社会
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社会 2017年06月02日 15時00分
福島原発賠償バブルにいまだ沸くいわき市「表と裏」レポート(2)
いわき市内にある被災した楢葉町民が入居する応急仮設住宅団地は、来年3月末で原則終了となる。この仮設住宅に住む60代の女性はこう話す。 「もちろん楢葉に帰りたいという気持ちはあります。その反面、こちらに来て“住めば都”ということも実感しています。できることなら、みんなでお金を出し合って、この場所にマンションを建てられればいいのにねって話しているんです」 約50戸あった楢葉町の仮設住宅は半分近くが空き家となった。その一方で、この2月よりJRいわき駅から徒歩数分の新築高級マンションが売りに出された。全52戸の価格帯は3000万〜6000万円弱と幅広い設定だが、高い価格のものから次々と契約が決まり、3カ月で残りわずかな状態となった。 震災の直後は多くの被災者が避難してきたので、いわき市の賃貸物件はほとんどなくなり、月の賃料も1.5倍から2倍近くまで跳ね上がったという。また、大家や賃貸業者も、国の全面バックアップで支払いが滞ることのない被災者に優先的に物件を紹介するケースが相次ぎ、この状況に憤るいわき市民も多かった。 市内の歓楽街「田町」で約30年スナックを営む50代女性は不満を吐露する。 「億の賠償金を手にした被災者の中には、いわき市にマンションを数部屋購入し、家賃収入で手堅くやっている人もいます。やっぱり人間、大金を手にすると自慢したいんでしょうね。ここら辺りのビルが1棟2億円といわれていて、『それなら買えるな』なんてさらりと言っていますよ。私たちがあまりチヤホヤしないせいか、そういうお客さんはフィリピンパブの方に流れていますね」 いわき市南部に位置する小名浜地区は港町として栄え、ソープランド街があることでも有名だ。地元の関係者によると、震災以降、5時間、6時間といった長時間コースを設定する通称“買い取り”をする客が増えたという。3時間以降はソープ嬢と一緒に外出可能な店もあり、中には9時間の“買い取り”をする客もいるそうだ。 「“買い取り”の多い日は決まっていて、そんな日は、『昨日、賠償金の振り込みがあったからだろう』と従業員同士で囁いています。以前はフロントガラスから通行証が見える車で、駐車場がいっぱいになったこともありました。もちろん除染業者やゼネコン関係者もいると思いますが、お金を持っているからか、横柄でマナーの悪い人が目立ちますね」(ソープランド関係者) 浪江町、双葉町、大熊町、富岡町(一部)の帰宅困難区域の住民は高速道路のほか、税金や医療費が免除され、これもいわき市民との軋轢を生む要因となっているようだ。そして、軋轢に屈してしまった人もいる。 双葉町出身の30代女性は原発事故の後、夫婦でいわきに移住し、市内に新築の一軒家を建てた。しかし、その生活は長くは続かなかった。女性が当時をこう振り返る。 「ポストに『税金払え』と書かれた紙が入っていたことがありました。私の家は地域の自治会にも入れてもらえず、回覧板も回ってこない。これが村八分かと痛感しました。孤立状態に耐えられず、土地も建物も売って、再び故郷のそばに引っ越しました。私たち以外にも近所との確執で家を手放す家庭がありました」 行政は、いわき市民と移住してきた被災者の溝を解消するため、何か方策を取っているのだろうか。 いわき市の復興支援担当職員は「今は軋轢はないと考えている」と強調する。そのうえで、今後も県と避難元の自治体と連携し、交流施設などを設置することで、市民と被災者との融和を図っていくとしている。もちろん被災者に対しても努力を求めている。 「被災者も税金を払うべきといった声は市民から寄せられており、そのような不公平感を解消するため、避難されている方に対する適正な税金の徴収を国に要望しております」(いわき市総合政策部政策企画課) いわき市の賠償金バブルは街の表舞台から身を潜め、水面下で膨張しているようだ。 原発事故から6年が経過した今も、いわき市民と被災者の軋轢は根が深い。
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社会 2017年06月02日 10時00分
野村不動産も買収へ 民営化後初赤字 日本郵政の懲りない体質
日本郵政が'17年3月期連結決算で、'07年郵政民営化以来、初の赤字転落したことにより、市場で懸念が広がっている。 5月15日の日本郵政の決算報告記者会見に出席した全国紙経済部記者が言う。 「前の期は4259億円の黒字で、今回は289億円の赤字となった。この原因は明確で、2年前、日本郵政が約6200億円という巨額投資で買収したオーストラリアの物流会社、トール・ホールディングスの業績悪化から4000億円の損失を計上し、それが今、まるまる日本郵政の経営を揺るがしているのです」 トール社はもともと、鉄鉱石などの資源運搬がベースの企業で、現在は、その資源物流も含め国際物流全般を取り扱い、特に中国やアジアで強みを発揮している。 銀行系シンクタンクのチーフエコノミストが、こう解説する。 「中国が'08年のリーマンショックを、日本円で52兆円規模の国家主導による公共事業投資で乗り切ろうとした。そのため橋や建物、鉄道が続々作られたのですが、そこで伸びたのが鉄の需要。'00年に約1億トンだった中国の粗鋼生産量は、'14年には約8億2000万トン台にまで急増し、世界の粗鋼の半分を中国が製造した。その影響を受け、他の新興国でも急ピッチで経済成長が進み、トール社などの資源運搬部門を持つ企業が急拡大したのです」 ところが'15年、中国経済に陰りが出始める。バブルを恐れた中国銀行が引き締め策で融資の蛇口を絞ったことによって不動産価格が大暴落し、チャイナショックが襲った。当然、資源価格も大暴落を引き起こすこととなった。 「日本郵政がトール社買収時、世界の資源を取り巻く状況はすでに暗雲がたれこめ、社内外に不安の声が蔓延していた。しかし、当時の日郵幹部は、その懸念の声を押し切り『資源価格の低迷も踏まえている。世界全体を俯瞰する物流業を作り上げるには打って出なければ』と説得。その旗振り役が、'13年に社長に就任した西室泰三氏でした。しかし、重い物運搬で収益を上げる物流と、グラム単位の物を運び収益を得る郵便を混同してしまう安易さ、さらに当時の世界経済も見誤り、負の企業を高値で掴んでしまったのです」(同) その「高値」に関して、日本郵政の事情通がこう話す。 「当時、社内外の物流に通じた関係者らは、トール社を高く見積もっても3000億円程度と見ていたが、西室氏はそんな話に見向きもしなかったという。20年間で年間200億円の利益が上がれば元は取れると、周囲には漏らしていたそうです。それが、たった2年で暗礁ですからね」 そこまで西室氏が突っ走った理由には、日本郵政が'15年11月上場に向けて“世界の物流に打って出る”という大看板が必要だったためという話もある。 「かつて東芝にいた西室氏は、入社後、海外事業をはじめDVDの規格事業で辣腕を発揮し、大きな実績をあげた。しかし、トップになってからは空回りの連続で、今日の東芝の屋台骨を揺るがす原因となった米原発会社ウェスチングハウス(WH)の巨額買収にも、西室氏は相談役として大きな役割を果たした。それにも懲りず、今度はトール社買収で同じような失敗を繰り返したわけです」(関係者) 西室氏を三顧の礼で日本郵政トップに招いたのは、安倍首相と菅官房長官とされ、今日の日本郵政の不振は官邸の任命権責任にあると言っても過言ではない。 「その西室氏は昨年3月に突如、体調不良で退任し、後任の長門正貢社長は、トール社の不振になんの効果的な手も打てずじまい。ただ減損処理しただけで、自らの責任も6カ月の報酬カットのみ。それどころか、このほど野村不動産HDの買収に向け、具体的な交渉にも入る予定というから驚きです」(同) 日本郵政は、事業の柱の一つである年賀はがき販売が、ピークだった'03年の44億枚から現在は10億枚以上減り増加は見込めない。加えて、金融事業も低迷し、傘下のゆうちょ銀行が国債利息減少、かんぽ生命は保有契約減少で、'16年4〜12月期は対前年比でそれぞれ16.2%減、6.5%減と落ち込んでいる。そんな中、野村不動産の買収は、新たな収益力アップのため、全国に2万4000件超えの郵便局の土地の2兆円規模の有効活用が狙いだという。 「畑違いのトール社に加え、今度は野村不動産買収…。日本郵政幹部たちには、親方日の丸的な甘い体質が抜けていないことが心配されている。また失敗すれば、本当に第二の東芝になると市場関係者は懸念しているのです」(経営アナリスト) 日本郵政の筆頭株主は、8割を持つ政府と地方自治体。経営に事が起これば、そのツケは確実に国民に回ってくるのだ。
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社会 2017年06月01日 15時00分
福島原発賠償バブルにいまだ沸くいわき市「表と裏」レポート(1)
いわき市は太平洋沿岸の福島県南部に位置し、冬でも雪がめったに降らない温暖な気候が特徴だ。県内市町村トップの35万人の人口を誇り、県総人口の18%を占める。福島第一原発はいわき市から約50キロメートル北にあり、車で1時間ほどの距離となっている。 2011年3月11日の原発事故により、いわき市に避難してきた人は双葉町や大熊町などから2万人以上に及ぶ。被災者は故郷を強制的に追い出され、未曾有の危険を乗り越え、ようやくたどり着いた地だった。 しかし、渡辺敬夫・前いわき市長は'12年4月、被災者に対して、「東京電力から賠償金を受け、多くの人が働いていない。パチンコ店もすべて満員だ」と苦言を呈した。賠償金を手にした被災者の素行が市内で問題となり、同年12月には市役所の玄関や公民館など四つの公営施設に黒スプレーで「被災者帰れ」と落書きされる事件にまで発展した。 多額の賠償金を手にした被災者は少なくない。東京電力からの賠償金として個人、法人に支払われた総額は7兆2560億円(今年5月12日現在)に達する。賠償の認定は各世帯、法人により多岐にわたるが、帰還困難区域、大熊町、双葉町で移住を余儀なくされたことに対する精神的賠償として1人700万円。加えて1人月10万円が支払われ、5人家族だと月50万円。これだけでも年収は600万円となる。さらに原発事故以前の所得を補償する就労不能損害もプラスされた。住居や家財、山林なども補償の対象となり、総額1億円、2億円といった億単位の賠償金を得た世帯も少なくないといわれている。 これまでいわき市の賠償金バブルの象徴として幾度も報道されてきたのが、前述の渡辺前市長の苦言にもあった市内のパチンコ店だ。駐車場にはベンツやBMW、レクサスといった高級車が多数並ぶと噂された。 実際に、駐車場が設置されている2軒のパチンコ店に平日の昼間に行ってみると、駐車場はベンツなどの高級車が溢れていることもなく、確認できたベンツは2軒で1台のみ。 では、被災者が賠償金で高級車を購入しているという話は間違いなのだろうか。 「カタログを取りに来るお客様は増えました。その際、『オーナーになるだけの金は持っている』とはっきりおっしゃられる方もいます。しかし、やはり周囲の目を気にしてか、国産大衆車の新車を選んで乗っている人が多いですね」(いわき市内高級車ディーラー) 一方、いわき市内で50年以上経営する老舗の日本料理店は、羽振りのよい被災者を数多く目の当たりにしてきたという。 「やっぱり外(いわき市外)から来た被災したお客さんは大胆というか、お金の使い方が全然違います。お客さんの数は一気に増えて、土日は予約なしでは入れない状態になりました」(日本料理店の女将) いわき市内の運送会社で働く大熊町出身の20代女性は、'11年1月に結婚し、その2カ月後に大熊町で被災した。それまで福島第一原発で仕事をしていた夫は、新潟県の柏崎刈羽原発で働くことになり、彼女自身は妊娠していたため親戚のいる会津若松市に避難。2人目の子どもができたことで昨年、いわき市内に新築の一戸建てを購入。ようやく家族4人での暮らしが始まった。 現在、夫は派遣社員として働きながら正社員の求職活動をしている。 「家族バラバラの4年間の生活はずっと不安だったし、大雪に見舞われる会津の気候に慣れなくてつらかった。私たちの賠償金は大したことない。いらないから元の生活に戻してほしいです」
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社会 2017年06月01日 10時00分
多重債務者と闇金の横行 銀行系カードローン普及で広がるドロ沼地獄
日銀が5月18日に公表した『貸出先別貸出金』によれば、国内銀行139行の2016年度末時点のカードローン貸出残高は約5兆6000億円で、消費者金融を含む貸金業者の貸出残高約4兆円を大きく上回っていた模様。どうやら、借金を繰り返す多重債務者が増えているようなのだ。 「消費者金融は年収の3分の1以下しか貸せない総量規制がありますが、銀行系のカードローンは対象外のため、無担保で多額の借金ができる。人気タレントのテレビCMや銀行系というだけで、いわゆる“サラ金”のイメージを払拭している。ネット申し込みで即日融資を受けられる銀行もあり、収入証明書も不要のため学生や主婦、高齢者までもが借金地獄にはまるケースが後を絶ちません。銀行カードローンは多重債務者の温床となっているのです」(経済記者) 資金の引き出しや返済がコンビニでできる手軽さも利用者拡大の要因だ。さらに、銀行のカードローンは「ショッピングや別のカードローンの申し込み時に、他社からの借り入れとして申告する必要がない」(信販会社)。1万円の借金から数十万円を繰り返し借りるようになり、気付いたときには数百万円のローン地獄…というわけだ。 「住宅ローンに比べてカードローンは、10%以上の金利を稼げる非常にうまみのある事業。例えば、20代のサラリーマンで名が通る企業に勤めていれば、年収の6割まで融資枠がある。当然、ターゲットにしています」(メガバンク社員) 確かに借金をしたい側は、一つの銀行にすがり付くわけではない。 「結果として年収を上回る過剰な貸し出しが問題となりますから、さすがに自主規制の動きが出てきました」(金融庁関係者) とはいえ、規制が強化されれば闇金業者が横行する可能性が出てくる。結局は「すぐ返せば問題ない」という甘い認識を改める以外にないのだ。
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社会 2017年05月31日 17時00分
連日話題になってる『出会い系バー』ってどんな店?
連日、一般紙やワイドショーで話題になっている加計学園問題で安倍政権に反旗を翻した結果、新宿・歌舞伎町の「出会い系バー」通いを報じられた、文部科学省の前川喜平前事務次官だが、果たして「出会い系バー」とは一体どんな店なのか? 「連日、テレビクルーや新聞・雑誌の記者がお店に“潜入”しにきて大盛況。でも、そのせいで男の常連客はなかなか入りづらくなった」(バーの常連客) 各メディアによると、前川氏は数年前から週に1、2回ほど来店。店外に連れ出した女性に対して“お小遣い”を渡していたことは会見でも認めているが、そもそものシステムはどのような感じなのだろうか? 「店があるのは歌舞伎町のど真ん中で、営業時間は午後8時半から午前5時過ぎ。女性は入店料・飲食ともに無料で、男性は営業時間中にフリータイムで入店できるコースが一番高くて6000円。店内は男女のブースに別れているが、仕切りが低いので、薄暗いものの女性の顔が見える。男性は酒やソフトドリンクを飲みながら女性を物色。店員を介して話してみたい女性とトークをし、気が合えば店外に連れ出すシステムとなっている。連れ出し料はかからない」(同前) 前川氏は勤務時間外のプライベートで同店に来店。本来、問題になるべき行動ではないが、一部が同バーを「援助交際の温床」などと報じたこともあって問題視されてしまったのだ。 「店に来る女性の9割9分は“お小遣い”目当て。その相場だが、ご飯・カラオケなんかだと5000円、ホテルに行って“大人の関係”になると2万円。ただし、1時間あたりいくらという値段設定や、相場の倍の価格をふっかける子もいる。素人に混じってキャバクラ嬢や風俗嬢もいるので要注意」(歌舞伎町の事情通) 以上が「出会い系バー」の実態。 話しの種にでも、ほとぼりが冷めたころに一度店内をのぞいてみてはいかがだろうか。
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社会 2017年05月31日 15時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第223回 プライマリーバランス目標を破棄せよ!
よく耳にするプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)とは、国債関連経費(利払い費、償還費)を除く政府の収支になる。国債関連以外の歳入と歳出の差がPBだ。PB黒字化目標とは「国債関連以外の歳出を歳入が上回る状況にしなければならない」という意味を持つ。 2020年までにPB黒字化という“狂気の目標”を立てたのは、実は民主党政権下の菅直人内閣である。PB黒字化目標があると、政府は基本的には「歳入以上の歳出ができない」という状況に追い込まれてしまう。たとえ何が起きても…。 2010年にPB目標が閣議決定され、翌年に東日本大震災が発生した。 未曽有の大震災が起きた以上、政府はとにもかくにも財源を確保し、復興に当たらなければならなかった。日本の場合、デフレで長期金利も1%を割り込んでいる状況であり、普通に建設国債を発行し、財源を確保すればよかったのだ。 ところが、震災の前年に「PB目標」が閣議決定されていた。 震災復興の歳出は「国債関連以外の歳出」に該当する。というわけで、歳出増分の歳入(税収)確保が必要になり、復興特別税という、これまた“狂気”の方針が決定された。しかも、復興税は「被災地」の方々からも容赦なく徴収されたのである。 ここまで残酷な国を、筆者は他に知らない。 要するに、PB目標はあらゆる歳出の「天井」になってしまうのだ。日本の場合、高齢化により社会保障支出は自然に増えていく。ということは、その分、 「別の歳出を削減するか、増税により歳入を増やすしかない」 という話になってしまい、実際に消費税増税が強行され、日本はデフレに舞い戻りつつある。もちろん社会保障費自体にもメスが入り、介護報酬、診療報酬が共に安倍政権下で減らされた。 '14年度以降の安倍政権のPB赤字の削減ペースには恐るべきものがある。安倍政権は間違いなく「史上最悪」の緊縮政権なのである。 PB目標がある限り、政府は、 「デフレ脱却のための、総需要を拡大する大々的な財政出動」 に踏み切ることは不可能だ。財政出動を拡大するならば、「その分、増税」という話にならざるを得ない。 安倍政権は「デフレ脱却」を標榜し誕生した政権のはずだ。とはいえ現実には'13年の骨太の方針の時点で、 「国・地方のプライマリーバランスについて、'15年度までに'10年度に比べ赤字の対GDP比の半減、'20年度までに黒字化」 と、PB目標を閣議決定してしまった。その後の安倍政権は緊縮路線をひた走り、デフレ脱却については「デフレは貨幣現象派」(いわゆる「リフレ派」)の理論にすがりつき、金融政策一本やりになってしまった。 デフレが貨幣現象ならば、PB目標に基づき緊縮財政を推進したとしても、デフレ脱却は果たせる。何しろ、デフレは「貨幣の量が足りない」現象なのだから、日本銀行が貨幣量を増やせば済む。 現実には、日本銀行が4年間に300兆円を超す日本円(主に日銀当座預金)を発行したにもかかわらず、'16年度のインフレ率は▲0.2%と、デフレ脱却に失敗した。当然だ。政府が緊縮財政で国民におカネを使わせず、自らも使わないわけだから、インフレ率が上昇するはずがない。 デフレは貨幣現象ではない。「総需要(=消費+投資)の不足」なのである。そして、総需要は、誰かがモノやサービスを購入するためにおカネを使わなければ増えない。 来る6月、政府は本年度の骨太の方針を閣議決定する。ここに「PB目標」が残ってしまうようなら、安倍政権下におけるデフレ完全脱却はない。 ところで安倍総理は、 「予算を半額にすれば、プライマリーバランスは黒字化する。しかし、経済は最悪になる」 といった主旨のことを語ったことがある。実際にPBを強引に黒字化し、経済が「最悪」に陥った国がヨーロッパに存在する。ギリシャだ。 ギリシャ統計局は4月21日、'16年のPBが、対GDP比で3.9%の黒字だったと発表した。ギリシャ政府のPB黒字化は、国民の犠牲のもとに実現したのだ。 IMFのデータによると、ギリシャの名目GDP(ユーロ建て)は、'08年をピークに8年連続で縮小。'16年のGDPは、対'08年で何と▲27%超! 日本で言えば現在のGDPが500兆円規模から350兆円になるようなものだ。 GDPとは、国民経済の「生産」の合計であり、「支出(需要)」の合計であり、「所得」の合計でもある。'08年以降、ギリシャ国民は3割近い「所得縮小」に見舞われたことになる。つまりは貧乏になった。 ギリシャ政府の負債は共通通貨「ユーロ建て」であり、政府の負債が100%自国通貨(日本円)建ての日本とは状況が全く異なる。ギリシャ政府は、ユーロ建ての負債を「所得」から返済しなければならない。国民からの所得の分配、つまりは「税金」である。 さらに、ギリシャは債権国(EU)から、さらなる貸付の条件としてPB黒字化を求められていた。というわけで、ギリシャ政府は社会保障を削り、増税を繰り返すことでPBを強引に黒字化したのだ。 結果、国民は所得が27%以上も減る貧困化にたたき落とされた。 そもそも、PBとは財政健全化の指標ではない。財政健全化の定義とは、あくまで「政府の負債対GDP比率の低下」になる。PBがどうであろうと、国債金利が低く(日本は異常に低い)、名目GDPが堅調に成長すれば、財政健全化は達成される。 それにもかかわらず、日本はPB黒字化を「目標」に置いており、デフレ脱却のための財政出動に“ふた”をされている状況が続く。 安倍政権が本気でデフレ脱却を望むのならば、PB目標を破棄しなければならない。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2017年05月31日 10時00分
「決戦は都議選!」必殺仕事人・菅官房長官 “小池潰し”に幸災楽禍の下品
決戦は東京都議選! 7月2日投開票を前に、菅義偉官房長官の小池百合子都知事潰しが本格化、火花を散らしまくっている。 「菅さんの謀略は、東京五輪の仮設施設費500億円の支払いどころを巡り火を吹いた。小池さんは5月11日に安倍首相と会談して、自ら全額都の負担と公表することで、決断力をアピールするシナリオを描いていたのですが、菅さんが先手を取ることにより、小池さんに“決められない知事”のレッテルを貼ったのです」(自民党関係者) 会談直前の9日、黒岩祐治・神奈川県知事ら3知事が安倍首相と丸川珠代五輪担当相へ負担拒否を直訴、仕掛け人は菅氏だった。 「結果、安倍首相の指示で小池さんがシブシブ500億円を負担するというシナリオに擦り替えられた。都民には小池さんの手際の悪さだけが印象に残ることになってしまった」(小池氏周辺関係者) さらに菅氏は13日、自民党本部で開かれた都議選総決起大会に出席し、『何とかファーストという政党は候補者擁立すらままならない!』とまでこき下ろした。 しかし、一方の小池氏も防戦一方ではない。 「挽回の作戦を準備中です。豊洲市場移転問題では、専門家会議が35億〜50億円で豊洲の土壌を完全に無害化できると説明したが、小池さんはその結果を重んじて都議選直前に豊洲移転を高らかに宣言する。これで都議会自民党が最大の公約としている“豊洲への早期移転”を無意味にさせるのです」(同) それにしても、菅氏の小池氏への敵意は半端ではない。その理由は二つあると、自民党関係者は言う。 「一つは、安倍首相が小池氏にシンパシーを抱いていること。先の総決起大会でも、安倍首相はビデオメッセージで小池都政との協調を呼び掛けるありさま。この調子だと、小池新党が大勝した場合、安倍首相が小池さんを重宝し、菅さんの影が急速に薄れる可能性があるのです」(同) もう一つは、二階俊博自民党幹事長を中心とした、最大派閥・細田派を上回る大田中派再結成への動きだという。 「結成すれば、派の総裁候補は梶山静六元幹事長の愛弟子である菅さんに白羽の矢が立つ公算が強く、安倍首相の対抗馬に躍り出る。自ら表舞台に立つ時に備え、現自民党をバラバラにしかねない小池新党の芽を摘んでおきたいのです」(同) 菅義偉どの、手段を択ばぬあからさまな“小池潰し”に幸災楽禍の下品はいかがなものか。
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社会 2017年05月30日 15時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 金融庁長官発言で業界激震
金融庁長官の発言に証券業界が揺れている。4月7日に証券アナリスト協会の国際セミナーで基調講演を行った森信親金融庁長官が、「来年からスタートする積み立てNISAの適用対象となる投資信託は、全体の1%弱の50本以下だ」と発言したのだ。 これを逆に言うと、金融庁長官は99%の投資信託に“失格”の烙印を押したことになる。監督官庁トップにそんなことをされたら、業界の面目は丸潰れだ。森長官の意図は、いったい何なのか。 新設される積み立てNISAは、少額投資の非課税制度で、現行のNISAが個別株の運用も認めているのに対して、運用対象を投資信託に限定している。 現行のNISAが年間120万円までの投資を5年間行えるのに対して、積み立てNISAは年間40万円の投資を20年間にわたって続けることができる。つまり、積み立てNISAは、長期間かけて老後資金を作るための投資を優遇する制度なのだ。 虎の子の老後資金を作る投資だから、金融商品も国民に寄り添ったものでなければならない、と考えた森長官は、長期投資にかなう投信を選別した。 選別の基準は明らかになっていないが、販売時の手数料が無料で、なおかつ信託報酬がアクティブ型で1.5%以下、インデックス型で0.5%以下ではないかと言われている。それだけの基準でふるいにかけると、99%が脱落してしまうというのが、日本の投資信託の現状なのだ。 信託報酬というのは、投資信託を運用する側への報酬。簡単に言えば、ファンドマネージャーのギャラだ。それが2%も3%もかかるというのは、そもそもおかしなことだ。 一般国民は、ファンドマネージャーは金融の専門家だから、専門的知見に基づいて高い利回りを得られると思い込んでいる。しかし、神様ではないのだから、将来のことなんて当然分からない。もちろん、優秀な成績を残しているファンドマネージャーはいるが、それは彼らの運がよかっただけのことだ。 そうしたなかで、運用成績がよくても悪くても、運用残高の2%も3%もギャラとして取っていくということ自体、かなり問題があると、私は以前から思っていた。だから私は、森長官の発言には全面的に賛成なのだ。 もっとも、だからと言って積み立てNISAを強く勧めるわけではない。大部分のサラリーマンにとっては、積み立てNISAよりも、確定拠出年金(イデコ)のほうが、圧倒的に利用価値が高いからだ。どちらも投資収益は非課税になるが、確定拠出型年金は、掛け金そのものが所得控除の対象になる。 普通のサラリーマンは、地方税10%、所得税10%の合計20%を支払っている。だから、所得控除を受けられる確定拠出年金制度を使えば、投資信託を実質2割引で買えるのと一緒なのだ。 積み立てNISAがもたらす最大のメリットは、金融庁の選別によって本当に良心的な投資信託が何なのかが、あぶり出されることにある。 来年1月の積み立てNISA開始までに、証券業界がどれだけ国民に寄り添った商品を開発してくるのか、今後に注目だ。
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社会 2017年05月30日 10時00分
トランプ氏真っ青! 金正恩“斬首作戦”どころか自分の“首が飛ぶ”緊急事態
北朝鮮は5月14日に引き続き、1週間後の21日午後5時頃、弾道ミサイル1発を発射した。トランプ大統領が対話で核開発を止めさせることが不可能なのは、これまでの「クリントン、ブッシュ、オバマ」政権の20年ですでに実証済みだ。 その2日前の19日、米国のマティス国防長官は「北朝鮮問題を軍事的に解決しようとすれば、想像を絶する規模の悲劇をもたらす」と警告を発し“北爆”がほぼないことを示唆。これで金正恩朝鮮労働党委員長は自身の“斬首作戦”も遠のいたと見たに違いない。 「なぜ米国がシリアにトマホークを59発も撃ち込んだかと言えば、イスラエルがアサド政権を壊滅させたいと意図しているからです。それに比べ米国は、正恩の斬首作戦を実行したり、北朝鮮をつぶしても“銭”にならない。米国議会はロビー活動で動きますが、『北をつぶせ』という活動はありません。つまり、カネの出し手がいないのです。逆に北を温存することで、日本に高額な防衛兵器を売りつけることができる。現に日本がTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)を配備するのは、もはや時間の問題ですからね」(軍事ジャーナリスト) 先頃、米CIAが対北作戦に特化した組織を新たに設置したことを明らかにした。特定の1カ国を対象にした組織を設けるのは初めてのことで、北朝鮮に対してアクションを起こすのは間違いないと思われた。ところが…。 「どうやら当分動きはなさそうです。と言うのも、FBI長官解任で世界に衝撃を与えた『トランプスキャンダル』は、ウオーターゲート事件に匹敵すると言われ、北朝鮮空爆や斬首作戦の優先順位が相当に下がっているからです。正恩は強運の持ち主ですね」(北朝鮮ウオッチャー) つまり、トランプ大統領は、金正恩“斬首作戦”より先に自分の“首が飛ぶ”危機的状況にあることに戦々恐々としているのだ。 結局、金日成・正日・正恩の親子三代は、重大な人権侵害を行っても、民主的手段、例えば、国際司法裁判所に「人道に対する罪」で訴えられることもない。 「1994年のカーター大統領(当時)と金日成の合意が2時間遅れていたら、米国は“北爆”をしただろうとCIA元要員は証言していますし、金正日は二度の暗殺未遂と二度のクーデター未遂に遭いながら、間一髪で難を逃れています」(同) 外圧も、暗殺も、クーデターもかわす金ファミリーが、トランプ政権をも粉砕しようとしている。その強運さは計り知れない。
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社会 2017年05月27日 15時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 安倍晋三・昭恵夫人(下)
体調不良から平成19年9月、わずか1年で夫の安倍晋三が政権を投げ出すまでの間、昭恵は少なくとも「内助の功」にフル回転した。 しばしば夫の選挙区〈山口4区〉に戻っては後援会との接触を欠かさず、一時は総裁選のライバルとなりかけて必ずしもソリが合わなかった同じ派閥の福田康夫(注・後に首相)に対し、福田夫人との接触を試みて“修復”へ向けての努力に精を出すなどもあった。 しかし、安倍が首相の座を降りると、昭恵は抑えていたものが弾けるように一変した。歴代総理の誰もが言う「孤独感と重圧はなった者にしか分からない」が、当然、妻にも及び、本来が自由奔放な性格の昭恵の“地”が爆発したということのようであった。総理夫人が周囲の忠告をよそに東京・神田に居酒屋『UZU』を開店したのも、この時期である。なぜの“爆発”だったのか。安倍家の内情を知る政治部記者が言った。 「一つは、安倍が再度の首相の座にチャレンジしたとき、夫人は猛反対だったと言われている。首相を辞めるとこれまで近寄っていた人が潮を引くようにいなくなり、極度の孤独感に陥って体調も優れなくなったことが大きかった。それでも安倍が再チャレンジの意思を伝えると、『それなら、これからは私の好きなようにさせて。私の行動に口を出さないで欲しい』と迫り、安倍もこれを“了承”したようだ。やがて、“政治家・安倍”の考え方がすべて正しいとは思えず、夫とは対極的な言動も辞さずとなっていったのです。元来が自由に育っただけに、自分の信念のままに動くことに大きな抵抗はなかったようだ」 夫の足を引っ張ることにもなる「原発再稼働反対」「TPP反対」の発言も、こうした中で行われている。 二つは、スピリチュアルな世界や神道に傾倒、自ら言う「私には神様から与えられた試練がある」として、「国、社会、弱者、世界平和のため」奔走することに直進したことがある。神道系の小学校開校を目論んだ森友学園・籠池家との“交流”もその一つと思われ、籠池夫人とのメールでも「祈っている」との表現が明らかになっており、これは昭恵に対し、結果的には夫の安倍のキモは冷やしたが、「性善説」との解釈になっている。 そして、“爆発”の三つは、名門政治家の一族として、跡を継ぐ子供に恵まれなかったプレッシャーから来る重圧と孤独感があったと思われる。昭恵はこれについて、おおむね次のように告白している。 「政治家の家ですから、たしかに私自身に物凄いプレッシャーはありました。不妊治療も受けたし、主人と養子という選択肢も話し合いましたが、私はそこまで割り切れず、またきちんと育てる自信も持てずで実現はしませんでした。主人が総理大臣になったことも、子供に恵まれなかったことも、すべて運命であり、それを受け入れるべきだと考えている」(『文藝春秋』平成18年11月号) ここでは、一方で「政界のゴッドマザー」として知られる安倍の実母・洋子(岸信介元首相の娘・安倍晋太郎元外相の妻)の存在が顔を出す。前出の政治部記者の弁。 「安倍夫妻と同居する洋子未亡人は、昭恵夫人に対し『あなたの一連の不知な行動で、どれだけ首相としての晋三が苦しんでいるのか分かっているの』など、相当キツイ言葉で叱責したとされている。最近では、安倍に対しても『こんなことでは総理として恥ずかしい』と、夫婦関係を絶望視したような発言もあったようです。しかし、安倍本人は『昭恵には助けてもらっている』とカミサン擁護、“助け舟”に腐心中だと言います」 こうした昭恵夫人は、海外からどんな目で見られているのか。米誌『ニューズウィーク』は第1次政権の後半当時、「安倍政権の秘密兵器」として、次のように評したものだった。 「日本の政治家の妻は愛想よく、“夫に三歩下がって従う”というのが慣例だったが、(昭恵夫人は)洗練されたファッションセンスや不妊治療の告白などで国民の人気を得、支持率低下に苦しむ安倍政権を支えている。(逆に夫人の言動が注目を集めるのは)日本人女性の社会的地位の向上が、まだ完全でないことの証左である。ただし、(昭恵夫人は)生まれながらのセレブゆえ、安倍政権が目指す社会格差の解消といった政策にはマイナス効果もある」 一方で安倍は、只今、昭恵という「猛妻」を味方に置き、“右舵”一杯を切り続けて長期政権をバク進中だ。「支持率のために政治をやっているのではない。戦後、後回しにされてきた改革をやらねばならない」と今後の憲法改正にも意欲十分、メゲるフシはまったくないのである。 19世紀、一世を風靡したドイツの哲学者ニーチェは、ホトホト言っていた。「女は謎だ」と。安倍サンならずとも、「猛妻」に振り回されているわがダンナ衆ご一同も少なくないのではないか。=敬称略=(次号は吉田茂・雪子夫人)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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