スポーツ
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スポーツ 2015年11月29日 14時00分
プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(4)
「NPBの編成は、これまでの普段の試合から見てくれています。トライアウトで抑えた、ヒットが出たとか関係ないんですね。まだ動ける、体のキレもあるんだ、というところが見せられれば…」 そう話す受験選手も多かった。しかし、一般論として、トライアウト選手にお声が掛かるのは、一番最後である。ドラフト、FA、外国人選手の獲得、トレードを終え、予定していた補強ができなかったとき、初めてトライアウト選手に道が開かれるのだ。 彼らの野球に対する思いは熱いが、ドラフトから始まる来季への補強の順番を変えてまでして獲得したい選手が現れないのも、また現実である。 プロ野球解説者で、石川ミリオンスターズの取締役も務める佐野慈紀氏が視察後、こう語ってくれた。 「僕は受験選手にはもっとアピールしてほしかったと思いました。ピッチャーも打者3人にしか投げられませんが、もっと投げさせてあげたら、また違ったものも見えたと思う」 佐野氏の所属するBCリーグからは、今年のドラフト会議で10人近い選手が指名された(育成を含む)。石川で復調した西村の例もある。今回の視察には選手補充の意味合いもあったはずだが、こうも語った。 「西村には頑張ってほしい。だけど、ウチが受験選手を獲るのは最後のほう。NPBから独立に流れて、またNPBに復活した選手は皆無に等しいし、覚悟がないとダメ。だからこそ、受験選手には頑張ってほしかった」 2年連続のトライアウト受験となってしまった北方悠誠(21)が言った。 「むしろ、海外でやってみたい」 北方は昨年オフ、DeNAを解雇されたが、福岡ソフトバンクホークスの育成枠で拾われた。昨年のDeNAは所属投手が支配下登録70人の半分以上を占め、二軍投手は練習すらままならなかった。北方は「いつでも好きなときに、好きなだけ練習できる」というホークスで練習を続け、制球難の課題を克服しつつあった。北方のトライアウトのマウンドで、いきなり投球がバックネットを直撃したが、去年とは別人のように落ち着いていた。 「この1年、結果を出せなかったのは残念ですが、自分の一番良いときに戻りつつある。『NPB以外でも野球を続けるか』と聞かれれば、僕は海外に挑戦してみたい。言葉も通用しないなか、野球だけで勝負して、今の状態なら海外でもやっていける」 去年トライアウトを受けて、今年ホークスで積み重ねてきたものを確認することもできたという。解雇の通告は非情だが、「海外」という、さらに高いステージを自分に課すまで、北方は精神的に強くなっていた。 つらいときこそ、自分にさらに高い課題を課す。この生き方はサラリーマンにも通じるものがある。トライアウトとは、人生を新たに切り開くためのステージでもあるようだ。スポーツライター:美山和也
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スポーツ 2015年11月28日 14時00分
プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(3)
前オリックスの榊原諒(30)が、一部メディアから“つらい質問”を浴びせられた。 「新人王にも輝いたのに…」 榊原はひと呼吸おいて、「もう過去のことです。ブルペンでは調子が良かったので、3人にしか投げられませんでしたが、やることはしっかりやれたと思います。(解雇されたので)フェニックスリーグにも行けませんでしたし、チームを離れて個人で練習してきました。室内の狭いところでしか練習できないが、キャッチボールとかランニングをしっかりやってきた。準備としては不十分だったかもしれませんが、チャンスをもらえることを信じて、戦力外通告後すぐトライアウトを受けると決めていた。'11年に肩を怪我したけど、それも良くなってきた」と答えた。 つらい怪我であっても、野球人生の良き転機に変えることもできる。 「今までは勢いだけで投げてきて、低めに投げていればなんとかなると思っていたんですね。だけど、怪我をして考え方を変えました。どういうボールを投げるべきなのか、どんなボールが自分に必要なのか、相手バッターの芯を外すにはどうすればいいのか…。そういうことを考えて自分自身のピッチングを変えて、コーチにも教えてもらい、肩の不安のない投球ができるようになった」 オリックスは昨年オフ、大型補強を敢行したが、チームは機能せず、下位に低迷した。その立て直しを「待つこと」ができなかった。西村のように独立リーグで“再起のインターバル”を取る方法もあるが、榊原は首を振った。 「僕には家族がいるんです。独身なら、独立リーグでも構いません。そのときは家族と相談して…」 独立リーグの選手たちは月20万円程度の報酬しか保証されない。オフシーズンにアルバイトをしなければ暮らせない選手もいる。「野球を続けたい」と思う気持ちはどの選手も一緒だが、「NPBが第一希望」という切実な状況に追い込まれた選手も少なくなかった。 「中断」のハプニングに見舞われた選手もいた。前阪神の藤原正典(27)だ。空模様は前日から危ぶまれていた。19組目、藤原が投げているときに雨足が強まり、一時中断となった。 「自分は“持ってない”のかなと思いましたが、すぐに晴れて、内容も悪くなかった。気持ちで投げた」 トライアウトの舞台が最後のユニホーム姿になる選手もいる。草薙球場に会場を移して以来、3年連続の雨となってしまった。今年はすぐに回復したが、「ベストコンディションで」と思う関係者は少なくない。 今年から2回に分けていたトライアウトを一発勝負にしたのは「一方だけを受ける選手がいて、それをなくすためだ」とNPBは説明していた。雨天順延と改めたのは、選手の側に添った改定だった。
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スポーツ 2015年11月27日 14時45分
DeNAがラミレス監督を招聘した利点
今季、セ・リーグは前年最下位のヤクルトが優勝を勝ち取った。アレックス・ラミレス新監督(41)を迎えたDeNAベイスターズが「最下位から優勝」を再現してくれるかもしれない。 鹿児島県・奄美大島での秋季キャンプ中、ラミレス監督のメモを取る姿が多く見られた。現役時代から“メモ魔”であり、対戦投手の特徴やバッテリーの配球傾向を書き記すなど研究熱心な選手であることは有名だった。気が付いたことはすぐに手帳に書きとめるところは監督になってからも変わらないようだが、ブルペンを視察したときはペンを走らす時間がとくに長かった。 関係者によれば、三嶋一輝(25=5勝5敗)に期待しているそうだ。 「対戦打者のインコースに強いボール(直球)が投げられるか否か、その素質を持っていると称賛していました」 中畑清前監督の言葉が思い出される。「エースを張れる投手と正捕手を補強したら」−−。 DeNAがラミレス監督の就任を発表した際、一部メディアは話題作りと見ていた。観客動員数を伸ばして行けたのは、中畑清前監督によるところが大きい。その明るさと、若い選手たちがマッチし、DeNAは本当に魅力的なチームになった。中畑前監督が底上げした戦力を引き継ぎ、実務的な年長指揮官で優勝を狙う選択肢もあっただろう。進藤達哉ヘッドコーチを昇格させる人事も考えられたはずだ。あえて、いったんチームを離れたラミレス氏を招聘したのは、明るさの継承だけではなく、現有戦力を客観的に見てほしいと思ったのではないだろうか。“客観性”と言えば、ドラフト会議中のラミレス監督の様子が思い出される。 12球団の1位入札選手が全てコールされた後、DeNAの今永昇太(22=駒大)の単独指名が決まった。大学ナンバー1左腕だが、「故障明け」ということで指名を見送った球団が出たようだ。即戦力か否かで見れば疑問符は残るが、チームは左の先発候補を探していた。2014年は先発で勝ち星を上げた左投手はゼロ。今季は新人の石田健大がいたが、学生時代に痛めた左肩の影響で、プロ初勝利は8月になってしまった。そういった状況を考えると、本調子になるまで多少の時間が掛かったとしても、実力に太鼓判が押されている今永の指名は間違っていない。また、その今永の交渉権の獲得が決まったときと、2位で全球団が1位候補リストに入れていた熊原健人(22=仙台大)を指名した際、ラミレス監督は淡々としていた。他球団は「下位チームから指名していくウェバー制の特徴」で好投手を2人も指名できたのを羨んでいたのに、だ。ドラフト候補のアマチュア投手のことはよく分からなかったのだろう。 そう考えると、ラミレス監督は新人投手も“客観的”に評価することになる。いや、先入観がないほうがいい。監督とは、1位指名の投手に過度な期待をしがちである。ヘタな重圧を与えないほうが新人投手のためだ。 ラミレス監督は秋季キャンプ終了後、目立った選手として、投手では山口俊を、そして、野手では捕手の高城俊人を挙げていた。中畑前監督の挙げていた補強ポイントには『正捕手』もあった。また、チームは社会人ナンバー1捕手の呼び声も高かった戸柱恭孝捕手(25=NTT西日本)の指名にも成功している。来季は高城、今季63試合に出場した黒羽根利規、戸柱が正捕手を争う贅沢な布陣になる。そして、ラミレス監督が高城の名前を挙げたということは、来季のDeNAは「優勝圏内で戦える」と見て良いのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)
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スポーツ 2015年11月27日 14時00分
プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(2)
「平常心」を口にした投手もいた。江村将也(28=前ヤクルト)は“トライアウトの宿命”で急造バッテリーとなるが、サインに首を振らなかったという。 「首を振れば、その分、ピッチングのリズムも悪くなりますから。シーズン中も基本的には首は振りません。こちらの意図が伝われば」 打者3人と対戦し、三振も奪ってみせた。江村は「狙った」と言い、チームの優勝後に戦力外通告を受けた悔しさをぶつけたようだ。 江村は'14年オフに左肘にメスを入れている。「ネズミを取る」といった軽度のもので、自身も「これから」と思っていただけに、再起に懸ける思いも強かった。 プロ野球の球団も会社組織である。上司(監督、コーチ)が代われば、戦略も変わる。戦略が変われば、そこに起用される選手も前政権と全く同じというわけにはいかなくなる。また、東京ヤクルトはセ・リーグの覇者となり、当然、来季は連覇を目指した補強をしなければならない。“故障者”を待ってはくれないのだ。 組織から弾き出された選手は江村だけではないだろう。解雇を通告された選手には家族もいれば、住宅ローンなどの返済も残っていただろう。「サラリーマンよりも高い年俸をもらい、華やかな世界にもいたのだから…」と、やっかむファンもいるかもしれないが、果たして、そうだろうか。 彼らは人生の大半を野球に費やし、そのために大きな怪我を負ったこともある。完治しないまま実戦に駆り出され、その影響で怪我を慢性化させてしまった選手もいる。慢性化した怪我を理由に解雇を通告されたとすれば、「一体何のために、自分はチームに尽くしてきたんだ!?」と、恨み言の一つも言いたくなるだろう。 正当な評価をされず、悶々とした思いでベンチを温めた日もあったはずだ。 西村憲(28=元阪神)は'12年オフに右肘関節変形手術を受け、'14年オフに戦力外となった。しかし、その後BCリーグ・石川ミリオンスターズと契約し、復調のきっかけを掴んだ。今季、石川で26試合に登板し、防御率0.00と突出した成績を残してみせた。 「手術は初めてで、回復に時間が掛かってしまいました。不安も痛みもないし、もっとスピードが出ると思います。力加減やバランス感覚も、もっと良くなると実感しています」 西村は自身が登板しない日もブルペンに入り、投げ込みを続けてきた。試合では「ゼロに抑える」と常に自身に課して挑んできた。 独立リーグが再起に繋がるステージとなったのだ。
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スポーツ 2015年11月26日 17時00分
俺たちの熱狂バトルTheヒストリー〈格闘王vs人類最強の男〉
日本のリングに上がった世界的な有名格闘家というと、まず名前が挙がるのはマイク・タイソンやモハメド・アリ、あるいはロベルト・デュランなど、ボクシング史に名を残す世界王者たちになるだろう。 だが、それらと比べて勝るとも劣らないのが、リングスに参戦したアレキサンダー・カレリンだ。このときカレリンは、レスリングのグレコローマンスタイル130キロ超級で五輪3連覇、世界選手権8連覇。翌年にも世界選手権を制し、通算で国際大会12連覇、'13年間無敗の記録を打ち立てている。 '12年に吉田沙保里が国際大会13連覇を果たした際には、“カレリン越え”などと言われたが、やはり女子軽量級と男子最重量級では“強さ”の意味が違う。 「日本では“人類最強”と呼ばれるカレリンですが、海外では“The Experiment(エクスペリメント)”のニックネームがある。直訳すると“実験”ですが、そのニュアンスは“人類がどこまで強くなれるかを体現している”という感じでしょうか」(スポーツ紙記者) その超人的逸話は枚挙にいとまがない。レスリングで試合中に注意を受けた選手が、マットに四つん這いになって相手に背中を取らせるパーテールポジション。伏せた側は懸命にこらえるため、攻める側も簡単には崩せないのが普通だが、カレリンはそこから相手をぶっこ抜いて投げ飛ばす。 これぞ“カレリンズ・リフト”と称される必殺技。一般には俵返しと呼ばれるが、カレリンに限ってその名を冠せられたのは当然だろう。 体重130キロといえば大相撲の日馬富士がこれに近いが、伏せて耐える横綱を後ろから抱え上げ、反り投げする姿を想像すれば、いかに人間離れした力技か分かるだろう。 神話の時代でもあるまいし、記録の残る近現代でそれを現実にやってみせたのは、あとにも先にもカレリンをおいて他にいない。 そんな“生きる伝説”が、唯一、他流試合のマットに上がったのが、前田日明の引退戦であった。 前年にはすでにリングス・ラストマッチと銘打って、引退セレモニーを行っていた前田であったが(対戦相手は弟子の山本宣久で、前田の判定勝利)、最後にもう一戦、大物との戦いを求めて交渉を続けていた。 当初、標的としたヒクソン・グレイシーは、前田ではなくPRIDEでの高田延彦との再戦を選んだ。それと並行してカレリンと交渉していたが、名実ともにヒクソン以上の大物だけに、こちらも難航が伝えられていた。 「相手はレスリング界の神様的存在。まさか出てくるなんて、関係者の誰もが信じていませんでした」(同) 試合形式は5分2R、ダウンとロープエスケープでポイントを失う、いわゆるUWFルールだった。だが、そんな慣れない場にも神はまったく動じず、これからスパーリングでもするかのようなスウエット姿で、笑みを浮かべながら入場した。 試合開始と同時に、前田からキックで攻められるが、これにも表情を変えることなく、レスリングの構えのままにじり寄っていく。 のちに前田本人が「ベストのタイミングだった」と語ったタックルも、まったく通じず、そのままがぶって前田の肉体(体重117キロ、身長191センチ)を、まるで木偶人形のように振り回した。 1Rの中盤になんとか脚関節を取った前田だが、カレリンはあっさりとロープエスケープで難を逃れる。これで先制のポイントは奪ったものの、前田の攻勢はこのときだけだった。 以後はずっとカレリンの独り舞台で、前田をもてあそぶかのようにマットの上に転がすと、こらえる間も与えずにカレリンズ・リフトで投げ飛ばす。関節を極めるわけでもなく、ただヒジをつかんで仰向けの顔面に押しつけると、前田は身じろぎもできず、レフェリーから何度もギブアップをうながされた。 結果、袈裟固めで2度のエスケープを奪われた前田の判定負け。力量の差は歴然であったが、それは前田も最初から分かった上でのことだった。 “世界最強の男はリングスが決める”との言葉通り、前田らしい引退戦であったと言えるだろう。
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スポーツ 2015年11月26日 14時00分
プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(1)
再起を懸けた舞台は“一発勝負”だ。 11月11日、『日本プロ野球12球団合同トライアウトin静岡』が草薙球場で行われた。戦力外通告を受けた選手たちが一縷の望みに懸け、12球団編成スタッフたちの前で真剣勝負に挑む。 今年からその内容は少し変更された。実戦形式のシート打撃はノーカウントから始まる。今までは「1ボール1ストライク」からだった。また、事前に登板の順番が公表されるようになった。考えてみれば、当たり前の配慮である。 午前9時に受験受付が始まるが、登板が後の投手は午後3時頃となる。待ち時間が長過ぎても事前に分かっていれば、調整の仕様はいくらでもある。改定は遅過ぎたくらいだ。 シート打撃3組目、加藤康介(37=前阪神)の名前がアナウンスされたとき、ひと際大きな拍手が沸き上がった。加藤は地元静岡県の出身だ。 「これまでは向かい風だったのが、追い風になったのかもしれませんね」 加藤は迷ったという。トライアウトを受験せずにオファーを待つ他球団のベテランもいた。オリックスを自由契約になった坂口智隆外野手(31)は受験せず、東京ヤクルトからのオファーを得ている。しかし、加藤が迷った理由は、ベテランのメンツではない。 「年齢は関係ない。ベストを出せるように今日まで練習してきたつもり。もう一度、マウンドに立つ、そう決めてから『まだやれる』と思う部分と、自分の中で『もういいんじゃない?』みたいな思いがよぎったりした。その葛藤でした。ここまでやって来られたのは自分の力だけではない。たくさんの人に支えてもらいました。そのたくさんの人に支えてもらった以上、自分が勝手に(現役を)辞めるということを決めたくなかった…。辞めるときは野球を続ける場所がなくなったときにすべきだと」 3度目の受験となったベテランもいた。34歳、正田樹だ。日本ハム、阪神、台湾、独立リーグ、ヤクルトなどを渡り歩いた左腕は「何回受けても、凄い緊張感ですよね」と笑った。スピードガンは139キロをマークするなど、ピッチングは全く衰えていない。 「やっぱり野球が好きだから、これまで続けて来られたし、これからも続けていきたい。スライダー、あと、フォークも投げました。球種は増えているんですよね。色々な経験をして、その経験が出せたと思います」
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スポーツ 2015年11月26日 11時00分
「生え抜きのクリーンアップが育っていない」金本監督が目指すトラの変革
2016年のチームスローガンが発表された。『超変革 Fighting Spirit』。金本知憲監督(47)は就任以来、チーム改革という意味で変革なる言葉を何度も繰り返し、語ってきた。「それをさらに超えて」との思いを込めて、『超変革』となった。 「金本監督は掛布(雅之=60)二軍監督とも蜜に連絡を取り合っています。生え抜きのクリーンアップを育てることを目標としており、とくに横田(慎太郎=20)に期待しているようです」(プロ野球解説者) 金本監督はスタッフ会議でこうも語っていたそうだ。「(シーズンで)30本以上のホームランを打つ生え抜きのバッターが育っていない」と。たしかに、その通りである。85年以降、阪神生え抜きのバッターで30本以上の本塁打を放った選手がいない。その懸念はフロント経営陣も持っている。 「ファンからも『まずは若手を育ててくれ』が多い」(前出・同) こうしたファンの声は金本監督にも届いている。しかし、伝統球団である以上、勝たなければならない。「若手を育てながら勝つ」というのはもっとも難しいことだ。 来季、勝利を目指すほうのチーム変革も見えてきた。 まず、金本監督は「2番バッターを重要視する」という。通常、2番バッターといえば、犠打や右方向へのバッティングが求められるが、理想は3番バッターのような攻撃的な2番バッターだ。その『攻撃的2番バッター』に指名されるのは、大和(28)ではないだろうか。 「大和は和田政権でも2番を任された時期がありますが、そのときは犠打や右方向へのバッティングを求められていました。大和は器用なので、そういうこともこなせる」(球界関係者) しかし、金本監督の目にはこうしたチームバッティングによって、大和の本来の持ち味が消えてしまったと見ている。秋季キャンプ中、金本監督は打撃練習中の大和のそばに行き、「インコースは引っ張れ、強い打球を打て!」と指導していた。 また、金本監督は投手継投については矢野燿大・作戦兼バッテリーコーチ(46)と香田勲男投手コーチ(50)を指して、「全て任せる。(自分は野手出身だから)分からないから」と各メディアに語っていたが、実際は違う。9回の最後のマウンドを託すクローザーに関しては、自分のカラーを出そうとしている。 チーム関係者がこう明かしてくれた。 「呉昇桓で固定しないつもり。点差、相手打線が下位にまわったり、めぼしい代打が残っていないなどの条件次第では、若手に経験させるつもりです」 あくまでも呉昇桓が残留した場合を前提にしての構想だが、金本監督は若手を実戦で使っていくという。その一環として、僅差でないゲーム展開では二軍から昇格したばかりの若手投手に9回最後のマウンドを託し、たとえそれで試合を落としても、良しとするという。 「先発5番手として、岩崎優(24)に期待しています」(前出・チーム関係者) 大和、岩崎が「育てながら勝つ」の「勝つ」の部分を背負うことになりそうだ。「若手を育ててくれ」のファンの声は金本監督にも届いている。だが、ペナントレースが始まれば、ファンは許してくれないとも覚悟しているそうだ。若手がチャンスを生かせなかったとき、金本監督は彼らをかばわなければならない。かといって、ベテランも無下にできない。金本監督の目指す変革とは、決して平坦な道ではない。
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スポーツ 2015年11月25日 14時00分
錦織圭 食事改善できず故障連発! 世界ランキング急降下の危機
プロテニスプレーヤーの錦織圭(25)が窮地に立たされている。10月末のスイス・インドア国際大会を“ドタキャン”し、罰金を課せられる寸前となったのだ。 「運営する男子プロテニス協会のルールでは、大会前の最終金曜日を過ぎて出場をキャンセルすれば罰金を課せられます。錦織はその金曜日に滑り込みで手続きをしたのです」(専門誌記者) キャンセルの理由は、右肩の痛み。10月の楽天オープンでも顔をしかめるほど苦しみ、メディカルタイムアウトを要求してマッサージを受けた。その後、上海オープンでも右肩にテーピングを巻いていたが、凡ミスを連発。その戦いぶりから、世界ランキングが8位まで降下。上位8人が出場を許される11月の『ATPツアーファイナルズ』へのエントリーも危惧されていた。 「果たしてどこまで回復しているか。しかし、初戦の相手は世界ランク1位のジョコビッチ。今年の調子では、かなり厳しい」(同) 錦織はコーチのマイケル・チャン氏の指導により、技術的にかなりレベルが上がった。ただし常に故障を抱え、かつ回復が遅いということは、なにか理由があると見なければならない。 「そこで目下、指摘されているのが食生活です。偏食ということではなく、それなりに気はつかっていると思われますが、一流アスリートのような繊細な配慮はしていないようなのです」(スポーツ紙記者) 世界で戦うには錦織ですら体型が細いと言われる。10代後半からは体を大きくする目的もあって、食べる量を意識してきたが、20代後半に差しかかると“好きなものを食べ、バランス良く”だけでは事足りないという。 「試合時間から逆算し、いつなにを食べるべきか考えるべき。これまでは勢いで勝ってきた面もありますが、今後、食生活に配慮しなければ世界のトップと対等には戦っていけない。しかし、テニス以外でも多忙な錦織は、恩師の松岡修造との絡みでバラエティー番組にも引っ張りダコ。お偉方との食事会が重なり外食も多くなる。周囲の配慮も足りないのではないでしょうか」(前出・専門誌記者) これまでは敗戦、凡ミスも“今後の糧、経験”として許されてきた。しかし、今は違う。 世界ランキング最高4位の彼に、周囲も強く言えないのかも?
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スポーツ 2015年11月25日 12時15分
金本監督が本当に変革しなければならないトラの悪しき体質
阪神にはこんな『裏・格言』があるそうだ。「チャンスはピンチ」「ピンチは大ピンチ」−−。得点好機で代打を申し渡された選手は、その重圧で打てなくなり、二軍降格となる。これは80年代後半から始まったチーム低迷期の暗黒時代に誰かが言い出し、今日も完全払拭されていないという。 金本知憲監督(47)はそのもっとも重圧の掛かるトラの4番を任されてきた。引退してからも「アニキ」の愛称で親しまれてきたのはその重圧を何度も乗り越え、チームに勝利をもたらしてくれたからである。 「生え抜きのクリーンアップがいない。早く若手を育てなければ…」 金本監督は就任当初から何度も口にしてきた。生え抜きのクリーンアップが育っていないのは重圧に負け、「チャンスはピンチ」にしてしまったからだろう。また、掛布雅之二軍監督(60)も関西系メディアに出演し、若手育成の手段をこう語っていた。 「ファンも(若手を)厳しい目で見てほしい。(二軍球場のある)鳴尾浜にもたくさんのファンに来てもらったほうが緊張感も出る」 熱心な虎ファンは鳴尾浜に足を運んでいる。そして、好機で打てなかった野手、痛打を浴びた投手に厳しい野次を飛ばしている。それも愛情表現だろう。当たり前の話だが、鳴尾浜と一軍本拠地・甲子園球場とでは、観客数に雲泥の差がある。掛布二軍監督は二軍で鍛えられているときから、大勢のファンに見られ、その重圧のなかで試合をしていかなければ『トラの4番』は育たないと見ているのではないだろうか。掛布二軍監督は長くトラの4番を務めてきた。その重圧は誰よりも分かっている。また、貪欲になりきれない現代っ子の気質もこれまでの打撃指導で分かってきた。若手には言葉で説明するよりも、鳴尾浜を満員にすることで“重圧”を乗り越える精神力を付けさせようとしているのかもしれない。 また、金本監督の現役時代を知る阪神OBによれば、好機で打てなかったときは「翌日まで落ち込んでいた」という。 「意図的に『打てなかった』という落ち込んだ気持ちを継続させていたように思います。その緊張感を翌日の試合で継続させることで『次』につなげ、自分を追い込むことで甲子園の大観衆に負けないようにしていた」 金本、掛布両指揮官は、バットマンとして、体格に恵まれたほうではなかった。努力、練習というのは簡単だが、打球を飛ばす技術を習得してきた。そして、重圧に勝つ術も自分なりに習得してきた。 「素質のある選手もいる。だけど、素質だけでは長続きしない」 これは、金本監督が若手たちに伝えた言葉だ。強い精神力は練習量と緊張感を持ち続けなければ養われない。金本、掛布両指揮官は言葉こそ違うが、生え抜きのクリーンアップの育て方を考えている。甲子園の大観衆を楽しむくらい、逞しい精神力を持った選手が現れれば、『裏・格言』を完全消滅させるのだが…。
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スポーツ 2015年11月24日 14時00分
掛布二軍監督に降りかかる難題 オーナー直々の熱視線にプレッシャー
阪神タイガースの掛布雅之二軍監督(60)が抜き打ちチェックを受けた。11月10日、鳴尾浜球場で秋季練習中に坂井信也オーナー(69)がアポなしで訪れたのである。 「掛布二軍監督も驚いていました。球団スタッフによれば、オーナーは午前中に本社へ出勤し、仕事もこなしていたそうです」(在阪記者) 坂井オーナーのその日のスケジュールに二軍視察はなかった。しかし、「是非見ておきたい」と言い、急遽決定。秘書が掛布二軍監督に連絡を入れる前に本人が到着してしまったという。そして、二人は球場ブースに入り、練習を見守りながら“虎の近未来”について語り合ったそうだ。 「坂井オーナーは巨人が三軍制を始めることに関心を示していました。ソフトバンクに倣っての三軍制で、それが成功すれば、ものすごい戦力になります。平たく言えば、二軍を2チームを持つことなので」(球界関係者) 時間にして約1時間半、表情こそ穏やかだったが、坂井オーナーは虎の若手育成に“不安”も抱いていた。阪神首脳陣は金本知憲新監督(47)にチーム再建を託した。監督招聘の交渉中には、金本監督からも、中堅、若手の伸び悩みが指摘され、今後の二軍の在り方が非常に重要になることで意見が一致した。 もっとも、金本監督から「二軍監督に誰が相応しいか」という意見は出なかった。GM付け育成&打撃コーディネーターだった掛布氏を昇格させたのは、その指導内容が「分かりやすい」と選手から好評だったからである。そして、昔ながらの阪神ファンによる根強い人気は否定できなかったのだ。 「オーナーは掛布二軍監督がどんなビジョンを持っているのか、きちんと聞いてみたかったのでは。それが突然の練習視察の目的だったと思います」(同) しかし、掛布二軍監督はきちんと説明できなかったという。勝ちながら育てるというのは永遠の難題だが、掛布二軍監督から具体的なビジョンは聞けなかったそうだ。 「近年、阪神は一軍と二軍の首脳陣同士のコミュニケーションがうまくいっていませんでした。そのパイプ役として、二軍監督だった平田勝男氏を一軍ヘッドコーチに送り込み、来季もチーフ格として金本監督を支えることになりました。現時点で、金本監督は年上の掛布二軍監督に気を遣っているし、衝突もない。それだけでも、いままでと違って期待が持てると思いますが」(前出記者) 掛布二軍監督は秋季練習中にマスコミに囲まれると、一つの質問に対して30分以上も返すなど饒舌だった。タテジマのユニフォームに再び袖を通すことのできた喜びからだと思うが、与えられた職務は重大だ。 ライバル巨人の三軍制以上に、自前戦力を一軍に送り込まれなければならない。坂井オーナーはこれまでも二軍視察を行ってきたが、来季はその回数が増えそうである。