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インスタントの常識を覆す食品業界のカップ麺を巡る切磋琢磨

 メタボや血糖値が気になってカップ麺は我慢…。そんな悩みも今は昔。昨今は各食品メーカーが競ってヘルシー、健康志向に合わせたカップ麺を発売し、売り上げを伸ばしている。

 まず、日清食品は“カップヌードルよりこってり濃厚なのに罪悪感ないス!”がキャッチフレーズの『カップヌードルナイス』が、今年4月の発売から40日足らずで1000万食突破という驚異的な売れ方を見せている。
 日清ホールディングスの広報担当者がこう語る。
 「従来のカップヌードルより、脂質は50%オフ、カロリーを40%オフの178キロカロリー、糖質も40%オフにしました。加えて、食物繊維がレタス4個分も入ったノンフライ麺。もちろん、今年で46年目のカップヌードル好みの方も変わらずいらっしゃいますが、この『ナイス』は最近、血糖値やメタボが気になるアラフォー世代の男性などを中心に、ご支持をいただいています」
 健康が気になるからと、ただ単に糖質、脂質を削り、制限した商品にすると従来のカップ麺より味が落ちるのは必至だった。しかし、日清は独自製法で今回の新商品にこぎつけたのだ。

 こうしたヘルシーカップ麺に力を入れるのは、日清食品だけではない。
 エースコックは、血圧が高めの人に適した機能が報告されているアミノ酸「GABA」を配合した日本初の機能性表示食品のカップ麺を今年3月に発売し、ジワジワと消費者間で浸透中。エースコックの広報担当者はこう説明する。
 「当社は元々、消費者ニーズに応える形で『スープはるさめ』などのヘルシー商品を開発してきました。その延長で'13年には塩分控えめカップ麺『かるしお認定 だしの旨みで減塩』シリーズを発売。その商品をさらに発展させ、カップ麺で初の機能性表示食品としたのです」

 『かるしお』シリーズは、魚介や昆布などのだし分量を増やし、減塩も実現しているが、消費者は「美味い」も実感し満足度を満たす。通常のカップ麺に対し、減塩率は当初25%だったものが今は40%。その実績が国立循環器病研究センター提唱の『かるしお』、つまり減塩と味を両立した食品に贈られる認定商品となった。これにGABAを配合し、日本初の機能性表示食品カップ麺となったのだ。
 東洋水産も健康志向カップ麺に力を入れる。同社広報担当者の話。
 「昨年8月発売の『マルちゃん うまいつゆ 塩分オフ きつねうどん』『同天ぷらそば』の2品が、塩分25%オフで日本高血圧学会の減塩食品アワードで金賞受賞。さらに、塩分30%抑えた『ホットヌードル』も昨年、『醤油味』『塩味』を発売し、そこに今年『旨みカレー味』を追加しました」

 明星食品も糖質50%で塩分控えめ、食物繊維が大量に入った『低糖質麺はじめ屋』シリーズや、『ローカーボNoodles』などで健闘する。
 食品アナリストが言う。
 「カップヌードル発売以来、様々なカップ麺で育った世代が、健康に気をつけなければならない年齢になった。従来のカップ麺は、塩分や糖質が気になり敬遠されがち。その世代をもう一度取り込むため、各社が美味いヘルシーカップ麺を作り上げ新市場を再構築しつつあるのです」

 昔からテレビCMでおなじみの『サッポロ一番』のサンヨー食品も、'15年には減塩30%の『サッポロ一番大人のミニカップ』麺を発売。そして、最新の『ミニカップ中華麺』は塩分を40%までカットさせている。
 「夜食と言えばカップラーメン。そんな時、通常量より少なめで減塩してあるミニカップには需要があると踏み、開発したと言われています。しかし、それ以外で、カップ麺ではないが話題を呼んだのが、多くの人がなじみのある袋麺でヘルシー麺を開発したことです」(同)

 それが'15年に発売となった『サッポロ一番グリーンプレミアム0(ゼロ)』だ。
 「コレステロールゼロ、塩分30%カットで、スープもノンオイルにしている。発売後半年で2500万食になるヒット商品になっています。この製法が、今度はカップ麺でどう活かされてくるのか注目されています」(同)

 カップ麺を巡っての各メーカーの新たな動きもある。麺開発だけでなく、市場確立にも取り組んでいるのだ。前出のエースコック広報担当者が言う。
 「ヘルシー麺でも、消費者はスーパーの大量のカップ麺売り場のどこにあるか見つけにくい。そこで当社は、1年ほど前からスーパーなどで他社製品も含め『健全な食生活を意識した活動』、略して『健活コーナー』設置を提案し、今や全国約2000店舗で設置され、消費者の方々にも大変喜ばれています」

 いずれにしても、ヘルシーカップ麺戦争はまだ序の口。勝負はこれからが本番なのだ。

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