起訴が取り消されたのは40代の男。女児に対してわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪で起訴されていた。検察庁は性犯罪事件などで特に保護が必要な場合、起訴状に被害者の実名を記載しない取り扱いを進めている。この事案でも、被害者側の意向で起訴状に児童の実名を記載せず、親の実名と続き柄を記載するにとどめていた。
ところが、被害者側が告訴したものの、今後の公判で児童の個人情報が被告に伝わることなどを懸念したため、地検は被告の刑事訴追を断念したという。地検の関係者によると、裁判を続けることが難しいと判断したため。
強制わいせつ罪は、被害者の告訴が必要な親告罪である。刑事訴訟法は検察の追及から身を守る被告の「防御権」を守るため、起訴状に事件の内容をできるだけ詳しく記載するよう求めている。
一方で、性犯罪やストーカー事件では、被告が被害者の個人情報を知ることで、二次被害につながる恐れがあることから、各地の地検は起訴状で被害者を匿名にするなど、被害者保護に向けた取り組みを進めている矢先だった。
(蔵元英二)