「虎ファンは『若手が育ってくれるのなら、優勝は3年後でも』という論調が大半です。金本監督が就任しただけで、ペナントでのレース終盤で首位を陥落した重苦しい空気は払拭されましたから…」(在阪記者)
しかし、当の金本知憲新監督(47)が感じているのは、そんな好意的な追い風ばかりではないようだ。
「金本新監督の欠席が気になります」(前出・同)
金本新監督が欠席したのは、故・中村勝広GMの『お別れの会』だった。同会では生え抜きはもちろん、西岡剛、福留孝介など故人によってタテジマに導かれた選手たちも「来季の活躍」を誓っていた。
「他球団の要人も駆けつけてくれました。苦楽をともにしたOBたちもです」(ベテラン記者)
川藤幸三OB会長、江夏豊氏、吉田義男氏、安仁屋宗八氏、真弓明信氏、岡田彰布氏など錚々たるメンバーが故人を偲んでいた。ここで、金本新監督がチームの発展、優勝を誓えば、最高の絵柄となったはず。球団は金本新監督の欠席を「所用」と発表していた。
だが、そのころ、関西系の情報番組には生出演する金本新監督の姿があった。メディア番組出演が「所用」なら、球団も日程調整できたのではないか…。
この日、故人を思う気持ちからか、一部OBから金本政権への苦言も聞かれた。
「(今季の敗因は)打線が…。だから、掛布を一軍に置いたほうがいいのでは?」
「一軍に年長者のコーチをもっと置いて」
故人を偲ぶ気持ちがチームへの期待に変わり、苦言となったのだ。気になるのは、苦言を呈したOBが「そう思っているのは、自分一人ではない」と言い切ったことだ。
「実績、チーム貢献度、年齢が金本新監督よりも“上”の掛布氏が二軍、一軍で'85年の優勝と、そこに辿り着くまでの過程を知っているのは平田(勝男)チーフコーチだけ。チームが勢いづいているときはまだしも、負けが込んできたときにどう建て直すかを分かっているのは、経験豊富な年長者です」(前出・ベテラン記者)
金本新監督は来季の展望を質問される度に「若手を育てる」と繰り返してきた。ファンも「待つ」と言っているが、目の前の試合を捨てるわけにはいかない。
「昭和の修羅場を知る年長組のOBは新監督誕生による“待望論”しか出ない現状を危惧しています。大切なのは、それよりも危機意識です」(前出・同)
金本新監督も、勝たなければならない伝統球団の宿命は分かっている。育成よりも勝利を優先しなければならないときも来る。負けが込んできたとき、OBたちは若いコーチ人事をどう捉えるか…。
金本新監督の要望で急ごしらえされた組閣だけに、解体もまた早そうだ。