社会
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社会 2013年10月26日 11時00分
睡眠不足が呼ぶ経済損失額
家具販売店の『イケア』がこのほど、日本が「睡眠後進国」であることを示す調査結果を発表した。東京、ニューヨーク、ロンドンなど世界5都市で1040人を対象に、インターネットで「睡眠と生活に関する意識調査」を実施。東京の回答者の平均睡眠時間は7.3時間で最も短く、睡眠への満足度も47%が「不満足」と答えたのだ。 また、これを元に睡眠不足によって起こる欠勤や遅刻、事故、効率低下などによる経済損失額を試算すると、2012年の東京圏(744万人)での損失額は4757億円に及ぶという。 睡眠障害による経済損失は計り知れないことから、すでに分析した専門家がいる。日本大学医学部精神神経医学教授の内山真氏によると、労働者1人当たりの年間生産損失額から割り出された日本全体の損失額は、何と3.5兆円にも上るというのだ。 こうなってくると、寝具を売る販売店がもっともなことを言うなと笑ってばかりもいられない。 世田谷井上病院の井上毅一理事長が言う。 「睡眠には個体差があり、一概に時間だけで睡眠不足だとは言えません。私などは熟眠する体質なので、3〜4時間で済むし、どこでも寝られる。時間より質を問題にした方がいいのではないでしょうか」 井上氏のように、いつでもどこでも寝られるという体質の人はともかく、まずは自分の睡眠の質を点検した方がいい。 「“寝だめ”ということはできません。ビジネスマンで休日は一日中寝ているという人がいますが、かえって日曜から月曜日にかけての睡眠が浅かったり寝付けなかったりして、会議でウトウト、車の事故を起こす人も多いのです」 睡眠は経済を救う!?
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社会 2013年10月25日 13時00分
謎のモンゴル企業が落札した朝鮮総連本部ビル競売“裏”
朝鮮総連ビルの落札価格は、下限額の約21億3400万円を2倍以上も上回る約50億1000万円! 落札したモンゴル系企業アヴァール・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー(以下ア社)の採算度外視、無謀投資は明らかで、この競売問題がいかに異様であるかを物語っている。 「今回の競売ではもう1件入札があったが、下限の金額に達していません。つまり、今回の再入札に際しては競争入札ではなく、事実上ア社の“随意契約”になりそうな気配です」(全国紙社会部記者) ア社とは一体何者なのか。 「事業目的は不動産業とは関連性の薄い『ビジネスコンサルタント』。ファンド管理会社でもあることから推察されるのは“投資家”がいるということだろう。今回の入札結果に対して許宗萬(ホ・ジョンマン)総連議長が上機嫌であることから、朝鮮総連や北朝鮮の意向が強く反映されているとみて間違いない」(公安関係者) 拉致問題の解決を急ぐ安倍政権の動きがこれに絡む。安倍首相は今年3月にモンゴルを訪問し、古屋圭司拉致問題担当相も7月に訪問、その返礼として9月にモンゴルからアルタンホヤグ首相が来日し、再入札直近の9月末にはエルベグドルジ大統領が来日している。この際、安倍首相は、大統領を東京・富ヶ谷の私邸に招いている。 「こうした一連の動きを見ると、ビル売却問題と拉致問題解決が密接にリンクしているとみていいのではないか」(同・関係者) 前回落札した鹿児島県の宗教法人最福寺は、資金を調達できず購入を断念した。ア社は果たして、期限内に代金を納付できるのか。 「ア社の背後にいる金主は、同ビルへの投資資金が回収できない物件であることから考えると、日本の金融機関やゼネコンとは考えにくい。“ファンドマネジャー”は朝鮮半島とゆかりのある個人、あるいは企業が複数関与していると考えるのが自然だ」(同) “北朝鮮大使館”の負債を、拉致被害者との交換でチャラにするとしたら、国民は納得できるだろうか。
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社会 2013年10月25日 13時00分
「10年に1度」ではなくなった秋の巨大台風連発で起きる“想定外”の危機
日本列島に大きな爪痕を残した台風26号。全国で死者行方不明者は59人(10月18日時点)に達しているが、直後には27号が発生し、こちらも猛烈な勢力を保ち日本列島を脅かしている。26号が襲った際、「10年に一度の強さ」とされたが、「気候変動、異常気象によってその状況は崩されている」(サイエンス記者)という見方もある。 「'09年、すでに名古屋大と気象研究所(茨城県つくば市)が、温暖化により今世紀後半には風速80メートル(26号は最大瞬間風速75メートル)に達する『スーパー台風』が日本列島を襲う可能性が高いことを示唆している。その場合、乗用車や木造家屋は吹き飛んでしまう。高潮により、造りが貧弱な堤防が破壊された場合、被害は計り知れません」(同) 連続する巨大台風の場合、地盤崩壊の恐れもある。 「26号が大島に甚大な被害をもたらした原因は豪雨でした。続いていた大雨で地盤が緩み火山灰が流されたのです。一方、高度成長期に山を切り崩して宅地造成した地域、例えば東京の多摩地域には、切り崩した土砂を盛り土にして建てられた一戸建てが多数ある。同じように地盤が緩めば、起伏のある場所に建っている住宅は家ごと流されてしまう可能性があるため、警戒が必要です」(防災に詳しいジャーナリストの村上和巳氏) 自分の家が建っている場所は、もともとどんな土地だったのか。一戸建てに住んでいる人は役所に出掛けるなどして調べてみる必要がある。 「特に昔、沢が流れていた場所を埋め立て住宅を建設してしまったような地域も、地滑りで流される危険がある。また最近は、3階建ての建売住宅で玄関部分が道路より下になっている物件が少なくない。その場合、道路が冠水した際に鉄砲水が入ってくる可能性もあるので、各世帯で土嚢くらいは準備し、即玄関前に積み上げられる準備はしておいた方がいい」(同) 気象庁の「特別警報」をアテにするより、まず自己対策だ。
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社会 2013年10月25日 11時45分
客のタレコミで、性行為を見せ合う「カップル喫茶」が摘発される
警視庁保安課は10月21日までに、客同士で性行為を見せ合う「カップル喫茶」で、客の性行為を他人に観賞させるなどしたとして、公然わいせつや同ほう助の疑いで、東京都品川区西五反田のカップル喫茶・経営者の男(57=横浜市磯子区杉田)、従業員の女(29)と、客の男女6人を現行犯逮捕した。 経営者の男の逮捕容疑は19日夜、西五反田のマンションの一室にあるカップル喫茶「Ryu's CAFE」で、埼玉県志木市の財団法人職員の男(46)ら男女6人の客が、全裸になって公然とわいせつな行為をするのを助けたとしている。公然わいせつ容疑で逮捕された客は、処分保留で釈放された。 警察の調べに、経営者の男は容疑を認めており、「遊び方は様々で、客の自由である」と話しているという。 同課によると、同店は約10年前から営業を始め、毎月約300万円の売り上げがあったとみられる。 摘発のきっかけとなったのは、客と称する者からのタレコミだった。今年に入って、警視庁に「交際していた20代女性をカップル喫茶に連れて行ったら、嫌がっているのに客らに輪姦され、自殺した」と匿名の通報があり、同課が捜査していた。自殺の事実は確認できていない。 同店は喫茶店を装ったオートロック式のマンションの一室で、捜査員が踏み込んだ際には、3組のカップルが全裸の状態でお互いの性行為を見せ合っていた。 老舗として、同好の士には有名だったという同店の料金は、カップルが6000〜8000円(曜日で異なる)、単独女性は3000円。フリータイム制で、初めての来店客には男性のみ、身分証明書の提示を求めていた。(蔵元英二)
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社会 2013年10月24日 11時45分
強制わいせつ事件で被害者が異例の起訴取り消し! 理由を探ると
強制わいせつ事件で、被害に遭った児童側が裁判で個人情報が被告に伝わることを恐れたため、東京地検が10月17日付で起訴を取り消したことが分かった。東京地裁はこの手続きを受け、公訴棄却の決定を出した。検察がいったん行った起訴を、取り消すのは異例の事態。 起訴が取り消されたのは40代の男。女児に対してわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪で起訴されていた。検察庁は性犯罪事件などで特に保護が必要な場合、起訴状に被害者の実名を記載しない取り扱いを進めている。この事案でも、被害者側の意向で起訴状に児童の実名を記載せず、親の実名と続き柄を記載するにとどめていた。 ところが、被害者側が告訴したものの、今後の公判で児童の個人情報が被告に伝わることなどを懸念したため、地検は被告の刑事訴追を断念したという。地検の関係者によると、裁判を続けることが難しいと判断したため。 強制わいせつ罪は、被害者の告訴が必要な親告罪である。刑事訴訟法は検察の追及から身を守る被告の「防御権」を守るため、起訴状に事件の内容をできるだけ詳しく記載するよう求めている。 一方で、性犯罪やストーカー事件では、被告が被害者の個人情報を知ることで、二次被害につながる恐れがあることから、各地の地検は起訴状で被害者を匿名にするなど、被害者保護に向けた取り組みを進めている矢先だった。(蔵元英二)
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社会 2013年10月23日 11時45分
約2億6000万円を不正支出 大阪・河内長野市職員が生活保護費を着服
大阪府警捜査2課などは10月21日、大阪府河内長野市の生活保護費が不正に支出されたとされる事件で、業務上横領の疑いで、同市主査の男性職員(43=同府富田林市高辺台)を逮捕した。 逮捕容疑は、生活保護を担当する生活福祉課にいた10年5月〜11月、市の口座から生活保護費として、約400万円を不正に引き出して着服したとしている。 主査は容疑を認めており、「どれくらい着服したのか、整理しなければ自分でも分からない」などと供述しているという。 市は府警に被害相談し、7日に、約400万円を着服したとする業務上横領罪で主査を告訴していた。 府警は20日、主査の自宅を家宅捜索し、かばんや袋に小分けして保管されていた現金数千万円を押収。複数の口座にも多額の金を預けていることを確認した。 市によると、不正があったのは09年1月〜11年3月で、死亡や転出などで保護費の支給が廃止された人や、実在しない人を受給者に仕立てるなどした不正が計1326件あり、使途不明金の総額は約2億6000万円にのぼる。金は庁内のATM(現金自動預け払い機)から、引き出されていた。 同市では保護費を窓口で支給した場合、受給者に領収書を渡し、金額、氏名を記入の上、押印して提出してもらう決まりになっていた。それを経理担当が集めて会計課に提出し、口座に入金した保護費の金額と相違がないかチェックする仕組みだった。 逮捕された主査は01年10月〜11年3月、生活保護費の支出事務を担う生活福祉課に在籍し、ケースワーカーや電算システム管理、経理を担当。支給額の端末入力や会計処理を行う立場だった。 主査が他部署へ異動した後の11年4月、後任の職員が電算システムの処理状況を調べたところ、生活保護が停止された1個人に対し、約5000万円を支給したとのあり得ない記録があったため、不審に思って上司に報告。ところが、上司は「システム上のエラー」と判断して放置し、12年8月にシステムを変更するまで不正に気づかず、発覚が遅れた。 問題の約5000万円は電算システム上、主査の異動発令前日の11年3月31日に支給されたことになっていた。急に異動が決まったため、それまでにシステム上の処理をしないまま、複数回にわたって、生活福祉課が管理する口座から引き出した同額分について、金額上のつじつま合わせをして、発覚を逃れようとしたとみられる。 芝田啓治市長は「管理監督面で不備があった。指導すべき立場の職員が不正をしたことは、誠に申し訳ない」と謝罪した。 同市は今後、審査や経理を別々の職員に担当させたり、会計課など他の部署によるチェックも強化する方針。(蔵元英二)
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社会 2013年10月23日 11時00分
アダルトビデオで急成長の会社 太陽光発電などの新規事業に進出
アダルトビデオのネット配信等で急成長したDMM.com(以下DMM)が今度は太陽光発電事業と3Dプリント代行事業に進出、話題をさらっている。 DMMの名前を知らしめたのは、旧SVC証券を買収しFX(外国のお金を両替する取引)等の証券業界に進出したとき。アダルトビデオ配信とFXビジネスはあまりにも違い過ぎ、関係者を驚かせた。そして、今度は『クレア』と業務提携し、太陽光発電事業に乗り出したのだ。 両社は、1区画50 kw未満の太陽光発電施設の開発、および販売について提携。DMMは太陽光発電システムの販売、代理店制度の構築などを担当する。片やクレアは、地権者からの事業用地の購入、賃借等不動産事業、および施設建設の役割を担う。 加えて、3Dプリント代行事業にも進出する。DMMの松栄立也社長はこう語っている。 「2年前から新規事業のタネになりそうなものをずっと探してきた。とにかくいろいろな人に会ってどんなビジネスがきそうか思案していたところ、しだいに『3Dプリントは面白いそうだな』と。1000人ぐらいに会って話をすればなかにはひとつぐらいビジネスアイデアが出てくる」(日刊工業新聞ビジネスオンライン) 社長の言葉通り、これから事業を行う太陽光発電事業、3Dプリント代行事業を除き、DMMグループは社員数約760名、総売り上げ377億2600万円('13年2月期)の一大グループに成長した。 中でも、アダルトビデオネット配信のDMM.com(社員数50名)を軸にFXビジネスのDMM.com証券(25名)を設立し業績を伸ばした。 その他、サイト構築・管理のDMM.comラボ(320名)、アダルトビデオ制作のCA(旧北都・100名)、DVDプレス・ロジスティックスのKC(80名)、AVの小売店向けビジネスのTIS(150名)、月刊DMMなどを出版するGOT(30名)等7社で構成されており、これらに近く新規事業の会社が加わることになる。 今後も進められる多角的経営、吉と出るか、凶と出るか。
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社会 2013年10月22日 11時45分
陸上自衛隊員がネットカフェで女子学生に体液ぶっかける
まさに、トホホな事件が起きた。 広島県警安佐南署は10月17日、インターネットカフェの個室に侵入し、女性に体液をかけたとして、建造物侵入と準強制わいせつ容疑で、陸上自衛隊大津駐屯地所属の1等陸曹の男(36=滋賀県大津市際川)を逮捕した。 1等陸曹は「記憶にない」と容疑を否認しているという。 逮捕容疑は、5日午前2時55分頃、広島市安佐南区のインターネットカフェで、他人の個室に侵入し、寝ていた専門学校の女子学生(21)の肩に、自分の体液をかけたとしている。 同署によると、女子学生が気付いてとがめたが、1等陸曹は料金を精算して店を出た。店員が店の外でいったん取り押さえたが、逃走した。 入店時に運転免許証を示しており、店内の防犯カメラの映像などから、1等陸曹を割り出して捜査していた。体液のDNAも一致しているという。 1等陸曹は大津駐屯地の勤務だが、この日は休暇を利用して、広島市内の実家に帰省中だったもよう。 陸上自衛隊大津駐屯地の広報室は「事実関係が確認されれば、厳正に対処したい」とコメントしている。 最近、自衛隊員の不祥事が相次いでいるが、国を守るべき立場の者が、ネットカフェで寝ている女性に、体液をぶっかけるなど言語道断の行為。否認している段階だが、事実であれば、厳正な処分が必要であろう。(蔵元英二)
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社会 2013年10月22日 11時00分
日テレが旧本社跡地再開発に本腰 ほぼ無借金経営のなせる業
日本テレビホールディングスは旧本社のあった『麹町地区不動産』(千代田二番町、四番町)の再開発に本腰を入れ始めている。 同局IR情報によると《旧本社ビルのある二番町地区について再開発を進め、スタジオと商業ビルを建設することを決定いたしました》としている。 具体的には『千代田区二番町14〜3、2〜4』辺りで、麹町南本館をL字型に囲む地域が主となる。 開発予定面積は1万2293平方メートル(3725坪)となる見込み。 そのため、このほど麹町社屋隣地2089平方メートル(633坪)を46億円で購入した。 「東洋製罐グループホールディングス子会社の東罐共栄が所有する土地で、受け渡しは来年9月になる模様」(日テレ事情通) 既報の通り、麹町南本館から着手し、スタジオ棟を'17年まで、さらにはオフィス棟を'20年までに完成させる計画である。 大胆な建設スケジュールだが、運転資金を支える業績の方は大丈夫か。 '14年3月期通期見込みでは売上げ3381億円(前期比3.6%増)、経常利益430億円(1.9%増)、当期純利益が272億円(7.6%増)と増収増益だ。 上期(4〜9月)CMスポットも546億と好調で、開局60周年に花を添える。気になるテレビ朝日との視聴率競争だが、大久保好男社長は余裕しゃくしゃくでこう語る。 「9月末の段階で全日1位は6週連続、年度18回、年間では24回である。プライムタイム首位は、年度10回、年間14回となる。また7月、8月に続き、9月も月間三冠王を獲得し、7月クール(7月〜9月)でも三冠王を獲得した。まずまずの成績と思ってはいるが、あくまでも途中経過であり、最後までしっかり番組を作り、勝ちたいと思っている」 利益剰余金が4437億円、有利子負債が14億円ある。 ほぼ無借金の日テレHDだから、借入れなくてもビルはどんどん建ちそうだ。うらやましい限り。(編集長・黒川誠一)
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社会 2013年10月21日 15時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第48回 思想の対決
新古典派経済学に基づく新自由主義、グローバリズム、あるいは構造改革が目指すところは、要するに「小さな政府」である。 政府の機能は可能な限り小さくし、リソース(資金など)を可能な限り民間に使わせれば、経済が活性化し、国民経済が成長するという思想だ。 それに対し、政府は国民の安全保障強化を中心に、ある程度は支出を継続しなければならない、という思想がある。自民党で検討が進められている「国土の強靭化」も、こちらの思想に基づいている。 話をわかりやすくするために、前者を「新古典派」、後者を「ケインズ派」と呼ぶことにしよう。 特に、デフレーションという経済現象に対するアプローチが、両派は全く異なる。現在の日本政府及び自民党では、「新古典派」と「ケインズ派」が激しい路線争いをしている。デフレという視点から両派の違いを一言で書くと、「デフレは貨幣現象」派と「デフレは総需要不足」派の争いと言っていいだろう。 本来、現在の日本にとって最も適した政策は、「消費税増税延期+第二の矢である財政出動拡大」であると確信している。だからこそ、筆者は増税が決定される最後の瞬間まで「消費税増税延期」を訴えてきた。 ところが、現実には消費税増税が決定されてしまった。こうなると、次のポイントは、(1) 消費税増税+財政出動拡大 か、もしくは、(2) 消費税増税+法人税減税 のいずれの路線を今後の安倍政権が選択するかになる。 もちろん「消費税増税+財政出動拡大+法人税減税」という可能性もあるが、取りあえず現状を整理するために、(1)と(2)に分ける。なぜならば、(1)と(2)は「思想」が全く違うためだ。すなわち、「ケインズ派」対「新古典派」という話である。 (1)を主張している政治家は、まさに「デフレは総需要不足」派ということになる。とにかく、「今は」政府が財政出動でも何でもして、「需要」を創り、デフレギャップを埋めるしかない、という考え方だ。 それに対し、(2)を主張する政治家は「デフレは貨幣現象(貨幣の定義がよくわからないのだが)」であるため、デフレ対策は金融政策拡大で事足りる。それよりも、法人税を減税して、企業の競争力を高めるべき、という考え方になる。 もっとも、現在の日本が法人税を減税しても、法人企業の7割超には恩恵がなく、しかも(こちらの方が重要だが)、 「法人税を減税し、企業の純利益を増やしても、国内の設備投資や雇用拡大、賃上げにはつながらないのでは?」 という疑問(というか疑念)を禁じ得ないのだ。 何しろ、現実の日本国内の「余裕がある企業」は、内部留保の現預金をひたすら積み上げていっている。'97年以降、日本の一般企業は現預金額をおよそ50兆円も増やしている。デフレが継続している以上、法人税を引き下げ、企業の純利益を増やしたところで、国内の投資や賃上げには結びつかない可能性があるわけだ。 ところで、なぜ新古典派の政治家は「消費税増税+法人税減税」を主張するのか。 そもそも、新古典派経済学の理想的な税制は「法人税ゼロ、所得税ゼロ、税金は『人頭税』のみ」という組み合わせなのである。 人頭税とは「国民一人あたりの行政コストを均等に負担させる税」であり、行政の負担を国民に意識させ、小さな政府を実現することを可能とする税制だ。小さな政府を目指す新古典派にとっては、人頭税とはまことに「美しい税制」になるわけだ。 とはいえ、人頭税の導入は政治的に不可能に近いため、現実には「法人税ゼロ、所得税ゼロ、税金は消費税のみ」が落としどころとなる。 さすがに、国防や治安維持、消防などに最低限の税金は必要であるため、税金は取らなければならない。同時に、法人税や所得税をゼロにし、各人、各企業が自らの所得を「自由に」使うことができれば、経済は活性化し、国民経済が成長する。 税金は消費税で国民万遍なく徴収すべし、というアプローチなのである。 社会保障はどうなるかと言えば、「小さな政府」を目指す人達にとって「社会保障など不要」というのが基本コンセプトだ。 だが、現実には社会保障なしでは餓死する人が出かねないため「ベーシックインカム(負の所得税)」で対応すればいい、という話になる。 さらに、労働規制を緩和し、最低賃金制度を引き下げるか、撤廃。とにかく政府の規制は小さければ小さいほどいい。 自治体同士の競争を引き起こすためには、道州制だ。国境を越えた規制も、緩和もしくは撤廃。自由貿易だ、TPPだ、グローバルだ、という話なのである。 いろいろと「繋がっている」とは思われないだろうか。 というわけで、安倍政権の経済政策面の次なるマイルストーン(物事の進捗を管理するために途中で設ける節目)は、今年の12月となる。 すなわち、安倍政権が補正予算として財政出動を(不十分とはいえ)拡大するのか、あるいは「無条件の法人税減税」に踏み切るかである。 安倍政権は消費税増税を決定すると同時に、補正予算の規模と法人税減税の「検討」を発表した。 6兆円規模の補正予算の詳細と、9000億円規模の法人税減税を実施するか否かが、今年の12月に決定される。 安倍政権が「不十分な財政出動と、無条件の法人税減税」という道を選んだ場合、まさに「小さな政府」を目指すと宣言したに等しく、我が国のデフレは深刻化し、国民の所得縮小が「これまで通り」続くことになるだろう。三橋貴明(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。