その金本知憲監督(47)だが、すでに一部メディアでも明かしているが、阪神指揮官のオファーがあった際、断ろうと思ったという。その気持ちを一変させたのは、交渉にあたった南信男・前球団社長の言葉だった。
「チームを変えてほしい。そのためなら、たとえ(来年から)2年連続最下位でもかまわない。その代わり、3年目に優勝してくれ」
しかし、就任後の金本監督はこうも語っている。「ファンの方は(若手が育つまで)待ってくれるとは言ってくれますが、実際、(ペナントレースが)始まっちゃったら、どうかな(笑)」。これは、関西系メディアに出演したときに出たコメントだ。
金本監督は阪神ファンが熱いことを分かっている。最優先事項は若手の育成だが、最下位では許されない現実も熟知している。「目先の勝負にもこだわる」と明言しており、来季の勝つための構想もすでにコーチスタッフと話し合っていた。
『攻撃的2番打者』を置き、“野球偏差値の高い3番バッター”を育てる。
通常、2番打者は犠打、右方向へのバッティングなどが強要される。金本理論によれば、「1番バッターから始まるイニングは、実際は少ない」とのことで、クリーンナップ同様のバッティングをさせていくつもり。この構想はすでにコーチスタッフにも話しており、異論は出ていないそうだ。
そこで、考えられる新たな新2番打者だが、鳥谷敬(34)、大和(28)のいずれかだろう。
「金本監督が秋季キャンプで自ら指導したバッターの一人が大和でした。大和の打撃センスには一目置いていました」(チーム関係者)
大和は前任の和田豊監督時代も2番打者を経験している。しかし、右方向への打撃を意識しすぎるあまり、持ち前である長打力が消えてしまい、金本監督は「内角球は引っ張れ」「強い打球を打つように意識しろ」とアドバイスを送っていた。
また、鳥谷を2番にコンバートする私案を一部OBに打ち明けていたという。大和か、鳥谷が新打線のキーマンとなるだろう。
「点差、イニングなどを考えて打撃スタイルを変えることのできるバッターを3番に定着させ、一発のある4番、5番に繋ぐスタイルを理想としています。秋季キャンプで、金本監督の目に止まった新3番バッター候補はいませんでしたが」(前出・同)
従来通り、鳥谷を3番で使う選択肢もある。来春のキャンプ次第だが、新人の高山俊(22=明大)を抜てきする可能性も聞かれた。ドラフト1位で即戦力投手ではなく、バッターを指名したということは、「使う」の意思表示だろう。高山に攻撃的2番を託し、鳥谷を3番に置く打順も十分に考えられる。
通常、犠打を嫌う傾向が見られるのは投手出身の指揮官だ。「バント=相手投手にアウトカウントをくれてやる」の発想からで、打者出身の監督は「強行策=併殺の危険性」を懸念し、確実に進塁させる方法として犠打を好む。打者出身の金本監督が犠打を好まないというのは“異質”でもある。
金本監督の攻撃的打線を組む目的は、得点力を高めることにある。チーム全体の弱点でもある救援投手陣の負担を軽減させたいとしている。また、阪神には先制点を奪われると、すぐに諦めてしまう傾向も見られた。打ち勝つ野球を定着させることで、精神面でもチームの意識を変えていこうとしているのだ。