があるんだ」という独断で。 散々大規模に意味のわからない展開を続けてこんなオチである。ストーリーは追わない方がいい。しかし、今だからこそ、この映画は地上波で放送すべきだと主張したい。あまりのツッコミ所の多さに、Twitterやネット掲示板で行われる、複数参加の番組実況ならばかなり盛り上がるはずだ。(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)
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その他 2015年05月24日 12時00分
【幻の兵器】酒席のノリで命名され神のお告げで初飛行に失敗した試作戦闘機「三菱・秋水」
秋水とは文字通り「秋になって澄み渡る水」の意で、季語として歳時記にも収録されている。また、それから転じた「三尺の秋水」という言葉もあるが、これは刀身が三尺(約90センチ)もある野太刀や大太刀を澄み切った水になぞらえた表現だった。そのため、最近ではマンガやゲームの登場人物が用いる最強クラスの武器に「秋水」と名付けられることもあり、現代ではむしろそういったイメージが強いかもしれない。 本機の名称も澄み切った名刀であり、同時に最強武器としての秋水から採られている。命名のきっかけとなったのは、軍や開発関係者が参加した懇親会の席上で披露された短歌に「秋水三尺露を払う」とあり、感銘を受けた一同が「秋水」と名づけたとされる。ただし、先の歌は下の句のみで上の句はわからず、しかも字足らずというところが、いかにも酒の席という雰囲気を伝えている(別に「秋水一閃驕敵を撃つ」との歌も伝わっており、こちらだと字数は合うものの、やはり上の句は不明)。また、機体そのものの性格や開発経緯にも、そういったやや中二病的なイメージがつきまとい、やがて悲劇的な結末を迎えることとなる。 まず1944年(昭和19)にドイツ駐在武官だった巖谷英一中佐が、ドイツのロケットエンジンに関する資料と共に潜水艦で帰国、技術情報がもたらされた。その少し前に、陸海軍は高高度を飛行する米新型爆撃機の情報を入手していたが、当時の日本には迎撃可能な戦闘機が存在しておらず、速やかに強力な高高度迎撃機を開発する必要があった。しかし、当時の日本には高高度飛行に不可欠である実用的なターボ過給器エンジンが存在していないなど、開発には大きな困難が予想された。そのため、これまでの常識にとらわれない、革新的な迎撃機を開発せねばならないとも考えられていた。 そこで、ドイツからもたらされたロケット機をコピー生産することとなり、これが後に秋水と名付けられたのである。しかし、図面などの詳細な資料は日本へ到着する前に失われたため、外形図やロケットエンジンの取扱説明書などから、手探り状態で開発することとなった。機体の新鋭機とあって、三菱が中心となりつつ陸海軍に理研なども協力する、挙国一致とも言える体制を敷いて開発にあたった結果、翌45年には試験飛行にこぎつけるという進捗ぶりだった。 しかし、国産ロケット機の記念すべき初飛行は、不可解かつ不合理な要因で悲劇に見舞われることとなる。飛行試験を行う海軍三一二航空隊の柴田武雄司令は、神のお告げにしたがって試験飛行を狭い追浜で行うこととし、技術者の反対を押し切って機体を軽量化、燃料まで最小限とした。それでも45年7月7日の初飛行では離陸に成功、上昇を開始した段階で関係者は成功を確信した。しかし、上昇中にエンジンが停止、再起動できないまま不時着に失敗、機体は全損してテストパイロットも殉職という、最悪の結末を迎えた。 事故の原因は燃料を最小限にしたことと、燃料タンクの構造にあった。エンジンへ燃料を送る管を前方に取り付けていたため、満載しないと上昇中に燃料が偏ってしまい、エンジンへ送り出せなくなる。そしてエンジンが停止、墜落したのであった。燃料タンクの構造は元型のMe163Bと同じで、ドイツにおいても同様の問題が発生していたという。とはいえ、神のお告げで燃料を減らさず、技術者が主張した通りに満タンで試験していれば、この事故は発生しなかった。そのため、お告げがなければ無事に試験飛行を終えた可能性が高い。 その後、関係者は別の機体を準備していたが、エンジンが完成せずに敗戦を迎える。日本唯一のロケット推進戦闘機は、ドイツの模倣と呼んでも差し支えない機体だったが、占領軍には極めて強い印象を与え、米本土で詳細な調査を受けた。機体は保存され、現在は米加州のプレーンズ・オブ・フェイム航空博物館に展示されている。 とはいえ、やはり本機は単なるドイツ機の模倣に過ぎず、もし量産されたとしてもドイツと同じ問題に直面したのは間違いない。迎撃可能空域は発信基地付近に限られ、たとえ敵編隊に遭遇出来ても、文字通り一撃を加えるのがやっとで、迂回されれば手も足も出ないのだ。しかも、レーダー警戒網が整備されていたドイツとは異なり、日本では敵編隊の早期発見、監視すらままならなかったのだから、遭遇出来たかどうかすら怪しいのだ。そして、そのことは運用部隊でも十分に認識されていたようで、試験段階から体当たりあるいは自爆攻撃を目的としていたとの証言もある。 酒席のノリで秋水と命名された戦闘機が、神のお告げで試験に失敗したというのは、当時の日本を象徴していたようにすら思えてしまう。(隔週日曜日に掲載)■試作戦闘機「三菱・秋水」 形式:戦闘機(性能は予定、推定値)動力:特呂二号ロケット推力1,500kg1基寸法:全幅9.5m・全長5.95m・全高2.7m・翼面積17.73(平方メートル)重量:全備重量3870kg乗員:1名性能:最高速度888km/h・航続時間数分武装:30mm機関砲2
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