スポーツ
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スポーツ 2016年02月22日 18時00分
俺たちの熱狂バトルTheヒストリー〈ド迫力の外国人“頂上決戦”〉
「出る前に負けることを考えるバカがいるかよ!」(アントニオ猪木) 「時は来た。それだけだ…」(橋本真也) 今ではこれらセリフとともに振り返られることの多い1990年2月10日の新日本プロレス東京ドーム大会。当初、大会の目玉とされていたのは、米国WCWで看板スターとなったグレート・ムタの凱旋マッチだった。 対戦相手も新日初参戦となるリック・フレアーという豪華カードで、新日ファンに限らず注目を集めていた。しかし、これが突如、一方的にWCW側からキャンセルされる。 「同年4月に開催予定のWWF興行『日米レスリングサミット』に新日が協力することになり、これに対し米国でWWFと興行戦争を繰り広げていたWCWが難色を示したのです」(プロレスライター) 最大の売り物を失ったのでは、大会開催そのものが危うい。新日の社長に就任したばかりの坂口征二にとっては、最初の大仕事でミソをつけることにもなる。 そこでひねり出したのが全日本プロレスへの協力要請という、当時としては誰も想像すらしていない離れ業だった。これにジャイアント馬場は二つ返事でOKを出す。 しかも、坂口の申し出は、かつて新日でも人気を誇ったスタン・ハンセンを借り受けたいというものだったが、馬場からの返答は「ジャンボ鶴田や天龍源一郎も貸し出す」という予想外の大盤振る舞いだった。 「表向きには“坂口の社長就任祝い”でしたが、その裏には馬場なりの計算もありました」(同) 実はフレアーの新日参戦が決まったとき、これに先立って新日と全日との間で結ばれた『引き抜き防止協定』に引っ掛かるとして、問題が生じていたのだ。 日本においては全日側が権利を持つフレアーを新日が招聘するにあたり、馬場が代償として要求したのはスティーヴ・ウィリアムスの移籍だった。 「フレアーの新日参戦がなくなれば、その移籍話も消えてしまう。しかし、馬場としては以前から目をつけていたウィリアムスを、どうしても獲得したかった。そのため、新日に恩を売るにしても、ハンセンの1回きりの貸し出しでは釣り合わないと考え、鶴田や天龍もと言い出したわけです」(同) 思惑はどうあれ、初の全日と新日による本格対抗戦は、ファンにとってムタの凱旋以上のインパクトを与えることになった。 発表と同時にチケットは完売。試合当日には東京ドーム周辺に、入場できないファンが層をなした。 水道橋駅からドームへ向かう陸橋では、大勢のダフ屋が「5万!」「7万!」と威勢のいい声を上げていた。 大会も中盤となる第7試合。花道に鶴田が登場すると、ドームが割れんばかりの大歓声で迎えられ、日本のプロレス界では初めてとなる観客席でのウエーブも巻き起こった。 ただし、試合そのものはやや低調に終わる。鶴田&谷津嘉章vs木村健吾&木戸修は、格の違いから鶴田組の圧勝。続く天龍&2代目タイガーマスクvs長州力&ジョージ高野は、どこかチグハグで噛み合わない試合となった。 顔合わせの新鮮さ以外に見どころの少ない展開に、やや冷めかけたファンの気分を再度燃え上がらせたのは、続いてのビッグバン・ベイダーvsスタン・ハンセン。両団体トップ外国人の激突であった。 試合開始早々、両者殴り合いの中で、ベイダーは右目眼窩底骨折の重傷を負う。その痛みからマスクを脱ぎ捨てると、場内ビジョンに、ベイダーの腫れ上がったまぶたが映し出された。 しかし、どよめく観客席をよそに試合は続行! 負傷のハンデもなんのその、ベイダーはコーナー最上段からのベイダー・アタックとボディーへの重爆パンチで畳み掛け、ハンセンの予告ラリアットもドロップキックで迎撃してみせる。 これにハンセンもブルファイトで応戦。一瞬の隙をついた不意打ちラリアットで両者場外へ転落すると、果てをも知らぬ乱闘へとなだれ込んでいった。 結果、両者リングアウトとなったが、平成版トップ外国人対決のド迫力は、大いに観客を満足させたのだった。
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スポーツ 2016年02月21日 16時00分
小橋建太「青春の握り拳」インタビュー いま蘇る四天王時代と全身全霊のプロレス愛!
90年代の全日本プロレスのリングには、「四天王」と呼ばれる男たちがいた。三沢、川田、田上、小橋。男たちが命を削って繰り広げた激しい闘いは「四天王プロレス」と呼ばれ、多くのファンを感動させ、勇気づけた。あれから約20年−−。四天王の一角であった小橋建太(当時、健太)が、あの“熱狂の時代”を、アツく振り返る−−。 −−発売されたばかりの『小橋健太、熱狂の四天王プロレス』(ワニブックス刊)、読み応え抜群でした! 小橋(笑顔で)ありがとうございます。 −−「四天王プロレス」の時代から、既に20年近くが経過していますが、なぜ今、四天王プロレスをクローズアップしたのでしょうか? 小橋 最近、プロレス人気が復活したといわれていますけど、四天王プロレスを知らない世代も増えている。その人たちにも「今のプロレス界全体に多大な影響を与えた、こういうプロレスもあったんだよ」ということを知ってほしかったのが一番ですね。今はユーチューブでも試合が見れますし、とにかく僕たちが“命を懸けてやっていたプロレス”を風化させたくないという気持ちが強かった。 −−実際、四天王プロレスは、今見ても色あせない激しい試合ばかりです。 小橋 でも、中には「危な過ぎた」とか「やりすぎだった」という声もあるんです。現在、四天王は誰もリングに上がっていないため、四天王時代のプロレスが選手寿命を短くしたという人もいますが、僕は結局25年やったし、まったくそんなことはない。「あのときのプロレスのせいで」と言われるのがすごく嫌なんです。だいたい、プロレスに「やりすぎ」なんてない。 −−やり切ってこそのプロレスだと。 小橋 はい。じゃあ、やりすぎないのがプロレスだというなら、なんのためにリングに上がっているんだって話ですよね。選手がリングに上がって一生懸命やれば、試合はどんどん激しくなるし、それを見てファンも熱狂する。この熱狂が生まれてこそ、選手と観客の間に一体感が生まれて、試合も白熱するわけですよ。四天王プロレスはそういう熱狂を生むプロレスだったし、僕たちも誇りと自信を持ってやっていた。そこに後悔はまったくないんです。 −−なるほど。時を超えるアツさが伝わってきます。 小橋 昔、ある方が「こんなプロレスを続けていたら10年持つ選手生命が1年で終わってしまう」と言っていましたけど、僕は長く続けることより、自分の思いをぶつけられるプロレスをして、悔いを残さないことの方が何倍も有意義じゃないかと思ってやっていました。 −−ただ、小橋さんは四天王の中では一番若手で、なかなか結果が伴わない時期もありましたね。 小橋 そうなんですよ。この本の巻末で対談した(レフェリーの)和田京平さんにも「負けてるイメージの方が強い」って言われたくらい(苦笑)。四天王時代の最初の頃は、勝てませんでした…。 −−そういう時期もあったからこそ、小橋さんに強い思い入れを持って見ていたファンも多かったのでは。 小橋 やっぱりファンの声援が何よりも力になりましたし、背中を押してくれました。だからなのか、逆に四天王時代の後半は負けてない。僕は四天王同士の三冠戦では、田上(明)さんには2戦2勝。川田(利明)さんには1勝2分けなんです。ただ、三沢(光晴)さんにだけは、三冠戦では一度も勝てませんでした…。 −−話は変わりますが、なんでも四天王時代の小橋さんのトレードマークでもあったオレンジのタイツは、松山千春さんに薦められたんだとか。 小橋 そうですね。最初は、赤いタイツをはいてたんですよ。馬場さんに「オマエ、赤はけ」って言われて。その頃、僕は馬場さんの付き人だったので、控え室に行ったら、そこに来ていた千春さんが「オマエ、若いんだからさぁ、オレンジの蛍光色とかそういうのはいた方が恰好いいよ〜」って言ってくれてね(笑)。オレンジにしたのは、そこからなんです。 −−オレンジというと、新日本時代の武藤(敬司)さんのイメージも強いですが、武藤さんよりも先だとか。 小橋 そうなんです! 武藤さんは「俺の方が早い」って勘違いされていたので、以前、トークショーで一緒になったときに、ちゃんとそこは言いました。「ムーンサルトは武藤さんの方が早いけど、オレンジタイツは俺の方が早いんです」って(笑)。 −−そんな会話もされているんですね(笑)。ところで小橋さん、今のプロレス界で、もし自分が現役だったら闘ってみたい選手はいますか? 小橋 そうですね…この答えは面白くないかもしれませんが、誰と闘いたいというよりも、今の全日本であったり、ノアを盛り返したい。やっぱり最近の新日本さんのブレイクぶりと比べると、あまりにも寂しいものがあるので。 −−やはり古巣が気になりますか? 小橋 というよりも、もっと昔の新日本と全日本のように、対抗勢力同士がお互い元気になってくれないと、プロレス界全体が繁栄しないですからね。 −−では、最後になりますが、本誌の読者にメッセージをお願いします。それこそ、現役時代は幾度もの手術からカムバックし、腎臓がんも克服するなど、不屈の闘志で復活を遂げられた小橋さんから、何かアドバイスをいただければと。 小橋 はい。僕ががんになったのは39歳。働き盛り、まだまだこれからってときで、なんとか復帰できたものの、本調子に戻ることは二度とありませんでした…。まして40、50代というのは、これまでの無理が体に出てくる時期。だから、そういう現実を一度受け止めて、その上で、また前に進めばいいと思います。「俺は若いんだ、俺は大丈夫」という気持ちは分かるんですよ。僕もそうでしたから。でも、大丈夫じゃないんですよね。 −−もう若くはないですからね。 小橋 ただ、40代、50代っていっても、まだまだこれからも青春ですから! −−いくつになろうと常に青春はできると? 小橋 はい。40、50代になっても楽しみはまだまだあります。 −−小橋さんは今、何をされているときが楽しいですか? 小橋 今は、娘と一緒に笑ってるときが一番ですかね。 −−女の子なら、プロレスラーにはなる可能性は低そうで一安心ですね(笑)。 小橋 男の子だったとしても、あまりプロレスラーにしたくはないんです。だって、僕が命を懸けてやってきた世界じゃないですか。プロレスに命を懸けられる覚悟がなければ、プロレスはやれないですから。 −−確かに、小橋さんの試合にはその覚悟がありありと見えていました。本の中で、「試合のフィニッシュのときに意識が飛んでいた」とありましたが、あらためてその映像を見ると、完全に意識がないのが分かります。 小橋 そうなんですよ。レフェリーのカウントが「ワン、ツー、スリー」と入った後に、京平さんに手を上げられたんですが、僕は朦朧としていたそうです。勝ち名乗りを受けて、(秋山)準に肩車されたあたりで、やっと意識が戻ったというか、状況が把握できた。 −−あれこそ覚悟というか、小橋さんのプロレス人生における背景を本で読んでから見ると、感情移入ができて泣けてしまいました。だから、この本はそういう楽しみ方もできるのかなと。 小橋 いいですね。みなさんにも、そういう楽しみ方をしてもらえたら素晴らしいですし、この本が、僕らが誇りを持ってやっていたプロレスを見てもらうキッカケになってくれればうれしいです。小橋建太=1967年3月27日生まれ。京都府出身。90年代後半から一世を風靡した元プロレスラー。『全日本三冠ヘビー級王座』『世界タッグ王座』『GHCヘビー級王座』など、多くのタイトルを獲得。現在は大学講師、スポーツ救命協会講師にも就任し、スポーツ全般の普及に努めている。2月14日13時〜女子レスラーの宝城カイリと、17時〜現役レスラーの潮崎豪とのトークイベントを開催。詳しくは公式HP=http://www.fortune-kk.com/まで。
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スポーツ 2016年02月21日 12時00分
新日本プロレス2・11大阪&2・14新潟に軍団再編の春一番が吹いた!
1・4東京ドーム大会が終わってから初のビッグマッチとなった『THE NEW BEGINNING』2・11大阪大会、2・14新潟大会。ともに超満員の大観衆が会場に詰めかけ、大盛況のうちに幕を閉じたが、そこでしばらく止まっていた軍団再編の波が一気に動き出した2大会だった。 「後藤さん! CHAOS入ったらどうですか?」 2・11大阪大会のメインで、IWGPヘビー級王座に通算8度目の挑戦となった後藤洋央紀を相手に“完封勝利”を収めたオカダ・カズチカの口から飛び出したのは、自身が所属する軍団への勧誘だった。すべてを懸けてこの試合に挑んだ後藤は、白使や鬼神ライガーを彷彿とさせる顔面から上半身にかけてのボディペイントで入場し、場内をざわつかせたが、この姿からはIWGPヘビー級のベルトを巻く姿が想像できなかったのも確か。挑戦表明から徹底したオカダへの襲撃でオカダを振り向かせることができただけに、そのままの姿で挑戦した方が新チャンピオン後藤の画をスムーズに想像できた気がする。 これで後藤はIWGPヘビー級選手権試合0勝8敗。いつも最後に空回りしているイメージが強い。もう後がなかった今回は、過去最高の空回りだったのではないだろうか。オカダも「まだ変われるでしょ。あんなんですべてを懸けるなんて言っちゃダメっすよ」と語り、後藤の強さを認めた上で「CHAOSで環境を変えれば、さらに変わることができるのではないか」と勧誘した理由について説明した。 一方の後藤は「このまま消えてしまいたい」と弱気になっており、14日の新潟大会で再びオカダと6人タッグで当たったが、明らかに精彩を欠いていた。オカダの握手は拒否したが、CHAOS入りはIWGPヘビー級王座からは遠くなってしまう可能性が高いものの、後藤がトップで生き残っていくためには悪い話ではない。棚橋弘至&柴田勝頼vsオカダ&後藤というカードには夢がある。 オカダは後藤に任せるとしているが「後藤さんの他にもう1人CHAOSに入れたい人がいる」と、さらなる補強(引き抜き)を示唆している。そして、新潟大会の試合後、自分自身に対して不満を述べたのはなんとキャプテン・ニュージャパンだった。「気分だけ変わるんじゃなくて、すべてが変わらんとな」とコメント。キャプテンは大阪大会で後藤のセコンドに付いていたが、まさか…? 中邑真輔が抜けた穴を補強するのは当然のことだけに、『NEW JAPAN CUP 2016』(3月3日、大田区総合体育館で開幕)から今後に向けた動きがあるかもしれない。 「今度はバレットクラブのニューメンバーを連れて来て、俺が挑戦する」 2・14新潟大会で、カール・アンダーソン&ドク・ギャローズ組が真壁刀義&本間朋晃組とのIWGPタッグ選手権試合(1・4ドームのリターンマッチ)に敗れると、タマ・トンガがマイクを掴み、真壁&本間の王者組を挑発。王者組も受諾した。その後、アンダーソンとギャローズ、そしてバッドラック・ファレとトンガがリングに上がり「Too Sweet」ポーズを交わして友情を確かめ合うと、アンダーソンとギャローズだけが残り、ファンへ深々と一礼をした。これは1・5後楽園ホール大会でAJスタイルズが見せたものと同じ意味を持つと言ってもいい。アンダーソンはバックステージで新日本や真壁&本間組を称賛した上で、「ザ・マシンガン(アンダーソンのニックネーム)とギャローズはおまえらの前から去る」と、かねてから噂されていた新日本マット離脱を明言した。WWEへの移籍が濃厚だ。 メインではバレットクラブの新リーダー、ケニー・オメガがバレットクラブ内ユニットThe ELITEの助けを借りながらも最後は実力で棚橋を下し、IWGPインターコンチネンタル王座に載冠した。ケニーのセコンドにはバッドラック・ファレや、ケニーとの今後の関係が気になるタマが付いていなかったのが気になるところ。そして、中邑の退団に際して木谷高明オーナーにもストレートに噛み付いた内藤哲也が、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの新たなるパレハ(仲間)の存在について沈黙を守っているのも不気味である。 毎年4月の両国では何らかの事件が起きているが、今年はブシロード体制になって最大の軍団再編が起こる可能性が高い。タマが言っているように、新戦力も加わってくるだろう。大阪で決起した第三世代と、それに噛み付いた柴田勝頼によるNEVER戦線も見逃せない。優勝すれば、3つのベルトのいずれかに挑戦権が与えられる“春のG1”こと『NEW JAPAN CUP 2016』は、まったく予想不可能なトーナメントになりそうだ。 新日本マットにも軍団再編という春一番が吹いた今年の『THE NEW BEGINNING』だった。 (増田晋侍)<リアルライブ・コラム連載「新日Times」VOL.6>
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スポーツ 2016年02月19日 16時00分
W杯通算40勝でも“凄さ”が伝わらない! 高梨沙羅は地味キャラを脱皮できるか
ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅が今季、11戦10勝と圧倒的な強さを見せている(2月7日現在)。絶好調であり、世界各国は「19歳でこんなに強くなったのだから、次の冬季五輪では異次元のジャンプを見せるのではないか」と大きく取り上げているが、日本国内ではあまり盛り上がっていない。 「精神的にはまだ19歳。スポーツメンタルでの強さは別として、勝利インタビューのセリフは通り一辺倒。表彰台でも喜びを押し殺しているようなところがあって、テレビ的には絵になりにくい選手なんです。それが初々しいという声もありますが」(TV局スポーツ部員) スキーは国内ではまだマイナー競技だ。43歳のレジェンド葛西紀明や、かつて世界と対等以上に戦った複合の荻原健司らも、勝利の一報が伝えられても、イマイチ国内にその凄さが伝わり切らなかった。 「高梨の場合も、女子のノルディック選手でW杯40勝は歴代最多。どこまで記録を伸ばしていくか…」(海外特派員) 日本のスポーツファンは、爆勝街道まっしぐらの高梨の凄さは分かっているつもりでも、歴代最多と言われてもピンと来ないのだろう。 また、こんな理由も聞かれた。 「実兄がTBS社員となり、他局は“使いにくい”と遠慮している感もある。ちなみに、現在オンエア中の高梨のCMで彼女の幼少期の映像が使われていますが、一緒に映っているのがお兄さんです」(前出・TV局員) '18年の平昌冬季五輪では早くも、「高梨兄が現地入りし兄妹インタビューが行われる」と話すスキー関係者もいる。 「高梨は近年のスポーツアイドルとは異なります。浅田真央、浅尾美和のようなアイドル系ではない。かと言って、19歳なので葛西のようなカリスマ性もない。高梨が正当に評価されない理由に、メディア側が彼女をどう扱うべきか迷っているせいもあるのではないか」(スポーツライター・飯山満氏) さらには“マジメすぎる”性格も無視できない。 「大学生となった彼女は学業にも取り組んでおり、一時期、両立の難しさで成績を落としたこともあった。そんなことも硬い表情の遠因と言われる。せめてもっと笑ってくれればいいのですが…」(スポーツ紙記者) “大人”への脱皮に期待したい。
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スポーツ 2016年02月17日 16時00分
清原ショック直撃! 金本阪神 投手・打撃ともに最低レベルの悲鳴(2)
変革第2章とは、大型補強のことだ。 「二軍でドラフト1位の高山俊が軽快に柵越えを連発しています。高山は間違いなく即戦力」(同) その高山に対し、金本監督は昨秋、右手にメスを入れた経緯を指し、「肩や肘はできていないはず。焦らず」と慎重な口ぶりを見せた。それからすれば、今の高山の柵越え連発デビューは手放しでは喜べない。 「高山は高い野球観を持った選手です。首脳陣の求める選手になるとの考え方で、金本監督が入団会見時に言った『一発も打てるバッターに』の言葉を意識しています」(球界関係者) 高山は東京六大学リーグの通算安打記録を塗り替えたように、ヒット量産タイプのバッター。しかし、今は長打も打てるタイプに変貌しようとしており、「彼の長所が死んでしまう」との心配もあるのだ。この件について、金本監督は自軍のスカウトチームと話し合う必要があるだろう。 正捕手争いにしても、首脳陣は考えを改めつつある。3年目の梅野隆太郎とドラフト2位・坂本誠志郎の一騎討ちと思われていたが、矢野燿大作戦兼バッテリーコーチが先入観なしで見た第一印象は、「岡崎(太一)が一番いい」そうだ。 「去年オフ、クビを覚悟していた一人です。土俵際に追いやられ、闘争心に火がついたようです」(球団関係者) オフの間、相当練習したのだろう。腹筋は割れ、フットワークもスイングも別人のようだという。金本監督は口にこそ出さなかったが、筋トレルームで岡崎の肉体改造に気付いていた。「頑張った選手で開幕のオーダーを組む」という指揮官に強い印象を与えたのは間違いない。 しかし、メッセ、藤川-岡崎のバッテリーでは、新鮮味は「ない」に等しい。 「育成重視と言っても、勝たなければ好意的だった虎ファンの態度も一変します。勝つために何か手を打つしかない」(前出・関係者) 頼れるのは中年だけなのか。 オヤジ軍団では長丁場は凌げない。金本監督を待っているのは波乱のシーズンというのは間違いない。
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スポーツ 2016年02月16日 16時00分
清原ショック直撃! 金本阪神 投手・打撃ともに最低レベルの悲鳴(1)
トラのキャンプは、アニキの“ダメ出し”で幕を開けた。就任当初とは対照的な冷酷さは、『チーム変革・第2章』の始まりと見るべきだろう。 「まるでダメ。弓を引く感じが全くできていない」 キャンプ2日目、プロ3年目の横田慎太郎に積極指導した金本知憲監督(47)がそう言い放った。横田に付きっ切りの1日だったと言っても過言ではなく、フリー打撃にとどまらず、全体練習後の居残りでも約1時間、身振り手振りを交えながら指導していた。 アニキ金本のダメ出しは、その後に設けられた共同囲み会見で出たもの。それゆえ、かなりガッカリしたのではないか…。 「秋季キャンプから今日まで、横田は期待の若手とされ、金本監督、掛布(雅之)二軍監督もTV出演するたびに彼の名前を出していました。本人もかなりヤル気になっており、オフもバットを振り込んでいました。初の一軍キャンプ帯同で張り切っていたのに」(トラ番記者) 金本監督は「横田の今後に期待して…」と追加質問しようとした記者を遮り、「迷って当たり前。迷路に入って、パニックになって、それで生還したら自分のものになる」と言い放ったのだ。 関係者によれば、指揮官は横田が一人前になるまでに3年以上掛かってもいいと見ているという。 だが、また問題が発生。 「藤浪晋太郎もエース剥奪の可能性が出てきました」(前出・同) 金本監督はブルペン視察の感想を聞かれ、「藤川(球児)がいちばんよかった」と発言。さらに、メッセンジャーに対しては「開幕(投手)はメッセか、藤浪」と言わしめた。藤浪よりもメッセンジャーの名が先に出たということは、在籍期間球団最長タイの7年目を迎えたベテランの助っ人外国人に軍配が上がったのだろう。つまり、投打で期待する若手が、監督が求めるレベルまで上がっていなかったわけだ。 先の関係者は「金本監督の要求が高すぎる」と前置きした上で、こう解説する。 「藤浪はオフの右肩炎症の影響で少し調整が遅れただけで心配ありません。金本監督にとって秋季キャンプは雰囲気作りであり、最初からこの2月のキャンプで選手をふるいに掛けるつもりでいました。指揮官として、若手が一人前になるまで3年掛かるのか、5年掛かるのかを見極める場にしたいとも話していました」 金本監督はその口ぶりから「3年ではなく、5年」と判断したようだ。 「金本監督は世代交代、若手育成を掲げていますが、そのレベルまでいかなかったら、大型補強をやると内々に予告しています。その可能性も十分ある」(同)
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スポーツ 2016年02月16日 12時13分
キャンプ番外編 新ルール適用で阪神が逆恨みされる?
2月8日、阪神キャンプでこんな光景が見られた。走者を置いた実戦形式の内野守備練習で、前進守備を敷いていたショート鳥谷が打球を処理し、軽快なフットワークで本塁に送球した。三塁走者は打球が転がるのと同時にスタートを切っていたが、完全にアウトのタイミングだった。しかし、捕手が三塁走者にタッチをした瞬間、ホームベース後方に立っていた審判が「セーフ」をコールした。矢野燿大作戦兼バッテリーコーチが慌てて審判のもとに歩み寄り、“確認”を行う。 捕手の左足がホームベースの一部に乗っていたという。ランナーの走路を妨害したと見なされ、セーフと判定されたのだ。 今シーズンより、プロ野球のルールが一部変更された。守備側の選手がランナーの進路を妨害した場合は「セーフ」になる。本塁ベース上での捕手と走者の激突を防ぐためのルール変更で、今後、捕手はホームベースを完全に空けておかなければならない。したがって、捕手は本塁ベース前に立ち、捕球後、ミットを動かしてタッチすることになる。俗に言う、“追いタッチ”のかっこうだ。 「昨季で退団したマートンが本塁ベース前で相手捕手を何度も突き飛ばし、病院送りとなったケースもありました。スライディングを試みた走者が捕手のブロックに合い、故障することもあり…」(球界関係者) ホームベースを完全に空けておくルールになれば、走者はスピードを緩めずに突っ込むこともできる。ただでさえ、“追いタッチ”では遅れてしまうのに、だ。 キャンプを見ると、どの球団も新ルールの確認を兼ね、本塁送球の連係プレーに時間を割いていた。2月2日、巨人も派遣審判とともに守備練習で確認を行ったが、高橋由伸監督は審判団に「送球が一塁方向に逸れ、捕手がホームベースに寝そべるように戻った場合も適用されるのか」など、実戦で起こりうるケースを具体的に挙げ、長く話し込んでいた。 「審判団は『状況によってはVTRで確認する』とも各球団に伝えています。1点を争う場面になったら、走路妨害かどうかで、相当もめると思われます」(プロ野球解説者) 新ルールでは送球が逸れ、結果的に捕手がホームベースをふさいでしまった場合も「走路妨害」と見なすという。捕逸により、投手がホームベースのカバーに向かったときや、スクイズプレーも同様である。これまでタイミング的に「アウト」だったケースも「セーフ」になるだろう。 内野手はより正確な送球コントロールとスピードが要求される。捕手が追いタッチをやりやすくするため、野手は「向かってやや右側」に狙って投げなければならない。 「審判によって、走路妨害かどうかの判断が異なる可能性も高い。内野手は前進守備の位置も今まで以上に前方に変えなければなりません。そうなると、強い打球を捕球できなかったなんて場面もあるかもしれない。三塁に走者を置いたら、1失点を覚悟するスタイルに変わるかもしれません」(前出・同) 怪我防止は重要だが、各チームとも総失点を増やすのは必至。あくまでもキャンプ第2クールを見た限りだが、この新ルールにまだ適応できない捕手も実際にいた。繰り返しになるが、新ルールの確認プレーの後、どの球団からも退団したマートンを恨む声が聞かれた。冗談だと思うが、憂さ晴らしでセ5球団が「阪神戦で猛打爆発」なんてことにならなければいいのだが…。
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スポーツ 2016年02月15日 17時37分
2016年プロ野球キャンプ情報「混セとパ1強5弱」説は本当か?(巨人編)
2月12日、紅白戦が行われた。白組の2番左翼で出場した重信慎之介(22=早大ドラフト2位)が存在感をアピールした。3安打の猛打賞となったのは既報通りだが、特記すべきはセンター前ヒットで出塁した7回の走塁だ。次打者・亀井の右中間に放った二塁打で、一気にホームまで帰って来た。塁間90フィールド(約27・4m)でトップスピードに入れる脚力は光るものがあった。三塁を蹴った後、普通の選手は遠心力で少し外に流れるが、それがない。しかも、一・二塁間で打球を一瞥した後は、本塁まで前しか見ていない。打球の飛んだ箇所、その勢い、相手の守備位置から、「本塁まで帰れる」と瞬時に判断したのだろう。重信は一流の走塁センスを持っている。 同じく、白組の先発マウンドを託されたドラフト1位・桜井俊貴(22=立命館大)が2回パーフェクトと好投したのは既報通りだが、気になったのは時折、捕手に背を向け、顔をしかめる仕種。今にも降り出しそうな空模様で寒さもあり、思うようなボールが投げられなかったからかもしれない。この日の球速は142キロが最速。本人は「ストライク先行で良かったと思います。コーナーにも投げ分けられ…」と試合後に話していたが、顔をしかめる仕種から察するに「俺の投球はこんなモンじゃない」と、結果に納得していなかったのだろう。この時期、打者は投手に比べ、調整が遅れている。だとしても、桜井は実戦向きであり、試合のなかで投球を修正し、調子が悪ければ悪いなりにまとめる能力を持っているのだろう。 高橋由伸監督(40)は桜井の先発ローテーション入りを計算している。菅野智之、マイコラス、ポレダ、高木勇人。桜井を含め、5人までは先発候補の名前が出てくる。しかし、手術をした杉内俊哉の復活時期は伝えられていない。昨季絶不調だった内海哲也も、ブルペンを見る限り、真っ直ぐにキレが戻っていない。自ら先発転向を志願したマシソンだが、桜井が好投した12日の紅白戦で紅色の先発マウンドに上がった。こちらも2回無失点だが、被安打3。盗塁を2回も許しており、先発投手の必須事項であるクイックができていなかった。昨季までは投げていなかったツーシーム系の変化球(チェンジアップ?)で緩急を付けていたのは良しとしても、及第点は付けられない。 紅組2番手の田口麗斗(20)、紅組3番手の中川皓太(21=東海大ドラフト7位)にもチャンスはあるのではないだろうか。この両左腕が先発争いのダークホース的存在だ。田口は13試合に登板した経験もある。2ストライク後、意識して低めに投げており、この投球スタイルで長いイニングを投げられるのであれば、ローテーション入りできるだろう。新人の中川は紅白戦で4失点と炎上したが、カーブの曲がり幅が大きい。そのカーブが時折、高めに抜けるのが気になるが、スライダー系のボールもあり、そのいくつかの変化球でストライクカウントを先行させることができるのであれば、十分に戦力になる。左腕の振りが強い。ボールをリリースする瞬間、その腕の振りの強さがしっかりと伝わっているので、130キロ台の真っ直ぐでもホームベース手前で伸びているのが分かる。 新外国人のギャレットだが、変化球にも対応できそうだ。しかし、紅白戦で桜井から三振を喫したように、速いボールに差し込まれていたのがちょっと気になる。 おそらく、巨人は昨季とスターティングメンバーがさほど変わらないだろう。高橋監督は「4番阿部」を公言しており、坂本、長野、村田が復調できるかが優勝のカギとなる。新二塁手は前千葉ロッテのクルーズだろう。投手陣だが、菅野智之が順調な仕上がりを見せていた。昨季は勤続疲労で精彩を欠いた山口鉄也のボールにもキレがあった。菅野、マイコラス、桜井はともかく、今年の巨人は先発4番手以降がちょっと弱い。山口、2年目の戸根、澤村の救援陣がフル回転するシーズンになりそうだ。
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スポーツ 2016年02月14日 13時00分
2016年プロ野球キャンプ情報「混セとパ1強5弱」説は本当か?(DeNA編)
2月7日、DeNAベイスターズは初の紅白戦を行った。しかし、アレックス・ラミレス監督(41)は試合後、多くを語ろうとはしなかった。ラミレス監督が挙げるチーム再建策は、主に2つ。1つはセンターラインの強化だが、就任直後から再三繰り返してきたのは、バッテリーに徹底したインコース攻めである。初の紅白戦で、ラミレス監督はベンチから配球サインを出した。全てではないが、これには正捕手候補の嶺井、黒羽根、高城、そして、新人の戸柱もショックを受けたはずだ。本当に力のある者を、ダメ出しされて這い上がってきた者を使うつもりなのだろう。 ラミレス構想もこのキャンプで見えてきた。 11日の紅白戦では、梶谷隆幸を「2番中堅」で使っている。昨季まで3番右翼で使われることが多かったが、攻撃的2番打者とし、強化ポイントのセンターラインの一角も託すつもりなのだろう。その梶谷も攻守の中心選手の自覚からか、体が一回り大きくなっていた。オフの間、相当体を鍛えていたと思われる。 昨季2割7分5厘だった梶谷が『2番』で打率3割を超えてくれば、主砲・筒香の打点も増えてくる。筒香の前後はロペス、新加入のロマックで固めるとすれば、DeNA打線は脅威である。また、紅白戦2試合で頭角を表しつつある若手が2人いた。1人は11日紅白戦で『1番二塁』に入った山下幸輝である。バットが振れており、打球に勢いがあった。同様に、守備、代走で存在感を見せてくれそうなのが渡邊雄貴だ。梶谷の中堅コンバートによって、右翼は荒波、関根、松本らで争われるものと思われるが、渡邊は動きが軽快で、守備範囲も広い。紅組の『2番中堅』(11日)で出場し、快心の一打こそなかったが、一塁ベースまで走るスピードはチームでもトップクラスである。3年目の関根大気ともタイプが重なるが、関根は左打者、渡邊は右打者。打撃力は関根のほうが上だが、紅白戦で使ったということは、ラミレス監督も育ててみたいと一目置いているのだろう。 センターラインだが、固定するに越したことはない。おそらく、二塁手は実績のある石川雄洋が任されるだろう。遊撃手のほうだが、守備能力では新人の柴田竜拓(3位)がいちばん巧い。昨季102試合に出た倉本寿彦、81試合出場の白崎浩之、山崎憲晴などもいるが、彼らは守備で味方投手の足を引っ張る場面も少なくなかった。打撃力に関しては4人ともイマイチ。守備力で柴田がレギュラーに一歩リードとも言えるが、バットの振れている山下もショートでノックを受けるときがあったので、ここだけは“日替わり”になる可能性も高い。 三塁を守る予定の新外国人のロマックだが、低めを捉えるのが巧かった。フルスイングしても、後ろ足にしっかり体重が残っているので変化球にも対応できるだろう。 投手陣だが、昨季の新人王・山崎康晃が自身にブレーキを掛けているような調整をしていた。昨年は先発候補としてプロ生活をスタートさせ、オープン戦が始まったころ、大学時代に経験した救援にまわった。キャンプ序盤にも関わらず、100球前後を投げ続けていたが、今年は走り込み中心の練習で、捕手を座らせての投げ込みを見せたのは2月9日だった。飛ばしすぎないマイペース調整を許したのは、首脳陣も“大人扱い”しているからだろう。2月9日になっての初投球は明らかに遅い。しかし、同日の約40球の投げ込みだが、カーブ、スライダー、ツーシーム系の落ちる変化球も織り交ぜていた。いきなり、変化球を投げてきたということは「肩はできている」わけだ。この山崎がしっかり投げてくれれば、先発陣が多少弱くても逃げ切れる。ラミレス監督は山口俊の開幕投手を予告している。先発ローテーションには新人の今永昇太も加わってくるはず。中畑時代に筒香、梶谷が頭角を表した。ラミレス監督のもとで新たに山下、渡邊、柴田、今永が結果を出せば、Aクラス争いは確実なのだが…。
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スポーツ 2016年02月14日 12時00分
「両国に連れていきます」飯伏、ケニーを撃破! IWGPジュニア王者KUSHIDAのブレない気持ち
今から遡ること2年前の2014年。「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」6.6京都大会でKUSHIDAに敗れた“ジュニアヘビーのレジェンド”獣神サンダー・ライガーはマイクを掴みこう叫んだ。 「オイ、KUSHIDAよ! おまえ、強くなったな〜! おまえ、俺から3カウントじゃなく、タップ(ギブアップ)獲ったんだよ。この調子で、準決勝とは言わねぇよ、決勝まで行って、新日本プロレスのジュニアを引っ張ってみろよ!」 ライガーから新日ジュニアを託されたKUSHIDAは「ライガーさん! 『スーパージュニア』に向けて、『ジュニアが主役の季節』とか言われるのが、僕は悔しくてたまらないです。ジュニアはヘビー級の脇役なんかじゃないですよね? ライガーさんならよく知ってますよね? 僕が代々木の決勝で優勝して、その先の両国国技館にライガーさんをお連れします!」と応え、会場に詰めかけた観客はもちろん、CSの生中継を見ていたファンからも称賛の声が数多く上がった。 決勝では当時ドラゴンゲートから参戦していたリコシェに敗れ準優勝。この流れに乗ることができなかったが、アレックス・シェリーとのタッグチーム「タイム・スプリッターズ」で、タッグ屋のイメージが付きつつあったKUSHIDAがシングルプレーヤーとしてアピールすることに成功した大会だった。 そんなKUSHIDAに早くもチャンスが訪れた。同年6・21大阪でリコシェ相手にベストバウト級の試合を制し、IWGPジュニアヘビー級王座の防衛を果たした飯伏幸太への挑戦が決まったのだ。新日本に所属してからずっと追っかけていた飯伏の存在。2011年に飯伏が王者だったときにも挑戦するチャンスがあったが、飯伏が怪我により欠場。王座を返上したため対戦が流れた経緯がある。 2014年7・4後楽園で行われたこの試合は、途中飯伏の意識が飛ぶアクシデントがあったものの、KUSHIDAが試合の主導権を握り、飯伏からホバーボードロックでギブアップ勝ちを収めて、第68代IWGPジュニア王者になる。KUSHIDAは当時シェリーとIWGPジュニアタッグ王座を保持していたため2冠王となり、試合後改めて「ジュニアをヘビーに負けないものにする」ことと「両国でのスーパージュニア開催」を宣言した。 同年9月の神戸大会で田口隆祐に敗れ王座陥落。チャンピオンとして年を越すことはできなかったが、昨年のスーパージュニアではリーグ単独首位で決勝に進出した。 「去年、準優勝で、代々木からもっと大きな会場でやりたいって言って、それができなくて…もちろん、ライガーさんに誓った。ライガーさんも、それを聞いていたお客さんも、今日見ていたお客さんも、全員。KUSHIDAが代々木よりももっと大きな、もっともっと大きな両国国技館、もっともっと大きな明るい未来に連れて行きたいですね」 こう誓って臨んだカイル・オライリーとの決勝戦は、ライガー戦からちょうど1年後となる2015年6月6日に代々木第二体育館で行われた。試合は前年のリコシェ戦と同じく劣勢の場面が多く見られたが、“ブレない心”が勝り、見事に勝利。初優勝を果たした。続く7・5大阪城ホール大会では、IWGPジュニア王者ケニー・オメガに挑戦。セコンドの介入に苦しむもKUSHIDAの勢いは止められず、王座奪還に成功。KUSHIDAがライバル視しているヘビー級の祭典「G1クライマックス」の優勝決定戦が行われた8・16両国大会では、リコシェ相手に防衛。1年越しのリベンジを果たす。 「ずっと『スーパージュニア』の決勝をね、ここ(両国)にもってきたいと。で『G1クライマックス』は3日間も満員にしちゃったわけで。全国まわって、やっぱりジュニアとヘビー、今日現在とてつもなく大きな差があると、ボクは自覚してますよ。ただ俺がここまでね、新日本プロレスの中で、そして外で、海外で歩んできた道が証明してるでしょ。一歩一歩、一歩一歩、みんなが思ってる価値観を必ずや逆転させます」 満員の両国で防衛を果たしたKUSHIDAはこのように語った。9・23岡山大会では前回以上のセコンドの介入に苦しみ、ケニーのリターンマッチに敗れ王座を陥落してしまったが、今年の1・4東京ドーム大会では再びケニーに挑戦し、しっかりベルトを取り戻している。 「やっぱりもう口では散々言ってきましたから、2016年は実行の年でしょ。2015年言いまくって、言いまくって、ウザいほど言いまくって、それでも実現できなかったから。残すは、皆さんの目に見える形で東京ドームのメインだったり、『スーパージュニア』、去年『G1』の決勝でもできたこと、今年もやりたいですし。ジュニアもKUSHIDAも、可能性の塊ですよ。やっと年が明けました。2015年チャンピオンが前哨戦にいなかったり、タイトルマッチに誰かの介入があったり、ヘビー級使ったり、『スーパージュニア』出なかったり、そんなもんもうクソくらえですよ。新しいスタート、2016年スタートですね。期待してください、これからのジュニア。期待と可能性しかないっす」 KUSHIDAの言葉からは、昨年12月のシリーズにケニーが出場しなかったことではなく、IWGPジュニア王者時代に「スーパージュニア」に出場しなかったプリンス・デヴィットや飯伏への不満も込められていた。KUSHIDA自身もタイム・スプリッターズを主軸に置いていた頃があったように、ここ数年ジュニアは外国人を中心としたタッグ戦線が盛り上がっていた。しかし、パートナーのシェリーが欠場中ということもあり、KUSHIDAはしばらくシングルに集中することになるだろう。 2・14新潟でKUSHIDAに挑戦するBUSHIは、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに加入したことにより、ジュニアのパートナーがいないことから、新潟の結果に関わらずIWGPジュニア王座に照準を合わせてくるのは間違いない。また、ファンタスティカマニア1・24後楽園で、初代タイガーマスクのデビュー戦を彷彿とさせる衝撃的な一時凱旋マッチを行ったカマイタチ(高橋広夢)も、本格凱旋後はIWGPジュニア王座を一発で獲ると明言しており、KUSHIDAの狙いどおり今年は新日ジュニアのシングル戦線が活発化していくのではないだろうか。 IWGPジュニア王座から陥落した飯伏とケニーは、ともにKUSHIDAに敗れてからヘビー級に転向している。それだけ現在の新日ジュニアは、ヘビー級にも負けない力を持っているのは確かだ。今年の「スーパージュニア」は6・6&7に仙台サンプラザホール2連戦を行う。かつては両国のほかに日本武道館や大阪府立体育会館でも優勝決定戦が行われていた「スーパージュニア」だが、今年は地方での連戦という形で、代々木第二からスケールアップした。本人の考えがブレない限り、必ずやKUSHIDAが両国に連れていってくれる日が来るはずだ。(増田晋侍)<リアルライブ・コラム連載「新日Times」VOL.5>