北の湖理事長の急死を受け、急遽ナンバー2の八角事業部長(52・元横綱北勝海)が理事長代行に昇格した。相撲協会の大所帯を託された八角代行は、「常々、理事長が言っていた土俵の充実という思いを引き継いでいかなければいけない」と早速、北の湖路線の継続を打ち出した。任期は来年の3月いっぱいまでで、そのあと後任の理事長が選出されることになっているが、八角代行がそのまま理事長に就任する可能性が高いと見られている。
この八角代行の頭をさっそく悩ませることになりそうなのが、横綱白鵬(30)の“一代年寄問題”。
白鵬は北の湖理事長が亡くなったとき、こう言って周囲の神経を逆なでしている。
「(北の湖)理事長の手から一代年寄をもらいたかった」
一代年寄とは、協会に大きく貢献した力士に贈られる年寄株で、これまで贈られた顔触れは、大鵬、北の湖、貴乃花と錚々たる大横綱の名が並ぶ。いずれも20回以上優勝した横綱ばかりで、白鵬がここに名を連ねても何の違和感もない。
白鵬は「横綱は、20回優勝したら一代年寄をもらえる」と主張するが、協会のどの規約、規定にもそうは書かれていない。あくまでも理事会の判断次第なのだ。しかも、その前に「日本国籍を有する者」という規定が横たわっている。
「白鵬の父・ムンフバトさんは、モンゴル相撲の大横綱でモンゴル人初の五輪メダリスト。そんな英雄の息子が日本国籍を取得すれば、モンゴル国民からの非難は免れない。それゆえ白鵬は、なんとかモンゴル国籍のまま年寄(親方)になりたいという強い要望を持っている。しかし、亡くなった北の湖理事長は、たとえ白鵬といえども規定をクリアしない限り年寄になることは認めない、と言い続けてきた。それを承知の上で、白鵬がああいう発言をしたのは、八角代行に対するプレッシャー。九州場所の終盤の崩れ方を見ても、衰えは急ピッチですから、そうとう焦っているのは間違いない」(担当記者)
八角代行は北の湖理事長が急逝した直後、とみ子夫人から、「理事長は、ブレずに頑張れと言っていた」という遺言を受け取っている。この難問をどう対処するのか。
土俵外バトルは続く。