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目の動きや脳の血流量など…… 人はいくつまで運転できるか最新科学で「運転寿命」を測る

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農道に停まる車

高齢者ドライバーによる交通事故が社会問題になっている。いつまで運転できるかは個人差が大きく、年齢だけで一律に線引きできないのが実情だ。しかし、安全に運転できる期間を「運転寿命」と捉え、客観的に見極めようという動きが出てきた。9日放送のNHK「クローズアップ現代」で解説した。

まず、運転寿命に関わるのは、年齢と共に衰える目の働きだ。ゴーグルを装着して目を動かすだけで運転能力を測定する装置を、大学発のベンチャー企業が開発した。ドライバーの過去の事故歴と眼球運動を結びつけてAIやアルゴリズムで運転能力を測定しているという。この企業ではタクシー運転手500人分について「眼球運動×事故歴の有無」を分析した。

次に、深刻な事故を引き起こす要因にとして、ペダルの「踏み間違い」がある。踏み間違いによる死亡事故の7割が65歳以上の高齢者だ。そのメカニズムを脳科学の観点から解明しようとする研究がある。

名古屋大学情報学研究科の川合伸幸教授が行ったのは高齢者と大学生のペダル操作の比較。ペダルを模した機器によるテストで脳の血流量を測ったところ、川合教授は「高齢者は『これをやらなければ』という課題になったとき、血流量が一気に増える」という。

つまり、脳に負荷がかかりやすい状態になっており、これがペダルの踏み間違いを引き起こす一因と考えられている。

佐賀大学理工学部の堀川悦夫特任教授は病院や教習所など複数の機関が連携して運転能力を見極めるシステムを佐賀県に作った。認知機能の検査、脳神経内科の診察、運転シミュレーターなどを行い、複数の指標をかけ合わせて高齢者の運転能力を見極めるという。堀川教授は「今は1つだけの指標で判断できるものがない」と話す。

高齢者の運転能力を研究している国立長寿医療研究センターの島田裕之部長は、最近の動きについて「病院の中に自動車運転外来を設置しているところが出始め、自治体が行う健康診断で運転能力を診断するところもあるが、まだまだ普及していない」と話す。

自分の能力に自信を持っている高齢者が多いのが理由だそうだ。運転寿命を最新科学で伸ばそうという取り組みもある。AIのフィードバックで運転の“クセ”を改善しようというものだ。目線や首の動きなど運転中の一挙手一投足を複数のカメラで記録、リスクのある運転がどんな場面で出るのかをピックアップする。

例えば、飲み物を飲むときに視線を外すクセは、本人も自覚していないことが多い。高齢者は運転歴が長いだけに、こうしたクセを改善するだけでも安全運転に結びつくといえる。

免許返納件数は、池袋の暴走事故が起きた2019年をピークに減少傾向にある。公共交通機関が不便な地方においては、自家用車が生活の足になっているだけに、難しい問題ではある。

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