山口敏太郎
-
ミステリー 2017年09月02日 22時00分
踊る小人たち 〜山口敏太郎本人の実話怪談〜
筆者の祖母が亡くなってから、もう十五年以上の歳月が流れた。祖母は昔ながらの豊富な知恵と豪快な性格を併せ持つ女性であった。そんな祖母も最晩年は痴呆がひどくなった。あるときなど、古時計から小人が降りてくると言い出した。 「どないした ばあちゃん? 」 「毎回毎回、時計がなる度に小人がいっぱい降りてきて輪になって踊るんよ。たまらんわ」 祖母はヒステリックになりながら、筆者に訴えたことがあった。だが、筆者には小人の姿は見えない。 「ええ? 小人なんかおらんよ、ばあちゃん」 「そこにおるやん、そこに、ほら、そこに」 祖母は誰もいない居間を指差した。 「どこにおるの?」 「ほら、気味の悪い小人の輪っかが、見えるやろ」 彼女の目には、小人たちが輪になって踊っていたのであろうか。祖母のこの奇妙な行動を見たとき、筆者は複雑な気持ちになった。かつて、まったく妖怪や魔物を恐れなかった祖母。 その祖母が、小さな小人たちの”見えないダンス”におびえているのである。 「小人の踊りが怖い! 小人の踊りが怖い!」 祖母は絶叫した。 「ばあちゃん、大丈夫か」 筆者は衝撃の展開に色をなくした。異界から生まれ出た人間は、いつか魔物に擦り寄られ、異界に帰っていくのだろうか。祖母の脳裏では、間違いなく小人が輪になって踊っているのであろう。永遠に続く“見えないダンス”とは、いったい何なのだろうか。 ここで筆者は、ある質問をした。 「どこが怖いの? 小人が踊ってるだけやろ?」 祖母は、虚ろな瞳を輝かせている。 「小人が呼びかけるんよ」 「呼びかけるって、どういうふうに」 この質問に、祖母は語尾を震わせて答えた。 「この輪の中に入れ、輪の中に入れって、小人が話しかけるんよ」 私は驚きのあまり、しばし言葉を失った…。 気を取り直してこう聞いた。 「輪の中に入れとは、どういうことなの? ばあちゃん」 すると祖母は、ひと呼吸おいてこう言った。 「あの輪を抜けると、抜けると…」 「抜けるどうなるの?」 すると祖母は恐ろしく低い声でつぶやいた。 「あの世の世界なんよ」 この言葉を聞いて、筆者は固まった。 働きづめの祖母の心の隙間に、小人や魔物が棲みついたのだろうか。筆者は、丸くなって小人のダンスに震える祖母の姿を見て、悲しい気分になった。 祖母が死去したのは、それからちょうど一年後のことであった。やはり、祖母は小人の輪をくぐってしまったのだろうか。
-
ミステリー 2017年08月23日 16時00分
実話怪談『女が早死にする家』
この夏も筆者は多くの怪談本、妖怪本、幽霊本をかかえ大騒ぎである。そして、同時に思うのが、怪談・奇談というものは人の数だけ無数にあるという事である。つまり、人の人生と同じだけ奇妙な物語も存在するわけであり、人の生涯そのものが怪談という図式も成り立つ。この一年で聞いた最新版の千葉の怪談をお届けしたい。 これは船橋にお住まいのあるご老人から聞いた話である。船橋市内某所にある家では何故か、女が早死にするという。原因はよくわからない。事故であったり、或いは病気であったり理由は様々である。兎に角、女性が死ぬのだ。この奇妙な因縁に、その老人はこのような因縁話を付け加えた。昭和初期の事、気のよい真面目な青年がいた。その青年は一生懸命、農業に精を出したのだけどいつまでたっても貧乏から抜け出せなかった。そんな青年にも、好きな女性がいた。青年はいつか女性を嫁に迎える為に懸命に働いた。純情な青年の態度は次第に村人の知るところとなり、青年と女性の仲は地域公認のようなものになっていった。 ある時、村はずれにある立ち飲み屋で青年がお酒を仲間と楽しく呑んでいた。そこに現れたのが村の嫌われ者のじいさまであった。じいさまは既に酒に酔っており、青年と仲間たちにからみはじめた。おとなしい青年は最初は我慢していたものの、あまりにしつこくじいさまがからむので、ついに怒りを爆発させ、いきなり飲み屋を飛び出した。一同が驚いていると若者は、農機具を手に戻ってくるとじいさまを追いかけた。じいさまは逃げ回ったものの、ついに若者に農機具でつき殺されてしまった。そのじいさまが絶命した場所が、女性の早死する家の前だという。つまり、女性がらみのトラブルで殺されたじいさまの怨念が女性に祟っているらしい。無関係にお宅に祟るのがどうにも解せないが、理不尽な怨霊、言いがかりの怨念も中にはあるかもしれない。監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー 2017年08月16日 12時35分
原爆投下はUFOによって監視されていた?
第二次世界大戦末期の1945年8月6日午前8時15分、アメリカ軍は広島に原爆を投下する。世界最初の核兵器として使用された原爆だが、これがUFOに監視されていたとする説がある。UFO研究家の竹本良氏が提唱している奇説である。 B-29長距離通常爆撃機、通称エノラ・ゲイが広島に原爆を落とすべく四国上空を飛行していたところ、レーダースコープに正体不明の輝点を発見。敵味方識別装置に応答しない事を確認したエノラ・ゲイは回避行動をとり、午前7時30分には高度二千メートル前後の低空飛行から八千七百メートルまで高度を上げた、という記録がある。 竹本説によればこの正体不明の輝点は数千メートルもある巨大なUFOであり、まるで通せんぼうをするかのように浮遊しているUFOを避けるためには六千七百メートルも高度を上げねばならなかったというのだ。状況証拠に過ぎないかも知れないが、このように大幅に高度を上げる理由はなんだったのだろうか。 さらに大戦後の1969年から78年には国際航空輸送協会や国際民間航空機関に所属するパイロットから多くの巨大UFO目撃談が報告されており、これは紛争の続く中東およびアフリカ諸国に向け、航空機や船舶で輸送されていく大量の兵器をUFOが監視していた証拠である、とする人々もいる。監修:山口敏太郎事務所
-
-
ミステリー 2017年08月12日 17時00分
謎の通信傍受システム エシュロン
読者の皆さんは、エシュロン(ECHELON)という言葉を聞いたことがないだろうか。エシュロン(ECHELON)とは、米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドという英語圏の五か国によって運営されている情報収集を主な目的とした”軍事システム”であると言われている。 この軍事システムは、携帯電話・メール・無線・FAXといった通信情報をすべて盗聴し、音声を自動的にテキスト化して、データベースに蓄積する。その蓄積データから、「アルカイダ」「テロ」「革命」「暗殺」といった特定のキーワードを検索し、その不穏な言葉の情報発信者が誰なのか特定できる仕組みを持っていると言われている。 米国内では国家安全保障局(NSA)主体で運営されていると言われ、エシュロンという軍事システムと同じく、国家安全保障局(NSA)の存在そのものが長らく“都市伝説=架空”なのではないかと語られてきた。 この手の噂はインターネットではよく囁かれており、Googleはスパイ企業であり米国政府と連携をとりながら動いており、中国市場から追放されたのはそのスパイ容疑であるとか。FacebookはCIAが個人の監視システムとして考案したもので、各国国民の友人関係や仕事の内容を把握するために”諜報システム”として作られたとか。iPhoneで使用できる一部のアプリの中には、位置情報や使用履歴が本人の知らない場所に転送されているとか。情報サービスに関する都市伝説は枚挙にいとまがない。 筆者も単なる都市伝説ではないかという見解であったが。最近その逆のケース、都市伝説ではなく事実であったということが発生している。数百万人が使う人気アプリによって収集された利用者の位置情報が、米国に本社を構える某広告会社に転送され、広告ビジネスに利用されているケースが判明したり、エシュロン(ECHELON)の脅威が、昨今欧州議会でも話題にされるようになり、架空の団体のはずだった国家安全保障局(NSA)のOBも仕事の内容をカミングアウトし始め、ようやくその存在が認知されるようになってきた。 また、日本でも三沢基地にエシュロン(ECHELON)関連の施設があると噂されてきたが、筆者も含め、あくまで都市伝説に過ぎないと思う者が大部分であった。だがフジテレビの番組内で、青森県の三沢基地にエシュロンの関連施設があると具体的に写真が提示され、池上彰の口から説明がなされたのだ。他にもイギリスではメンウィズ・ヒル、ドイツではバート・アイブリング、アメリカではワシントン州ヤキマにエシュロン(ECHELON)が設置されていると言われている。監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー 2017年08月08日 19時00分
川原で自殺した亡霊“くびれ鬼”の誘い 〜栃木県の伝説より〜
昔から、自殺者の霊はなかなか成仏できずその場で次なる自殺者を呼ぶとされている。 例えば「七人ミサキ」等の霊団が妖怪になったケースでは、犠牲者を一人得る度に一人が成仏していく性質になっているので、いつまでたっても犠牲者が減らないという仕組みになっている。 栃木県には、自殺した人の魂に関係するこのような伝説が残っている。 江戸時代後期の儒学者である蒲生君平はある日、綾瀬川のほとりを散歩していた。夕暮れ時を過ぎ、当たりが暗くなって人通りが少なくなってきた頃のこと。 不意に腹が痛くなり、便意を催した蒲生君平は川原に出てしゃがみこんだ。すると、尻に何かが触っている。一体何かと手を伸ばして掴んでみると、丈夫な紐が手に触れた。さてどうしたものかと紐を眺めていると、女の声が聞こえてきた。 「その紐を返せ。さもなければ恐ろしい目に遭うぞ」 しゃがれ声で凄んでみせる声に、蒲生君平は(どうもこの世のものではないようだ)と思ったが、生来豪胆な性質であったので女の声を意にも介さずにおいた。 すると、女の霊が彼の前に現れてみるみるうちに鬼神のような形相へと変わっていった。それでも君平は怯まず紐を返さずにいると、女の霊はその姿を奇怪な妖怪へと変えた。 これはこの女の霊が脅そうとしているのだろう、と思った君平がなおも涼しい顔でいると、妖怪はやがて元の女性の姿に戻ってしまった。そして、大人しく彼に自らの境遇を語り始めたのである。 「私はこの川原で自殺した亡霊です。成仏出来ないまま彷徨いながら、土地神にこき使われておりました。そこで、代わりの人間をこの紐で自害させ、代わりに差し出そうとしておりました」 つまり、この自殺した女の霊は、生者を死に引き込まない限り自分が成仏できないため、犠牲となる人物を探していたのである。 今も自殺の名所とされる場所は存在しているが、もしかするとそこにはこの女性の霊のように、成仏するために犠牲者を探している霊がいて死の淵に引きこもうとしているのかもしれない。 監修:山口敏太郎事務所
-
-
ミステリー 2017年08月05日 18時00分
1954年にアイゼンハワー大統領がエイリアンと会見していた!?
エイリアンが地球上で行っているとされるUFOによる地球人の誘拐、いわゆる「アブダクション」は米国と宇宙人による取り決めの元に行われているという情報がある。 1954年の2月下旬に、休暇でカリフォルニアに行ったアイゼンハワー大統領は、ある晩、突然に記者達の前から姿を消し、ミューロック陸軍飛行場(現在のエドワーズ空軍基地)にて宇宙人との公式会見を行い“1954 Greada Treaty”(グリーダ条約)なる条約を結んだというものだ。 このグリーダ条約の内容は、「①この協定は秘密にすること。②エイリアンは、合衆国政府に対して、『技術供与』もしくは『技術開発の促進』を行う。③エイリアンは、地球上の他国とは、協定を結ばない。④その見返りとして、合衆国政府は、極く限られた人数に対して、期間を区切り、アブダクションを実施する権利を有する」とされている。 つまり、米国政府の承認の元にアブダクションは行われているということなのだ。この条約は日本ではあまり知られていなかったのだが、近年ではあの「幸福実現党」の立候補者数名により公開されているようだ。情報としてはちょっと危うい内容かもしれない。 ただ、UFOに接触、あるいは情報を公開しようとした大統領は歴代でも何人か存在し、第35代大統領のジョン・F・ケネディはCIAが隠密しているUFO情報を公開しようとしたと言われている。 さらに第39代大統領ジミー・カーターは1969年、ジョージア州アリーでUFOを目撃したとされており、大統領選出馬の際には「国家が隠密しているUFO情報をすべて公開する」と公約していたとされるが、実際にはその約束が果たされることは無かった。 2009年11月27日にはバラク・オバマ大統領がUFOや宇宙人の存在を公式に発表するという噂がインターネットを中心に流されたことがある。これも実際には無かったのだが、このようにアメリカ大統領に関連するUFOの話題は数多く存在するようだ。監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー 2017年08月01日 18時00分
園瀬川の河童?を見た話 山口敏太郎の実体験
筆者が子供の頃には、徳島でもボーイスカウト活動が盛んであった。かくいう筆者も、ボーイスカウト徳島第一団に加入し、日々野山を駆け巡っていた。 「ようし、次はどこで野営だ」 当時、徳島第一団はキャンプを得意とする団であり、年中あちこちでテントを張っていた様々なキャンプ大会もあった。徳島中の団が集まる大規模なキャンプ大会。徳島第一団だけで行う隊キャンプ。自分の所属する班が徳島第一団の敷地内で行う班キャンプ。 「この夏もキャンプやるぞぅ」 キャンプ好きだった筆者は喜んで、このキャンプに参加した。 ある年の夏、中学二年だった筆者は、隊キャンプとして園瀬川の河原で野営した。 「なんか、怖いな、俺らだけ離れとるなぁ」 「ほんまやな、本部からも遠いし」 河原に隊の全員がテントを張るのだが、どういうわけだが自分たちの班だけが一番端に野営することになった。隊長や大学生、高校生の先輩たちがいる本部は程遠い。 「こんなんで、泥棒の襲撃でも受けたら、やばいんとちゃうか」 「ほんまやなぁ」 竈をつくりながら後輩たちが、ふと弱気な発言をした。既に班のリーダーであった筆者は内心、不安に思ったものの、後輩たちの手前、強気に振舞った。 「なにゆうとるんじゃ、わいがおるからいけるわぁ」 と言ったものの、実は内心不気味な気配を感じていた。 「わかりました」 後輩たちは、筆者の言葉に勇気付けられ、夕食のカレーづくりも終わり、キャンプファイヤー後、無事就寝となった。だが、やはり少年たちの予感は当たった。界の住民による事件は起こったのだ。 就寝時間の後も、しばらく昼間の失敗などを冗談を交え、話し合っていた。キャンプの楽しみのひとつである。すると、後輩の一人が声をあげた 「……ん、あれ、なんか聞こえる」 「ほんまやな、足音かいな」 突如、奇妙な音が聞こえたのだ。テントの近くで音がする。 「確かに、足音が聞こえてくるわ」 後輩たちが騒ぎ始めた。いかん、このままではパニックになってしまう。 「まず、落ち着け、冷静に状況を見なあかん、それがボーイスカウトちゃうか」 筆者も、努めて冷静に、語りかけた。この時、私の耳にも確かに奇妙な足音が聞こえていた。 「先輩、どないしょう」 後輩たちはまだ震えている。 「まぁ、わいにまかしとけ」 四名の後輩を落ち着かせると、筆者は言った。 「この足音、ひょっとしたら、噂のキャンプ場荒らしかもしれん、だとしたら、いきなり出たら危ないぞ」 そう言うと、私はこの足音に注意を払ってみた。なるほど、我々五名が寝ているテントの周りを、ぐるぐる廻っている。まるで、何かを観察しているかのようであった。しかも、足音はテントの周りの雑草を踏みしめる音である。 「なるほど、泥棒はわいらの出方を見とるな、おいテントまくって泥棒の足の動きを見てみい」 そう後輩に指示を飛ばすと後輩はおそるおそるテントの裾をまくった。 「先輩、めくりました」 外部の雑草が見えた。全員で前かがみになって外を覗いた。 「えええっ」 我々はその場で全員が硬直化した。なんと、足音と同時に雑草が倒れていくのだが、足が見えないのだ。 「足が、みっ、見えん」 見えない足によって踏み潰される草。依然として、足音は聞こえ続け、テントの周りを廻っている。 「なんやろ、あれ」 筆者は思わずつぶやいた。この言葉に、全員が沈黙した。すると、大学生の先輩たちが見回りに来た。夜間の定期パトロールである。がやがやと、話ながら近づいてくる。 「助かった」 その瞬間,足音がぴたりと止まった。我々も一斉にテントの外に出ると先輩たちに駆け寄った。 「うわ〜、霊が出ました」 「出たけんど、泥棒でなくて、幽霊だったわ」 我々は口々に大学生の先輩に説明したが、笑われてしまった。 だが、あれから二十六年が経った今でも、あのシーンは目に焼き付いている。透明な足が、雑草を踏み倒していく瞬間。 あれは、真夏の夢であったのか。 それとも、少年の日の幻想だったのか。監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー 2017年07月29日 20時00分
実話怪談「首無し馬」 山口敏太郎の実体験
私は城南高校卒業後、大学進学の為、県外に出た。時間の歩みは早い。あっという間に20年という歳月が流れてしまった。 …あの頃から、徳島も随分と変わった。一人感慨にふけってしまうのも年令のせいだろうか。(随分と、おじさんになってしまった)そう想いながら、私は密かに…ほくそ笑む。 それにしても、この20年間で帰郷したのは、5回程である。いずれも、結婚式・葬式など冠婚葬祭がらみであり、骨休みなど一度もなかった(笑)。私はいつまで、馬車馬のように働き続けるのであろうか。ハードな執筆活動の中、今でもふと徳島の濃い空間を思い出す事がある。 昭和51.52年の頃であろうか。そう、あれは小学校高学年の時だった。当時、八万小学校に通っていた私は奇妙な噂を耳にした。「ソノセ川沿いの一本松に、首無し馬が出るんぞ」 噂の発信元である友人某は額に汗をため力説した。 「これはな〜ほんまの話やけんな」 「うそ〜そんな妙な話が、あるかいな」 私は鼻で笑った。 当時既に妖怪博士と異名をとっていた私だったが、この昭和の時代に妖怪話などありえないと思っていたのだ。 それから一週間ぐらい経った時の事。私と友人某は一本松に張り込みを開始した。だが、何も出なかった。 「やっぱ馬の妖怪なんかおらん」 「ほんまやな〜迷信かいな」 その日はすっかり科学小僧になり、二人は帰宅した。 更に2年ぐらいたった夏。私はボーイスカウト徳島第一団の団員としてキャンプに参加した。野営地は、ソノセの河原。あの一本松が見える場所である。 (なんか、いややな〜) と私は思ったが、テントの設営は粛々と進行した。しばらくすると、排水路を掘っていた後輩が大声をあげた。 「うわー、なんやろ、これ」 後輩の手には馬の土偶が握られている。得もしれぬ恐怖が私を襲った。 (馬って……一本松に出てた馬の妖怪ってこいつかもな) 私はしばらく土偶を見つめていた。土偶が死者を供養する為のものと知ったのはちょうどその頃である。 偶然のおりなす恐怖、アンバランスな不安。妖怪とはこういうものだ。私はそう教わったような気がする。監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー 2017年07月25日 18時00分
「深夜に馬乗りになって首を絞めてくる霊」 山口敏太郎 友人の実体験
これは筆者の友人であるTの体験である。永らく幽霊やオカルトなど信じていない質であったTだが、一度浮遊する幽霊を目撃して以降は信じるようになった。 “百聞は一見にしかず”とはこの事である。特に幽霊とUFOは見ないとお話しにならない。この事件からしばらくして、Tは再び怪事件に悩まされる事になる。 ある夜、私の自宅に電話がかかってきた。Tである。 「おい、うちに今から来てくれないか」Tは酷く慌てている。 「いったいどうしたんだ」私は宥めるように訊ねた。 「出た、出たんだ」 「出たって、何が……?」 「何がって ゆっ幽霊、いやっ、いや生霊だ」 「……」 ごくりと唾を飲み込むTの様子に異常を察知した私は、翌朝Tの住宅に向かった。 奴の下宿は都内、私の下宿は横浜にあり、時間にして2時間程電車を乗り継いでいく。 「おーい、いるか」 「おおっ来てくれたか、幽霊探偵さん」 Tが笑えない冗談を言う。 無理に作り笑いをするTの目の下には、隈ができていた。Tの話によるとこうである。 昨夜、遅く帰ってきたTは、そのまま布団にうつ伏せになり眠ってしまった。まあこれは、毎晩繰り返される事らしく、独身男には、よくあるワンシーンである。だがここからが違った。 Tが深い睡眠に落ちると、必ず誰かが馬乗りになり首を絞めてくるのだ。最初は窓から友人が入って来て、首を絞めているのかと思ったそうだ。だが、力の入れ方が違うというのだ。力の限り、全身を使って、思い切り絞める。…つまり、殺意があるのだ。 「誰だ!! いい加減にしろ」 Tが跳ね起きても誰もいない。そんな事が朝まで何度も続いたという。 「そいつの顔は見えなかったのか」という私の声にTはこう答えた。 「うつ伏せに俺は寝てるんだけど、そいつの背中が何故か見えるんだよ。イメージが浮かぶというのかな。犯人の姿が後ろ姿で浮かび上がってきたんだ」 「誰だ、そいつは」 「同じサークルの女の子さ、俺の事を好きらしいのさ」 片思いに胸をこがす女性の生霊は、時として死霊よりたちが悪い。監修:山口敏太郎事務所
-
-
ミステリー 2017年07月22日 19時30分
【実話怪談】トンネルに横たわったまま浮く亡霊
主人公は徳島出身のT氏である。 私とTは高校時代の同級生で、大学進学後も親交のあった男である。高校でもトップクラスの成績を収めるインテリタイプの男であったが、オカルト趣味の私と何故か気が合った。 「何かにこだわる姿勢は大事やからな」 Tは私のオカルト研究に理解を示した数少ない友人の一人であったのだ。後にTと私は共に関東の大学に進学し、関東周辺の魔界探索に明け暮れる事になるのだが、同時期、Tは不思議な体験に、二回遭遇する事になる。 2004年の7月、私は都内でTと軽く酒を呑んだ。東京を離れ、徳島にUターン就職した奴と会うのは4年振りであった。いまだに独身貴族を気取るTだが、お互い既に30代後半になっていた。 「お互い歳とったな〜」 「何言よんぞ、わいはまだ若いぞ〜」 Tは屈託なく笑った。ノリの軽さは学生時代のままである。 「ほんなんやったら、早く年貢を納めて結婚せいだ〜」 「う〜ん、見合いの話はあるんやけどな〜」 Tはうまく話をはぐらかした。どうやら結婚という束縛は嫌いのようだ。 最も私も今になって結婚に伴う責任の重荷はよくわかる。 だから友人にはおいそれとは勧められない。 そんなこんなで酒を呑み、馬鹿な話をしながらも、私はTが学生時代に経験した怪異談が気になって仕方なかった。 「おい、あの話をもう一度聞かせてくれへんか」 私は単刀直入に切り出した。 「なんな〜酒の席でも怪談の取材かいな」 Tは、私が持参した最新の拙著を眺めながら、にやりと笑った。 「あの、トンネルの事件から頼むわ〜」 「あれか、気色悪い経験だったな〜」 Tの箸が止まった。思い出すように遠くを見ている。 当時、大学2年だったTは、楽しみにしていたサークルの合宿を、独り早めに切り上げて東京にある自分のアパートに車で向かっていた。 本当は最終日までいたかったのだが、どうしてもはずせない用事ができたのだ。 「くそ〜あせるな、ほんまに」 Tはややご機嫌斜めであった。そして、運転もいつもより若干乱暴であった。 スピードがいつもより余計に出ていたかもしれない。 Tご自慢の愛車のタイヤが、微かに悲鳴をあげている。 「ああっ〜ねむ〜」 気が緩むと瞼が閉じてしまう。 睡魔と戦いながらTは運転を続けた。 「あの娘、どうしてるかな〜」 当時Tには気になる女の子がいたのだ。合宿はまたとないチャンスである。 それが、自分だけ戦線離脱とは… ある部分、納得いかない部分もあったのかもしれない。「次は絶対最終日までおるからな〜」 Tは、怒るようにつぶやいた。 兎に角、いつもは仲間と一緒に移動する車である。 深夜の単独ドライブ程つまらないものはない。 たった独りで無機質な夜のアスファルトを睨むだけだから、 心の中に退屈な気分が持ち上がって来ることを、押さえきれない。 「ああ〜誰でもいいから、隣りにおればな〜」 Tは、眠い目をこすりながら、ハンドルを握り続けた。どのくらい走ったであろうか。 Tの車は神奈川県の某道路に入っていた。この道路はトンネルが多いので有名である。 「…なんや、随分トンネル多いな」ブツブツ言いながら、Tは慎重に運転を続けた。(いかんいかん、慎重に運転しないと…) Tのハンドルさばきが軌道修正された。 とかく夜間のトンネルは事故を起こしやすい。 「…んっ あれは」 Tは自分が視覚で捕らえたものが何か、最初は理解できなかった。 「まさか…でもそうだろうな …たぶん」 Tはその物体を注視し続けた。 ちょうど車の進行方向にあるトンネルの前に浮いている。 そう浮いているのだ。 「………」 Tの見たものは、横たわった人間であった。しかも透明で向こう側が透けて見える。透明で空中に浮いているのだから、間違いなく幽霊だろう。(でもなぜ横たわっているのだ?)Tはそれが疑問であった。幽霊なら普通立った姿で出てくる。それがなぜ横たわっているのだ。 「ひょっとしたら」Tの脳裏に結論めいたものが浮かんだ。 あれは遺体なのだ。土葬された遺体なのだ。だから、幽霊は土葬されたままの状態で出て来るんだ。 Tはハンドルを持つ手に、じんわりと汗を感じた。文:山口敏太郎 監修:山口敏太郎事務所
-
ミステリー
海を彷徨う亡者
2011年08月10日 15時30分
-
ミステリー
霊との同居
2011年08月09日 15時30分
-
ミステリー
深山の主、ツチノコの親分 現在も目撃される妖怪『野槌』
2011年08月05日 15時30分
-
ミステリー
北陸ミステリーツアー・それは風に乗って現れる 妖怪『窮奇(かまいたち)』
2011年08月04日 15時30分
-
社会
自傷行為をする中高生10人に1人
2011年08月04日 15時30分
-
ミステリー
心霊スポットを創造する人間の愚行
2011年08月03日 15時30分
-
ミステリー
“何かが空からやって来た” フロリダにUFO墜落騒動!
2011年08月02日 16時00分
-
トレンド
怖いけれどもおもしろい、妖怪落語&妖怪ライブ
2011年08月01日 11時45分
-
ミステリー
モスクワ上空にラミエル襲来!? クレムリンに浮かぶピラミッド型UFO
2011年07月30日 17時59分
-
トレンド
北陸ミステリーツアー・知られざるパワースポット「諦応寺の銀杏観音」
2011年07月29日 17時59分
-
芸能ニュース
人気の読者モデル、きゃりーぱみゅぱみゅって何者?
2011年07月29日 15時30分
-
トレンド
日本人の性風俗を学ぼう! 『珍宝館』
2011年07月28日 15時30分
-
トレンド
SF時代劇アクション映画! 「エイリアンVSニンジャ」が劇場公開!
2011年07月27日 11時45分
-
ミステリー
地球内部にある『もう一つの地球』 再燃する『地球空洞説』
2011年07月23日 17時59分
-
トレンド
愛とSEXの神秘! をめぐる旅『命と性ミュージアム』
2011年07月22日 15時30分
-
トレンド
ドラえもんの道具が現実に!? 「ドラえもんの科学みらい展」大阪で始まる
2011年07月21日 11時45分
-
トレンド
江戸・明治の離婚率
2011年07月20日 11時45分
-
社会
タレント霊能力者・超能力者の犯罪史
2011年07月18日 15時56分
-
芸能ニュース
レディー・ガガが「徹子の部屋」に出演! 日米モンスター対決!
2011年07月12日 15時30分