腎不全とは、体の中の余分な体液を、尿として体外に出す腎臓の働きが悪くなった状態を指す。金森さんの場合、体の中に過剰な体液が増え、血管の外にも多く溜まるようになってしまったため「むくみ」が発症したのである。
腎不全は、放置すれば「むくみ」どころか重大な病気につながる恐れもある。ゆえに、しっかりとした治療が必要だ。「むくみ」の原因となる病気は、他に高血圧などが挙げられるが、その背景にあるストレスも無視できない。
東京社会医学研究センターの村上剛志主任はこう言う。
「血圧が高い状態が続くと腎臓の働きが悪くなり、排出できる塩分量が減り、体の中に塩水が溜まる。これが“足のむくみ”を引き起こします。それに、サラリーマンの多くが抱えるストレスが加われば血圧も上がる。酒を飲む人だと、どうしても辛いもの、塩分を摂り過ぎるから、高血圧だけでなく動脈硬化を進める結果にもなります。さらに肥満でも重なれば、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる重大な病気につながり、リスクは一層高まります。心当たりのある方は、注意が必要です」
「むくみ」といっても、心臓や腎臓、肝臓など全身的な病気がともなっている場合は、当然そちらを優先的に治療する必要がある。だが、内臓器官にこれといった大きな障害がない場合でも、前述したように「むくみ」は起きる。それをどんな方法で防ぎ、対処していくか。何はともあれ血行を良くすることが大事、と前出の村上主任は言う。
「一般論になりますが、運動不足の人は足の筋肉も弱ってしまっている事が多い。その場合、足の筋肉ポンプ効果が十分得られず血行が悪くなります。調理師や販売員など、いわゆる立ち仕事をする方は足のむくみに襲われることが多いですね。自宅に帰ったら、足の血行を良くするための青竹踏みもいいでしょうし、足湯に浸かるのもいいと思います。また、軽いストレッチをしたり、マッサージをしたりして、むくんだ部分の筋肉をほぐしてあげるのも効果的。散歩をしたり、なるべくこまめに体を動かすように心掛けることが大事です」
“筋肉ポンプ”という言葉が出てきたが、これは静脈やリンパ管の働きを助けるものだ。
例えば、足の皮下組織に体液が溜まっている場合、患部を表面から弾力性のある包帯や靴下、下着などで圧迫する。そのように皮膚を固定した状態で運動すると、筋肉と一緒に包帯や靴下で挟まれた皮下組織を押上げるため、リンパ管に“筋肉ポンプ”のような効果が働くようになる。
専門医によっては、薬剤治療よりもこうしたバンテージを使った筋肉運動を勧めている。筋肉そのものの動きだけでは、効果が出にくい場合があるからだ。
いずれにしても、次のような症状があるときは、大きな病気のサインであることが多いと肝に銘じることだ。
(1)足だけでなく、全身にむくみが出てきた場合。
(2)足のむくみが起きると同時に、動悸や息切れを感じる場合。
(3)全身にむくみが起きると同時に、お腹にも水がたまる場合。
ここまで読めば、たかが「むくみ」とはもう誰も思わないだろう。