「オイ、KUSHIDAよ! おまえ、強くなったな〜! おまえ、俺から3カウントじゃなく、タップ(ギブアップ)獲ったんだよ。この調子で、準決勝とは言わねぇよ、決勝まで行って、新日本プロレスのジュニアを引っ張ってみろよ!」
ライガーから新日ジュニアを託されたKUSHIDAは「ライガーさん! 『スーパージュニア』に向けて、『ジュニアが主役の季節』とか言われるのが、僕は悔しくてたまらないです。ジュニアはヘビー級の脇役なんかじゃないですよね? ライガーさんならよく知ってますよね? 僕が代々木の決勝で優勝して、その先の両国国技館にライガーさんをお連れします!」と応え、会場に詰めかけた観客はもちろん、CSの生中継を見ていたファンからも称賛の声が数多く上がった。
決勝では当時ドラゴンゲートから参戦していたリコシェに敗れ準優勝。この流れに乗ることができなかったが、アレックス・シェリーとのタッグチーム「タイム・スプリッターズ」で、タッグ屋のイメージが付きつつあったKUSHIDAがシングルプレーヤーとしてアピールすることに成功した大会だった。
そんなKUSHIDAに早くもチャンスが訪れた。同年6・21大阪でリコシェ相手にベストバウト級の試合を制し、IWGPジュニアヘビー級王座の防衛を果たした飯伏幸太への挑戦が決まったのだ。新日本に所属してからずっと追っかけていた飯伏の存在。2011年に飯伏が王者だったときにも挑戦するチャンスがあったが、飯伏が怪我により欠場。王座を返上したため対戦が流れた経緯がある。
2014年7・4後楽園で行われたこの試合は、途中飯伏の意識が飛ぶアクシデントがあったものの、KUSHIDAが試合の主導権を握り、飯伏からホバーボードロックでギブアップ勝ちを収めて、第68代IWGPジュニア王者になる。KUSHIDAは当時シェリーとIWGPジュニアタッグ王座を保持していたため2冠王となり、試合後改めて「ジュニアをヘビーに負けないものにする」ことと「両国でのスーパージュニア開催」を宣言した。
同年9月の神戸大会で田口隆祐に敗れ王座陥落。チャンピオンとして年を越すことはできなかったが、昨年のスーパージュニアではリーグ単独首位で決勝に進出した。
「去年、準優勝で、代々木からもっと大きな会場でやりたいって言って、それができなくて…もちろん、ライガーさんに誓った。ライガーさんも、それを聞いていたお客さんも、今日見ていたお客さんも、全員。KUSHIDAが代々木よりももっと大きな、もっともっと大きな両国国技館、もっともっと大きな明るい未来に連れて行きたいですね」
こう誓って臨んだカイル・オライリーとの決勝戦は、ライガー戦からちょうど1年後となる2015年6月6日に代々木第二体育館で行われた。試合は前年のリコシェ戦と同じく劣勢の場面が多く見られたが、“ブレない心”が勝り、見事に勝利。初優勝を果たした。続く7・5大阪城ホール大会では、IWGPジュニア王者ケニー・オメガに挑戦。セコンドの介入に苦しむもKUSHIDAの勢いは止められず、王座奪還に成功。KUSHIDAがライバル視しているヘビー級の祭典「G1クライマックス」の優勝決定戦が行われた8・16両国大会では、リコシェ相手に防衛。1年越しのリベンジを果たす。
「ずっと『スーパージュニア』の決勝をね、ここ(両国)にもってきたいと。で『G1クライマックス』は3日間も満員にしちゃったわけで。全国まわって、やっぱりジュニアとヘビー、今日現在とてつもなく大きな差があると、ボクは自覚してますよ。ただ俺がここまでね、新日本プロレスの中で、そして外で、海外で歩んできた道が証明してるでしょ。一歩一歩、一歩一歩、みんなが思ってる価値観を必ずや逆転させます」
満員の両国で防衛を果たしたKUSHIDAはこのように語った。9・23岡山大会では前回以上のセコンドの介入に苦しみ、ケニーのリターンマッチに敗れ王座を陥落してしまったが、今年の1・4東京ドーム大会では再びケニーに挑戦し、しっかりベルトを取り戻している。
「やっぱりもう口では散々言ってきましたから、2016年は実行の年でしょ。2015年言いまくって、言いまくって、ウザいほど言いまくって、それでも実現できなかったから。残すは、皆さんの目に見える形で東京ドームのメインだったり、『スーパージュニア』、去年『G1』の決勝でもできたこと、今年もやりたいですし。ジュニアもKUSHIDAも、可能性の塊ですよ。やっと年が明けました。2015年チャンピオンが前哨戦にいなかったり、タイトルマッチに誰かの介入があったり、ヘビー級使ったり、『スーパージュニア』出なかったり、そんなもんもうクソくらえですよ。新しいスタート、2016年スタートですね。期待してください、これからのジュニア。期待と可能性しかないっす」
KUSHIDAの言葉からは、昨年12月のシリーズにケニーが出場しなかったことではなく、IWGPジュニア王者時代に「スーパージュニア」に出場しなかったプリンス・デヴィットや飯伏への不満も込められていた。KUSHIDA自身もタイム・スプリッターズを主軸に置いていた頃があったように、ここ数年ジュニアは外国人を中心としたタッグ戦線が盛り上がっていた。しかし、パートナーのシェリーが欠場中ということもあり、KUSHIDAはしばらくシングルに集中することになるだろう。
2・14新潟でKUSHIDAに挑戦するBUSHIは、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに加入したことにより、ジュニアのパートナーがいないことから、新潟の結果に関わらずIWGPジュニア王座に照準を合わせてくるのは間違いない。また、ファンタスティカマニア1・24後楽園で、初代タイガーマスクのデビュー戦を彷彿とさせる衝撃的な一時凱旋マッチを行ったカマイタチ(高橋広夢)も、本格凱旋後はIWGPジュニア王座を一発で獲ると明言しており、KUSHIDAの狙いどおり今年は新日ジュニアのシングル戦線が活発化していくのではないだろうか。
IWGPジュニア王座から陥落した飯伏とケニーは、ともにKUSHIDAに敗れてからヘビー級に転向している。それだけ現在の新日ジュニアは、ヘビー級にも負けない力を持っているのは確かだ。今年の「スーパージュニア」は6・6&7に仙台サンプラザホール2連戦を行う。かつては両国のほかに日本武道館や大阪府立体育会館でも優勝決定戦が行われていた「スーパージュニア」だが、今年は地方での連戦という形で、代々木第二からスケールアップした。本人の考えがブレない限り、必ずやKUSHIDAが両国に連れていってくれる日が来るはずだ。
(増田晋侍)
<リアルライブ・コラム連載「新日Times」VOL.5>