社会
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社会 2017年06月21日 14時00分
トヨタが米テスラ社と「提携解消」で始まる電気自動車分野の混沌
トヨタ自動車が、米国の電気自動車メーカーであるテスラモーターズとの提携を解消していたことが明らかになった。 2010年5月、トヨタは当時ベンチャー企業であったテスラと包括提携。しかし、'14年にはトヨタが保有するテスラ株の一部を売却するなど次第に両者の距離は広がり始め、このたびついに提携解消となった。そこに至るには、大躍進によるテスラ自身の方針変更、また、トヨタも電気自動車を自ら開発することで、利益効率のいいビジネスモデル構築を目指すとされている。 「今年に入り、自動車メーカー各社が電気自動車の普及に向けたメッセージを発し始めています。独ダイムラーもメルセデス・ベンツの電気自動車ブランド『EQ』を発表するなど、本腰を入れ始めました。つい数年前までハイブリッドが主流だったものが、今や電気自動車開発の進捗が今後のメーカーの雌雄を決することになってきたのです」(モータージャーナリスト) その背景にあるのが、先に述べたテスラの大躍進だ。 「テスラは電気自動車を高級車にも劣らない乗り心地、楽しさを持つ車に仕上げたことで、消費者の電気自動車に対するハードルを下げました。自信を持ったテスラは自動車メーカーとして独り立ちを望んでいます。その証しとして、年初にパナソニックと電池工場への投資を推し進めるなど、積極的な動きを見せています。一方で、テスラがこれだけの品質をもった自動車を提供できたのも、トヨタからの技術やノウハウの提供があったから。消費者側もトヨタと提携しているからこそ、テスラに対する安心感もあった。テスラの勝負はこれからですよ」(同) 当然、各自動車メーカーが電気自動車に本腰を入れてくれば、テスラとてあぐらをかいてはいられない。 水商売とも揶揄される自動車業界。今は注目の的の電気自動車も、数年後は見向きもされなくなるかもしれないのだ。
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社会 2017年06月21日 10時00分
朝日本社「小出恵介インタビュー紙面を配るな」の威圧行為に現場は「何様だ!」の怒り
被害者は17歳の女子高生。5月9日の夜、知り合いに呼び出されたバーにいたのが俳優の小出恵介(33)だった。隣に座ると突然覆いかぶさられ、キスをされたという。2軒目のバーを出た後、小出の宿泊先のホテルに連れて行かれ、部屋に入ると避妊をせずに何度も肉体関係を結んできたという。 この淫行で、芸能活動自粛に追い込まれた俳優の小出だが、その主演ドラマを紹介する朝日新聞の記事が一部読者に配られてしまった。 6月10日の朝刊と一緒に配達された『be』。1週間のテレビ番組を紹介する欄では、小出が主演するはずった10日スタートのドラマ『神様からひと言〜なにわ お客様相談室物語〜』(NHK)を取り上げ、彼のインタビューを掲載していたのだ。 しかし、発行を前に予期せぬ事態が起きる。2日前の8日、『フライデー』(9日発売)のスクープで小出の淫行が表面化、その後、芸能活動の自粛を発表。NKHも同番組の放映中止を決定したのだ。 2日もあれば、普通の記事なら掲載もされないのだが、『be』のように発行日が決まっている紙面は前もって印刷され、すでに販売所に運ばれている。件の『be』は7日に印刷が終わり、8日には全国の朝日新聞販売所であるASAに輸送されていたのだ。 「朝日新聞東京本社からは“テレビ欄は外して配って”という指示が3回にわたって出されたが、たまらないのは人手不足で悩む現場です。“今さら”“勝手なこと言うな”などの苦情が本社に寄せられ、そのたびに本社からは指示というより、命令に近い“要請”があった」(朝日新聞関係者) 結局、東京、大阪など人手のあるASAはテレビ欄を抜いて配ったが、これまでの情報では名古屋本社管内、北海道で4万部以上がそのまま配達されたという。そのほか、地方紙などと一緒に配っている「合売」と呼ばれる地域では、かなりの部数に上るとみられる。 「しかも、淫行がバレた小出のインタビュー記事についた見出しが『自分のアクを消して』。まるでブラックジョークですよ」(同) 朝日新聞は10日の朝刊に「小出問題」の経緯、テレビ欄不配の理由などを記した「おわび」を折り込んだが、ライバル紙からは「過剰反応。もらい事故なのに」という冷めた声も出ている。 本社の威圧的な態度に、現場は「いったい何様だ!」と怒り心頭。人手不足と、止まらない部数減。大朝日が沈んでいく。
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社会 2017年06月20日 14時00分
福岡母子3人殺害事件 警察官の夫の転勤癖と飛び交う地元の噂
福岡県小郡市の自宅で6月6日朝、中田由紀子さん(38)と長男で小学校4年の涼介君(9)、長女で同1年の実優ちゃん(6)の3人の遺体が発見された事件は、衝撃的な結末を迎えた。 当初、福岡県警は無理心中と見ていたが、7日未明になり、一転、殺人事件と断定し県警小郡署に捜査本部を設置した。8日夕方に由紀子さんの夫で福岡県警本部通信指令課の巡査部長・中田充容疑者(38)を、由紀子さんに対する殺人の疑いで逮捕したのだ。 「現場では、由紀子さんの首に絞められた際に生じる索状痕が確認できなかったが、司法解剖の結果、首の筋肉に複数の皮下出血が認められた。さらに首の骨にはヒビも見つかっており、相当な力で圧迫されたと考えられる。これらのことから、急きょ殺人に切り替えることになった」(捜査関係者) 事件発覚時、2階建て民家の玄関ドアは施錠されていなかったという。さらに警察発表によれば、死亡推定時間について由紀子さんは6日の0時〜6時、子供2人が同日午前0時〜5時と幅があり、中田容疑者が出勤のため自宅を出たという6時45分頃までの時間と重なっているものの、詳細はいまだ謎だらけだ。 そこでまず、事件当日の経過を振り返ってみる。 午前7時前に職場に出勤した中田容疑者の元へ、8時半頃、2人の子供が通学している小学校の担任から、「登校していない」との連絡が入ったという。中田容疑者はこれを受け、すぐに近所に住む妻の姉に電話。家の様子を見に行くように指示した。 「その後、中田容疑者は偽装のためか由紀子さんの携帯電話に4度電話を入れ、3度は誰も出ず、4度目に出た姉から『妹が無理心中したようだ』と伝えられている。中田容疑者がそれを上司に伝えそのまま処理に入ったことで、当初は無理心中の可能性が強いと見て捜査が始まったのです」(全国紙社会部記者) 家に捜査員が駆けつけた際には、1階台所に頭髪が半分ほど焼け焦げた状態の由紀子さんが仰向けで倒れていた。そばには燃えかけの練炭が置かれた上、周囲に油が撒かれ、室内には燻った煙が充満していたという。一方、2人の子供は2階の寝室のベッドでうつ伏せになり息絶えていた。 母子3人の死因はいずれも窒息死。中田容疑者は「家を出たときは3人とも(2階の寝室で)寝ていた」と容疑を否認している。 中田容疑者が県警本部に就いたのは、昨年の8月だった。福岡県内の私立大学卒業後、警察学校を経て'02年10月に任官後は、県警管内警察暑の地域部門勤務が長く、交番勤務や自動車警ら隊に就いていたという。最近では久留米市や筑後市などの警察署を転々とし、現在の県警本部通信指令課へ転勤した。同課は110番通報を受けつける部署で、「可もなく不可もない普通の勤務ぶりだった」(県警関係者)というが、この転勤には“異様さ”も漂う。 「本来であれば本庁への転勤は栄転です。しかし、周辺関係者によれば、中田容疑者は“転勤願い魔”として有名で、この10年ほどの間に5回も願い出て、転勤していたという。しかし、転勤先では毎回のように人間関係を巡っていざこざを起こし、また転勤願いを出すという繰り返しだった。そんなことから昨年8月の異動は、県警本部の監視下に置くという意味合いが強かったようなのです」(地元記者) 由紀子さんも前任地の筑後市で近所の人に、「お父さんの転勤には必ずついて行く家族なんです」と冗談交じりに語っていたという。 「しかし、さすがに“定住”への願望が強くなったようで、2年前に由紀子さん主導で姉、そして母親の家とも近い現在の家を、ローンを組み2100万円で購入したといいます」(同) 転勤癖のある中田容疑者にしてみれば、そのような状況に強い抵抗感を抱いていたのか。夫婦を知る人物によれば「特に最近はケンカが絶えなかったようだ」という。 加えて、そんな事態に油を注ぐような出来事が事件発生前日に起きていた。 「福岡県警では、早い人でだいたい30歳、遅くても40歳までには警部補に昇進する。巡査部長だった中田容疑者も、これまで何度も昇進試験を受けていたが不合格だった。子供の将来を心配する由紀子さんは早く昇進して欲しかったようで、不合格になるたびに中田容疑者に詰め寄り、それがまたケンカの原因になっていたようです。そんな中、5日にも警部補昇進の二次試験の結果発表があり、中田容疑者はまたも不合格。ひょっとするとそれが、事件の引き金になった可能性があるのではないか」(福岡県警関係者) DNA鑑定の結果、由紀子さんの遺体の爪に残された皮膚片が中田容疑者のものと一致。それを裏付けるかのように、中田容疑者の腕には引っかき傷も見つかっている。 「さらに由紀子さんの遺体の周囲に撒かれた油の上には複数の足跡が残されており、これが中田容疑者の当日履いていた靴底と一致しているという。そのため中田容疑者の関与はさらに強まってはいますが、そもそも、夫婦ゲンカがきっかけで、自分の子供2人まで殺めることができるのか。近隣住民の間では、共犯者の存在まで囁かれているのです」(前出・記者) 全容解明が待たれる。
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社会 2017年06月20日 10時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 追い詰められた小池知事
6月1日に、小池百合子東京都知事が自民党に離党届を提出した。「これまで『進退伺』を出していましたけれども、なかなか決めてくれないので、こちらから離党届を出させていただきました」と小池知事は語ったが、それは本音ではないだろう。離党せざるを得なくなったのだ。 きっかけは世論調査の結果だ。毎日新聞が5月27日と28日に行った電話世論調査で、都議会議員選挙の投票先を聞いたところ、自民党が17%で、都民ファーストの11%を大きく上回ったのだ。このままでは勝てないと踏んだ小池知事は、都民ファーストへのテコ入れのため、代表就任を選んだのだろう。さすがに、政党代表になったら自民党を離れざるを得なくなったのだ。 これから小池知事は、慎重に支持率の動向をみていくことになるだろう。問題は、代表就任を果たしても都民ファーストの支持があまり上がらなかった場合だ。そのとき、小池知事の選択肢は二つある。 一つは、築地市場の豊洲移転を決断せず、そのまま都議選に臨むことだ。この方法は一種の安全策と言えるが、連携する公明党と合わせても、都議会で過半数を取ることは難しいかもしれない。議会で過半数を取れなければ、小池知事の掲げる東京大改革は覚束なくなる。 もう一つの選択肢は、豊洲移転を断念し築地市場再整備を掲げることだ。そうなれば、豊洲早期移転を掲げる自民党との明確な対立軸を築ける。しかし、そうすると、豊洲移転賛成派の都民を敵に回すことになるし、良好な関係を築いた公明党とも、移転問題で対立することになる。だから、小池都知事にとっては、危険な賭けになるのだが、私は十分に可能性がある手段と考えている。 シナリオはこうだ。 まず、「都民の安全」を前面に打ち出して、豊洲市場は安心できないとアピールする。そのうえで、4月に市場問題プロジェクトチームの小島敏郎座長が示した築地市場を現在の場所で再整備する案を公約で打ち出すのだ。 小島私案は、場内で移転を繰り返しながら建て替えを進める「ローリング工法」だったが、6月5日に出された市場問題PTの報告書では、いったん豊洲移転した後、築地に戻る案も示されている。 いずれにしても、年間100億から150億円の赤字を垂れ流す豊洲よりも、築地残留は、低コストで済む。それを強く主張すればよいのだ。ただし、せっかく作った豊洲市場の建物を取り壊すのはもったいない、と誰もが思うだろう。 それについては、妙案がある。実は、東京オリンピックの期間、メディアセンターが置かれる東京ビッグサイトやレスリング等が行われる幕張メッセは使用できなくなる。ビッグサイトは、'19年4月から準備工事が始まるから、深刻な展示場不足が生じるのだ。 そこで、豊洲市場をイベント会場として活用し、その後の需要動向を見極めながら、不要であれば売却すればよいのだ。 この方式であれば、東京オリンピックに照準を合わせたイベントの企画も可能になる。ただ、豊洲市場のイベント向け改修には少々の時間が必要だから、小池知事は早く決断をすべきだろう。
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社会 2017年06月19日 14時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 吉田茂・雪子夫人(下)
妻・雪子の他界後、ヤモメになった吉田茂には、じつは愛した“陰の女性”がいた。本名・坂本清。花柳界・新橋で踊りの名手として名を残した老妓「おちゃら」の養女、名妓「小りん」である。 前号でも登場した夫妻の3女・麻生和子は、その著『父 吉田茂』の中で、小りんとの関係を次のように記している。雪子が存命中から、吉田との関係があったことが偲ばれる。 「戦争前に小りんに初めて会ったとき、私はまだ15、16歳で、小りんは私より7つ、8つ年上、23、24になっていたでしょうか。小りんの踊りは花柳流で、私も同じ流派でしたからその点でも私もわりに親しくしていたのです。小りんが父を好きだったのは早くから知っていましたし、父のほうも頭の回転が速くよく気がつく小りんを気に入っていました。(首相在任中、座敷に小りんを呼ぶときは)あくまで私が呼んだということにしておかなくては、あとあとの押えができません。で、私のほうから『小りんに来てもらうのはどうかしら』と父に言うと、『やっぱりおまえは頭がいいね』とまんざらでもない顔をしていたものです」 吉田は粋人であり、若い頃から花柳界での“四畳半遊び”をよく楽しんだ。人さまからの接待などは大嫌い、すべて身銭を切って遊んだ。吉田11歳のとき貿易商だった養父が病死、その遺産、いまなら数十億円のあらかたを、こうした花柳界でキレイに使い切ってしまったことは前々号でも記した。“驚異の遊び人”とも言えたのだった。 芸事は自分はやらぬが見るのは大好き、そのうえ女性には誰でも優しいフェミニストときたから、芸者衆からは大モテ。しかし、そうした女性たちと次々に情を通じるタイプではなく、身持ちの堅い男でもあった。そのうえで、雪子夫人とは性格もまるで違う、気の合う小りんだけは、“別物”ということだったようだ。 一方、首相の座に就いた吉田は、都合7年2カ月の長期政権をまっとうしたが、この間、二つの大きな功績を残したと言えた。 一つは、敗戦後に交戦国との単独講和か全面講和かで国内が二分する中、ソ連(注・現ロシア)など共産圏諸国を排除した形で、自由主義国、とりわけ対日講和を望むアメリカとサンフランシスコ講和条約を結ぶと同時に、日米安全保障条約に調印した点であった。 二つは、GHQ(連合国軍総司令部)による新憲法の“押し付け”制定を呑んだことだった。当初、吉田は軍備を持たず交戦権の放棄には難色を示した。そんな規定ではとても国家とは言えず、これからの日本は国際政治の中で対処していけないとの考えだったが、最終的には持ち前の外交官的センスの中で決断をしたということだった。 すなわち、交戦権の条文に解釈の余地を見い出すことで、やがての防衛力の漸増を描いていた。軍隊は膨大な“カネ食い虫”である。それならGHQによる新憲法を逆手に取り、戦後日本にとっての急務である経済復興にこそ持てる資金を投入、日本の軍備はアメリカに任せてしまえという発想、決断だった。「安保タダ乗り論」ということである。 結果的に、軍備に食われるカネを経済力の蓄積に回す“防衛問題迂回戦略”が功を奏し、その後の池田勇人内閣での高度経済成長路線で日本再建に結びつくことになったものである。 昭和38年10月、政界を引退した吉田は、終生、入籍はしなかったものの、小りんに“妻の座”を与え、神奈川県大磯の大邸宅に引きこもった。ときに、その隠然とした影響力を頼って「大磯詣で」という言葉があったように、政局の折々で大物政治家、政治記者が引きも切らず、あるいは外国からの要人もしばしば訪れたものだ。自らトボケた「海千山千荘」と名付けたこの吉田邸は、しばし戦後政治の重要な舞台となったものであった。 そうした中で、小りんは昔とった杵柄で巧みな接待をこなし、吉田の身の回りの世話にいそしんだ。また、吉田といえば好きな古今亭志ん生の落語、アメリカのテレビドラマ『アンタッチャブル』などを楽しみ、永田町の“世俗”とは一線を画してもいた。たまたま、こうした吉田の楽しみの時間帯に来客があると、「あいにく不在でございます」と断るのも、小りんの役目だった。前妻・雪子とは、一味も二味も違った機転の利く“後妻”だったのである。 その吉田は昭和42年10月20日、心筋梗塞を発症して満89歳で天寿をまっとうした。死の前日朝、快晴の富士山を眺め「きれいだね、富士山は」とポツリ口にした。振り返れば、吉田のこの言葉は、自らに天下を取らせた雪子と小りん2人の“静かなる猛妻”への感謝の面影が浮かんだということかもしれない。 その小りんが終生、入籍しなかったのは、前妻・雪子に対するせめてもの贖罪だったと思われるのである。=敬称略=小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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社会 2017年06月16日 14時00分
中古住宅市場で再燃する 大塚家具vsニトリの潰し合い
経営権争奪を巡って父娘で骨肉の争いを演じた『大塚家具』が、昨年に千葉県船橋市で出店戦争を繰り広げた『ニトリ』と、今度は中古住宅市場でのガチンコ対決が再燃だ。 「“船橋戦争”は昨年9月、JR京葉線・南船橋駅そばで起きました。ショッピングセンター内にあるニトリのわざわざ真向かいに大塚家具が新店をオープンさせ話題となったのですが、結果、店舗同士の数字はともかく、最終決算ではニトリの圧勝となったのです」(企業アナリスト) 勢いを見ればその差は歴然。ニトリは'17年2月期決算で30年連続増収増益を達成。一方の大塚家具は、'16年12月期決算で過去最悪の赤字を出している。そんな中、対決再燃とは具体的にどういうものか。 「ニトリは5月1日、群馬県桐生市に本社を置く中古住宅販売会社・カチタスの株式の一部を233億円で取得し、グループ会社にすることを発表した。カチタスは中古住宅を買い取り、リノベーションして再販するのが特徴で、ここ数年は業界トップで年間3000戸以上を販売した。今回のグループ化は、再生した中古住宅に新品のニトリの家具を設置し、セットで売り込む作戦です」(同) ニトリは現在、国内外に488店舗を展開するが、'22年にはそれを1000店舗、'32年に3000店舗にまで伸ばすという。この目標を達成するためにも、中古住宅+新品家具は大きな柱となる。 一方の大塚家具は、主に中古マンション販売を手がけるスター・マイカと組み、リノベーションマンション住宅と中古家具をセット販売する事業を開始する。 ところで、“リフォーム”と“リノベーション”はどう違うのか。 「リフォームは痛んだ住宅を改修したもの。リノベーションは改修だけではなく、その住宅にデザイナーズ的な附加価値を付け性能向上させて売り出すことです。しかし、おおざっぱに言えばリフォームもリノベーションに入るものも多い。ニトリも大塚家具も、広い意味で中古住宅を時代のニーズにマッチさせ、セット販売で勝負するということでしょう」(同) しかし、二大家具業者が中古住宅+家具で新たなニーズを呼び込もうという流れは、業界の次の活性化につながるのか。そもそも民間調査会社などの調べでは、'16年のリフォーム市場は約6兆2000億円で、前年比4.4%減とも言われ、やや落ち込み傾向にあるという。 大手不動産関係者も、こう説明する。 「内閣府の'15年度の『住生活に関する世論調査』では、“新築がいい”という人は73%、“中古でもいい”という人は9.9%で、日本人は新築志向が強い。逆に欧米では、新築を望む人は10%程度で8、9割は中古を望みます。これは日本の建築資材に木造が多く、地震も多いなど耐久性の問題がある。加えて、日本の不動産取引では20〜25年経つと建物の資産価値はゼロに近づく。一方、欧米では資材に相当耐久性のある強固な材質を使い、長く使われた中古は安全で住みやすいと判断される。そんな価値観の違いがあるのです」 こう見てくると、大塚家具やニトリの手法は決して前途が明るいとは思えない。 しかし、経産省関係者はこう否定する。 「国が中古住宅の再活用を促す政策に乗り出しているため、将来の市場活発化は明るいとも取れる。具体的に言えば、8年後の'25年までに既存の住宅流通、つまり中古住宅市場売買を倍の8兆円、そして、リフォームやリノベーション市場の規模を現在の倍の12兆円にまで伸ばすことを目指しているのです」 国がこうした対策に取り組む要因は、日本全国で広がる空き家問題がある。'93年の空き家は448万戸と500万を切っていたが、'13年度の総住宅数は6063万戸で、今後もますます伸びる様相だ。 「治安上でも経済面から見ても、空き家は大きな危険と損失を生み出す。そのため、中古住宅の資産価値も公益財団不動産流通センターが中心になり、20年、30年経っても十二分に耐久性があるならば評価価値を落とさない査定マニュアルを再作成し、中古市場を活発化させようとしています。そうすれば、'30年にはリフォームやリノベーション市場が30兆円になることも不可能ではないのです」(同) ニトリも大塚家具も、国の施策を十二分に読み込んだ上での中古住宅市場参入というわけだ。そう言えば、芸能界きっての実業家でタレントのヒロミもつい最近、リフォーム会社を立ち上げたというから、独特の嗅覚が働いたか。 ニトリVS大塚家具の勝敗は、消費者が中古住宅に安価な新品家具の組み合わせを選択するのか、中古住宅+中古家具で全体価格が抑えられた方を選ぶかにかかってきた。
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社会 2017年06月16日 10時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第225回 生産性向上こそが解である
筆者は日本の人手不足を補う手段としての移民(外国人労働者)受け入れに猛反対している。移民反対を主張すると、即座に、 「ならば、人手不足はどうするんだ!」 と反論されるわけだが、答えは決まっている。生産性向上である。 生産性とは、生産者1人当たりの生産を意味する。生産性向上とは生産者1人当たりの生産量を拡大し続けることだ。 そもそも移民受け入れ論者が理解していないのは、経済成長は「人口(移民含む)の増加」ではなく「生産性向上」により起きるという真実だ。厳密には、総需要(名目GDP)が供給能力(潜在GDP)に対して過剰となり、インフレギャップ(≒人手不足)が発生。インフレギャップを人手を増やすのではなく、生産性向上で埋めようとしたとき、初めて経済成長の黄金循環が回り始める。 インフレギャップを「人手」ではなく生産性の向上で埋める。生産性向上とは、生産者1人当たりの生産の拡大だ。 GDP三面等価の原則により、生産=支出=所得となる。生産性向上で生産者1人当たりの生産が拡大するとは、生産者1人当たりの「所得」が増えることをも意味するのだ。すなわち、実質賃金の上昇である。 実質賃金が上昇し豊かになった国民は、おカネを使い始める。すると、民間最終消費支出(いわゆる個人消費)や住宅投資といった需要が拡大し、経済は再度インフレギャップ化してしまう。というわけで、新たなインフレギャップを生産性向上で埋めると、またもや実質賃金が上昇。豊かになった国民が消費や投資を増やし、再びインフレギャップが拡大する。と、生産性向上と総需要の拡大が循環的に繰り返されるのが「経済成長」なのだ。 数年前までのわが国は経済が完全にデフレ化していた。デフレギャップという総需要の不足が発生していたのである。デフレギャップがある国では生産性向上は起きない。生産性が向上したとしても失業が増えるだけで、むしろデフレが深刻化しかねない。 とはいえ、現在の日本は異なる。経済はいまだにデフレから脱却していないが、幸運なことに、少子高齢化に端を発した生産年齢人口対総人口比率の低下により人手不足が始まっているのだ。この人手不足を移民受け入れではなく、生産性向上で埋めて初めて、わが国の経済成長の黄金循環が回り始める。 より具体的には、生産性向上を目的とした投資の拡大こそが日本には必要なのである。生産性向上のための投資とは、設備投資、公共投資、人材投資、技術投資の四つだ。 今後の日本において特に重要なのは「サービス業の生産性向上」になる。厳密には「人が動かざるを得ない分野」における生産性向上こそが、日本を繁栄へと導く。介護、土木・建設、運送、医療、農業、飲食、農業などにおいて人手不足をいかに「技術」でカバーできるのか。これが日本経済の運命を決定付けることになる。 一応、政府も「サービス業の生産性向上」のための投資戦略を打ち出そうとしている。安倍内閣は2017年5月30日、第9回未来投資会議を開催。総理は会議後の記者会見で、 「少子高齢化に直面する日本は、失業問題を恐れずに人工知能やIoT、ロボットなどを存分に活用できます。ものづくりが強く、医療介護や工場のデータも豊富です。このチャンスを産業の変革だけには終わらせません。日本は、新たな技術をあらゆる産業や日常生活に取り入れ、1人1人のニーズに合わせる形で社会課題を解決する『Society5.0』を世界に先駆けて実現します」 と、語った。 会議では、具体的には、 ●介護ロボット等の導入促進(介護) ●「アイ・コンストラクション」の対象拡大、公共工事の3次元データのオープン化、インフラ点検・災害対応ロボットの開発促進(土木・建設) ●トラックの隊列走行の実現、地域における無人自動走行による移動サービスの実現、小型無人機(ドローン)による荷物配送の実現、安全運転サポート車の制度整備・普及促進(運送) などが提言された。これらの施策は、筆者が著作『日本が世界をリードする! 第4次産業革命』(徳間書店)などで訴えていたソリューションそのままだ。介護、土木・建設、運送など、ヒトが動かざるを得ない分野において「ヒトの動作」を支援する技術投資、設備投資こそが第4次産業革命なのだ(ちなみに、第3次産業革命はコンピューターやインターネットの発達により、ヒトの「情報へのアクセス」を支援し、生産性を向上させた)。 また、安倍総理の発言の冒頭「少子高齢化に直面する日本は、失業問題を恐れずに」という部分は重要だ。筆者は「第4次産業革命」などにおいて、生産年齢人口比率が低下するわが国では、他の国とは異なり「技術的失業」を恐れずに新技術の導入ができる。よって第4次産業革命は、日本がけん引すると繰り返し語ってきた。技術的失業とは、技術進化により失職する人々が激増する「可能性がある」という問題だ。日本の場合は、そもそも人手不足が深刻化していくため、技術的失業を恐れる必要は全くない。 問題は、安倍政権が人手不足に対する解決策として、なぜか生産性向上と「移民受け入れ」を同時に進めている点だ。生産性向上で人手不足が埋まるならば、そもそも外国人労働者を受け入れる必要はないはずだ。 現在の日本は深刻化する人手不足を受け、 「移民受け入れを続け、国民が貧困化する移民国家と化すのか?」 「生産性向上により、経済成長の黄金循環が回り始めるのか?」 の瀬戸際にある。いずれの道を進むのか、すべては今後のわれわれ、日本国民の選択にかかっている。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2017年06月15日 14時00分
捕獲報奨金の詐欺が横行する“鹿肉商売”の闇
農林水産省の鳥獣対策室によると、野生鳥獣による農作物被害額は年間200億円前後で「高止まりの状態」だという。特に多いのがシカによる食害だ。 「推定生息数は、本州以南のニホンジカが305万頭、北海道のエゾシカが57万頭。これは2013年のデータで、シカ類の数はイノシシの4倍強といわれています。本州以南のニホンオオカミ、北海道のエゾオオカミという捕食者が絶滅したので、シカ類はまさに“わが世の春”を謳歌しています」(同省対策室) 今年4月、政府が官邸主導でジビエ(野生鳥獣肉)料理の利用拡大を目指す対策を発表した。例えば『カレーハウスCoCo壱番屋』では、滋賀県の店舗が'10年から提供を始めたシカ肉カレーが、北海道や長野県などの店に広がっているように、ちまたで目にする機会も増えている。 しかし、滋賀を除いて常にあるわけではないようだ。 「シカ肉はビジネスをする上で障害が多い。シカは銃弾が頭か首を撃ち抜いた場合のみ食肉に使えるのですが、それでも売り物になるのは背ロースとモモ肉ぐらいで、100グラム当たり700円前後で取引されるものの、全体の約15%に過ぎません。肉の注文が増えても十分に供給できず、廃棄費用を考慮すると利益が出ないのです」(グルメライター) 一方、鹿児島県霧島市では、鳥獣捕獲を依頼する猟師を『捕獲隊員』として任命し、イノシシとシカを捕獲すると1頭1万2000円の報償金が出るが、このカネ目当ての詐欺が横行しているという。 「捕獲に対する国の補助金制度が始まった'13年度からの3年間で、不正受給は少なくとも300件を超えるとみられます。こうしたことから農水省は、捕獲の確認方法を調査する方針を明らかにしました」(地元紙記者) 生態系は一度破壊されると、人間の手では負えなくなる。ジビエ料理を推進したところで、オオカミの代わりは無理なのだろう。
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社会 2017年06月15日 10時00分
橋下徹参戦! 小池百合子都知事を担ぎ上げる懐刀7人衆(2)
その“同志”については、すでに様々な名前が取り沙汰され、一部はそうした動きを見せ始めているという。 「現時点では国会議員ではないが、まず筆頭は橋下徹前大阪市長。小池さんが離党届を出すのとタイミングを合わせたかのように、日本維新の会の政策顧問を辞している。維新の松井一郎代表は辞任理由を、『テレビや講演が多いので中立性のため』と言っているが、一説には、憲法改正のため秋にも行われる内閣改造で橋下氏を安倍首相が民間から入閣させる下準備という説もある。しかし、それは見方が甘い。橋下氏はすでに、今の安倍一強状態が崩れるのは時間の問題と見ている。今回の動きは、新たな波に乗るためのケジメですよ」 とは在阪政治記者。 「森友学園にしても加計学園疑惑にしても、何かしらの安倍パワーが利いたことは明白だが、何も解明されない。そんな、官邸が徐々に伏魔殿と化しつつあるなか、橋下氏は今後、何かをきっかけに国民の安倍離れが一気に進むと見抜いている。その後の小池氏には相当期待しているようです」(同) 一方の小池氏周辺関係者も、こう続ける。 「昨秋、小池塾の講師起用を巡って、橋下氏と小池氏の間に亀裂との情報が駆け巡った。さらに橋下氏は6月4日に、維新総決起大会で都民ファーストに対抗する発言もしているが、あれは松井氏との関係を保つためのポーズでしょう。ホットラインは続いており、小池氏も何かと橋下氏の意見を聞いています。そうした意味でも、橋下氏が政策顧問を辞めたことは、維新を離れ、いよいよ小池新党の本格的準備に参加するということ。ただし橋下氏は、“小池首相”の次を狙う腹なのでは」 同志の2人目は、石破茂前地方創生担当相だ。 「石破氏は自民党を離党しないようにも見えるが、首相の座を獲れるなら何でもアリの心境だろう」 とは自民党ベテラン議員。 「来年の次期総裁選でも、現状では安倍続投が濃厚。そうならなくても、石破氏は麻生太郎副総理や岸田文雄外相、伏兵の菅官房長官に先を越される可能性が高い。そのため、自身に対してのカンフル剤の意味で小池新党に加わり、そこをベースに頂上を目指すほうが近道と腹を括った。それは、安倍首相の改憲論に異論を挟み、文科省の前川喜平前事務次官の首相忖度発言にも『意義がある』と突出した発言にも表れている。橋下氏とどっちが先に首相に近づくか? それは時の流れだ」(同) この“次々期の首相”を狙う2人のほか、小池氏の国政進出を支える候補はまだいる。 「“懐刀”というのがピッタリなのが、もちろん5月末に自民党に離党届を出した若狭勝衆院議員。都知事選、衆院補選と、すでに小池氏と一心同体ですからね。また自民党では、野田聖子元自民党総務会長。'15年、野田氏が自民党総裁選に出馬した際には、小池氏は推薦人を申し出ており、野田氏も、小池氏が都知事選に出馬した際に裏方として奔走している。ほかにも民進党を離党した長島昭久元防衛副大臣、日本維新の会の渡辺喜美副代表の名前も聞こえてきます」(全国紙政治部記者) 渡辺氏は、小池氏と古くから近い関係にあるという。 「先日の日本維新の会の決起大会でも、『都議選後は小池氏と連携し、東京と大阪の“改革大連合”を作るべきだ』などと訴え、内部に波紋を呼んでいる。そのうち離党して小池氏につくのでは、との話もあります」(前出・在阪記者) これらに、石破氏と同じく憲法改正などで安倍首相を真っ向から批判する、船田元元経済企画庁長官も加わるとの情報も。その船田氏はロイター通信のインタビューに「(小池氏は)オリンピックを成功させ点数を上げれば、安倍首相はレームダックとなり、ライジングサンは小池氏だろう。(このシナリオは)十分あり得る」と語っている。 7人はそうした小池氏の将来に懸けるのか。都議選の行方にますます注目だ。
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社会 2017年06月14日 14時00分
ビール安売り規制強化を喜ぶメーカーの甘い見通し
6月1日からスーパーやディスカウントストアでビール類が値上がりし、消費者から悲鳴が上がっている。店によっては、1割も値上げしたところがあるという。 「従前は、卸売りや小売店に対するメーカーからの“値下げ原資”販売奨励金(リベート)が横行していました。しかし、国税庁が規制の強化に踏み切り、改正酒税法と改正酒類業組合法が施行され、ビールの安売りにストップをかけたのです」(業界紙記者) この法改正によって過度な値引き販売を行うと「違反企業名の公表」や「酒販免許取り消し」など厳しい処罰を受けることになる。さらに、リベートの支払い基準が厳格化され、これによりリベートが減ったため、恩恵を受けていた一部の小売店は値上げを余儀なくされたのだ。 一方で、値上げを喜んでいるのがコンビニだ。従来から値引き率の低いコンビニ各社は小売価格を据え置く意向で「スーパーの価格に対抗できなかったが、ようやく勝負ができるようになる」(コンビニ大手)と歓迎。また、ビールメーカーにとってもリベートの支出が減るため、収益改善となる公算が大きい。 「小売店に払っていたリベート分が減ったことで業績に寄与するのは間違いない。社内では、冬のボーナスに期待する声も出始めています」(飲料メーカー) 実際に大手飲料メーカーの株価は上昇が続いている。 「リベートの減少はメーカーにとっては追い風。投資家も好材料と見ています」(経済エコノミスト) “官製値上げ”ともとれる法改正は、表向きは小規模酒店を守るものとされている。しかし、今回の値上げは自由競争を阻み、消費者のビール離れに拍車を掛ける可能性もある。 「6月に入りビールの売り上げがさらに鈍化している。ビールから缶チューハイに移行する人がかなり目立っています。若者のビール離れは、もう何年も前から深刻化しており、ビール類の国内市場は縮小の一途をたどっています」(小売店) メーカー各社は、一時的な収益改善に喜んでいる場合ではなさそうだ。