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記録訂正 再検証に救われた鳥谷のキャプテンシー

 『公式記録の訂正に関するお知らせ』。去る3月31日、日本プロ野球機構(NPB)はセ・リーグ公式記録の訂正を各メディアに報告した。該当試合は、3月29日の東京ヤクルト対阪神。6回裏、ヤクルト・上田剛史の打球に阪神の遊撃手・鳥谷敬(34)が対応。上田が一塁ベースを駆け抜け、NPB記録部員はそのプレーを「鳥谷のエラー」と判断した。しかし、それを「上田のヒット」と訂正し、これによって、鳥谷の失策も取り消された。
 「ヒットとも取れるし、鳥谷の失策とするのは厳しいとする声は試合中も(メディア陣のなかで)出ていました」(取材記者)

 「ヒットか、エラーか」を判断するのはNPB記録員の仕事。しかし、翌30日、ヤクルト球団が紙面で「再検証」を求めた。記録データ管理部のスタッフが集まり、映像も確かめた結果、『失策』を『ヒット』に訂正することになったのだ。
 滅多にないが、こんなふうにNPBが公式記録を訂正することもある。ヤクルト上田は打率を上げ、鳥谷は同日の失策が消滅したのだから、今回の訂正はお互いにとってプラスになったようだ。
 昨季、鳥谷は自身4度目のゴールデングラブ賞に選ばれている。同賞は守備力に卓越した選手に与えられる。だが、投票権を持つ野球担当者のなかから「迷った」の声も多く聞かれた。
 「2015年、鳥谷は『14』の失策を記録しました。14年は『5』。巨人の坂本勇人は14年13個の失策を11個に減らしており、広島・田中広輔の失策数は『22』。坂本か鳥谷かで迷った記者はかなりいました」(投票権を持つ野球担当記者の1人)

 金本知憲監督(48)が就任直後、その鳥谷に喝を入れたのは有名な話。鳥谷に改めてチームを牽引してほしいという意味での喝だった。鳥谷はその期待に応えた。どちらかといえば、寡黙な選手だった。しかし、キャンプ、オープン戦では声を張り上げ、中堅、若手にも自ら声を掛けてまわっていた。
 「本人は最後まで認めませんでしたが、昨季は背中の故障や脇腹痛でかなり辛い思いをしていました。練習熱心な性格も変わらずで、連続試合、同フルイニング出場にもこだわっていました」(プロ野球解説者)
 鳥谷の故障は前任の和田豊監督が報道陣に漏らしたもの。和田前監督は精彩を欠くとするメディアの鳥谷評に反論するつもりで話したのだが、本人は失策の言い訳にしたくないとし、むきになって否定していた。
 「昨季は左翼にマートン、二塁手は上本。2人とも守備に難のある選手でしたから、鳥谷の守備範囲は自ずと広くなっていきました」(前出・同)

 開幕第3節のDeNA戦前、阪神の内野守備練習を見ると、北條史也(21)が鳥谷と同じショートでノックを受けていた。秋季キャンプに逆上れば、「守備だけなら一軍で使える」といわれる植田海(19)を、一時的だが、一軍に招集した。関係者によれば、若い遊撃手候補をお披露目するのは、鳥谷に対する無言のプレッシャーも兼ねていたという。金本監督は現役時代、連続試合出場の重圧と戦い、同時に「早く途切れれば」とも思ってきたそうだ。しかし、実際に途切れると、一気に老け込んでしまった。
 鳥谷にプレッシャーを掛けることで、金本監督は彼の現役生活を長くさせしようとしているのだろう。
 「失策が取り消されたことを聞かされても、鳥谷、金本監督も『だから何?』といった感じでした」(同)
 守備の負担も大きい遊撃手での連続試合出場は、並大抵ではない。今回の記録訂正に救われたのは鳥谷のほうかもしれない。

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