プロ野球中継が地上波放送から激減して久しい。ファン層拡大のためには放送回数を増やす努力は続けていかなければならないが、“テレビの縛り”がなくなった利点もある。
「プロ野球中継が高視聴率を誇っていた時代、テレビ局側も球団に注文を出していました。プロ野球ペナントレースの大半がナイトゲームだったのは、テレビ局側の要請でした」(球界関係者)
ナイター中継の視聴率が稼げ、その放映料で球団が潤っていた時代はそれでも良かった。「巨人戦の放映料が1試合1億円強」と言われた時代、他のセ・リーグ5球団にとって、テレビ放映料は球団収支の大きな柱ともなっていた。しかし、今は違う。パ・リーグ6球団が経営改革に乗り出し、観戦料収益をテレビ放映料に代わる“メイン収支”に発展させてみせた。
パ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう言う。
「パ・リーグはセに比べ、球団売却が多かった。でも、見方を変えれば、新たに参入してきた企業は、時代に適したビジネススタイルを持ち込んできます。パ・リーグは新しいことをやることに抵抗がありません。長い経営キャリアを持つセ・リーグの各球団とは違う(営業戦略の)発想もでき…」
セ・リーグで観客動員数を大きく伸ばしているのは、2012年に参入したDeNAベイスターズだ。巨人を始めとする“古参”のセ経営陣も、パ・リーグとDeNAの積極的な経営戦略は認めざるを得ないところだ。
そのパ・リーグで新たな試みがされた。平日のデーゲームである。
「巨人はテレビ放映権を売るためにナイトゲーム中心の日程を組んでいた時代もあります。視聴率が落ち、地上波でのテレビ放映回数も減り、球団側は試合日程を興行として自由に変更できるようになりました」(前出・関係者)
ペナントレース第2節の千葉ロッテ対東北楽天の試合(3月29、30日)が『平日デーゲーム』で行われた。関係者によれば、「3月のナイトゲームは寒い。お客さんと選手の防寒対策」として、試験的に行われたという。
「勝算はありました。春休み期間なので家族連れが来てくれるのではないかと。もっとも、世帯主であるお父さんが仕事を休むのはたいへんですが、やってみる価値はある、と」(関係者)
近年、巨人も土・日曜日にデーゲームの試合スケジュールを組むことが多くなった。“テレビ中継の縛り”がなくなったから可能になったという。巨人も「土・日曜日のデーゲームだと家族連れのお客さんが多くなる」利点を実感しており、今後、セ・リーグでも千葉ロッテに追随し、春休み期間の平日デーゲームが導入されるかもしれない。
もっとも、日中忙しいサラリーマンは「試合開始時間を遅らせてくれ」と言いたいところだが、「デーゲーム=若年層のファン拡大」に繋がるのなら、納得してくれるはずだ。