米シカゴにあるバチェラーズ・グローブは、敷地内に森や沼を有する広大な墓地である。小さな埋葬用区画にすぎなかったこの地に埋葬者が増え続け、正式に墓地として整備されたのは1864年である。
現在閉鎖されているこの墓地では、数々の怪奇現象が報告されている。初めはオーブや騒霊といったものだったが、やがて修道士やホワイトレディと呼ばれる、我が子を亡くした悲しみから自殺した、女性の霊が目撃されるようになった。人以外にも、黒い犬や自動車が突然出現することもあるという。
しかし、墓地が閉鎖された理由は別にあった。夜間、裏門の方は人が近寄らない為、男女の密会場所になり、墓に悪戯されたり埋葬品を盗まれたりと、無残に荒らされたからだ。状況は閉鎖によって更に悪化した。いよいよ人が来ないとなると、ギャングたちが利用するようになり、時に処刑が行われると、死体を置き去りにされることもあった。また、悪魔崇拝団体が儀式を行い、生贄動物の死体が散乱していることもあった。
怪奇現象が話題にされだしたのは、こういった人間による荒らしが甚大になった後だ。すると今度は、肝試しに来る者が後を絶たず、荒らしは治まること等望むべくもなかった。そんな彼らの中には、原因不明の高熱で寝込んだり、仲の良かった者たちが険悪になり、争いから死傷者まで出た。
墓地で静かに眠っていた者たちの逆鱗に触れたとしても、同情はしかねる。
(七海かりん/山口敏太郎事務所)