スポーツ
-
スポーツ 2016年05月29日 12時00分
約7年ぶり! “ジュニアオールスター戦”スーパーJカップの出場枠が決定! 気になる「X」は?
3月3日の新日本プロレス大田区総合体育館で、木谷高明オーナーから約7年ぶりとなるスーパーJカップ(以降Jカップ)の開催が発表された。Jカップは過去5回行われているが、毎回ホスト役を務める主催団体を持ち回り的に変えることで、業界全体の大会であることを打ち出している。過去の大会の主催団体と優勝選手は次のとおりだ。1st STAGE 新日本プロレス(1994年) <優勝>ワイルド・ペガサス2nd STAGE WAR(1995年)<優勝>獣神サンダー・ライガー3rd STAGE みちのくプロレス(2000年)<優勝>獣神サンダー・ライガー4th STAGE 大阪プロレス(2004年)<優勝>丸藤正道5th STAGE 新日本プロレス(2009年)<優勝>丸藤正道 今回は「スーパーJカップ2016」というタイトルになり、Jリーグのブームにあやかって付けられた「STAGE」という名称がタイトルからはずれた。また主催団体はプロレスリング・ノアと新日本が共催することになった。トーナメント1回戦は7月20日に後楽園ホール(8試合)が行われ、2回戦、準決勝、決勝をノアのお膝元でもある有明コロシアムで8月21日に行う。有明コロシアム大会ではジュニアのスペシャルマッチも組まれる予定だ。 また団体(または軍団・ユニット)別の出場枠も決定し、発表された。新日本プロレス 本隊 3新日本プロレス CHAOS 1全日本プロレス 1プロレスリング・ノア 3鈴木軍 2ドラゴンゲート 1KAIENTAI DOJO 1琉球ドラゴン プロレスリング 1ROH 1CMLL 1X(未発表) 1計16選手 Jカップは第1回大会から普段絡みがない団体や選手による対戦が注目されるが、今回は全日本の参戦がサプライズと言ってもいいだろう。3月の時点で全日本は出場団体に入っていなかった(逆に名を連ねていたゼロワンは外れている)。全日本は世界ジュニアヘビー級王者である青木篤志が参戦すれば久々にノア&新日本の選手と絡む可能性があり、楽しみが膨らむ。 出場選手は参加各団体に委ねられており、KAIENTAI DOJOはJカップへの出場権を懸けた予選を行うことが発表されている。代表のTAKAみちのくは第1回Jカップが自身の出世試合だったので、思い入れが強いのだろう。層が厚い新日本は本隊とCHAOSを合わせて4枠あるが、ROHやCMLLの代表選手も新日本への参戦経験者が出場することが濃厚で、新日本ジュニアという括りでは6枠。IWGPジュニア王者はもちろん、21日から開幕した「ベスト・オブ・ザ・スーパーJr.」の上位選手がラインナップされるのは間違いない。 ノアも現在ノアマットに参戦している鈴木軍を含めれば、ノアジュニアから5枠という見方もできる。TAKAみちのく、タイチ、エル・デスペラードといった鈴木軍のジュニア部隊は昨年1月、ノアに戦場を移してから新日本ジュニアの主力とはシングルを行っていない。特にデスペラードはノアで自信を深めているだけに、何としてでも出場したいはずだ。 前大会でYAMATOが出場したドラゴンゲートは今回も若手の有望株を送り込んで来ることが予想される。Eitaあたりが出場すれば話題を呼びそう。琉球ドラゴンはライガーとも対戦経験がある代表のグルクンマスクが初出場か? そして気になるのは今回「X」となっている未発表枠。団体数の増加に加えて日程などの都合もあり、なかなか全ての団体のジュニア選手が一堂に会するのは難しい。個人的にこの「X」で期待したい選手がいる。それは今年1月の「ファンタスティカマニア」後楽園ホール大会で、一夜にして旋風を巻き起こしたカマイタチ(高橋広夢)だ。現在カマイタチはROHなどに出場している。「X」枠で出場するに値する選手なのは言うまでもない。帰国後はジュニアを背負う覚悟があることもインタビューなどで明らかにしているだけに、Jカップでの本格凱旋に期待したい。 過去の大会ではいろんな夢を見せてくれたJカップの復活はプロレス界にとっても喜ばしいことだ。これを機に4年一度、オリンピックイヤーの定期開催検討を願っている。(増田晋侍)<新日Times VOL.19>
-
スポーツ 2016年05月26日 15時00分
金本・掛布効果でウハウハ! 球団と現場「天と地」の温度差
アニキが極秘にSOSを出していた−−。 金本知憲監督(48)がGW中、渉外担当者に韓国球界を視察させていた。さらに、米球界のコーディネーター側とのスケジュール調整が終わり次第、緊急渡米させるという。渉外担当者を立て続けに韓国、米国に飛ばす理由はただ一つ。外国人選手の“途中獲得”だ。 「今季でメッセンジャーとゴメスとの契約が満了します。慰留するかどうかは今後の成績次第ですが、活躍したら、逆に彼らがメジャー復帰を希望するかもしれない。万が一への備えであると同時に、メジャーの選手枠から漏れた選手の中に日本球界向きの逸材がいたら緊急獲得という流れになります」(球界関係者) 開幕して約2カ月、金本監督の『超変革野球』によって、チームには新しい風が吹き込んでいる。30数試合を過ぎただけでも、“プロ入り初”を達成した選手が8人もいる。高山俊、横田慎太郎、北條史也など6野手がプロ初安打を放ち、投手の岩貞祐太も勢いに乗ってそれを達成。'14年ドラフト1位の横山雄哉もプロ初勝利を上げた。 「ですが勝率は5割程度。金本監督以下、コーチ陣は満足していません。というか打線が下降気味で焦りすら感じている」(前出・同) そのため新外国人選手の調査を前倒しさせたのだろう。だが、フロントは必ずしもそうは思ってない。 「高山や今年ブレイクした岩貞、北條、育成から這い上がった原口文仁らの活躍を受け、彼らの新グッズの発売も事実上確定しました。まあ、既存グッズの背番号を変えるだけで済むので、球団は大儲けです」(ベテラン記者) それだけではない。金本監督や選手が各々プロデュースした甲子園限定の弁当が、売れ行き好調なのである。全部で35種類。2位が今年から加わった金本監督プロデュースの但馬牛御膳(1800円)で、1位はやはり、金本監督プロデュースのスタミナ弁当。こちらは'08年から販売され、引退後も売り上げ上位5品に必ず入る人気メニューだ。 「金本監督関連で1、2フィニッシュです。甲子園は連日満員。営業面での『超変革』は大成功というか、終了した気になっているんでしょうね」(前出・同) 弁当完売、新グッズの発売前倒し…。金本監督は下降気味の打線に怒りを押し殺すようにして、試合を見守っている。しかも、掛布雅之二軍監督の人気で鳴尾浜野二軍球場の外野フェンスに広告が出た。前代未聞だという。この営業面での上方修正が、現場とフロントの温度差になったようだ。 「交流戦以降のキーマンは39歳の中継ぎ・福原忍ですよ。福原が本調子になれば、4人目の外国人選手であるドリスを二軍に落として、ヘイグと入れ換えることも可能になる。打撃不振だったヘイグは二軍で復調し、打率4割を超えています」(在阪メディア) 負けが込めば、これまで好意的に見てくれたファンも怒り出す。金本監督はそれを分かっているから、勝つことにこだわるのだが、フロントの変革はまだ時間が掛かりそうだ。
-
スポーツ 2016年05月25日 15時00分
阪神・金本「超変革」成功でも、立ちはだかるフロントの厚い壁
金本知憲監督(48)がGW中、渉外担当者に韓国球界を視察させていた。さらに、米球界のコーディネーター側とのスケジュール調整が終わり次第、緊急渡米させるという。渉外担当者を立て続けに韓国、米国に飛ばす理由はただ一つ。外国人選手の“途中獲得”だ。 「今季でメッセンジャーとゴメスとの契約が満了します。慰留するかどうかは今後の成績次第ですが、活躍したら、逆に彼らがメジャー復帰を希望するかもしれない。万が一への備えであると同時に、メジャーの選手枠から漏れた選手の中に日本球界向きの逸材がいたら緊急獲得という流れになります」(球界関係者) 開幕して約2カ月、金本監督の『超変革野球』によって、チームには新しい風が吹き込んでいる。30数試合を過ぎただけでも、“プロ入り初”を達成した選手が8人もいる。高山俊、横田慎太郎、北條史也など6野手がプロ初安打を放ち、投手の岩貞祐太も勢いに乗ってそれを達成。'14年ドラフト1位の横山雄哉もプロ初勝利を上げた。 「ですが、勝率は5割程度。金本監督以下、コーチ陣は満足していません。というか打線が下降気味で焦りすら感じている」(前出・同) そのため新外国人選手の調査を前倒しさせたのだろう。だが、フロントは必ずしもそうは思ってない。 「高山や今年ブレイクした岩貞、北條、育成から這い上がった原口文仁らの活躍を受け、彼らの新グッズの発売も事実上確定しました。まあ、既存グッズの背番号を変えるだけで済むので、球団は大儲けです」(ベテラン記者) それだけではない。金本監督や選手が各々プロデュースした甲子園限定の弁当が、売れ行き好調なのである。全部で35種類。2位が今年から加わった金本監督プロデュースの但馬牛御膳(1800円)で、1位はやはり、金本監督プロデュースのスタミナ弁当。こちらは'08年から販売され、引退後も売り上げ上位5品に必ず入る人気メニューだ。 「金本監督関連で1、2フィニッシュです。甲子園は連日満員。営業面での『超変革』は大成功というか、終了した気になっているんでしょうね」(前出・同) 弁当完売、新グッズの発売前倒し…。金本監督は下降気味の打線に怒りを押し殺すようにして、試合を見守っている。しかも、掛布雅之二軍監督の人気で鳴尾浜野二軍球場の外野フェンスに広告が出た。前代未聞だという。この営業面での上方修正が、現場とフロントの温度差になったようだ。 「交流戦以降のキーマンは39歳の中継ぎ・福原忍ですよ。福原が本調子になれば、4人目の外国人選手であるドリスを二軍に落として、ヘイグと入れ換えることも可能になる。打撃不振だったヘイグは二軍で復調し、打率4割を超えています」(在阪メディア) 負けが込めば、これまで好意的に見てくれたファンも怒り出す。金本監督『超変革』は大成功だが、フロントの壁が厚く立ちはだかる。
-
-
スポーツ 2016年05月24日 14時00分
友成那智 メジャーリーグ侍「007」 青木宣親が打率低迷でレギュラー落ちの危機!
アメリカンリーグ西地区所属のシアトル・マリナーズは、メジャーでもっとも長い間プレーオフに進出していない球団だが、今季はオーナーが任天堂から地元の投資家グループに変わったという発表があった4月下旬から好調の波に乗り、同地区の首位を走っている(5月12日現在)。 この快進撃に多大な貢献をしているのが、昨年までソフトバンクで活躍した李大浩だ。今のところ「左投手用の一塁手」という位置づけのため、先発出場するのは3試合に1度程度で出場機会は限られているが、チャンスに滅法強く、4月13日に代打サヨナラ本塁打(ツーラン)、5月4日には勝ち越しツーランを放ち予期せぬヒーローになった。 李は昨年11月上旬、メジャーに挑戦するためソフトバンクには戻らないことを宣言した。'15年に韓国リーグからパイレーツに移籍した姜正浩(カン・ジョンホ)がパワフルな打撃で大活躍したため、メジャーの数球団が韓国人の長距離砲獲得を検討しており、実績十分の自分には必ずいいオファーが来ると思っていたのだ。 しかし、韓国代表チームの3番打者・金賢洙(キム・ヒョンス)にはオリオールズから4年1200万ドル(13億円)、5番打者の朴炳鎬(パク・ビョンホ)にはツインズから2年700万ドル(7.5億円)のオファーがあったが、4番打者の李大浩にはどこからもオファーが来なかった。最大の原因は、パワーはあっても、肥満体で敏捷性に欠けるため、指名打者でしか使えないと見なされたからだ。それに加え、すでに33歳と「適齢期」を過ぎていたことも災いした。 渡米して売り込みを図ったが、1月下旬になってもメジャー契約してくれる球団は現れなかった。そこで彼はプライドを捨ててマリナーズにマイナー契約で入団。メジャーのキャンプに招待選手として参加し、オープン戦で好成績を出して開幕メンバーに入ることに一縷の望みを託した。 オープン戦は前半、メジャーの投手にタイミングが合わず打撃成績が低迷。後半戦に入ってやや持ち直したが、それでも2割6分4厘、1HR、7打点という平凡な数字に終わった。しかし「左投手用の一塁手」の座を争った2人の打者がともに不調だったため、幸運にもメジャーの開幕メンバーに入ることができた。 開幕後、李大浩は低く評価された鬱憤を晴らすかのようによく一発が出て、評価が急上昇。一方、右投手用の一塁手として起用されているアダム・リンドは打撃不振にあえいでいる。そのため、マリナーズの首脳陣はリンドより李を優先的に使うことを検討中で、今後、出場機会が増えることは確実だ。 期待されるのは20本塁打だ。 マリナーズの本拠地セーフコフィールドは球場が広いうえ、風がレフトからライトに吹くためレフト方向への打球が伸びない。『右の長距離砲の地獄』と言われることもあるほどだ。そんな不利な条件の中で李大浩は「9.2打数に1本」という驚異的なペースでアーチを生産している。今季終了後FAになれる契約になっているので、20本の大台に乗せれば、今オフ、3年3000〜4000万ドル(32〜43億円)レベルの契約をゲットできるだろう。 青木宣親は開幕からトップバッターに固定されているが、打率が低空飛行を続けていて5月12日時点の打率は2割3分8厘。この状況が続くと、レギュラーの座が危うくなるのは必至だ。 これまで任天堂が筆頭オーナーだったマリナーズでは日本人選手が優遇される傾向があったが、4月下旬、任天堂は所有するマリナーズの株式の大半を14億ドル(1500億円)で地元の投資家グループに売却し、球団経営から撤退した。 マリナーズは野球に興味のない任天堂の総帥・山内溥氏('13年に死去)が球団を所有。米国における自分の利益代表であるハワード・リンカーン氏(任天堂アメリカ元社長)と球団買収の際、功のあった弁護士チャック・アームストング氏に球団経営を丸投げしていた。しかし、彼らは野球ビジネスのプロではないため臨機応変な運営ができず、シーズン中のトレードを行わずにプレーオフ進出を逃がしたことが度々あった。 先月、任天堂から球団を買収した投資家グループのリーダー、ジョン・スタントン氏はやる気満々で、自ら球団社長に就任。7月末のトレード期限までに、人の入れ替えを積極的にやっていく方針を表明している。 マリナーズの3Aでは若手外野手のロメロが4割近いハイアベレージを出しているので、球団首脳としてはメジャーに引き上げて出場機会を与えたいところだ。青木の打率が6月になっても低迷しているようだとトレードの可能性が浮上するかもしれない。ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。
-
スポーツ 2016年05月23日 16時00分
プロレス解体新書 ROUND2 〈A猪木vs藤原喜明〉 思惑が入り乱れた末の師弟対決
「この1年半のUWFの闘いがなんであったかを確認するために、新日本に来ました」 1985年12月、両国国技館のリング上から、前田日明のあいさつとともに新日本プロレス復帰参戦を表明したUWF。翌年明けからアントニオ猪木への挑戦権をかけたUWF勢によるトーナメント戦が始まり、これを勝ち上がったのが藤原喜明であった。 猪木への挑戦者決定戦となった藤原vs前田。その結着のゴングが鳴らされた瞬間、会場は低いどよめきに包まれた。そもそもどちらが勝ったのかが判然としない。 マットに伏せ倒れているのは藤原だが、一方の前田も脚を引きずり顔をしかめている。結果、レフェリーにより勝ちを告げられたのは藤原であった。 テレビ解説の山本小鉄は、「藤原に足首を極められた前田がギブアップした直後、藤原は前田のスリーパーで締め落とされた」と、不透明な結末への補足説明をした。だが、勝った藤原への歓声はまばらで、それよりも前田敗退への落胆の溜息が会場のあちこちから漏れ聞こえることになる。 この試合が前田の地元大阪で行われたため、というばかりではない。当時、選手の大量離脱など暗い話題の多かった新日において、前田はファンの“希望”だったのだ。 この頃、新日の常連外国人といえば、すでに猪木とは格付けの済んだ感のあったディック・マードックにマスクド・スーパースター。エリック兄弟はまだ若く、猪木よりも藤波辰爾らのライバルと見られていた。 唯一、猪木と完全決着がついていなかったのはブルーザー・ブロディだが、前年暮れのMSGタッグリーグ決勝をボイコットし、新日離脱が濃厚視されていた(以後、いったん新日に復帰した後、再度離脱して全日本プロレスへ)。 そんな中にあって、前田は猪木の敵役として、また次代のエースとしても、その活躍が渇望されていた。しかし、その期待は藤原の勝利により、先送りとなってしまった。 そうして2月に行われた猪木と藤原の試合は、名目上は“新日とUWFの頂上決戦”とされたものの、かつて両者が師匠と付き人の関係にあったことはコアなファンならば先刻承知。そのため当初から、藤原の下剋上を期待する声は薄かった。 猪木もまた、あくまでも自分が格上であることを意識した試合運びで、藤原のアキレス腱固めには「極める角度が違う」と上から目線のアピール。さらには局部への蹴りや顔面へのストレートパンチとやりたい放題の末に、藤原をスリーパーで締め落としてみせた。 これに怒ったのがセコンドの前田で、勝ち名乗りを上げる猪木に駆け寄ってハイキック一閃。マットに崩れる猪木を尻目に、「猪木なら何をしても許されるのか!」と吐き捨てたその姿は、プロレス新時代の到来を予感させるに十分だった。 「この時点で新日は、猪木vs前田を将来のドル箱カードとして見据えていました。そのことはもちろん猪木も納得済みです。そうでなければ前田のキックを食らったりはしない。次につながるストーリーがなければ、ただの蹴られ損ですから」(当時の新日関係者) では、なぜこのカードは実現しなかったのか。 「というか、あの時点で実現したとして、いったいどっちが勝つんですか? かねてから『ワールドプロレスリング』中継を担うテレビ朝日は、あくまでも猪木がトップでなければ、テレビ放送する価値がないとの構え。だからといって、将来のエース候補である前田を簡単に潰すわけにもいかない」(同) やる以上は、前田がトップに立つことをファンや関係者に納得させた上で、最低でも猪木と互角以上の闘いを見せなければならないわけである。そうして、そんな要望に応えるかのごとく、前田は着実に実績を重ねていった。 タッグ戦ながら猪木にリングアウト勝ちを収めると、ドン・中矢・ニールセンとの異種格闘技戦でも激勝を果たす。これにより、いよいよ世代交代が現実味を帯びてきたかに見えたのだが、そこで思わぬ横やりが入る。 新日vsUWFの対抗戦は、ライトなファン層からすると関節技主体の攻防が地味に映ったのか、コアなファンの熱狂とは裏腹に、テレビ中継の視聴率はむしろ対抗戦以前よりも低くなってしまったのだ。 そのためテレビ朝日の要望で、『全日本プロレス中継』(日本テレビ系)を活性化させた立役者である、長州力の新日復帰工作が始まった。 長州路線で行くとなれば、もはや猪木と前田が闘う必然性はない。前田を新エースの座に就かせる“大河ドラマ”は、シナリオ変更を余儀なくされてしまったのだった。
-
-
スポーツ 2016年05月22日 16時00分
友成那智 メジャーリーグ侍「007」 日本人大リーガーの最新マネー事情
日本人大リーガーの年俸が超高額であることは広く知られているが、税金でどれほど引かれるか、節税はどうしているのかといった点は、ほとんど報道されていない。そこで、今回は大リーガーの懐事情をお伝えしよう。■手取り額 日本では高年俸の選手に45%の所得税と10%の地方税が掛かる。そのため55%を税金に持っていかれ、手元に残るのは45%に過ぎない。 米国では所得税(連邦税)の最高税率が39.6%なので、日本人大リーガーはまずこれを支払う義務が生じる。 これに地方税(州税+市民税)が加わるが、米国では州税のない州が7州ある反面、州税率が10%を超す州もいくつかある。そのため地方税が2〜3%で済む人もいれば10%を超すケースもある。 2〜3%で済むのは州税がない州に居住し、かつ所属球団も州税がない州にあるケースだ。岩隈久志は州税のないワシントン州シアトルに自宅を構えている。球団もシアトルにあるため、地方税の負担は2〜3%で済み、連邦税と合わせても総納税額は42%にとどまり、58%が手元に残る。 逆に田中将大は球団の所在地が州税の高いニューヨーク州で、自身も同州(ニューヨークのマンハッタン)に居住しているため10%を超す地方税を収めないといけない。そのため連邦税と地方税を合わせた総納税額は50%近くになり、手元に残るのは年俸の半分ということになる。■代理人に年俸の5% それ以外に避けられない大きな出費がある。代理人に対する報酬で、年俸の5%が出ていく。それにより最終的に残るのは年俸の45〜53%になってしまう。■メジャー流節税法 多くのメジャーリーガーが実践しているのは、州税負担の大きい州から州税のない州に移り住むことだ。ニューヨーク州は地方税が際立って高いため、ヤンキースの選手は大半が州税のないフロリダ州に自宅を構えている。ヤンキースの主力選手でニューヨークに自宅があるのは、節税に無頓着な田中将大だけである。■年俸以外の収入(1)インセンティブ 故障リスクの高い選手は保証年俸が低く抑えられ、稼働率に応じてインセンティブ(付加給)が支払われる契約になるケースが多い。 その典型が前田健太で、保証年俸は300万ドルしかないが、故障せずに32試合先発と200イニングを同時にクリアすれば1015万ドル(11億円)のインセンティブが出る契約になっている。岩隈久志も190イニングをクリアすると250万ドル、青木宣親も500打席で100万ドル(1億1000万円)、600打席で200万ドル(2億2000万円)支払われる契約を交わしている。(2)ポストシーズン分配金 日本では日本シリーズに勝っても優勝チームの選手が手にする分配金は300万円程度だが、メジャーの分配金はそれより一ケタ規模が大きい。昨年はワールドシリーズに勝ったロイヤルズの選手に37万ドル(4100万円)、敗れたメッツにも30万ドル(3300万円)支払われた。それだけでなく、リーグ優勝シリーズで敗退した2チームの選手に13万ドル(1430万円)、地区シリーズで敗退した4チームの選手に3万6000ドル(400万円)、ワイルドカードゲーム(1ゲームプレーオフ)で敗退した2チームの選手に1万5000ドル(165万円)の分配金が支払われており、計10球団の選手が分配金にありついた。(3)グッズ収入 MLBと選手会との協定でグッズの売り上げ収益は選手に平等に分配される決まりになっている。そのため、フルシーズン在籍した選手には数万ドルの分配金が支給される。(4)航空チケット 日本人選手には家族1人につき毎年、日米間の往復航空券(ファーストクラスかビジネスクラス)が2枚支給される。上原浩治は奥さんと子供2人の計4人家族なので、8枚の往復航空券(金額にして720万円相当)が球団から支給されている。(5)家賃補助 日本人大リーガーの契約書には球団が毎年3万ドルから5万ドルの家賃補助をするという項目が入っているケースが多い。この金額が一番高いのは田中将大で、毎年10万ドル(1100万円)が支給されている。しかし、現在住んでいるマンハッタンの中心部にあるトランプタワーのコンドミニアムは家賃が月額650万円なので、それほど助けにはなっていないようだ。 このように、日本人大リーガーは年俸以外に様々な収入があるので、メジャーに行って2、3年目には郊外の高級住宅地に立つ豪邸を200万ドル(2億2000万円)程度で購入し、日本では味わえないセレブな暮らしを満喫することになる。ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。
-
スポーツ 2016年05月20日 16時00分
シンクロ日本代表 国際大会優勝でもスパルタ・井村コーチとの埋まらない温度差
シンクロナイズド・スイミング「マーメイドジャパン」が、日本選手権兼ジャパンオープンで優勝した(5月1日)。しかし、喜びの声はない。彼女たちを指導する井村雅代ヘッドコーチ(以下、HC)は「練習から完璧なものができていない」と、リオデジャネイロ五輪本番での危機意識を口にした。 「彼女たちはすでにリオ五輪出場権を獲得しています。今回のジャパンオープンは本番さながらの緊張感で挑みましたが、井村HCの言う通り、演技は未完成でした」(体協詰め記者) 未完成だったのには理由がある。マーメイドジャパンは五輪出場権を懸けた3月の世界大会後、演技プログラムを大幅に変えたからだ。この時期のプログラム変更は、リオ本番に間に合わない危険性をともなうが、その決断には井村HCの強い信念が秘められていた。 「3月の最終予選で、日本は金メダルを争うライバルのウクライナに敗れているんです。それも、『0.0525点差』の僅差。井村HCは審査基準に関する抗議も行うほど激昂していましたが、同時に、このままではリオ本番で勝てないと察したようです」(同) 帰国直後の井村HCは、リオ出場を決めた感想を求められたが、「腹が立っただけで帰ってきた」と吐き捨て、演技プログラムの変更もすぐに強行された。 「シンクロはチームプレーです。1人がミスをすると、すべてがダメになってしまう。彼女たちはミスした選手を慰め、励ますが、井村HCの考えだと、かばい合う優しさが演技の質を落とす、と。ウクライナに負けた後、井村HCは悔し涙を浮かべるほど怒っていたのに、彼女たちは五輪出場を喜んでいました。強化合宿中の練習時間は1日平均12時間強。休日は自主練習。上を目指すなら、それくらいやらないと…」(関係者) 演技変更にはマーメイドのメンバーたちを引き締める狙いもあったようだ。井村HCは、勝てるメンバーでなければ厳しくしない。非情な練習を続けても井村批判が出ないのは、指導者としての信念が伝わっているからだろう。
-
スポーツ 2016年05月19日 15時10分
白鵬の懲りない“ダメ押し”連発に怯える対戦力士たち
横綱の品格は、どこへ…。 8日から始まった大相撲夏場所(東京・両国国技館)もいよいよ終盤。優勝争いも白熱しているが、2場所連続37回目の優勝を目指す本命の白鵬(31)の横綱らしからぬ荒っぽい相撲に批判が高まっている。 勝負がついたあとに押したり、投げ飛ばしたり…。これら白鵬が行う“ダメ押し”は、いまに始まったことではない。先場所も連発し、8日目の嘉風戦では寄り切った後、土俵下に投げ落とし、下敷きになった井筒審判長(元関脇逆鉾)が左大腿骨骨折で全治3カ月という重傷を負う深刻なトラブルも引き起こしている。 「申し訳ない。(お詫びに)何でもしたい気持ちです」 翌日、審判部に呼び出されて厳重注意された白鵬は、一応こう謝罪していた。 審判部幹部は、この場所前の力士会にも乗り込んで改めてダメ押し厳禁を通告したが、肝心の効果はさっぱり。今場所も白鵬は平然とこのルール違反を繰り返し、5日目の魁聖戦で寄り切った後、背中を押すダメ押しに及んだ。 「あれではお客さんにケガをさせる可能性がある。横綱になって10年。そのくらい(トップの)横綱という地位で周囲が奉ってしまうと、自分がやっていることは間違いない、と思ってしまうのが人間の常だ」 目撃した横審の守屋秀繁委員長は、こう苦々しい口調で慢心を指摘した。 「何か大きなフラストレーションでもあるのでは?」 こう推測する協会関係者もいるが、それをぶつけられた相手はいい迷惑。さすがに36回も優勝している横綱だけに正面切っての批判は聞こえてこないが、「ケガでもしたら損。できることならやりたくない」と、こぼす力士も出てきている。 5日目の打ち出し後、こんな動きをいち早く察知した一門の友綱審判部副部長(元関脇魁輝)は白鵬の師匠である宮城野親方(元幕内竹葉山)に電話で注意。翌朝、友綱親方の元に出向いた白鵬は、「以後、気を付けます」と反省の意を伝えたというが、横綱ともあろう者がこんなことをすること自体、異例なのだ。 また先場所、井筒親方が負傷したとき、一部の審判委員から、「出場停止にすべきだ」という声も上がったという。 果たして、白鵬の横綱らしからぬ所業はこれで収まるか。苛立つ白鵬の振る舞いから、まだまだ目を離せそうにない。
-
スポーツ 2016年05月17日 16時00分
おもしろ大相撲「宇良劇場」開演 新十両・宇良が宙を舞う
「宇良劇場」が大相撲を盛り上げている。新しい目玉の出現だ。 大相撲春場所が東京・両国国技館で5月8日から始まったが、今場所もまた人気は上々。37回目の優勝を目指す横綱白鵬(31)を筆頭に、成績次第では横綱昇進の声も掛かる大関稀勢の里(29)らのツバぜり合いが見どころ。 しかし、新十両ながら、上位陣に負けないほど人気急上昇中の力士がいる。初土俵から7場所という、史上4位タイのスピードで十両に昇進してきた木瀬部屋所属の宇良(23)だ。 宇良は、身長1メートル73センチ、体重127キロと体は決して大きくないが、取り口は豪快そのもので、ファンの注目を集めている。中でも関西学院大時代、奇手の“居反り”を得意にいていたことで、その名を知られていた。 居反りは相手のフトコロに潜り込み、両ひざを抱え上げて後ろに反って倒す大ワザで、昭和30年に決まり手が制定されて以来、幕内で二度、十両で一度しか出ていない珍手。最も新しいのは、23年前の平成5年初場所で、十両の智ノ花が花ノ国を相手に決めている。 「稽古場では3回も決めているそうです。3月末の新十両会見でも『相手が大きい十両の方が出やすくなる』と自信を見せていました。木瀬親方(元幕内肥後ノ海)も『居反りはもともと逆転のワザだけど、宇良の居反りは攻めのワザ。それ以外にも多彩なワザの持ち主で、見ていて面白い』と売り込んでいます」(担当記者) この奇手のおかげで、宇良人気はうなぎ上り。化粧まわしも母校の京都・鳥羽高校や関学大などから3本も贈られた。新調した締め込みもひと際目立つピンク色で、異能力士ぶりに花を添えている。 「ファンばかりでなく、力士仲間からも注目の的ですよ。ワザ師ぶりではずっと先輩の安美錦も、『オレも居反りを見たい』と言って、4月末の稽古総見のときも、『やれ、やれ』と、けしかけていました。楽しみな力士が出てきましたね」(協会関係者) これとまったく対照的なのが、これまで人気が大きく先行していた遠藤(25)だ。2場所ぶりに幕内に復帰したものの、場所前に再び古傷の左ひざに痛みが出て稽古ができない日が続き、終始憂い顔だったのが気掛かりだ。 勝てなければ人気も落ちる。明らかに遠藤への声援は小さくなった。
-
-
スポーツ 2016年05月16日 14時00分
プロレス解体新書 〈力道山vs木村政彦〉 今なお波紋を呼ぶ“昭和の巌流島”
1954年(昭和29年)12月22日、力道山vs木村政彦の一戦は相撲と柔道の頂上決戦として注目を集め、“昭和の巌流島”とも称された。結果、力道山が木村を血溜まりに沈める圧勝となるが、話はそこで終わらない。 その舞台裏は、今なお謎が残されたままである。 力道山が木村を一方的に叩き潰した結末については、「引き分けの約束を力道山が破った八百長崩れ」とするのが大勢の見方だった。これは当事者である力道山と木村も、両者ニュアンスは異なりながら、大筋ではそれに近い見解を示している。 力道山の言い分は、「試合中、木村に八百長を持ち掛けられ、それを断ると股間蹴りの反則を犯してきたために制裁を加えた」というもの。 一方で木村は、「もともと引き分けの約束だったものを覆された」と言う。 残された映像を見ると、確かに力道山が言うような蹴りを木村が放つ様子は収められているが、それがどこに当たっているのか、故意に急所を狙ったものなのかは判然としない。 また、その蹴りのときまでは、両者ともにロックアップから始まるオーソドックスなプロレスを展開していて、その“仕組み”を考えれば、力道山が“八百長を断った”というのも素直には受け取り難い。 木村は試合前に、「力道山のプロレスはジェスチャーの多いショーだ。真剣勝負なら負けない」と語っているが、その“事件”の瞬間まで行われていたのは、まさに興行としての試合であったようにしか見えない。つまり、「もともと引き分けの約束」という木村の言が正しそうなわけだが、では、その申し合わせがなぜ崩れてしまったのか。 この試合前には、主催の毎日新聞が力道山、木村の間に入って調整を行っている。毎日新聞は、両者の闘いを軸にしたプロレスの全国巡業で、ひと儲けを目論んでいたとされ、よって、緒戦は引き分けとし、以後は勝った負けたを繰り返して行こうということで話はついたはずだった。 のちに力道山が公開した木村署名の「1戦目は引き分け」とする念書は、そのときのものである。しかし、同様に木村側へ念書を渡すことになっていた力道山は、なぜか「忘れてきた」とこれを履行しなかったという。つまり、この時点で力道山は、八百長破りを画策していたものと思われる。 大会スポンサーでありプロレスの宣伝媒体でもある毎日新聞を、ぞんざいに扱うことになったのは、それ以上の存在がすでに力道山のバックについていたためである。 プロレス興行に関しては、三波春夫らのマネジメントをしていた日本興行界のドン・永田貞雄が、力道山の『日本プロレス』設立当初から深くかかわっていた。 また、この試合をテレビ放送した日本テレビとNHKは、シャープ兄弟の時代から日プロを支援している(当時、地上波テレビはこの2局のみ)。 興行でもメディアでもしっかりとバックがあったところに、無理やり割り込もうとしたのが毎日新聞であり、その新興勢力に力道山が従えば、それまでの縁を裏切ることにもなりかねない。 よって八百長破りは力道山個人ではなく、その周辺の利益享受者も含めての総意であったと見るべきだろう。毎日新聞としても“横入り”の引け目があったからこそ、約束を破った力道山を糾弾することができなかったというわけだ。 また、木村は当時『国際プロレス団』という団体を熊本で興していて、これは日プロの力道山からすれば明白な商売敵であり、それを潰すことは将来的にプラスになるとの計算もあっただろう。 なお、簡単に八百長破りとはいうものの、素手での闘いである以上、もしも相手の実力が大きく上回っていたならば、いくら不意を突いたところで簡単に決まるものではない。 近年は木村側の立場からその真の実力を再評価する声も多いが、果たして現実にはどうだったか。 体格ではひと回り以上も力道山が大きく、また年齢も七つ若い。日々、本格的にプロレス修行を重ねていた力道山に比べ、プロ柔道家としての志敗れた木村は、零落の荒れた生活ぶりだったともいう。 木村が、グレイシー柔術の始祖であるエリオ・グレイシーを破ったことを評価する声もあるが、これはグレイシー旋風の起こった近年の視点に過ぎず、当時のエリオのレベルを判じる材料は乏しい。柔道最強と大相撲の関脇との比較で、そもそも前者の実力の方が上なのかという疑問もある。 「柔道史上最強の木村が、大相撲で関脇止まりの力道山に負けるわけがない」とはいうが、相撲の方が競技としての歴史は古く、新弟子候補を全国各地からスカウトしていた当時においては、アマチュアのみの柔道界より人材豊富であったと推察される。 その中で上位にあった力道山もまた、朝鮮相撲での実績を買われてスカウトされた存在であり、これが木村に実力で劣るというのは再考の余地のある議論ではなかろうか。