スポーツ
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スポーツ 2015年12月16日 11時22分
虎の変革「金本監督は勝ちに行く」(打撃編)
2015年オフのプロ野球報道は、金本阪神が独占したと言っても過言ではないだろう。また、今季も“ペナントレース終盤で失速した”というのに、ファンから出るのは新生・金本タイガースへの『期待論』ばかりだ。 その金本知憲監督(47)だが、すでに一部メディアでも明かしているが、阪神指揮官のオファーがあった際、断ろうと思ったという。その気持ちを一変させたのは、交渉にあたった南信男・前球団社長の言葉だった。 「チームを変えてほしい。そのためなら、たとえ(来年から)2年連続最下位でもかまわない。その代わり、3年目に優勝してくれ」 しかし、就任後の金本監督はこうも語っている。「ファンの方は(若手が育つまで)待ってくれるとは言ってくれますが、実際、(ペナントレースが)始まっちゃったら、どうかな(笑)」。これは、関西系メディアに出演したときに出たコメントだ。 金本監督は阪神ファンが熱いことを分かっている。最優先事項は若手の育成だが、最下位では許されない現実も熟知している。「目先の勝負にもこだわる」と明言しており、来季の勝つための構想もすでにコーチスタッフと話し合っていた。 『攻撃的2番打者』を置き、“野球偏差値の高い3番バッター”を育てる。 通常、2番打者は犠打、右方向へのバッティングなどが強要される。金本理論によれば、「1番バッターから始まるイニングは、実際は少ない」とのことで、クリーンナップ同様のバッティングをさせていくつもり。この構想はすでにコーチスタッフにも話しており、異論は出ていないそうだ。 そこで、考えられる新たな新2番打者だが、鳥谷敬(34)、大和(28)のいずれかだろう。 「金本監督が秋季キャンプで自ら指導したバッターの一人が大和でした。大和の打撃センスには一目置いていました」(チーム関係者) 大和は前任の和田豊監督時代も2番打者を経験している。しかし、右方向への打撃を意識しすぎるあまり、持ち前である長打力が消えてしまい、金本監督は「内角球は引っ張れ」「強い打球を打つように意識しろ」とアドバイスを送っていた。 また、鳥谷を2番にコンバートする私案を一部OBに打ち明けていたという。大和か、鳥谷が新打線のキーマンとなるだろう。 「点差、イニングなどを考えて打撃スタイルを変えることのできるバッターを3番に定着させ、一発のある4番、5番に繋ぐスタイルを理想としています。秋季キャンプで、金本監督の目に止まった新3番バッター候補はいませんでしたが」(前出・同) 従来通り、鳥谷を3番で使う選択肢もある。来春のキャンプ次第だが、新人の高山俊(22=明大)を抜てきする可能性も聞かれた。ドラフト1位で即戦力投手ではなく、バッターを指名したということは、「使う」の意思表示だろう。高山に攻撃的2番を託し、鳥谷を3番に置く打順も十分に考えられる。 通常、犠打を嫌う傾向が見られるのは投手出身の指揮官だ。「バント=相手投手にアウトカウントをくれてやる」の発想からで、打者出身の監督は「強行策=併殺の危険性」を懸念し、確実に進塁させる方法として犠打を好む。打者出身の金本監督が犠打を好まないというのは“異質”でもある。 金本監督の攻撃的打線を組む目的は、得点力を高めることにある。チーム全体の弱点でもある救援投手陣の負担を軽減させたいとしている。また、阪神には先制点を奪われると、すぐに諦めてしまう傾向も見られた。打ち勝つ野球を定着させることで、精神面でもチームの意識を変えていこうとしているのだ。
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スポーツ 2015年12月15日 16時00分
松田移籍阻止にホークスが全力 工藤監督に王会長、オーナーも説得開始
海外FA権を行使した松田宣浩内野手(32)が、米球団との交渉を担う代理人にピーター・グリーンバーグ氏を選定した。 氏はヤクルトや巨人などで活躍したロベルト・ペタジーニ、アレックス・ラミレスなどを担当し、2004年オフ、稲葉篤紀が米挑戦しようとした際も窓口役を務めている。 松田はグリーンバーグ氏と“綿密な打ち合わせ”も終えているというが、福岡ソフトバンクホークスも『慰留』の意向は変えていない。 「年内にも、ホークスは第2、第3の矢を放つつもり。松田残留の可能性はゼロになっていない」(ベテラン記者) 松田は代理人に、「マイナー契約でのスタートはNG」と伝えてある。年俸、生活面では強い要望はないそうだが、メジャーリーグの三塁手はパワーヒッターのポジションでもある。「いくら、松田でも太刀打ちできない」との見方が支配的だ。しかし、ホークスが松田慰留を諦めていない理由はこれだけではない。 「優勝パレードですよ…」 チーム関係者がそう言う。 ホークスは11月22日に、福岡で優勝パレードを行った。これには孫正義オーナーも参加しており、オーナーを載せたオープンカーに同乗した選手は松田だった。決して多くの言葉を交わさなかったが、そのとき、オーナーの口から松田に残留要請があったという。 「オーナー自らが残留要請をした以上、松田が退団するようなことになれば、本社役員が黙っていません。ホークスもオーナーの言葉の重みを承知しています」(同) ホークスは12月中に松田との慰留交渉を行う予定。すでに4年総額25億円という破格の内容が松田側に内示されているという。あとは松田の心情に訴えるしかなく、その説得役に工藤公康監督(52)を登用するそうだ。 「孫オーナーは連日多忙で、その合間を縫ってのパレード参加でした。オーナーがパレードに参加した時点で松田慰留が球団に科された必須事項となりました。工藤監督でダメなら、王貞治会長にもお願いしなければなりません」(同) しかし、王会長は「FAは選手の権利」と捉えており、「工藤監督のようにFA行使で退団しても、将来的に帰還してくれれば」とも考えているそうだ。そのため、王会長は松田の去就に関しては一歩引いた立場にいる。そうなると、工藤監督の双肩に“親会社のメンツ”が掛かったことになるが…。 「工藤監督も自分がFA権を行使して退団した経緯がありますから、強くは出られないと思います。でも、松田はチームを牽引できる打者で、ムードメーカーなので喪失は痛い。ホークスにとっては、小久保、松中と左右の主力打者がいた時代が理想であり、松田と柳田でそういう打線を再編したいとも考えています。ましてや、李大浩の退団が決定した後なので、戦力的には松田を手放したくないはず」(ベテラン記者) いまのところ工藤監督は静観しているが、松田流出がお家騒動になりかねない事情は分かっているはず。戦力ダウンは見過ごせるわけがなく、自身のFA退団は棚上げしてでも説き伏せるしかないようだ。
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スポーツ 2015年12月12日 17時09分
外様の村田、片岡は用済み? 巨人が脇谷に続き、前ロッテのクルーズを獲得
巨人は12月11日、前ロッテのルイス・クルーズ内野手との契約が合意に達したことを発表した。条件は2年総額400万ドル(約4億8300万円=推定)とみられる。 クルーズは今季主に二塁を守り、133試合に出場。打率は.255と低かったものの、16本塁打、73打点で勝負強さを発揮。守っては堅い守備で、ゴールデングラブ賞を受賞した。2年在籍したロッテとは条件面で折り合わず、退団していた。メジャーでも三塁、遊撃を守った経験があり、本人はポジションにはこだわらない意向だという。 そこで、問題になってくるのが西武からFA権を行使して、古巣・巨人に復帰したばかりの脇谷亮太内野手との兼ね合いだ。脇谷もクルーズ同様、内野ならどのポジションもこなせるユーティリティプレーヤー。脇谷は引退した井端弘和(コーチに就任)の“穴埋め”として補強したが、「その上、なぜクルーズまで獲得する必要があるの?」との疑問が生じる。同じ内野手の脇谷、クルーズのダブル獲得は何を意味するのか? 「ズバリ、外様である三塁手の村田修一、二塁手の片岡治大への刺激剤です。2人とも今季は絶不調で規定打席にすら到達できませんでした。その分、大ベテランの井端がカバーしましたが、引退したため、井端に取って代わるような選手が必要。その点で、どこでも守れるクルーズは打ってつけの存在。これで、村田も片岡も来季のレギュラーは保障されません。スタメンから外される機会も増えるでしょう。一方、脇谷はあくまでもバックアップ要員で、左の代打としての活躍も期待されます。クルーズと脇谷では、求められる役どころが違います」(某スポーツ紙記者) 村田も片岡も、FAで巨人に移籍した外様組だが、レギュラーの有力候補であるクルーズが加入したことで、完全に尻に火がついた格好。来季も今季のようなぶざまな成績が続くようなら、それこそ“用済み”にされかねないだろう。(落合一郎)
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スポーツ 2015年12月11日 16時00分
俺たちの熱狂バトルTheヒストリー〈ファンクスvs最凶悪コンビ〉
力道山&木村政彦vsシャープ兄弟のタッグマッチにより、人気沸騰となった日本のプロレス界。 「そもそもプロレスのリングが今のサイズになったのは、タッグ形式が生まれた20世紀初頭のアメリカで“タッグ戦にはこのくらいの広さが必要だ”ということで決まったもの。つまり、タッグマッチこそが近代プロレスの神髄とも言えるのです」(プロレス研究家) しかし、日本においては“最後の決着は一騎打ち”との武士道的価値観が根強く、どうしてもシングル戦より格下のものと見られがちだった。 日本プロレス末期の'70〜'72年に開催されたNWAタッグリーグ戦も不入りの赤字続き。「タッグリーグ戦はダメ」というのがいつしか定説となっていた。そんな風潮を覆したのが、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスが旗揚げ5周年記念として開催した、'77年の『世界オープンタッグ選手権』である。 「日プロのリーグ戦の失敗は、馬場と猪木を別チームに分けたことが大きかった。そのため馬場と鶴田の日本勢トップ2がチームを組み、これと対抗できる強豪チームとしてザ・ファンクスらを集めた。その結果“世界で一番強いタッグチームを決める”という文句に偽りのない、豪華メンバーをそろえたのはまさしく偉業といえるでしょう」(スポーツ紙記者) ブッチャーとシーク、ファンク兄弟はいずれも一枚看板のスター選手。そんなトップどころをセットにするぜいたくさは、この当時、本場アメリカでもなかなか味わえるものではなかった。 さらに馬場の最も大胆かつ革新的な試みとしては、主役に外国人選手を抜擢した点が挙げられよう。シリーズ開幕戦の後楽園ホール、メーンイベントのブッチャー&シークvs馬場&鶴田では、シークによる馬場への急所打ちから、ブッチャーのダイビングエルボードロップでフォール勝ちを収めた後も、最凶悪コンビは執拗に馬場&鶴田をいたぶり続ける。 このとき、救出のためリングに飛び込んだのがテリー・ファンクであった。テリーは最凶悪コンビの返り討ちに合って血だるまにされたものの、日本人を救おうとする外国人の健気な姿は、ファンの心をいっぺんに鷲づかみにした。 「高度なテクニックで評価を得ていたドリーに対し、テリーはNWA王者としての戴冠期間も1年少々と短く、ファンからの印象は薄かった。それが一度の救出劇によって、シリーズの主役になったのです」(同) 公式戦以外でもファンクスとブッチャーらのシングル戦が組まれ、互いの因縁が深まったところで蔵前国技館での最終戦を迎えた。メーンはもちろんファンクスvs最凶悪コンビ。そこまでの星取りでは馬場&鶴田組がトップも、メーンでどちらかが勝てば逆転優勝を果たすことになる。 先に入場したファンクスは、ブッチャー&シークがリングインするや急襲する。試合の主導権を握ったが、ブッチャーの地獄突きから攻守は逆転。そして10分すぎ、シークがテリーの右上腕に凶器攻撃を加えたことから惨劇が始まる。 続いてテリーを襲うブッチャーの右手には、観客の目にもそれと分かるフォークが握られていた。躊躇なくフォークで腕をえぐるブッチャー。おびただしい血がテリーの体を赤く染める。なんとか場外脱出したテリーだが、今度はドリーが捕まってしまう。 エルボースマッシュで凶器ごと吹っ飛ばしても、相手が2人掛かりでは攻勢もそこまで。ブッチャーのエルボードロップをくらい万事休す…。だがそこに、負傷した右腕に包帯を巻いたテリーが復活。最凶悪コンビにサウスポーのパンチを容赦なく叩き込んでいく。国技館は割れんばかりの大歓声に沸いた。 シークがレフェリーのジョー樋口に凶器攻撃を加えたことによる、ファンクスの反則勝ちという結末は、現在の基準なら不透明決着ともなろうが、会場はそれを言わせない圧倒的な多幸感に包まれたのであった。 以後、ファンクスは日本勢を差し置いて全日本の看板スターとなる。そして、この試合が評判を呼び、タッグリーグ戦はプロレス界の冬の風物詩として定着していくことになった。
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スポーツ 2015年12月10日 11時00分
オコエ入団で沸く楽天に潜む『対立』の火ダネ
首脳陣は『スピードスター』をどうやって育てていくのだろうか。 東北楽天ゴールデンイーグルスの新入団選手発表会でも“存在感”を見せてくれた。ドラフト1位・オコエ瑠偉(18=関東一高)が会見中、茂木栄五郎(21=早大/3位)に振られ、美声を披露したのは既報通り。将来は球界を代表する1番バッターになってくれるだろう。夏の甲子園を沸かした彼の早期デビューに期待するファンは多いが、梨田昌孝監督(62)はまだその育成ビジョンを明かしていない。 一年目から実戦で使っていくのか、それとも、二軍で鍛え上げてから一軍に昇格させるのか−−。 投手はともかく、高校卒の野手がいきなり一軍で結果を出すのは難しいとされている。しかし、それをやってのけた選手もいる。そこで思い出されるのが、梨田監督と星野仙一副会長(68)の新人に対する考え方の違いだ。 星野副会長は中日指揮官時代に逆上っても、新人を抜てきし、チームの活力にも変えてきた。来季から楽天投手コーチとなる与田剛氏(50)もその一人であり、近藤真一(現・真市)、森田幸一なども一年目から一軍マウンドを経験した。高卒野手では立浪和義もいる。一方で、アメリカでの野球留学を経験させて一人前に育てた山本昌のようなケースもあった。阪神、楽天の監督時代は“大抜てきのサプライズ”はなかったが、野球・日本代表監督だった08年2月、日本ハムキャンプを視察し、こうも語っていた。 「オレなら、50試合打てなくても使い続ける」 新人だった中田翔の室内打撃練習を見ているときに出たセリフだった。将来の日本を背負って立つスラッガーの一日も早い実戦デビューを訴えたわけだが、中田は開幕を二軍で迎えた。プロ初スタメンは3年目、規定打席に到達したのは4年目の2011年である。 そのとき、中田の早期デビューを許さなかった日本ハム指揮官が、今日、星野副会長と二人三脚を取ることになった梨田監督というのも、何かの巡り合わせだろうか。 梨田監督だが、近鉄、日本ハムでの采配を振り返ると、大一番で新人に頼るようなギャンブル的なことはしない。何事にも慎重な指揮官である。中田の新人時代を知る日本ハムOBがこう言う。 「当時の中田はまだ精神的に子供でした。考え方が甘いというか、野球でメシを食うんだとの自覚も稀薄だったように思います。梨田さんはそういう時期に試合に出しても、本人のためにならないと考えていたんだと思います」 今日の中田の活躍を見れば、梨田式の育成は間違っていなかったことになる。しかし、楽天のチーム編成権を任された星野副会長がそれで納得するだろうか。 関東一高と試合をしたこともある高校の監督がこう言う。 「オコエ君の一軍デビューの時期は打撃力で決まると思う。夏の甲子園時とその後に招集されたU−18大会とでは、打撃フォームが違うんですよ。代表指揮官の西谷浩一監督(大阪桐蔭)がプロ入り後のことを見越して、オコエ君の打撃フォームを改造しています。その打撃フォームが固まっていて、かつプロの投手のスピードに対応できるのなら一年目からでも活躍できると思う」 かつて星野副会長が言った「50打席打てなくても使う」のセリフが“リップサービス”でなかったとしたら、実力不足であれば、それも実戦で痛感させることになる。 2014年、星野副会長が指揮を振るった最後のシーズンのことだ。監督・星野は高卒ルーキーの松井裕樹に一軍マウンドを踏ませ、『プロの洗礼』を浴びさせた。星野副会長と梨田監督がオコエの育成方針を巡って衝突しなければいいのだが…。(一部敬称略/スポーツライター・飯山満)
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スポーツ 2015年12月09日 14時00分
衰え加速で一代年寄取得に焦る横綱・白鵬vs八角理事長代行の攻防
それは、新米理事長代行の足元を見透かしたような横綱の先制パンチだった…。 北の湖理事長の急死を受け、急遽ナンバー2の八角事業部長(52・元横綱北勝海)が理事長代行に昇格した。相撲協会の大所帯を託された八角代行は、「常々、理事長が言っていた土俵の充実という思いを引き継いでいかなければいけない」と早速、北の湖路線の継続を打ち出した。任期は来年の3月いっぱいまでで、そのあと後任の理事長が選出されることになっているが、八角代行がそのまま理事長に就任する可能性が高いと見られている。 この八角代行の頭をさっそく悩ませることになりそうなのが、横綱白鵬(30)の“一代年寄問題”。 白鵬は北の湖理事長が亡くなったとき、こう言って周囲の神経を逆なでしている。 「(北の湖)理事長の手から一代年寄をもらいたかった」 一代年寄とは、協会に大きく貢献した力士に贈られる年寄株で、これまで贈られた顔触れは、大鵬、北の湖、貴乃花と錚々たる大横綱の名が並ぶ。いずれも20回以上優勝した横綱ばかりで、白鵬がここに名を連ねても何の違和感もない。 白鵬は「横綱は、20回優勝したら一代年寄をもらえる」と主張するが、協会のどの規約、規定にもそうは書かれていない。あくまでも理事会の判断次第なのだ。しかも、その前に「日本国籍を有する者」という規定が横たわっている。 「白鵬の父・ムンフバトさんは、モンゴル相撲の大横綱でモンゴル人初の五輪メダリスト。そんな英雄の息子が日本国籍を取得すれば、モンゴル国民からの非難は免れない。それゆえ白鵬は、なんとかモンゴル国籍のまま年寄(親方)になりたいという強い要望を持っている。しかし、亡くなった北の湖理事長は、たとえ白鵬といえども規定をクリアしない限り年寄になることは認めない、と言い続けてきた。それを承知の上で、白鵬がああいう発言をしたのは、八角代行に対するプレッシャー。九州場所の終盤の崩れ方を見ても、衰えは急ピッチですから、そうとう焦っているのは間違いない」(担当記者) 八角代行は北の湖理事長が急逝した直後、とみ子夫人から、「理事長は、ブレずに頑張れと言っていた」という遺言を受け取っている。この難問をどう対処するのか。 土俵外バトルは続く。
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スポーツ 2015年12月09日 11時00分
前田健太を巡る米球界の投手補強事情(後編)
米メディアが岩隈久志(34)の去就について、こう報じていた。「ドジャースが興味を示している。マリナーズは岩隈慰留を最優先事項に挙げていたが、岩隈はマ軍の提示した『規定額』を蹴った」−−。 この岩隈の去就が、前田健太(27)の移籍先も変えることになるのではないだろうか。 マリナーズが岩隈に提示した『規定額』とは、クオリファイング・オファーのこと。メジャー球団は契約最終年を迎える主力選手とシーズン途中に再契約してしまうケースも多い。メジャーでは慰留不可能と判断された場合はシーズン途中に放出し、若手選手との交換トレードをまとめるのが慣例だ。しかし、球団側が「残ってほしい」と思いつつも慰留交渉をまとめられないまま、シーズン終了を迎えてしまったとする。その場合、米球団側はワールドシリーズ終了から5日間に限り、独占交渉権を持てるが、メジャーリーガーの年俸上位125名の平均額を、1年契約の年俸分としてオファーを出さなければならないのだ。その平均年俸を『規定額』と言い、今季は1580万ドル、日本円で約19億1000万円となる。 岩隈はマリナーズから提示されたその1580万ドルを蹴ったのである。 「岩隈の15年度の年俸は700万ドル(約8億5000万円)です。規定額を受け入れていたら、大幅アップでした。岩隈サイドから漏れ伝わってくる情報によれば、最低で2年、3年以上の複数年契約にこだわっている、と」(米国人ライター) クオリファイング・オファーが導入されて4年目となるが、過去3年間、この制度を使っての残留交渉がまとまめられたことは一度もない。 今さらだが、マリナーズは日本人選手に“好意的なチーム”としても知られている。任天堂株式会社代表取締役社長、同相談役などの要職にあった故・山内溥氏が筆頭オーナーを務め、その考えを受け継ぐスタッフも多いという。こうしたチーム事情を考えると、「いったん単年契約を交わし、来年オフに改めて自身の希望する複数年契約を交わす」選択肢もあったのではないだろうか。 前出の米国人ライターがこう反論する。 「来年、岩隈が1年間ローテーションを守れば、改めて複数年契約を交わすことも可能だと思います。でも、好成績をおさめたとしても、岩隈は来年35歳です。35歳になった投手が3年以上の複数年契約を勝ち取るのは、一般的に見て難しい」 だが、34歳と35歳では大した違いはない。岩隈がマリナーズ以外の米球団と複数年契約を結ぶのも厳しいはずだ。ここで思い出されるのが、岩隈と前田健太の代理人を務めるエージェント会社だ。岩隈と前田はエージェント会社が一緒なのだ。 『ワッサーマン・メディア・グループ』は大手エージェンシーであり、同社副社長のアダム・カッツ氏と、ジョエル・ウルフ氏が前田の交渉を担当することになっているという。また、ウルフ氏は、昨オフにジャンカルロ・スタントンとマーリンズの間で『13年総額3億2500万ドル』(約400億円)の超大型契約をまとめた敏腕代理人である。 「今オフも同社の名前がスポーツメディアを賑わせています。ブランドン・クロフォード遊撃手を『6年総額7500万ドル』(約92億2500万円)でジャイアンツとの残留交渉をまとめました」(前出・同) 同社はダルビッシュ有もサポートしており、過去には、松井稼、五十嵐、高橋尚といった日本人選手のエージェントも手掛けてきた。前田にとってはこれ以上ない、頼もしい後ろ楯ができたわけだが、クロフォードの残留以降、前田争奪戦がさらに過熱してきたようにも見える。 今オフの米FA市場の目玉は32歳の右腕、ザック・グリンキーだった。そのグリンキーの争奪戦は、慰留を目指したドジャース、先発投手の補強を掲げるジャイアンツとDバックスの三つ巴で始まり、ドジャースが脱落。その後、Dバックスがジャイアンツとの一騎討ちを征した。 「グリンキーの争奪戦がマネーゲームになれば、Dバックスが有利なのは一目瞭然です。ジャイアンツはクロフォードの残留に大金を投じてしまいましたから」(前出・同) クロフォードの大型契約を仕掛けたのは、『ワッサーマン・メディア・グループ』だ。ジャイアンツのグリンキー獲得資金を目減りさせたとも言えなくはない。それに加えて、今回の岩隈の“規定額拒否”である。 ジャイアンツはグリンキー獲得に失敗し、マリナーズも岩隈の残留が難しくなった。本命にフラれたとなれば、次に目が行くのは、前田だ。 「資金力が豊富でグリンキーの残留に失敗したドジャース、そして、ヤンキース、レッドソックス、オリオールズなどが前田の入札に参加するようです」(同) メジャーリーグのトレードやFA交渉を行うGM会議はすでに始まっている。前田の代理人であるカッツ氏は慌ただしく、各球団の控室をまわっているという。前田に関しては「一切話すことができない」と繰り返しているそうだが、<岩隈の規定額拒否で前田獲得の金額を一気に釣り上げ、グリンキーなど大物投手の獲得に失敗した米球団に岩隈を好条件で売り込む>なるシナリオを書いたというのは、穿った見方だろうか。(スポーツライター・飯山満)
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スポーツ 2015年12月09日 11時00分
前田健太を巡る米球界の投手補強事情(前編)
鳴尾浜での自主トレを終えた藤川球児投手(35=阪神)が言った。 「グリンキーを獲ったので、マエケンは獲らないでしょうね」(12月5日) トラ番記者たちが話題を振ったからだが、この日の阪神選手は広島・前田健太(27)が「どこのメジャー球団と契約するか」を予想していた。そうなれば、メジャーリーグを経験した藤川は強い。日本に配信されてきた米球界報道によれば、ダイヤモンドバックスは前田のポスティングに参加することを公言している。だが、藤川は今オフの米FA市場の目玉がドジャースからFAになった右腕、ザック・グリンキー(32)であることを説明し、彼の獲得に成功したDバックスが前田獲得から撤退すると予想していた。 米国人ライターが『6年2億650万ドル』(約254億円)でDバックスと契約したグリンキーについて、こう説明してくれた。 「彼の評価が上がったのは、14年の地区シリーズですよ。ドジャースのエース、カーショウが不振で初戦を落としても、第2戦でグリンキーが好投し、『ド軍には2人のエースがいる』と言われたほど。球威、制球力ともにバツグンで、守備力は内野手が勤まるほど高く、バッティングも良い。投手なのにシーズントータルで3割以上の打率を残した年もある」 そして、藤川の予見は的中した。グリンキー獲得以降、米球界報道は「大型契約をまとめた後なので、補強費が制限される」と、Dバックスの前田争奪戦からの撤退を匂わす内容に変わってきた。 また、前田に興味を示していたカブスもカージナルスのジョン・ラッキーとの契約をまとめた。これで、カブスも前田とは交渉しないだろう。だが、前田の商品価値は下がらない。グリンキーを失ったドジャース、Dバックスとのグリンキー争奪戦に敗れたジャイアンツ、投手陣の再建を迫られているレッドソックス、ヤンキース、そして、岩隈久志との残留交渉をまとめられなかったマリナーズが本腰を入れてくると思われる。 米球界の前田に対する評価だが、「エースを張れる投手」とは見ていないものの、「先発ローテーションの3番手以降だが、2ケタ勝利が期待できる」というもの。ダルビッシュ有、田中将大が「エース」として大型契約をまとめただけに、この評価は前田にとっては納得できないものだろう。 前出の米国人ライターが前田に提示される契約内容をこう予想する。 「100万ドルクラス(約1億2300万円)の年俸は提示されないかも。100万ドルクラスだとしたら、3年以上の複数年はないと思います。メジャー球団は広島球団に支払う落札金の2000万ドルを含めて『前田獲得資金』と見ていますから。ダルビッシュや田中のときはチームのエースを獲得するという勢いがあったので…」 悲観的な声も聞こえるが、前田はダルビッシュ、田中に近い大型契約を勝ち取るとの見方もされている。その理由は−−。(スポーツライター・飯山満)
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スポーツ 2015年12月08日 14時00分
新監督への洗礼! 阪神・金本監督に早くも牙をむく「昭和のOB」虎の穴
阪神が“ディナーショー”を開催する。12月20日、都内ホテルで立食式のトークショーとなるそうだ。ゲスト出演など、詳細はまだ伝えられていないが、話題は当然、新生・金本阪神への期待論だろう。 「虎ファンは『若手が育ってくれるのなら、優勝は3年後でも』という論調が大半です。金本監督が就任しただけで、ペナントでのレース終盤で首位を陥落した重苦しい空気は払拭されましたから…」(在阪記者) しかし、当の金本知憲新監督(47)が感じているのは、そんな好意的な追い風ばかりではないようだ。 「金本新監督の欠席が気になります」(前出・同) 金本新監督が欠席したのは、故・中村勝広GMの『お別れの会』だった。同会では生え抜きはもちろん、西岡剛、福留孝介など故人によってタテジマに導かれた選手たちも「来季の活躍」を誓っていた。 「他球団の要人も駆けつけてくれました。苦楽をともにしたOBたちもです」(ベテラン記者) 川藤幸三OB会長、江夏豊氏、吉田義男氏、安仁屋宗八氏、真弓明信氏、岡田彰布氏など錚々たるメンバーが故人を偲んでいた。ここで、金本新監督がチームの発展、優勝を誓えば、最高の絵柄となったはず。球団は金本新監督の欠席を「所用」と発表していた。 だが、そのころ、関西系の情報番組には生出演する金本新監督の姿があった。メディア番組出演が「所用」なら、球団も日程調整できたのではないか…。 この日、故人を思う気持ちからか、一部OBから金本政権への苦言も聞かれた。 「(今季の敗因は)打線が…。だから、掛布を一軍に置いたほうがいいのでは?」 「一軍に年長者のコーチをもっと置いて」 故人を偲ぶ気持ちがチームへの期待に変わり、苦言となったのだ。気になるのは、苦言を呈したOBが「そう思っているのは、自分一人ではない」と言い切ったことだ。 「実績、チーム貢献度、年齢が金本新監督よりも“上”の掛布氏が二軍、一軍で'85年の優勝と、そこに辿り着くまでの過程を知っているのは平田(勝男)チーフコーチだけ。チームが勢いづいているときはまだしも、負けが込んできたときにどう建て直すかを分かっているのは、経験豊富な年長者です」(前出・ベテラン記者) 金本新監督は来季の展望を質問される度に「若手を育てる」と繰り返してきた。ファンも「待つ」と言っているが、目の前の試合を捨てるわけにはいかない。 「昭和の修羅場を知る年長組のOBは新監督誕生による“待望論”しか出ない現状を危惧しています。大切なのは、それよりも危機意識です」(前出・同) 金本新監督も、勝たなければならない伝統球団の宿命は分かっている。育成よりも勝利を優先しなければならないときも来る。負けが込んできたとき、OBたちは若いコーチ人事をどう捉えるか…。 金本新監督の要望で急ごしらえされた組閣だけに、解体もまた早そうだ。
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スポーツ 2015年12月08日 12時10分
マエケンのメジャー球界挑戦余波! 藤浪晋太郎はジャパンのエースになれるのか
「マエケンさんとは、多分(自主トレを一緒に)できそうにないですね」 藤浪晋太郎(21)が言った。これは阪神タイガース内のレクリエーションである『タイガース杯ゴルフ』の最中に出たセリフ。マエケンこと前田健太投手(27=広島)のポスティングシステムによる米球界挑戦が明らかになった。藤浪は2015年1月、前田が広島の若手を集めて行った自主トレに加わり、投球論や体作りなどを学んでいた。ペナントレースに関係のない自主トレとはいえ、阪神選手でありながら、広島選手の輪に独りで加わったことに驚いた関係者も少なくなかった。 「阪神には、自主トレに関する不文律みたいなものもあったんですよ。入団して3年くらい経つまでは(二軍の)鳴尾浜で自主トレをやる、という…。藤浪も球団の不文律を知っていましたが、『やってみたい』と球団上層部に相談し、許可を得ました」(球界関係者) 今季の完投7を含むチーム最多の14勝(7敗)の成績を見れば、前田との自主トレは意義があったわけだ。しかし、今も他球団のエースと親睦を深めることに批判的なOBもいる。 「オレたちの時代では考えられなかったこと。ライバルチームの選手と一緒に練習するということは手の内を明かすようなもの」 正論である。しかし、今のプロ野球界はライバルの関係が稀薄になったと言わざるを得ない。WBC、プレミア12の国際大会はもちろん、12球団は新たな資金源として侍ジャパンの常設化を決め、すでに動き始めている。招集された若手は普段接することのない対戦チームの主力選手と“野球談議”を交わし、経験したことのない練習法やコンディション作りに興味を持つ。藤浪が前田に弟子入りした理由も侍ジャパンにあり、チーム間の垣根を超えての情報の共有化はさらに加速するだろう。 藤浪は来年1月の自主トレについて、詳細は語っていない。前田のいない広島グループに加わるとは思えないので、おそらくは鳴尾浜に戻るか、施設の充実した場所を新たに探すことになるだろう。ひょっとしたら、自身が中心となって、同年代、ドラフト同期を誘い、新たなグループを立ち上げるかもしれない。 二軍監督に就任した掛布雅之氏が秋季キャンプ中、一部メディアに出演し、現代っ子とのギャップをこう語っていた。 「僕たちのころは先輩と自主トレをやろうなんて発想はなかった。だって、先輩に連れて行ってもらったら、その先輩を永遠に超えられないってことでしょ?」 時代は異なるが、『自分』を確立させることの重要性は変わらない。前田と決別した藤浪がどんな『自分』を作り上げるのだろうか。(スポーツライター・飯山満)