A:ご質問の方は、歯科でいう歯肉退縮の状態です。歯茎がやせて、下がってきたのです。歯は歯槽骨という骨に支えられていますが、背景として歯槽骨も退縮しています。
その主な原因は歯周病ですが、加齢によっても骨はやせてきます。他にも、不正咬合(噛み合わせの異常)、歯の治療中に歯茎を切ってしまった場合、誤った歯磨き法なども挙げられます。
●背景に歯周病
誤った磨き方で、しかも強い力で磨くのが習慣だと歯茎を傷つけます。しかし、歯茎が退縮するほどのダメージを与えるのは希です。中には電動歯ブラシが歯茎退縮の原因になったと思う人がいるようですが、正しく使っている限り、その心配はありません。
ご質問の方の場合、抜歯後に義歯を入れ、歯並びを整えたら、その後に歯茎が下がってきたとのこと。実際、こういうケースはあるものです。
理由としては、治療の段階で背景に歯周病があったことと、抜歯をしたことが影響していると思われます。
抜歯をすると歯茎の神経も働かなくなり、血流も悪くなるので歯茎が活力を失います。歯を支える骨がやせ、歯茎が退縮し、歯が長くなったように見えるのです。
●歯茎の押圧法
歯茎の退縮については、他の部位から取ってきた歯肉や結合組織を移植する手術があります。しかし、しっかりと定着させることは難しく、お勧めできません。
基本的には下がってしまった歯茎を元に戻すことは難しいと言われますが、ご質問の方の場合、程度は軽いようですし、回復が絶対に不可能とは思いません。防止対策を実行すれば、少なくとも、今よりも悪化することは防げます。
ご自分でできる対策法としては、歯茎の指圧やマッサージをお勧めします。もっとも簡単なのは、歯茎を前後から親指と人差し指ではさみ、押圧する方法。ギュギューッと5秒間程度力を加えて押圧し続けたら、指を離します。これを3〜5回ほど繰り返しましょう。
歯磨きの時に、この押圧法を行うのを習慣にすると効果的です。歯茎の血行が促進され、血色がよくなります。
もう一つ、よく噛んで食べることも歯茎の活性化に役立ちます。歯や歯肉も体の一部。全身の健康状態を良好に保つことも大事なのです。
山田 晶氏(飯田橋内科歯科クリニック副院長)
骨盤療法(ペルピックセラピー)で著名。日本歯科大学卒業。歯科の領域から骨格に関心を持ち、骨盤のゆがみに着目。骨盤のゆがみを自分で取る方法として、腰回しの普及に努めている。