これは藤浪晋太郎(21)の今季に懸ける決意である。アニキ金本知憲監督(48)が進める『超変革』は打撃陣ばかりが注目されている。高山俊、横田慎太郎、這い上がってきた江越大賀…。しかし、チーム改造の最優先事項は、藤浪をエースに育て上げることだった。
「藤浪も4年目。虎のエースではなく、侍ジャパンのエースに育てたい。藤浪自身も、金本監督の誕生を『自分を変えるきっかけ』にしたいとし、グラブを新調しました」(球界関係者)
今までは、赤、黒のグラブを使い分けていた。新調したグラブの色は『紫』。遠目で見ると黒グラブに似た色なので目立たないが、チームの優勝に対し、強い思いも懸けていた。
「先発ローテーションにおける藤浪の役割は、チームの生命線と言っていい。火曜日に投げる先発投手は、言うならば6連戦の先鋒役です。連戦の頭を取るのと落とすのとでは、チームのモチベーションが大きく違ってきます」(前出・同)
金本監督がその藤浪にまず伝えた言葉は「今日はオマエが投げているから、勝ちたい、勝ちをつけてやりたいと思われる投手にまずなれ」だった。
どうしたら、「勝たせてやりたい」と思われる投手になれるか…。藤浪はそれを考えながら、昨秋キャンプと今春のキャンプ、オープン戦を過ごしてきた。
「4月4日の巨人戦で藤浪が一塁から三塁に激走し、チームが勢いづきました。でも、本当にすごいのは翌5日。試合前、藤浪は二塁ベースを蹴る前後に三塁コーチャーを見るタイミングが遅れたと言い、走塁の個人練習を繰り返していました。その姿を見せられたら、野手陣もうかうかできない」(チームスタッフ)
その必死さは本物だ。
布石はあった。藤浪は昨年9月、関西のTV収録で矢野燿大氏のインタビューを受けていた。そのとき、まだ金本監督は誕生していない。
解説者・矢野(現コーチ)は、毎年終盤に失速するチーム状況について質問した。すると、藤浪は「言っちゃっていいですか?」と前置きし、一気にこうぶちまけた。
「優勝を狙うチームがこんなんでいいのかなって…」
チーム批判である。矢野自身も負けが込むと重苦しい空気に包まれ、ただ染まっていくだけのダメ虎に不満を抱いていた。その悔しさが若い藤浪の口から出たことに意義を感じていた。
「チーム批判の部分は放送されませんでした。でも、藤浪のチームに対する怒りにも似た情熱は矢野コーチから金本監督に報告されています」(関係者)
藤浪中心のチームに作り替える、これが『超変革』の目指す方向でもあるのだ。
近年、阪神はファンサービスの一環で黄色、ピンクなどの応援ユニホームを販売している。ここに藤浪の“オレ色”である紫も加わるだろう。6連戦スタートの火曜日は藤浪の紫。「紫虎」なんて言葉も新たに定着するかもしれない。