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男気完全燃焼! 広島カープ・黒田が決断する今シーズン「引退」(2)

 実は昨年、『黒田塾』のようなものができた。投手陣は黒田に学びたいとし、コンディション作りや配球について質問した。しかし、本当に伝えたかったのは“プロフェッショナル論”だったのだ。
 「ローテーション投手の責任」「エース論」…そういったものを、福井優也、大瀬良大地、野村祐輔、中崎翔太、そして新人の岡田明丈や横山弘樹らに伝授したかったという。
 「相手打線に連打を食らい、弱気になると、そういう気持ちは後ろで守っている野手に伝わるんです。気持ちの持ち方、立ち居振る舞い、ローテーションで登板のない日の過ごし方など、すべての言動を野手陣は見ている、と。その一つ一つに責任感を持たなければ、エースにはなれない、というものでした」(同)

 シーズン中の黒田は、独特の雰囲気を身にまとう。登板前日ともなれば、球団スタッフや緒方監督でさえ、話し掛けるのをためらう緊張感があるという。
 また、登板がない日も球場入りし、黙々と練習をして汗を流す。その練習でちょっとでも手を抜けば、野手陣に伝わる。
 そういうエースの立ち居振る舞いを、後輩たちに伝えたかった。それが伝えられなければ、帰還した意味がない、とさえ思っていたという。
 「野村に責任感が芽生えました。マエケンが抜けた穴を自分が埋めてみせるという意気込みと攻撃的なピッチングは、去年までは見られなかったものです」(スポーツ紙記者)

 ピッチングスタイルもマイナーチェンジしていた。プレートに乗せる右足の位置を、ほんの少し三塁側に変えた。これによって、右打者の胸元に放る変化球が“ケンカ腰”になった。それだけではない。
 「黒田は昨年オフ、新井貴浩と捕手の石原慶幸をゴルフに誘っています。内外角に投げ分ける変化球の意義を黒田は石原に語り、新井には、若手に適当なところで満足させないためには、ベテランが猛練習し、言葉ではなく、態度で示すしかないと訴えたそうです」(同)

 石原のリードも強気になった。広島のチーム防御率3.42はリーグ2位。特筆すべきは『被本塁打』で、東京ヤクルトがすでに80本を献上しているのに対し、まだリーグ最少の52本(7月4日時点)。失点292もリーグ最少。広島投手陣が、黒田イズムでいかに攻撃的になったかが分かる。
 「こうしろと面と向かって説教したのは、新井と石原だけかも。あとは自らの背中で教育したというか…」(前出・ベテラン記者)

 緒方監督にも指揮官の余裕が出てきた。就任1年目でいきなり優勝候補となった昨季は、空回りしていた面もあった。
 「一番早く球場入りし、最後に球場を後にしていました。連勝できず、波に乗れないチーム状況を打破しようと、データや映像資料とにらめっこしていました。その緊張感がマイナスに働いてしまった」(同)

 2年目の春季キャンプ最終日、広島ナインはグラウンド中央に集まり、円陣を作った。そのとき、緒方監督の両脇を固めたのは、黒田と新井の両ベテランだった。
 チームに影響力を持つ2人が寄り添うことで、「緒方監督を支えていく」との意気込みも自ずと広まった。
 「新井は努力の人。若手時代、彼の打撃は『宝くじ』と言われたほど。努力で這い上がってきました」(前出・スポーツ紙記者)

 新井は「努力すれば、道が開ける」と教えたかったのだろう。その新井が2000本安打を達成したとき、チームは盛り上がり、野手陣はそれに続こうとした。
 「田中広輔が成長して1番に固定でき、菊池涼介、丸佳浩を2、3番に定着させたのが大きい。ルナの加入でエルドレッド1人に相手投手のマークが集中しなくなった」(同)

 戦う集団への“闘争エキス”の注入によって、黒田が現役を続行した目的は果たされた。優勝を果たせば、黒田はすべてをやりきったことになる。
 「山本浩二、衣笠祥雄の両レジェンドも後輩に勝つことの意義、準備を伝え、引退していきました。それが継承され、伝統となり、強いチームになっていくんです。黒田はそういう継承劇をやろうとしている」(カープ関係者の一人)

 日米通算200勝の金字塔を打ち立て、黒田はカープ黄金期の継承劇を再現させようとしている。日本中の野球ファンは「黒田はまだ投げられる」と思っているのだが…。

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