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【コンピューターゲームの20世紀 53】斬り合いゆえの一撃必殺性「サムライスピリッツ」

 『サムライスピリッツ』は1993年にSNKから発売された対戦格闘ゲーム。同社はカプコンと並ぶ格ゲーの老舗メーカーだが、当初はその2社の差は非常に大きかった。1991年3月にカプコンから『ストリートファイターII』が発売され、その8か月後の11月にSNKから『餓狼伝説』が発売される。この2作品は格ゲー黎明期を代表するゲームとして有名だが、両作品をプレイしてみると、その大きな差に驚く。はっきり言って操作性からゲーム自体の奥の深さ、グラフィックまで全て『ストII』の方が勝っている。その後、SNKは『餓狼伝説2』『龍虎の拳』と立て続けに格ゲーを制作するが、その差はなかなか埋まらなかった。

 しかし、1993年に発売された『餓狼伝説スペシャル』の人気が爆発。同作は粗が多い作品だが、キャラの多さや派手な技、そしてヤケクソ的な連続技など爽快感あふれるゲームであった。そして、この年になって初めてSNKは名実ともにカプコンと二大巨頭を形成し、以降の格ゲームーブメントの中心となっていった。

 本作はそのSNKの躍進を支えたゲームで、武器を使った格闘という新ジャンルを(前年にアルュメから『ブランディア』が発売されているがあまりにマイナー)切り開いた作品。忍者や侍、騎士などが戦う独自の世界観で人気となった。ただ、本道ともいえる『餓狼伝説』が必殺技を中心に戦うスタンダードな作品なのに対し、本作の必殺技はかなり使い勝手が悪く、飛び道具で飛ばせて対空技で落とすといった戦いはやりにくい。その代わりに攻撃の中心となっているのが各キャラの武器を使用した「斬り」攻撃なのである。基本的に本作の蹴り攻撃は判定が強い代わりに威力が弱くなっており、主力になり得るのは一部のキャラのみとなっている。格ゲーで最も有効な攻撃の1つである足払いも万能ではなくなっているのだ。また、斬り攻撃の中でもボタン同時押しで出せる強斬りは威力が絶大で、これを決める快感から本作のファンとなったプレイヤーも多い。こういった特性に加え、ジャンプの軌道が緩やかで遅いキャラが多いため、必然的に地上での斬り合いの機会が増える。ゲームとしての特性をシステム面が後押ししている形だ。SNKらしいキャラ設定の上手さも充分に生かされている。

 と、ここまでは手放しで褒めてきたが、問題も少なからず存在する。飛び込みが弱く必殺技が使いにくい本作では相手に待たれると、それを崩すのが難しいのだ。もちろん工夫次第で何とかなる問題ではあるものの、待ちが有利なゲームとプレイヤーに認識されたのは大いなマイナスポイント。斬り攻撃の当たり判定が独特で、特にジャンプ攻撃がスカってしまうのもプレイヤーを困惑させた。また、CPU戦の難易度が高すぎなのも困ったことで、これは後の格ゲー全般で問題になっていったことでもある。これらの欠点により、特に稼働初期に本作のイメージはあまり良くないものと認識されてしまい、結果として評価の割にはヒットに繋がらなかった。ただし、ゲーム性を正しく理解できたプレイヤーからは高く評価され、それが続編『真・サムライスピリッツ』のヒットに繋がった。派手なコンボ技などはほとんど存在しないが、真剣による一撃必殺の快感を持つ本作は、乱立する格ゲーの中から生み出された一種の奇跡。このゲーム性が後世には伝わらず、格ゲーがコンボ重視のマニア御用達ゲームになっていったのは非常にもったいなく感じられてしまう。

(須藤浩章=隔週月曜日に掲載)

DATA
発売日…1993年
メーカー…SNK
ハード…アーケード
ジャンル…対戦格闘ゲーム
(C)1993 SNK CORPORATION

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