社会
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社会 2017年07月03日 14時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 鳩山一郎・薫子夫人(下)
鳩山家の血筋はいずれも揃って偏差値の高い超頭脳の持ち主で、「華麗なる一族」を構成している。 鳩山一郎の父・和夫は日本における法曹界の先駆者で、弁護士から東京帝国大学教授になり、わが国第1号の法学博士になっている。その後、代議士になり、やがて衆院議長の椅子にも座っている。 母は、春子。こちらは我が国の女子教育界を代表する教育者で、いまの共立女子学園の創設にも携わっている。夫・和夫を大臣にするために、時の首相だった原敬に切々たる手紙を書き送ったこともある“政治家の妻の鑑”でもあった。 また、鳩山薫子の義母ともなるこの春子は、一方で長男・一郎、次男・秀夫の2人の息子の教育にも熱心で、2人を小学生の頃から毎朝3時半に起こし、自ら英語、数学、漢字を教えてもいる。薫子を上回る「女丈夫」「良妻賢母」の一方で、元祖“教育ママ”でもあったのだ。 さて、一郎・薫子夫妻というと、1男5女をもうけたが、長男の威一郎がまたとんでもない超頭脳の持ち主だった。東京帝国大学法学部で「全優」の首席卒業。大蔵省に入ったあとは主計局長、事務次官とエリートコースを歩み、のちに田中角栄元首相に誘われて政界入りし、参院議員として外務大臣に就任している。この威一郎の政界入りに備えての薫子の「賢母」ぶりを示す、こんなエピソードがある。鳩山家を知る古い政界関係者から、筆者が聞いている。 「威一郎が大蔵省に入ったあと、薫子はわざわざ2人で謡曲を習った。謡曲は腹から声を出さねばならず、早くから政界進出をにらんで説得力、迫力ある演説の“予行演習”をさせていた」 その威一郎の妻は、安子。タイヤメーカー『ブリヂストン』の創業者・石橋正二郎の長女である。ちなみに、鳩山家はこの石橋家を通じた形で美智子皇后の生家である『日清製粉』創業の正田家とつながり、天皇家にもつながることになる。 そのうえで、威一郎・安子夫妻には2男1女ができ、長男・由紀夫は東大工学部を卒業。のちに政界入りして民主党政権で首相。昨年亡くなった次男・邦夫は東大法学部を首席卒業、由紀夫より一足先に代議士になり、文部・労働大臣などを歴任したといった具合だ。 一方、薫子の夫である一郎は東京帝国大学法科を優秀な成績で卒業。その後、29歳で東京市議、32歳で戦前の政友会から代議士として初当選したが、戦後は脳出血で倒れ車椅子生活を余儀なくされる中で、「悲劇の政治家」とも言われた。 当初、鳩山は、吉田茂元首相とはともに自由党を旗揚げするなど蜜月関係だった。また政治資金の面倒をみたりしていたが、戦前に軍国主義の台頭に協力としたという理由でGHQからパージ(公職追放)を受け、パージ解除後、政界復帰を窺っていたものの前述の脳出血で倒れるという苦境に見舞われている。しかし、リハビリで政界復帰が可能となるや、今度は吉田が鳩山を遠ざけ、2人の関係は悪化していったのだった。 やがて鳩山は自由党を離党して日本民主党を結成、第5次内閣で人気凋落の吉田を退陣に追い込み、鳩山内閣を誕生させたのは昭和29年12月。ここに薫子の鳩山家に嫁いでの悲願が達成されたということだった。 首相になった鳩山は、3次における内閣を率いる中で、日ソ(注・ソ連、現ロシア)国交回復への執念を燃やし続け、昭和31年10月、ついに日ソ国交回復共同宣言の調印にこぎつけた。このとき結ばれたソ連との条約では、「北方領土」4島のうち歯舞、色丹2島返還が約束されているが、いまなお領土問題解決には至っていないのは読者もご存知のところである。 その鳩山は退陣後の2年半後に死去。一方の薫子はその夫の死から23年後、93歳の天寿をまっとうした。その遺体は鳩山家の“本丸”「音羽御殿」(東京・文京区)の亡き一郎の遺影がかかる寝室に安置されたが、薫子の安らかな死に顔に白い布はかけられておらず、弔問客はその顔に無言の別れをした。生前、親しかった人々にこうした形を取るのは、鳩山家代々の“流儀”で、一郎のそれも、また同じだった。その後、薫子が共立女子学園理事長も務めていたことから共立学園葬がいとなまれ、あらかじめ一郎の墓の隣につくっておいた自らの墓に入り、静かな眠りについている。 鳩山は性格も手伝って、政治的にもいささか甘いところがあった。そうした中で、薫子は鳩山が首相になるや閣僚をはじめとする政治家夫人を集めての親睦会をつくって、政権の“一致団結”を後押しをするなど、全力で夫を支えたものだった。 「悲劇の政治家」に天下を取らせたのは、薫子あってのものと言えた。以後、歴代総理夫人の多くはこれを見習い、閣僚夫人との親睦会をやることで夫を支えることに汗を流している。 薫子の“知恵”が、いまにして引き継がれているということである。=敬称略=(次号は石橋湛山・うめ夫人)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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社会 2017年07月01日 11時00分
読売新聞vs朝日新聞 抗争勃発! 小池都知事が築地市場にスタジアム構想
東京都議選もはや終盤。自民党に火花を散らす小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会(無所属推薦者を含む)」が、無党派層や民進離党者を取り込んで、都議会の第一党になるか注目されている。 その小池知事は6月20日に都庁で会見し、築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)移転問題について、築地と豊洲「共存案」を提示した。豊洲に市場を移転した後、5年後をメドに築地を、市場機能を持つ場として再開発すると…。 「共存案は、豊洲派からも築地派からも“いいとこ取り”との批判が続出している。一番の問題点は、豊洲に約6000億円もの事業費を投じながら、築地を再開発する財源をどこから持ってくるのかということ。税金を使うのか、工期も不透明。知事は『ベストなワイズスペンディングでいきたい』と話しているが、説明不足は否めない」(テレビ局都政担当者) 知事が示した「築地は守る、豊洲を生かす」をざっと説明していこう。豊洲は各機能を強化して「総合物流拠点」とし、築地は「5年をメドに食のテーマパーク機能を持つ一大拠点に再開発する」というもの。とりわけ、築地はブランド力を生かした「食のテーマパーク」化を鮮明にし、外食施設を含むショッピングモールなどの商業施設と、4万人収容規模のスタジアムを造る構想だという。 「当初、都は築地跡地をホテル、オフィス、住宅建設を目的とする事業者に売却し、売却益を豊洲の事業費に充てようとしていました。しかし、小池知事は“レンタル”の方針にスパッと切り替えた。更地で貸そうが、建物を作って貸そうが、年間200億円以上の賃料がとれるという試算が出たからです。築地は、東京、新橋、日本橋、銀座駅から近く、集客力は抜群です。さらに、2020年の東京五輪までに環状2号線を開通させる。こんな都心の一等地はここが最後。“引く手あまた”を見越しての判断です」(元東京都幹部職員) さっそく動き出したのが、読売新聞グループだ。巨人の本拠地・東京ドームは来年で築30年を迎える。老朽化が進んでいるのに加え、年間使用料が30億円と馬鹿にならない。そのため、3年後に迫る東京五輪・パラリンピック後の新国立競技場を業務委託の形で借り受けて、新たに本拠地とする案を模索していたのだが、今回の小池構想で方向転換したという。 「読売新聞グループは巨人のほか、傘下に東京ヴェルディ1969(男子サッカー)と日テレ・ペレーザ(女子サッカー)を実質的に抱えているため、年間を通じてスタジアムを使えるメリットがあります。試合の合間にコンサートライブや展示会を入れれば、十分採算が取れると踏んだのでしょう。もともと朝日新聞本社の目と鼻の先にある築地市場は、読売が早くから触手を伸ばし、本社建設の動きまであった地区です。結局、大手町の旧本社跡に新社屋を建設しましたが、築地に巨人のスタジアムを作れば、朝日に対して牽制になるという思惑もあるのです」(日本テレビ幹部) これに、冗談じゃない、と朝日新聞も“築地防衛”に乗り出した。こちらのカードは、Jリーグ・FC東京の本拠地スタジアム建設と、サッカー日本代表のメーンスタジアム誘致が狙いだ。 実は、FC東京の前身は、東京ガスフットボールクラブ。主要株主は東京ガスで、豊洲問題とは縁浅からぬ関係にある。朝日側はその東京ガスと連合して、FC東京をビッグクラブに育てる構想だという。 「そもそも論でいえば、豊洲は東京ガスの所有地でした。小池知事が豊洲市場移転を断念した場合、東京ガスはこれを買い戻し、ここに自前のスタジアムを造ってFC東京の本拠地を移す計画がありました。東京都に恩を売る形でカジノや大型商業施設も作り、統合型リゾート(IR)に転用する計画です。それが、今回の共存案で事実上消滅し、築地再開発に転換するという構図となった。サッカーに関して、力を入れているのが朝日新聞。読売の築地進出を阻止するため、都と連合を組むのです」(スポーツ紙デスク) 都議選真っ最中の小池知事は「築地スタジアム」を餌に、読売新聞と朝日新聞を競わせ、「自民と都民ファースト、どちらを応援するの?」と揺さぶりをかけているともとれる。 同時に、東京五輪のメーンスタジアム建設に伴い、本拠地喪失の目に遭っているのが、神宮球場を失うヤクルトだ。都内外に一時疎開した後、2022年度末に新神宮球場が完成するまで、先行きが不透明。 そこで囁かれているのが、一時移転先が東京ドームで、その後は築地の読売スタジアムに移るというプランだ。つまり、“巨人・ヤクルト相乗り構想”…。 ヤクルトの前身である産経新聞は安倍政権支持で連合しており、築地にカジノを誘致するIR計画でも読売と連携している。小池氏の支援があれば十分に可能だ。一方のFC東京には、東京新聞が応援している。 たかが築地の跡地問題と見てはいけない。都議選に乗じたスタジアム建設を餌に、大手新聞を手玉に取る小池氏はかなりの手練だ。
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社会 2017年06月30日 14時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 やはり原発新増設だった
6月9日の日本経済新聞が、驚くべき記事を掲載した。経済産業省が、国のエネルギー計画の見直しに際して、原子力発電所の新増設や建て替えの必要性を明示すると報じたのだ。 現在、政府のエネルギー政策の基本は、原発依存度を可能な限り低減させていくというものだ。自民党の公約もそうなっている。つまり、長期的な“脱原発”を目指すことにしているのだ。そのなかで経済産業省は、原発の新増設を行うという。これはエネルギー基本政策への反逆ともいうべき方針だ。 実は、私にはこうなるのではないか、という予感がしていた。政府が原発を重要なベースロード電源と位置付けたことも理由のひとつだが、最大の理由は、この数年、政府が太陽光発電を目の敵にし始めていたからだ。 福島第一原発の事故以降、国は再生可能エネルギーを拡充するために、様々な施策を打ち出してきた。なかでも最も大きな効果を発揮したのが、太陽光発電の固定価格全量買い取り制度だった。 太陽光発電で作られた電力を20年間にわたって電力会社が固定価格で買い取ることを義務付けたため、太陽光発電に参入する事業者が急増した。太陽光発電は、電力使用量が最も増える夏場の日中に大きな出力を発揮する。だから、原発事故後、日本の原発が全停止するなかでも、夏場の電力ピークを何とか乗り切ることができたのだ。 しかし、原発なしでも電力をまかなえるという事態は、原発村の住人たちを慌てさせたのだろう。そこで彼らが採った施策が、太陽光発電への嫌がらせだったのだ。 まずは、単価の切り下げだ。'12年度に全量買い取り制度が導入されたとき、買い取り単価は40円だった。それが毎年切り下げられ、今年度は21円となった。5年で半額だ。太陽光パネルの価格が下がったからという説明がなされているが、太陽光発電には、土地代、固定資産税、設備稼働のための電気代、設備保全費などさまざまなコストがかかる。それを考えたら、21円というのは、事業がほとんど成り立たない価格だ。そもそも、我々庶民が支払っている電気代の単価より安いのだ。 嫌がらせは他にもまだある。送電網の容量不足を理由に、いま太陽光発電の買い取りを行う地域は、厳しく制約されている。本来であれば、送電線の容量を拡大すればよいだけの話なのだ。 さらに'15年からは、無制限無補償の出力制限が導入された。電力会社の電気が余った場合には、太陽光発電を買い取りませんという制度だ。つまり、せっかくの太陽光発電を捨ててしまえということだ。これでは、太陽光発電を計画する事業者は、採算の見通しがつかない。 実際問題として、いま太陽光発電への参入は失速を迎えている。政府がエネルギー基本計画で示した再生可能エネルギーの電源割合22〜24%という水準に、遠く及んでいない現状での失速だ。 日本経済新聞には、「再エネが拡大するほど原子力などの安定電源の重要性が増す」と書かれているが、それは誤りだ。出力が変動する太陽光を補完する火力発電や蓄電池こそが、今後、重要になるのだ。
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社会 2017年06月30日 10時00分
古文書から紐解く巨大地震発生デー 第2弾 富士山噴火と連鎖するM9襲来
「これまで世界各地で発生したM9クラスの巨大地震は、翌日から数年以内に周辺の火山噴火を誘発しているのです」 こう指摘するのは、地震学が専門の武蔵野学院大特任教授・島村英紀氏である。 海外に目を向けると、1952年のカムチャツカ地震(M9)、'60年のチリ地震(M9.5)、'64年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ島沖地震(M9.1)では、近隣の火山が例外なく噴火している。やはり巨大地震と火山噴火は関連があるのか。日本では東日本大震災から6年が経ち、島村氏も「富士山の噴火の可能性も捨てきれません。引き続き警戒した方がいいと思います」と警鐘を鳴らしている。 富士山の最後の噴火は、江戸時代中期、1707年に起きた宝永大噴火。その直前には、推定M8.6〜9クラスとされる宝永地震が発生している。南海トラフ巨大地震だ。 「この時は、東海道沖を震源とする東海地震と紀伊半島など南海道沖を震源とする南海地震が同時に発生し、南海トラフのほぼ全域の断層が破壊されています。死者2万人以上、倒壊家屋6万戸、津波による流失家屋は2万戸に達したと推測され、記録に残る日本最大級の地震とも言われているのです」(サイエンスライター) 宝永地震が起きた10月28日の翌日の朝方、現在の静岡県富士宮市付近を震源とする強い地震が発生し、駿河、甲斐で強い揺れを感じたという記録が残っている。さらに11月10日頃からは富士山の山麓で地響きが始まり、12月16日に宝永大噴火が始まった。 当時、沼津市東熊堂にある大泉寺にいた僧・教悦は、『元禄大地震覚書』で、そもそも富士山の地響きは宝永地震の4年前に関東地方を襲った元禄地震(推定M7.9〜8.5)の後に始まったとも記している。 「いずれにせよ当時の記録を総合すれば、宝永地震の余震が続く中、富士山の山麓一帯ではM4からM5程度の地震が数十回起きた後に噴火。東斜面から高温の軽石が大量に麓へ降下し、家屋を焼いて田畑を埋め尽くしたという。夕暮れになると噴煙の中に火柱が見え稲妻も飛び交い、約2週間にわたり人々を脅かし続けたのです。噴煙は上空20キロにまで達し、火山灰は100キロ離れた江戸にまで達したといいます」(同) 富士山は、歴史上分かっているだけで12回以上の大噴火を起こしている。では、宝永大噴火の前の貞観噴火の際はどうだったのか。時は平安時代初期の864年にまでさかのぼる。 「貞観大噴火では、溶岩が北西麓の一帯を埋め尽くした。そこへ木々が覆い茂り森林地帯として再生したのが青木ヶ原樹海です。宝永大噴火とともに、文献に残る富士山の噴火で最大規模とも言われています」(同) 貞観大噴火の記録は、朝廷が編纂した歴史書『日本三代実録』に収められており、専門家の間では信頼すべき唯一の資料だという。それによれば、7月2日、駿河国から朝廷に「十数日前から富士山が噴火しており、流出した溶岩流が本栖湖に流入した」という第一報が届いている。次いで8月下旬には第二報が甲斐国から京都にもたらされた。 「溶岩流は北西の富士五湖の本栖湖と、当時、北麓にあった広大な“せの海”という湖に流入し、民家が溶岩流の下敷きとなったばかりか、別の溶岩の流れは河口湖方面へ向かったという。現在の西湖と精進湖は、溶岩が流れ込んだせの海の名残なのです。また、この甲斐国からの報告には、湖への溶岩流入前に大きな地震があったことも書かれています」(地元記者) 宝永大噴火と同じく、この貞観大噴火についても巨大地震との関連性が指摘されている。 「貞観大噴火の5年後の869年には、M8.3以上と言われる貞観地震が起きている。しかも震源は三陸沖で、津波により東北地方は甚大な被害を受けたとされ、東日本大震災はこの地震の再来だったとまで言われている。そもそも、この時期は地震と噴火が繰り返し発生しており、現在と状況が似ているとする専門家もいるのです」(前出・サイエンスライター) 順に追えば、貞観大噴火、貞観地震の4年後の868年に、兵庫県近辺を震源とした播磨国地震(推定M7.0以上)、878年に相模トラフを震源としたとされ関東地方に被害を出した相模・武蔵地震(推定M7.4)、887年には諸説あるが南海トラフ巨大地震の見方が強い仁和地震(推定M8.0〜8.5)、その後、900年代に入ると青森県と秋田県にまたがる十和田火山(十和田湖=カルデラ湖)が大噴火を起こしている。 「さらに貞観地震の6年前に現在の富山県から新潟県にかけても大地震が、同時期に鳥取県付近でも地震が起きている。現在に置き換えれば'04年の新潟中越地震、'00年の鳥取県西部地震や昨年の中部地震、播磨国地震は阪神淡路大震災となる。となれば、まだ起きていない巨大地震は関東近辺、そして南海トラフを震源としたもの。連鎖という見方をすれば、東日本大震災から富士山噴火、そして関東直下や南海トラフ巨大地震への流れも考えられるのです」(同) 話を宝永大噴火に戻せば、現代に起きたとしても被害は甚大だ。 「東京都内では数センチ、横浜あたりでも十数センチの火山灰が降り積もると予想されています。東海道新幹線は降灰により運行ができない。東名高速の御殿場付近では1メートル以上の火山礫が堆積するとされ、完全に寸断されてしまいます」(同) 首都高速も数センチの火山灰で覆われ、使えなくなる見込みだ。もちろん、大気中に舞う火山灰で飛行機も運航が不可能となる。 「飛行機は構造上、火山灰にめっぽう弱い。エンジンの燃焼室に吸い込まれると溶けてタービンの羽根などに付着して固まったり、冷却孔が塞がれることで、エンジンが故障してしまうからです。操縦席の窓ガラスには傷がつき、視界も塞がれてしまう。実際に海外では、機体が大気中の火山灰を吸い込みエンジンが停止するケースが起きているのです」(航空雑誌編集者) 最近の例では、2010年4月、アイスランドにあるエイヤフィヤトラヨークトル山の噴火で、欧州の約30カ国の空港が閉鎖となり、1週間にわたって10万便もの航空機が運休した。 「富士山の噴火でもしばらくは完全ストップとなるでしょう。宝永大噴火の上空20キロまで吹き上げた噴煙を考えれば、富士山から相当離れた場所でも運航ができなくなる。そもそも、空港に火山灰がわずかでも溜まっていれば、離発着自体ができませんからね」(同) また、送電線に湿った火山灰が降り積もれば、その重みで送電線が断線することもあるという。そのため、広域で停電が起こる可能性さえある。加えて、飛行機のジェットエンジンと同じ構造のガスタービンを備えた火力発電所が東京湾沿岸に集中していることも問題だ。東京湾沿岸は、富士山が噴火した場合に大量の灰が降り注ぐとされ、稼働が困難と見られているのだ。 さらに噴火の被害で恐ろしいのが、火山灰そのものにより引き起こされる健康被害だ。 「火山灰はガラス質の物質を含みます。これを吸い込んで体調を崩す人の数も、数百万人単位になることが予測されている。目が傷ついたり、気管支や肺に入り込んで呼吸困難や気管支炎を発生させる恐れもあります」(健康ライター) 政府は、富士山の噴火による火山灰はわずか数センチ降り積もっただけでも水と混ざり合って泥状になり、滑りやすくなるため自動車などの移動は困難となると注意を喚起している。噴火後数日間は外出もままならなくなるだろう。しかも火山灰は積雪などよりも重量があり、建築物が押し潰される可能性さえもある。 「直接、噴火の被害を受けていなくても、体調を崩した場合に病院へ行くこともできず、交通状況が復旧するまで自宅などで待機するしかない。火山灰は大気中に数カ月間は滞留するため、長期間にわたり健康被害が出るとされています」(同) ちなみに宝永大噴火では、当時の江戸の町や相模、武蔵の国一帯に約7億立方メートル、東京ドームで約560杯分もの火山灰を降り積もらせたという。当時、江戸に住んでいた朱子学者の新井白石は『折たく柴の記』で、富士山大噴火により江戸市中に灰が降ったときの様子を次のように克明に記している。 「前夜の地震に続いて昼頃から雷鳴のような音が聞こえ、やがて雪のように白灰が降ってきた。降灰は午後8時頃やんだが、地鳴りと地震はそのまま。(旧暦の11月)25日からは黒灰が降り始め、空中に飛散する大量の火山灰で呼吸器の疾患を起こす人が続出した」 防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。 「かつての富士山大噴火では、それでも犠牲者が出なかったとされている。理由は、麓に人が住んでいなかったためです。しかし、現代のシミュレーションの中には溶岩流が東名高速を呑み込む恐ろしいものもある。宝永大噴火が起きた江戸時代とは比べものにならない被害が発生するでしょう」 渡辺氏は、「富士山の観測網には今のところ異常は出ていない」としながらも、今後、噴火の可能性についてこう語る。 「富士山の噴火は首都直下地震の後か、南海トラフの後という説が有力ですが、東日本大震災であれだけ地殻が東へ引っ張られ、火山が活性化しただけに、今であっても不思議ではないのです」 加えて島村氏は、巨大地震の危険をこう指摘している。 「貞観時代と現代が同じような地震活動期だと言われるが、それに関しては、さらに学問的な検証が必要です。しかし双方、地下の基盤岩が動き、地震が起こりやすい状態にあることは間違いない。江戸時代の18世紀から19世紀にかけても地震が頻発していましたが、20世紀は比較的少なく、それが当たり前の状態となっていた。しかし、東日本大震災によって、地震が頻発する時代に戻ったと思われます」 大噴火と連鎖して起きた際は、過去とは違った想像を絶する被害が待ち受けているかもしれない。
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社会 2017年06月29日 17時00分
藤井総太四段が“飛び級” 「竜王戦」挑戦権獲得で一気に“14歳七段”の誕生へ
昨年、14歳2カ月で史上最年少プロとなった将棋界の天才・藤井聡太四段は初戦、加藤一二三九段(77)との対局を皮切りにして、現在29連勝で新記録を樹立し、連勝はどこまで伸びるか、いま日本中が注目している。このまま勝ち進んでいくと、8大タイトル戦「竜王戦」(優勝賞金4,320万円)の挑戦者になる可能性がある。渡辺明竜王との決戦に勝利すると、史上最年少のタイトルホルダー誕生となるのだ。 さて、一般には知られていないが、もし藤井四段が「竜王戦」の挑戦者になると、その時点で四段から七段に一気に昇格する。前代未聞“14歳七段”の誕生というわけだ。さらに、竜王のタイトルを獲れば八段の段位を獲得する。通常は1年に一回の昇段だから藤井四段は次に上がれるのは五段ということなのだが…全てにおいて規格外だ。 藤井四段は3月、非公式戦ながら、棋界トップに君臨する羽生善治三冠(46)を破る白星を挙げて注目を集めた。連勝のかかった公式戦ともなれば50人以上の報道陣と10台以上のテレビカメラが入り、彼の一挙手一投足が報道され、本人が食べた昼食のメニューまで報じられる始末だ。 「中学生でプロ入りを果たしたのは、加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明の4人ですが、いずれも後にタイトルを取っている。世間の注目も高く、騒ぐなという方が無理ですよ」(ワイドショースタッフ) 将棋会館には、毎日のように藤井四段への取材の申し込みが殺到しているのだが、それを陰ながら支えてきたのが、藤井四段の母親だ。 「プロになったとはいえ、彼はまだ中学3年生です。将棋の練習に加え、学校の勉強もある。取材で時間が削られるのを少しでも減らそうと、息子のために盾となり取材に応対してきたんです」(同) ところが6月に入り、母親がマスコミへの露出を突如、控えるようになったという。原因は過熱する藤井ブーム。「連勝を重ね、藤井四段に対する世間の注目度が高まり過ぎた」とは、将棋連盟関係者。 「公式グッズとして2000円以上する彼の扇子が売り出されるや、わずか30分で売り切れ。彼が対局日に食べた関西将棋会館近くの定食屋のメニューすら、同じものを食べに来る客でごった返しています。お母さんの発言も影響力が強く、彼が将棋を始めるきっかけになったという、お婆ちゃんがプレゼントした『スタディ将棋』もバカ売れして品薄状態ですし、4歳のときに父親が買い与えたという『キュボロ』という知育玩具も売れに売れている。もはやお母さんの発言力は芸能人以上です。でも、お母さんはあくまで愛知県で普通に暮らす一般人。自分の発言一つで日本市場が動き出す状況に戸惑った。何より、騒がれ過ぎて息子の対局に影響が出てしまうことを心配して、取材を控えるようになったのでしょう」(将棋連盟関係者) とはいえ、藤井四段の実力は本物で、多くの棋士たちが彼を“天才”と言う。実力は今後も伸びることが予想されており、母にとっては嬉しくも悩ましい日々がまだまだ続きそうだ。 通常、棋士の対局は平日に行われるが、藤井四段の対局については「土日中心にする」と将棋連盟の佐藤康光会長が語った。「羽生七冠」以来、突然に降って沸いた藤井フィーバーに連盟もメディア対応に苦慮しているようだ。
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社会 2017年06月29日 14時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第227回 デフレ型経済成長
6月8日、内閣府から2017年1〜3月期の国民経済計算(改定値)が発表になった。◆実質GDP 対前期比プラス0.3%◆名目GDP 対前期比マイナス0.3%◆GDPデフレータ 対前期比マイナス0.5% 名目GDPとGDPデフレータが共に縮小する中、実質GDP(経済成長率)のみがプラス化した。一体、どういうことなのか。 国民はモノやサービスを「生産」するために働き、顧客に消費、投資として「支出」をしてもらうことで「所得」を得る。所得創出のプロセスにおいて、生産、支出、所得の三つは、必ずイコールになる。 そして、国内の「生産」の合計こそがGDP(国内総生産)だ。とはいえ、生産=支出=所得になるため、GDPとは実は国内の生産の合計であり、支出(あるいは需要)の合計であり、同時に所得の合計でもあるのだ。GDPが増えている国は「所得が増えている」というわけで、豊かになっていると判断して構わない。 生産面のGDP、支出面のGDP、分配(所得)面のGDP。三つの面から見たGDPは、すべて総額が同じになる。これを、GDP三面等価の原則と呼ぶ。 GDPは優れた統計だが、厄介な問題をいくつも抱えている。 まずは、金額で見た需要としてのGDP、つまりは名目GDPだ。名目GDPは金額で見るため、物価の影響を露骨に受ける。 例えば、筆者が講演というサービスを生産していると考える。筆者の講演料が1回当たり100万円(筆者の講演料は、実際にはそこまで高くないが)とする。1年間に10回、講演をした場合、1年間の筆者の講演サービスの「生産」、筆者の講演に対する「需要」、そして筆者が講演で稼いだ「所得」は、すべて1000万円となる。結果、日本の名目GDPが1000万円増えた。 この状況から、筆者の講演料が1回110万円に上昇した。講演回数は、以前と同じく年に10回。この場合、筆者の「生産」「需要」「所得」はすべて1100万円に増大するのである。名目GDP10%成長だ。 とはいえ、別に筆者の講演「サービスの生産量」が増えたわけではない。単に、講演料が値上がりしただけだ。すなわち、物価上昇である。 名目GDPは、実質の生産量が一定(もしくはマイナス)であったとしても、物価が上昇する「だけ」で拡大するのだ。というわけで、物価を定点観測し、得られた物価指数(=GDPデフレータ)で名目GDPを割ることで、実質GDPを「計算」する。○実質GDP=名目GDP÷GDPデフレータ 分かりやすく書くと、名目GDPの動きから物価変動の影響を除いたものが、実質GDPの成長率、すなわち経済成長率になるのである。 さて、実は実質GDPにしても深刻な問題を抱えている。例えば、名目GDP(需要)が縮小するデフレ期に、名目GDPの「縮小率」をGDPデフレータの「下落率」が上回るとどうなるか。何と、実質GDPがプラスで「計算」されてしまうのである。 名目GDPが低迷するデフレ期に、GDPデフレータという物価指数が大きく下落すると、需要が縮小しているにもかかわらず、経済成長しているという意味不明な状況に至るのだ。 名付けて、デフレ型経済成長である。 先の例で言えば、講演料100万円、講演回数が年10回、名目GDP1000万円の状況から、講演料が90万円に値下がりした。それに対し、講演回数は年11回に増えた。すると、筆者の所得=名目GDPは990万円になる。 講演回数が増えたということは、筆者は「以前よりも働いている」という話になる。講演サービスの「生産量」が1割増えたわけだから、実質GDPは10%成長だ。それにもかかわらず、年間に講演で稼ぐ所得は10万円減ってしまうのである。まさに、徒労だ。 この「徒労感」にあふれるデフレ型経済成長に、現在の日本は落ち込んでいる。 冒頭の通り、現在の日本は名目GDP成長率、GDPデフレータ成長率が共にマイナスに落ち込んでいる。ところが、物価下落率が名目GDPの縮小率を上回ってしまったため、実質GDPがプラス化してしまったのだ。 名目GDPという「需要」の縮小も、物価の下落も、共に「デフレーション」特有の現象だ。日本はデフレに陥っているにもかかわらず、物価下落率が需要縮小率を上回り、「経済成長して見える」という状況に至った。すなわち、デフレ型経済成長である。 四半期別の日本のGDPデフレータ「前年同期比」をグラフ化してみた。 2014年4〜6月期、消費税増税で物価が強引に引き上げられ、GDPデフレータは上昇した。一時的に物価上昇率が、対前年同期比3%を上回ったのだ。 とはいえ、その後は次第に上昇幅を縮め、'16年7〜9月期以降はマイナスに転じてしまう。消費税増税が物価あるいは「デフレ」に与える影響は、継続することが分かる。 現在、日本国民は継続的に消費「量」を減らしている状況にある。消費税が増税され、実質賃金が低下した以上、当たり前だ。2017年4月まで、日本国民は(うるう年の影響を除くと)何と20カ月連続で、実質消費を減らしているのだ。 国民が消費「量」を減らし続けている以上、日本国内の物価が上昇するはずがない。日本が消費税増税により「再デフレ化」したのは明らかだ。 ところが、デフレ型経済成長は、曲がりなりにも実質GDPが増えている(ように見える)ため、政治家や国民が「経済は好調だ」と勘違いし、肝心要のデフレ対策が打たれなくなる可能性が高い。 日本経済は、再デフレ化した。政府は「5期連続プラス成長」などとやっている場合ではないのである。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2017年06月29日 10時00分
北朝鮮ミサイル開発資金潤沢の理由は海外40カ国に散らばる“北の働きアリ”にあった
北朝鮮は長年、「やがて体制が崩壊する」と言われ続けてきた。韓国は「敵(北)はやがて崩壊する」と主張しているが、北朝鮮もまったく同じ。「資本主義の韓国では貧しい民衆の権利は守られず、迫害された大衆はやがて革命を成功させ、我々に合流するであろう」と喧伝している。いま、外国資本に頼りっきりの韓国の経済は崩壊へと向かいつつある。今年の年末からは“脱北”ならぬ“脱南”もささやかれ始めているのだ。 「中国当局は非公式ながら国内企業の一部に対し、北朝鮮労働者の雇用を停止するよう指示を出した模様です。北の出稼ぎ労働者は中国において、核・ミサイル開発に向けた外貨獲得手段の一つになっていました」(北朝鮮ウオッチャー) 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会が6月の初めに「4月の北の対中国石炭輸出量はゼロになった」と発表したが、金正恩朝鮮労働党委員長はまったくこたれていない。というのも、海外で働く北朝鮮の労働者は中国以外にも40カ国、10万人にも上ると言われ、年に約2億5000ドルをせっせと納めてくれるからだ。 「北朝鮮は在外大使館を通じてのビジネスが規制され、ドイツでは厳しい措置が取られましたが、規制の弱いキューバやロシア、イラン、さらにはパキスタン、バングラデシュ、ラオスに拠点を移しています。米国は高麗航空(北朝鮮の国営航空会社)利用のボイコットを呼び掛けましたが、依然として中国やロシアに飛んでおり、中国人の北朝鮮への観光旅行も衰えていません。また、肝心要の銀行取引の制裁については、北朝鮮は外国にあるダミー会社を使って制裁を回避しており、中国の仲介者を通じて受・送金を行っているのが実態なのです」(同) このようにして得た外貨が北朝鮮経済を下支えしているとともに、巨額の資金を要する核・ミサイル開発に使用されていることは間違いない。加えて国内経済は、総合私設市場=闇市(チャンマダン)で蓄財した新興の“銭主”の登場により決して悪くはない。 「4月13日、金正恩委員長が“経済制裁など利いていない”とあざ笑うように『黎明通り』にそびえ立つ超高層マンション竣工式のテープカットを行いましたが、ここには銭主資本が投入されています。平壌市内などの新築高級マンションの3分の2は銭主と組んだ中国資本の所有と言われます」(在日中国人ジャーナリスト) 最初に“銭主”となったのは日本に親戚がいる帰国者だったが、その後、外国から合法的に物資を調達できる立場にあり、流通手段を手にしている貿易機関の幹部、許認可権を有する政府部門の幹部らが新たに加わった。 とはいえ、これら“資本主義者”の隆盛は正恩政権にとって両刃の剣だ。日本からも「遊戯関連企業」等から北へ資金が流れていることは周知のこと。各国に沢山の“北の働きアリ”がいる限り北朝鮮は資金に困ることはないということだ。
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社会 2017年06月28日 14時00分
インスタントの常識を覆す食品業界のカップ麺を巡る切磋琢磨
メタボや血糖値が気になってカップ麺は我慢…。そんな悩みも今は昔。昨今は各食品メーカーが競ってヘルシー、健康志向に合わせたカップ麺を発売し、売り上げを伸ばしている。 まず、日清食品は“カップヌードルよりこってり濃厚なのに罪悪感ないス!”がキャッチフレーズの『カップヌードルナイス』が、今年4月の発売から40日足らずで1000万食突破という驚異的な売れ方を見せている。 日清ホールディングスの広報担当者がこう語る。 「従来のカップヌードルより、脂質は50%オフ、カロリーを40%オフの178キロカロリー、糖質も40%オフにしました。加えて、食物繊維がレタス4個分も入ったノンフライ麺。もちろん、今年で46年目のカップヌードル好みの方も変わらずいらっしゃいますが、この『ナイス』は最近、血糖値やメタボが気になるアラフォー世代の男性などを中心に、ご支持をいただいています」 健康が気になるからと、ただ単に糖質、脂質を削り、制限した商品にすると従来のカップ麺より味が落ちるのは必至だった。しかし、日清は独自製法で今回の新商品にこぎつけたのだ。 こうしたヘルシーカップ麺に力を入れるのは、日清食品だけではない。 エースコックは、血圧が高めの人に適した機能が報告されているアミノ酸「GABA」を配合した日本初の機能性表示食品のカップ麺を今年3月に発売し、ジワジワと消費者間で浸透中。エースコックの広報担当者はこう説明する。 「当社は元々、消費者ニーズに応える形で『スープはるさめ』などのヘルシー商品を開発してきました。その延長で'13年には塩分控えめカップ麺『かるしお認定 だしの旨みで減塩』シリーズを発売。その商品をさらに発展させ、カップ麺で初の機能性表示食品としたのです」 『かるしお』シリーズは、魚介や昆布などのだし分量を増やし、減塩も実現しているが、消費者は「美味い」も実感し満足度を満たす。通常のカップ麺に対し、減塩率は当初25%だったものが今は40%。その実績が国立循環器病研究センター提唱の『かるしお』、つまり減塩と味を両立した食品に贈られる認定商品となった。これにGABAを配合し、日本初の機能性表示食品カップ麺となったのだ。 東洋水産も健康志向カップ麺に力を入れる。同社広報担当者の話。 「昨年8月発売の『マルちゃん うまいつゆ 塩分オフ きつねうどん』『同天ぷらそば』の2品が、塩分25%オフで日本高血圧学会の減塩食品アワードで金賞受賞。さらに、塩分30%抑えた『ホットヌードル』も昨年、『醤油味』『塩味』を発売し、そこに今年『旨みカレー味』を追加しました」 明星食品も糖質50%で塩分控えめ、食物繊維が大量に入った『低糖質麺はじめ屋』シリーズや、『ローカーボNoodles』などで健闘する。 食品アナリストが言う。 「カップヌードル発売以来、様々なカップ麺で育った世代が、健康に気をつけなければならない年齢になった。従来のカップ麺は、塩分や糖質が気になり敬遠されがち。その世代をもう一度取り込むため、各社が美味いヘルシーカップ麺を作り上げ新市場を再構築しつつあるのです」 昔からテレビCMでおなじみの『サッポロ一番』のサンヨー食品も、'15年には減塩30%の『サッポロ一番大人のミニカップ』麺を発売。そして、最新の『ミニカップ中華麺』は塩分を40%までカットさせている。 「夜食と言えばカップラーメン。そんな時、通常量より少なめで減塩してあるミニカップには需要があると踏み、開発したと言われています。しかし、それ以外で、カップ麺ではないが話題を呼んだのが、多くの人がなじみのある袋麺でヘルシー麺を開発したことです」(同) それが'15年に発売となった『サッポロ一番グリーンプレミアム0(ゼロ)』だ。 「コレステロールゼロ、塩分30%カットで、スープもノンオイルにしている。発売後半年で2500万食になるヒット商品になっています。この製法が、今度はカップ麺でどう活かされてくるのか注目されています」(同) カップ麺を巡っての各メーカーの新たな動きもある。麺開発だけでなく、市場確立にも取り組んでいるのだ。前出のエースコック広報担当者が言う。 「ヘルシー麺でも、消費者はスーパーの大量のカップ麺売り場のどこにあるか見つけにくい。そこで当社は、1年ほど前からスーパーなどで他社製品も含め『健全な食生活を意識した活動』、略して『健活コーナー』設置を提案し、今や全国約2000店舗で設置され、消費者の方々にも大変喜ばれています」 いずれにしても、ヘルシーカップ麺戦争はまだ序の口。勝負はこれからが本番なのだ。
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社会 2017年06月28日 10時00分
英国タワー大火災が警告する「30年経った首都圏タワーマンションは危険」という事実
大惨事! 英国ロンドンの24階建て高層マンション『グレンフェル・タワー』で発生した大規模火災は、映画『タワーリング・インフェルノ』の地獄絵図だった。少なくとも17人の死亡が確認されている(6月18日現在)。気になるのは、タワーマンションが林立する日本の防火対策だ。 「総務省が5年に一度実施している『住宅・土地統計調査』によれば、15階以上の高層共同住宅は直近の2013年調査で約85万棟と、'08年時の約57万棟から1.5倍に増えており、この間、タワマンでの火災発生件数は2倍以上に増加しているのです」(防災アナリスト) 日本のタワマンは消防法での規制の他、建物の高さや階数などに応じてスプリンクラーの完備、ヘリの離着陸場所の確保、非常用エレベーターといった厳しい防火対策、防火設備の設置が義務付けられている。このためロンドンの火災のように一気に燃え広がるようなことは「日本のタワマンでは考えづらい」と先の防災アナリストは言うが、それは古さにもよる。 「今回、難を逃れた住民たちは、火災報知機やスプリンクラーなど防火体制の不備を指摘し人災と訴えていますが、ここまで被害が拡大したのは、日本でも広く使われている『外張り断熱工法』をリフォーム時に採用したからではないでしょうか。同工法は工期短縮、低コスト化というメリットがある反面、原料に可燃性のポリスチレンなどが使われているため、いざ着火すると激しく燃える可能性があります」(同) 3年前に国立研究開発法人建築研究所が、こうした外装材の危険性について注意を喚起したことがある。 「日本でタワマン建設が始まったのは、英国の被災タワマンより3年古い1971年のことです。最近のものは耐火構造がしっかりしていますが、30年以上前に建てられた鉄筋コンクリート造のマンションは、外壁改修などの際に可燃性の断熱材が『外張り方式』で使われており、さらにその時々の規制に応じてその材質は違うのです。その後も大規模改修の際に、新たな規制に基づいた防火対策、防火設備の導入を行っているでしょうが、最新のタワマンと同等の防火機能を持っているかどうかは、物件ごとに事情が違うはずです」(デベロッパー幹部) 極端な話だが、古いタワマンについては「燃えてみないと分からない」(同)ということだ。超高層ビルで火災が起きた場合の弱点は、はしご車での消火が届かないこと。東京消防庁では、はしご車のはしごが伸びる最大は40メートル。一般的に高さ60メートル以上は超高層ビルに定義されるが、下からの“チョロ水”か、もしくは全く届かないことになる。ロンドンの大火災は、“対岸の火事”ではないということを肝に銘じたい。
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社会 2017年06月27日 14時00分
「富士ゼロックス」 美人営業戦法も使う不正会計発覚のブラック体質
富士フイルムホールディングス(HD)が、傘下の富士ゼロックスによる不正会計を謝罪した。オリンパスや東芝に続き、またも日本を代表する老舗企業が悪事に手を染めた格好だ。 富士フイルムHDの第三者委員会が6月12日に公表した調査報告書によると、不正の舞台は富士ゼロックスのニュージーランド(NZ)販売子会社。複写機などのリース契約で架空取引を繰り返し、売り上げの水増しを行っていたようだ。 「実は不正会計の情報は富士ゼロックス幹部の耳に入っていました。2015年7月に内部告発文が同社副社長らに送られており、これを契機に調査を開始。1カ月後の同年8月には発覚していたのです。通常はこの段階で不正を公表するのですが、副社長らが中心となり『何も問題がなかった』とグループ内の報告書をでっち上げるよう隠蔽を指示しました。翌'16年にNZ販売子会社の社長が交代。新社長によって、約79億円の損失処理が必要との報告を受けたものの、副社長らが損失処理の減額など再度隠蔽工作を指示し、もみ消しを図ったのです」(富士ゼロックス関係者) NZ販売子会社の財務内容が公表され、複数のメディアが損失を指摘。親会社の富士フイルムに知れるところとなった。 「国内の事務機市場はキヤノン、リコー、コニカミノルタなど同業との競合が激しい。富士ゼロックスは売り上げ史上主義を貫いており、売上高1兆円台達成を中長期の目標としていました。最近では美人の営業ウーマンを増やし、中小企業の社長をたぶらかす泣き落とし戦法を展開。『契約してもらえないと会社に帰れない』と泣きつくのです。鼻の下を伸ばした中小企業の社長は喜び、契約を了承する。すると、別の男性営業マンが契約書を持って現れるのです」(同) 隠蔽や泣き落としなど姑息な手段をいとわない富士ゼロックスは、ブラック企業に変貌を遂げつつある。
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社会
都知事選特集 占い師対決
2007年04月02日 15時00分
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谷隼人が都知事選候補者を応援
2007年04月02日 15時00分
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都知事候補 黒川氏がメイドさんと“合体”
2007年03月31日 15時00分
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都知事選 ドクター中松、夜の渋谷交差点で新発明「回転舞台」披露
2007年03月30日 15時00分
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都知事選 石原氏「厳戒歌舞伎町演説」で語った手柄話
2007年03月29日 15時00分
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石原陣営に焦りアリアリ!? 今朝の政見放送でまさかの慎太“老”ぶし炸裂!!
2007年03月28日 15時00分
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都知事選政見放送で仰天マニフェスト
2007年03月27日 15時00分
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都知事選「浅草雷門で時間差対決、石原VSドクター中松」
2007年03月26日 15時00分
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都知事選 浅野スニーカー街頭演説でセクシーポーズ
2007年03月24日 15時00分
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都知事選 石原氏満員電車でGO!
2007年03月23日 15時00分
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都知事選きょう告示、石原氏ら第一声
2007年03月22日 15時00分
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桜金造都知事選正式表明
2007年03月20日 15時00分
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都知事選 黒川氏が石原知事をホリエモン呼ばわり
2007年03月19日 15時00分
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ホリエモン実刑
2007年03月16日 15時00分
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丸山弁護士東京都知事選出馬へ
2007年03月09日 15時00分
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石原カジノ構想消滅!?浅野氏に“追い風”吹く
2007年03月07日 15時00分
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上層部スタッフが告発 NOVA 怪文書
2007年02月21日 15時00分