スポーツ
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スポーツ 2016年04月30日 16時00分
俺たちの熱狂バトルTheヒストリー 最終回〈世界が刮目した至高の名勝負〉
史上最大級の知名度を誇るボクサー、モハメド・アリ。その戦歴を語る上で欠かせないのが、1974年にアフリカのザイール(現コンゴ民主共和国)で行われたジョージ・フォアマン戦だ。いわゆる“キンシャサの奇跡”である。戦前の下馬評では圧倒的にフォアマンの有利。アリは“すでに峠を越した過去の選手”と目されていた。 ベトナム戦争における徴兵拒否により、WBA・WBC統一世界ヘビー級王座を剥奪されたアリ。3年7カ月のブランクを経て復帰を果たし、'71年にWBC王者のジョー・フレジャーに挑戦するも、15Rにダウンを奪われ判定負け。プロ入り後、初の敗戦を喫すると、続く'73年にもケン・ノートンに顎を砕かれ、判定で敗れている。 一方のフォアマンは、そのアリを破った両者をいずれも2RKOに葬っていた。誰よりもハードなパンチを武器とするニュースター。190センチを越える長身に分厚い胸板、張り詰めて光を放つ肌は、まるで古代の彫像が現代に蘇ったかのごとし。 このときまでプロ40戦全勝のうち37KOと、歴代で最も高いKO率を誇っていた。アリとて当時はまだ32歳、決してオールドタイマーというわけではなかったが、それでもフォアマンの勝利は揺るぎないというのが、衆目の一致するところであった。 ただ一点、アリにとって有利と言えたのが、現地民衆の声だった。長年にわたって黒人差別の撤廃を訴えてきたアリは、ベルギーによる植民地支配の時代を知るザイール国民にとって、まさに希望の星であった。 だが、一方のフォアマンは同じ黒人でありながら、入国時に旧宗主国の警察犬だったシェパードを連れてきたこともあり、“白人の手先”と非難の的となってしまう。さらに、フォアマンの練習中のケガで試合が延期されると、帰国しての治療を望んだものの“試合拒絶の逃亡”と見なされ、出国禁止の軟禁状態に置かれることにもなった。 「アメリカでのテレビ放映に合わせるために、試合開始が午前3時半と異例の時間に設定されたことも、黒人軽視の表れだと反発の声が上がり、その一方でアリの人気は高まるばかり。“アリ! ボマイエ!(現地リンガラ語でアリ! 殺っちまえ!)”は国民的流行語になりました」(ボクシング記者) ちなみに、このときのボマイエが後に“猪木ボンバイエ”となり、また、この春にWWEへ移籍した中邑真輔の新日時代の必殺技の語源ともなっている。 地元民衆の大歓声がアリに注がれる中、試合開始のゴングが鳴る。 1R、圧力をかけるように前進するフォアマンを、脚を使って牽制のジャブを放ちながらいなしていくアリ。ここまでは想定された展開だったが、続く2Rから様相が異なってくる。 持ち前の剛腕を惜しみなく振るうフォアマンに対し、アリはロープを背負って防戦一方。しかしながら、アリにダメージは見られない。 「ロープにもたれるようにしてパンチの威力を逃すのと同時に、相手の体力を削っていく。のちに“ロープアドープ”と呼ばれる高等戦術。この試合の前、フォアマンとノートンの試合を観戦したアリは、『序盤を乗り切ればノートンが勝っていた』と予言めいたコメントを残しており、それをこの戦略により実現させたのです」(同) ロープにもたれてのけ反りながら、フォアマンの剛打をことごとく受け流していくアリ。フォアマンが疲れてきたと見れば様子見のジャブを放ち、まだ元気ならば、あらためて自らロープを背負って防御に徹する。 6Rあたりからは明らかにフォアマンの疲労が濃くなり、動きが止まることもしばしばだったが、アリは慎重に同様の展開を繰り返した。 そうして8Rも残り20秒となったとき、アリの下がりながらのワンツーでフォアマンがグラつくと、ついに仕上げにかかる。これまでの守勢から一転して連打を浴びせかけ、フォアマンをマットに這わせたのだった。 アリに奇跡の勝利をもたらせたロープアドープ。しかし、ダメージが少ないとはいえ常に被弾するには違いなく、以後、この戦法を多用したことがパーキンソン病発症の一因になったとも言われている。 “蝶のように舞い蜂のように刺す”と呼ばれた動きを取り戻せないでいたアリにとって、まさしく命懸けの闘いだったのだ。
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スポーツ 2016年04月29日 16時00分
祝福ムード一転 福原愛アジア予選初戦敗退の後遺症
4月13日から香港で行われていた卓球・リオデジャネイロ五輪アジア予選は、石川佳純(23)が決勝で中国の李暁霞にストレート負けという結果に終わったが、世代交代の舞台にもなった。会場が最も盛り上がったのは、日本のエース・石川佳純と成長著しい15歳の伊藤美誠が準決勝で激突したとき。伊藤は世界ランク2位の丁寧(中国)に勝っており、石川を食う大番狂わせも期待されたからだ。 しかし、一方で関係者が注目していた組み合わせは違っていたようだ。 「もともとは福原愛(27)が大会の主役と言える状況。台湾選手との交際宣言で、会場では祝福の声が上がり海外メディアもその件で持ちきりだった。しかし、結果は初戦敗退。相手は世界ランク22位で、同6位の福原からすれば“安パイ”だったはず。順調に勝ち進めば、準決勝は“福原対石川”の新旧エース対決になっていたのですが、その前に消えてしまった」 最近の卓球選手としての福原は、かつての輝きを失っているかのように見える。 「世界ランクも石川のほうが4位と上。会場の雰囲気に乗り伊藤、石川を破り、捲土重来を期待していたのですが…。初戦敗退はリオ五輪本番に響くかもしれません」(同) リオ五輪は世界ランク上位22位までは自動的に出場できるため、福原のリオ行きは事実上確定している。 「しかし、これまでも福原は石川たちを仲間だと言って、日本人同士の対決を嫌がる。それもあってテンションが上がらなかったのかもしれませんが、初戦敗退の後遺症は決して小さくない。初戦を振り返ってみると、いきなり3ゲームを奪われたところから3-3に持ち込み、最終ゲームを10-12で落としている。相手にリーチをかけられてから巻き返す精神力はさすがですが、体力不足も懸念されます」(専門誌記者) 石川、伊藤ら若い世代は「日本人対決は気にしない」と話すが、これには「もうオバチャンの時代ではない」というメッセージも込められているのかも。
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スポーツ 2016年04月28日 16時00分
友成那智 メジャーリーグ侍「007」 最良の女房役を失った岩隈久志の今季を占う
岩隈久志は昨年12月にいったんドジャースと3年4500万ドル(50億円)で契約がまとまったが、健康診断でヒジの故障リスクが高いと判断され流れてしまった。結局、1年1200万ドル(13億円)の契約でマリナーズに残留する形になったが、このような事態になったのは、昨年秋に就任したディポート新GMがFA市場の岩隈に対する評価(3年4000〜4500万ドル)よりずっと低い金額(2年3000万ドル=33億円)で契約することにこだわり、市場評価レベルでの契約を求めていた岩隈側を怒らせたからだ。 新入団の投手に故障者が続出し、神経質になっていたド軍のチームドクターが、岩隈のヒジに厳しい見立てをしたため、結果的にマリナーズは岩隈と再契約することができたが、後味の悪い出来事だった。 そのモヤモヤを吹っ切るべく、今季、岩隈は張り切ってキャンプインしたが、オープン戦は不調で防御率は6.00だった。公式戦に入ってもボールのキレは悪くないのに2度先発して0勝1敗、防御率4.09という冴えない成績になっている。 最大の要因は、最良の女房役を相手に投げられないことだ。 表(※本誌参照)をご覧いただければ分かるように岩隈は昨年まで第2捕手だったヘスース・スークレと抜群に相性がよく、バッテリーを組むとたいてい好投していた。通算のバッテリー防御率が1.55ということは、スークレとバッテリーを組んだ試合では平均6回を1点に抑えていることになる。昨年8月12日にオリオールズの強力打線を相手にノーヒットノーランを達成したときもスークレが女房役だった。 その一方で岩隈は昨年まで正捕手だったマイク・ズニーノとは相性が悪く、昨年は6.02というバッテリー防御率だった。これは6回まで投げた場合、平均4点取られたことを意味する。 女房役によってこれほど大きな差が出るのは、岩隈が様々な能力を身につけた技巧派で、捕手側も岩隈の特徴を理解しツボを心得たリードが要求されるからだ。 岩隈の最大の長所は制球力だが、もうひとつはボール球を振らせる技術が高いことだ。ホームプレート手前でストンとボールゾーンに落ちていくスプリッターにバットを出させるには、その前に高目に速球系(ツーシーム、ストレート)を投げ込んで目線を上げておく必要がある。それと同様にホームプレート手前で外側に切れていくスライダーにバットを出させるには、その前にインサイドに投げ込んでおく必要がある。 当然、打者の方も、基本的にそのような攻め方で来ることはある程度計算しているので、賢い捕手は打者の様子を伺いながら、逆の攻め方を岩隈に要求することもある。スークレは、逆を突くことが上手く、スプリッターやスライダーが来そうなカウントで、岩隈にズドンと速球系を高目に投げ込ませて三振に取るケースが多かった。 スークレはさらに名うての強肩で盗塁阻止率が抜群に高く(阻止率43%)、捕手牽制で一塁走者を刺す能力も高い。ボールブロッキングも上手いので、ワンバウンドになるスプリッターを多投する岩隈には大きな助けになっていた。 これほど相性がいい第2捕手がいると、メジャーではその投手が先発するときは必ず受けるパーソナル・キャッチャーにしてしまうことが多いが、スークレは今季、岩隈の女房役にはなれなかった。昨季の打率は1割5分7厘で、バッティングがひど過ぎたからだ。 岩隈にとってつらいのは、今季、この最良の女房役とバッテリーを組めない可能性が高くなったことだ。 マリナーズのディポート新GMはオフに、お気に入りのベテラン、アイアネッタとバッティングのいい捕手クレベンジャーを獲得して正捕手と第2捕手に据えた。そのため昨年までの正・副捕手コンビ、ズニーノとスークレは3Aに追いやられる形になった。 ただ、この人事は早くも破たんの兆しを見せ始めている。アイアネッタ、クレベンジャーともリード面でのミスが多く、チームが勝てない要因の一つになっているからだ。 アイアネッタは打撃面で活躍しているので、すぐにマイナー落ちする可能性はないが、クレベンジャーは開幕からヒットがなく、マイナー落ちする可能性は大いにある。 そうなれば本来ならスークレが昇格して岩隈の投球を受けることになるのだが、開幕直前の4月3日、スークレは1月に骨折した腓骨を修復する手術を受けることになり今季中の復帰が絶望的になっている。そのため、岩隈は今季、スークレ以外の捕手を相手に投げないといけなくなった。 表(※本誌参照)にあるように、岩隈はリード力の低い捕手たちを相手に投げると活躍できない傾向がある。球団がスークレに代わるリードの上手い捕手を獲得してくれればいいが、現在使われている2人の捕手は、新GMが真っ先に獲得した選手なのでそれも期待薄だ。 この苦しい状況を岩隈がどう克服していくか、注目したい。ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。
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スポーツ 2016年04月28日 12時34分
カリスマレスラー長与千種 新団体「Marvelous」旗揚げ 初陣イベント直前インタビュー
“女子プロレス界のカリスマ”長与千種が5月3日、東京・豊洲PITで新団体「Marvelous」を旗揚げする。自身は選手として出場しないが、待望の初陣イベントを目前に控えて、シビアで、かつ激的な言葉が飛び出した。(伊藤雅奈子) −−旗揚げ戦まで1週間を切りましたが、現在の心境は? 「いい緊張感ですよ。道場では自分も教えてるし、選手には崩して、わかりやすく伝えてる。崩してっていうのは、たとえば言葉1つでわかるところを、3つ4つのワードをくっつけて伝えたり。それでもわかってないようだったら、実践。動きで伝えてる」 −−長与さんは選手としては20年以上の実績がありますが、女子プロ団体の社長に就任するのは、今回が初めて。 「マーケティングシェアが広い分野ではないので、大変だし、今も勉強させてもらってるところ。クラッシュ(・ギャルズ)をやってた80年代、バブルの時期と一転して、プロレスや格闘技では儲からないという時代だと思うのでね。こういう例えをするとわかりやすいけど、今はネットの普及によって、無店舗型になっていて、店に行かなくてもショッピングができるし、観たいものも観られるようになっちゃった。プロレスも、無店舗型でやってる組織が多くて、自分で自分を出店する形になってる。道場、リングを持たなくても可能で、すごく便利な世の中になったんだけども、自分はそれを会社として、ソフト(選手)を生みだすファクトリーをそろえたんですね。道場もある、リングもある、寮もある。これらを興行で補うには、とても割が合わない。プロレスの動員数というのは、低いわけですから。じゃあ、どこをどうやって開拓していくの? 勝算はどこにあるの? と」 −−どこにあるんでしょう。 「2つあって。1つめは、プロレスという芸術、作品であれということ。有店舗型で運営している劇団四季さんのようなね、素人の方が観ても共感できるような、劇的なプロレスを見せる。ということは、そこにドラマ性がないといけない。選手一人ひとりの個性を浮き彫りにしないといけないので、そのソフトの開発をまずはする。あともう1つは、旗揚げをして、その後の地方巡業でお披露目したあとは、動員があろうがなかろうが、ある場所で、週に1回、必ず観られるという習慣をつけようと。場所は、東京。テレビ局や雑誌・新聞社、いろんな企業が集まっているから、マーケティングの市場はやっぱり、東京なんですよ。たとえば大阪の芸人さんなんて、夜行バスで往復してでも、東京に来て舞台に立っているわけですよ。AKB48だってね、原点は東京の秋葉原。アキバのドンキ(ホーテ)の上の小さな劇場からスタートして、お客さんが入ろうが入るまいが、必ず公演をしていたわけでしょ。“会いに行けるレスラーたち”。それを目指そうかなって。詳しいことは5月3日に発表します」 −−今後、目指すべくものを聞かせてください。 「“継続は力なり”といわれるけれど、継続は命取り。ようするに、プロレスという飛び出し物には古き伝統があるけれども、時代に100%沿っているかといえば、そうではないので、やればやるほど大変な状況になるということも、頭の中に入れておかないといけない。であれば、その労力を一点集中にして、“待っててください、必ず大きくなりますね”と言える環境を、まずは作ります。異端児な団体になると思うけど、初めて観る人に“ここのドラマはおもしろい、この続きが観たい”と思われるように」 −−ライバルは? 「劇団四季さん。選手や団体じゃなくて、ここを目標にしたいよね。今初めて勝手に言っちゃったから、怒られるかもしれないけど(笑)」●Marvelous旗揚げイベント日時:5月3日(火・祝)場所:東京・豊洲PIT(開場16時、開始17時)彩羽匠vs里村明衣子(センダイガールズプロレスリング)ほか 全6試合オールシングルマッチ。問い合わせはマーベルカンパニー(TEL047-406-5991)まで。
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スポーツ 2016年04月28日 11時52分
“テレビの縛り”がなくなったからできる? プロ野球が検討する平日デーゲーム
デーゲームが見直されている。 プロ野球中継が地上波放送から激減して久しい。ファン層拡大のためには放送回数を増やす努力は続けていかなければならないが、“テレビの縛り”がなくなった利点もある。 「プロ野球中継が高視聴率を誇っていた時代、テレビ局側も球団に注文を出していました。プロ野球ペナントレースの大半がナイトゲームだったのは、テレビ局側の要請でした」(球界関係者) ナイター中継の視聴率が稼げ、その放映料で球団が潤っていた時代はそれでも良かった。「巨人戦の放映料が1試合1億円強」と言われた時代、他のセ・リーグ5球団にとって、テレビ放映料は球団収支の大きな柱ともなっていた。しかし、今は違う。パ・リーグ6球団が経営改革に乗り出し、観戦料収益をテレビ放映料に代わる“メイン収支”に発展させてみせた。 パ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう言う。 「パ・リーグはセに比べ、球団売却が多かった。でも、見方を変えれば、新たに参入してきた企業は、時代に適したビジネススタイルを持ち込んできます。パ・リーグは新しいことをやることに抵抗がありません。長い経営キャリアを持つセ・リーグの各球団とは違う(営業戦略の)発想もでき…」 セ・リーグで観客動員数を大きく伸ばしているのは、2012年に参入したDeNAベイスターズだ。巨人を始めとする“古参”のセ経営陣も、パ・リーグとDeNAの積極的な経営戦略は認めざるを得ないところだ。 そのパ・リーグで新たな試みがされた。平日のデーゲームである。 「巨人はテレビ放映権を売るためにナイトゲーム中心の日程を組んでいた時代もあります。視聴率が落ち、地上波でのテレビ放映回数も減り、球団側は試合日程を興行として自由に変更できるようになりました」(前出・関係者) ペナントレース第2節の千葉ロッテ対東北楽天の試合(3月29、30日)が『平日デーゲーム』で行われた。関係者によれば、「3月のナイトゲームは寒い。お客さんと選手の防寒対策」として、試験的に行われたという。 「勝算はありました。春休み期間なので家族連れが来てくれるのではないかと。もっとも、世帯主であるお父さんが仕事を休むのはたいへんですが、やってみる価値はある、と」(関係者) 近年、巨人も土・日曜日にデーゲームの試合スケジュールを組むことが多くなった。“テレビ中継の縛り”がなくなったから可能になったという。巨人も「土・日曜日のデーゲームだと家族連れのお客さんが多くなる」利点を実感しており、今後、セ・リーグでも千葉ロッテに追随し、春休み期間の平日デーゲームが導入されるかもしれない。 もっとも、日中忙しいサラリーマンは「試合開始時間を遅らせてくれ」と言いたいところだが、「デーゲーム=若年層のファン拡大」に繋がるのなら、納得してくれるはずだ。
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スポーツ 2016年04月27日 16時00分
金本阪神が推し進めるトラの新チームカラー「紫」
「チームをオレ色に変えてやる」 これは藤浪晋太郎(21)の今季に懸ける決意である。アニキ金本知憲監督(48)が進める『超変革』は打撃陣ばかりが注目されている。高山俊、横田慎太郎、這い上がってきた江越大賀…。しかし、チーム改造の最優先事項は、藤浪をエースに育て上げることだった。 「藤浪も4年目。虎のエースではなく、侍ジャパンのエースに育てたい。藤浪自身も、金本監督の誕生を『自分を変えるきっかけ』にしたいとし、グラブを新調しました」(球界関係者) 今までは、赤、黒のグラブを使い分けていた。新調したグラブの色は『紫』。遠目で見ると黒グラブに似た色なので目立たないが、チームの優勝に対し、強い思いも懸けていた。 「先発ローテーションにおける藤浪の役割は、チームの生命線と言っていい。火曜日に投げる先発投手は、言うならば6連戦の先鋒役です。連戦の頭を取るのと落とすのとでは、チームのモチベーションが大きく違ってきます」(前出・同) 金本監督がその藤浪にまず伝えた言葉は「今日はオマエが投げているから、勝ちたい、勝ちをつけてやりたいと思われる投手にまずなれ」だった。 どうしたら、「勝たせてやりたい」と思われる投手になれるか…。藤浪はそれを考えながら、昨秋キャンプと今春のキャンプ、オープン戦を過ごしてきた。 「4月4日の巨人戦で藤浪が一塁から三塁に激走し、チームが勢いづきました。でも、本当にすごいのは翌5日。試合前、藤浪は二塁ベースを蹴る前後に三塁コーチャーを見るタイミングが遅れたと言い、走塁の個人練習を繰り返していました。その姿を見せられたら、野手陣もうかうかできない」(チームスタッフ) その必死さは本物だ。 布石はあった。藤浪は昨年9月、関西のTV収録で矢野燿大氏のインタビューを受けていた。そのとき、まだ金本監督は誕生していない。 解説者・矢野(現コーチ)は、毎年終盤に失速するチーム状況について質問した。すると、藤浪は「言っちゃっていいですか?」と前置きし、一気にこうぶちまけた。 「優勝を狙うチームがこんなんでいいのかなって…」 チーム批判である。矢野自身も負けが込むと重苦しい空気に包まれ、ただ染まっていくだけのダメ虎に不満を抱いていた。その悔しさが若い藤浪の口から出たことに意義を感じていた。 「チーム批判の部分は放送されませんでした。でも、藤浪のチームに対する怒りにも似た情熱は矢野コーチから金本監督に報告されています」(関係者) 藤浪中心のチームに作り替える、これが『超変革』の目指す方向でもあるのだ。 近年、阪神はファンサービスの一環で黄色、ピンクなどの応援ユニホームを販売している。ここに藤浪の“オレ色”である紫も加わるだろう。6連戦スタートの火曜日は藤浪の紫。「紫虎」なんて言葉も新たに定着するかもしれない。
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スポーツ 2016年04月26日 16時00分
緊急補強! 由伸巨人が仕掛ける日本ハム・斎藤佑獲得
巨人は4月13日のヤクルト戦(神宮)に8-0と大勝。高橋由伸監督(41)は球団初となる新人監督として両リーグ10勝一番乗り、さらに神宮球場が鬼門だったエース菅野智之投手もその試合で完封勝利し、開幕から無傷の3連勝で、チームを首位に導いた。 昨秋来の野球賭博、清原の麻薬事件などで、貧乏くじを引かされた感があった由伸監督。ところがどっこい、その危機感がロケットスタートにつながったのか。川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、原辰徳といった歴代の名監督でもできなかった快挙をやってのけた。 ようやく普段の落ち着きを取り戻した巨人だが、由伸監督とてこのまますんなりとは思っていない。いつ野球賭博、闇カジノ、薬物問題が進展し、第5、第6の処分選手が出てこないとも限らないからだ。折しもリオ五輪金メダル候補だったバドミントン、桃田賢斗選手の賭博問題は、写真流出騒動に発展。この先、巨人選手のスキャンダル写真が流出するかもしれない。そうなれば警視庁も待ってましたと動き出す。 有事に備える意味で敢行したのが、11日に発表した巨人・大累進内野手と日本ハム・乾真大投手との交換トレードだ。 大塁は'12年ドラフト2位で入団。一軍出場は2試合だが、50メートル5秒7の快足が最大の売り。由伸巨人の秘密兵器として期待されていた。 一方の乾は、直近2年は7試合だけの登板だが、中継ぎとして過去5年の登板数は67試合と実績十分。 比べて見ると、どうみても不均衡トレードだが、巨人は“平成の黒い霧事件”で4投手が解雇され、中継ぎ陣が手薄な状態だった。 とりわけ開幕直前にチームを去った高木京介の穴を埋めるロングリリーフ左腕がよほど欲しかったのだろう。 しかし、北海道の地元紙記者は違った内情を明かす。 「実はこのトレードで巨人が狙っていた本命はハンカチ王子、斎藤佑樹投手(27)でした。巨人首脳は以前から斎藤に注目していて、“修正点は明確。先発も中継ぎもできる。阿部慎之助に預ければ覚醒する”と期待しているのです。日本ハム側も巨人なら斎藤の看板に傷はつかないと、快く送り出す方針でした。巨人で経験を積ませ、いずれは日本ハムの指導者として復帰させよう、という青写真があったからです」 すぐに実現しなかったのは、成立直前の8日に発覚した桃田選手の“桃色スキャンダル”が原因だ。桃田選手の闇カジノ店への出入りは既報の通りだが、ほぼ同じ時期に違法スロット店にも通っており、その際、錦糸町のカラオケスナックママを同伴させていた。 「桃田選手は、このスナックに10回ほど通っていたそうで、ママに誘われてカジノ店に行ったということも分かりました。そのママとの“キス写真”が一部メディアに出回ったことで巨人サイドが斎藤獲得を保留したのです。この写真を巡っては桃田選手に闇社会の人物が接触し、彼の関係者がそれを警察に相談に行ったことで、一連の闇カジノ店への出入りが発覚した経緯があります。警察は美人局の可能性も視野に入れて捜査中で、その一連の状況は読売新聞社会部も取材しており、巨人首脳は斎藤の身体検査を再調査しだしたのです。札幌には錦糸町をはるかに上回る繁華街のススキノがあり、闇社会が介在する店舗も少なくない。ハンカチ王子は道内きってのモテ男。念には念をと…」(スポーツ紙デスク) 時期が時期だけに、斎藤獲得を少し先延ばしにしたのだ。一方、日本ハムも巨人の見返り選手について疑念を抱いており、「この時期に巨人が放出する選手は要注意」と調査中だ。しかし、これは時間の問題。双方が納得しさえすれば、日本ハムとの今季トレード第2弾が成立するという。 闇賭博に複数の選手がかかわっていたことで、人気に陰りが見え出した巨人。そこで元神宮のスター選手、由伸監督(慶大)と斎藤(早実→早大)の二枚看板で失地回復という目論見。「敗戦処理なら斎藤で十分。観客も喜んで一石二鳥」というしたたかな計算がある。 巨人は去年の先発ローテーション投手だった内海哲也と大竹寛がキャンプから出遅れ、右肩と足を痛めた阿部とともに二軍で調整中。3月30日にプロ初先発を果たした新人の桜井俊貴は直後に右ひじ故障で登録抹消。4番ギャレットは体調不良が続き、坂本勇人も足に爆弾を抱えたままだ。 春先は何とかしのいでも、開幕ダッシュの反動が出る5月末の交流戦以降、ズルズルと負けが込みだす可能性がある。 その時期に照準を合わせ、触手を伸ばすのが、かつてのアイドル投手…。起爆剤にもなるし、たとえ打たれても話題になる。 どっちに転んでも、こんなに都合の選手はいないというわけだ。
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スポーツ 2016年04月24日 14時39分
『D1 Grand Prix Round.2』齋藤太吾が単走・追走ダブル優勝
23日、富士スピードウェイで行われたドリフト競技『2016 GRAN TURISMO D1 GRAND PRIX SERIES Round.2』で齋藤太吾(WANLI FAT FIVE RACIN)がRound.1に続き優勝した。 高速域でドリフトを競う富士スピードウェイで、単走、追走いずれも優勝できたことで、齋藤太吾は「次回の筑波サーキットRound.3&4とシーズン優勝への足掛かりとして行きたい」と語った。
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スポーツ 2016年04月24日 12時00分
新日本4・29熊本大会中止! 棚橋とオカダがメッセージを発表
「日本はね、震災を経験してきて、その中で僕なりに学んだことがあって。日本全体が、元気を失っちゃいけない。1個ずつ、1個ずつ」 17日の甲府大会の試合後に棚橋弘至は熊本地震の被災者に対して力強いメッセージを送った。今から5年前の東日本大震災では、震災の1か月前に仙台大会のメインイベントで当時保持していたIWGPヘビー級王座の防衛戦を行ったばかりということもあり、東京スポーツが主催し、新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアらが参加した「ALL TOGETHER」の日本武道館大会と仙台サンプラザ大会で棚橋がメインを務めている。あの時も新日本は募金活動に限らず、被災者を励ますために選手を被災地に派遣するなど支援を惜しんでいない。 熊本地震は新日本の選手も被災した。13日から4・29グランメッセ熊本大会のプロモーションで現地入りしていた本間朋晃が無事に帰京したが、マスコミの取材に対して「死ぬかと思った」と震度7の恐怖を語った。甲府大会では試合前にオカダ・カズチカが自ら志願する形で、会場に募金箱を置き、詰めかけたファンに募金を呼びかけている。 新日本では、4・29熊本大会の開催について協議を重ねてきた。しかし「熊本地方を中心に発生した震災の甚大な被害状況や、観客の安全確保、さらに会場となるグランメッセ熊本の破損状況の報告」を考慮した結果、18日に正式に中止を発表した。熊本大会は今シリーズ5・3福岡国際センターと並ぶビッグマッチだったことから、タイトルマッチやスペシャルマッチが数多く組まれていたが、IWGPインターコンチネンタル選手権試合のケニー・オメガ<王者>vsマイケル・エルガン<挑戦者>、スペシャルマッチ棚橋弘至vsバッドラック・ファレは4・27博多スターレーン大会に、NEVER無差別級選手権試合の柴田勝頼<王者>vs永田裕志<挑戦者>、IWGPジュニアタッグ選手権試合ロッキー・ロメロ&バレッタ<王者組>vsリコシェ&マット・サイダル<挑戦者組>は5・3福岡大会にそれぞれ振り分けられた。 熊本大会の中止を受けて棚橋とオカダは次のとおりコメントを発表している。 棚橋弘至「今回の件に関しては、両方の意見があったと思います。まず、選手としては、『現地の方にプロレスを観て頂いて、エネルギーや活力を与えたい』という気持ち。一方、会社としては、大会を開催するのであれば、お客さんの安全確保を第一に考えなければいけないという部分。ニュース等で見聞きするに、熊本地方は余震もまだまだ多いようですし、4月29日という10日後のことは誰も予測できない状況です。残念ですけど、安全を第一に考えたら、今回は中止という結論になったのだと思います。新日本プロレスのレスラーは心の中で『熊本が早く復興するように』と祈ってますし、それは全国のプロレスファンも一緒の気持ちだと思います。いま、会場では熊本地震の義援金活動も行っていますけど、2011年の東日本大震災の時にも仙台や東北、各地のファンからそういったプロレスファンの絆を強く感じました。自分は、こんなときこそ全員が下を向いてはダメだと思うんです。よく身体にたとえて言うんですけど、ケガをした部分を治すには、その周りの細胞が元気にがんばって、いい血流を送りこむことが大事なんです。ボクらは精一杯、プロレスをして盛り上げていきます。そして必ず、熊本に戻ります。熊本の皆さん、その日まで待っていてください!」 オカダ・カズチカ「やっぱり、プロレスができる状況であったら、できれば熊本現地の方に自分たちのプロレスを観てもらいたかったです。それができないというのが会社の判断だったわけで、そこは残念でしたね。ただ、プロレスはできないですけど、これからも被災地のことを考えて、新日本プロレスとしても、個人としてもできることをやっていきたいと思います。(開幕戦では)会場での熊本地震の募金活動もやらせてもらいましたけど、やっぱり選手が立っているだけで、お客さんの反応が違うと思いますんで。今後もやれることはやっていきたいです。今回、大会はできなかったですけど、けして二度とやらないわけじゃないですから。新日本プロレスは、また必ず熊本に戻ってきますんで。その時は、このオカダ・カズチカが、カネの雨以上に、みなさんに“元気の雨”を降らせたいと思います!」 このように棚橋が「いい血流を送りこむ」と言えば、オカダは「元気の雨を降らせる」とそれぞれ独特なニュアンスで被災地に対してコメントをしている。木谷高明オーナーは、新日本とブシロードが合同で1,000万円の義援金を送ること、また新日本の今シリーズ終了までと、期間中に開催されるブシロード関連のイベントで募金活動を行うこと、そして必ず熊本大会を再び開催することを発表した。 阪神淡路大震災のときも東日本大震災のときもプロレスは被災者に勇気と希望を与えてきた。今回もプロレスが担う役割は大きいはず。新日本としては5・3福岡大会が被災者に強いメッセージを送る機会になることだろう。<新日Times VOL.15>
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スポーツ 2016年04月23日 16時00分
俺たちの熱狂バトルTheヒストリー〈会場が凍ったまさかの“惨劇”〉
21世紀へと時代が変わる頃、日本の総合格闘技を人気、実力の両面で支えていたのは、“IQレスラー”と呼ばれた桜庭和志だった。 '00年にホイス・グレイシーを激闘の末に破ると、ヘンゾ、ハイアンにも勝利。前年末のホイラーも合わせて、格闘技界の黒船と畏怖されたグレイシー一族を4タテ完勝してみせた。桜庭は、これを機に日本格闘界のエースの座に上り詰める。 著書はベストセラーとなり、39Tシャツなどグッズもバカ売れ。その人気は格闘技界にとどまらず、テレビCMにも多数出演するまでに至った。 「桜庭の凄さはただ勝ちにこだわるのではなく、プロとしてエンターテインメントを意識したところ。リング上で対峙する相手選手の動きと同時に、観客席の反応までも視線に入れていた」(格闘技ライター) ガード状態の相手に上から振り下ろす“モンゴリアンチョップ”や、両脚をつかんでグラウンド上を引きずり回す“炎のコマ”などは、格闘技の理論からすれば明らかに余計な動きだ。 プロボクサーも相手を挑発する動きを見せることはあるが、そのほとんどが相手と距離を置いた、いわば安全地帯でのこと。接近戦の多い総合格闘技において、余計な動きのリスクは格段に高くなる。 「モンゴリアンチョップなどは片手で放つ通常のパンチと異なり、相手との距離が詰まる上にガードもできない。そのせいでバッティングを食らい、優勢な試合を落とした('03年のPRIDE25におけるニーノ・“エルビス”・シェンブリ戦)ことも実際にありました」(同) それでもあえてやるのはなぜか。余裕を見せて相手を心理的に揺さぶるため、相手の予測しない攻めで混乱させるためなど、もっともらしい理屈もいわれるが、やはり観客を意識してのことが大きかっただろう。 相手の腕を抱え込んで、観客席を見渡してからニヤリ笑みを浮かべる。これぞ桜庭の真骨頂であり、多くのファンが記憶するその雄姿だ。 「グレイシー兄弟を次々に撃破して、残るは打倒ヒクソン・グレイシーのみ、というのがファンの期待であり、PRIDEも実現に向けて動いていました」(業界関係者) '01年3月25日、PRIDE13のメーンイベントで行われた桜庭和志vsヴァンダレイ・シウバは、ヒクソン戦という来たるべき大一番までの谷間の試合…そのような見方がほとんどであり、戦前の予想でも桜庭有利の声が圧倒的だった。 「シウバはこの前の試合で、リングスKOKトーナメント覇者のダン・ヘンダーソンを破るなど、戦績からも決して侮れる相手ではなかった。しかし、当時はそれを上回るだけの桜庭への信頼感があったのです」(前出・格闘技ライター) また、この大会からはグラウンド状態での相手の頭部への蹴りが解禁されたことも、桜庭にとって不利に働いた。 フジテレビでの中継放送が本格化するに合わせ、一般ファンにとっては退屈なグラウンドでの膠着を減らすためのルール改定であったが、これがエース桜庭の敗因となるとは、関係者も予想していなかっただろう。 試合開始から積極的に打ち合いに出た桜庭だったが、打撃ではムエタイをベースとしたシウバに一日の長がある。右フックを顔面に食らって崩れた桜庭の頭部に、シウバは容赦なくヒザを落としていく。 それでも体を丸めて、グラウンドを這うように脚を取りに行く桜庭だったが、シウバは距離をとって、やはり頭部を狙ってサッカーボールキックを連打する。 さらに頭部へのヒザの追撃で、これに耐えかねた桜庭が顔を上げたところに、フルスイングのシウバの右足甲が直撃し、レフェリーストップが告げられた。試合時間わずか1分38秒の惨劇に、満員の観客も息を飲むしかなかった。 それまで総合では、柔術やレスリングベースの選手が活躍していたことから、寝技有利が定説とされてきた。桜庭がシウバに敗れた後も、たまたまのことと見る向きは強かったが、同年11月の再戦でも桜庭は敗退してしまう。 同年にはK-1出身のミルコ・クロコップの台頭もあり、以後、総合格闘技は“打撃もグラウンドもできるトータルファイターしか通用しない”時代へと、急速に移行していくことになる。