社会
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社会 2013年07月13日 17時59分
甲子園決勝で田中マー君と投げ合った元球児が、またもひったくりで逮捕される
大阪府警捜査3課は7月10日、路上で女性からバッグをひったくったとして、窃盗の疑いで、無職・本田拓人容疑者(23=京都府八幡市男山金振)を逮捕したと発表した。 逮捕容疑は、6月15日正午過ぎ、大阪府大東市北条の市道で、自転車で帰宅中の無職女性(67)の後方からバイクで近づき、前かごから現金約2万5000円が入ったかばんを、ひったくったとしている。 本田容疑者は「生活費がなかった」と容疑を認めており、「他にも数件やった」と話していることから、裏付けを進める。 防犯カメラの映像などから本田容疑者が浮上し、府警は今月1日、窃盗容疑で指名手配。9日夜、静岡県内にいた本田容疑者を同県警裾野署員が見つけ、逮捕した。 11年5月にも、本田容疑者はひったくりを繰り返したとして、大阪府警枚方署に逮捕されており、これが2度目の逮捕。 本田容疑者は京都外大西高1年だった05年夏の甲子園に出場し、決勝戦まで進出。決勝では、駒大苫小牧の田中将大投手(現・楽天)と投げ合って、3-5で惜しくも敗れ、準優勝に終わっているが、プロのスカウトも注目する投手だった。10年ドラフト1位で中日に入団した大野雄大投手は、同校での先輩にあたる。 その後、故障もあって、プロには進めず、近畿大学に進学したが退学。09年には関西独立リーグの明石レッドソルジャーズに入団。しかし、同チームが経営難で休部となり、アルバイト生活を続けていたが、カネに困って、前回の犯行に至っていた。さすがに、2度目の逮捕となると、もう言い訳もできない。(蔵元英二)
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社会 2013年07月13日 15時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 7月危機は本当にくるのか
6月の日銀短観で景況感が大幅に改善するなど、日本経済は順調にデフレ脱却への道を歩んでいる。にもかかわらず、巷では7月危機説が囁かれている。ただ、私はそんなことにはならないと考えている。 日本経済が7月に失速する根拠とされたのが、米国の量的金融緩和縮小と中国のバブル崩壊だ。 米連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、6月19日の会見で、毎月850億ドルの証券を購入している量的緩和策を縮小する方針を明らかにした。米国経済が順調に回復する中で、年内に証券購入ペースを縮小し始め、来年半ばには購入を終了させるという出口戦略を明らかにしたのだ。 世界中に大量の資金を供給してきたアメリカの量的金融緩和が終われば、世界中で株価が大暴落し、世界経済が混乱に陥るという見方もあった。しかし、結局株価が暴落することはなかった。米国の量的金融緩和縮小は、景気回復に伴う金融政策の正常化だと理解されたのだ。危機の一つは去ったとみてよい。また、日本の量的金融緩和は今後2年間継続されるから、ドルに比べ円の供給が相対的に増え円安をもたらすので、日本の景気にとってはむしろプラスになるとみてよい。 一方、中国のシャドーバンキングのほうはどうか。シャドーバンキングとは、銀行融資以外でノンバンクや信託が作り出す資金の流れだ。中国では、国営の大企業以外は銀行融資をなかなか受けられない。だから地方政府が大規模開発をする場合には、ノンバンクなどを通じて高金利の資金を調達する。資金の出し手は個人だが、低利の資金を銀行から借りられる大企業も、銀行から融資を受けた資金をこうした高金利に回していると言われている。そうした資金が地方の不動産投資に流れ、地価の高騰を招いているというのだ。 日本でもバブル経済の時代に企業が「財テク」と呼ばれる資金運用で本業を上回る利益を獲得するという事態が起き、それがバブルを拡大した。だが、日銀の金融の引き締めなどによるバブル潰しで、日本経済は奈落の底に沈んでいったのだ。 同じことが中国で起きるのではないかと懸念された。特に中国の銀行間金融市場で、金融当局が資金供給を絞ったため、6月20日の短期金利が11.6%まで急上昇したことが不安を高めた。中国政府がバブルつぶしに動いたと理解され、日本のバブル崩壊が思い起こされたからだ。 しかし、日本のバブル崩壊が深刻になったのは、日銀の金融政策が失敗したからだ。'89年5月以降、日銀はバブル封じのため1年あまりで3.5%も公定歩合を引き上げた。また'90年3月の不動産関連融資総量規制の導入によってバブルは崩壊した。不況が訪れる中、日銀も'91年7月には公定歩合を引き下げ金融緩和に転じたとされている。しかし、日銀はその後も'92年10月まで資金供給の伸びをマイナスにするという強烈な引き締めを続けており、これがバブル崩壊の影響を深刻化させたのだ。 今回、中国政府は銀行間金利の急騰を放置せず、すぐに資金供給を増やしたため、金利はすぐにピーク時の半分以下に下がった。中国政府は10年以上前から日本のバブル崩壊を徹底研究している。だから、日本の悲劇は繰り返さない。当然7月危機も来ないのだ。
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社会 2013年07月12日 15時00分
参院選自民大勝ムードに群がる 有力支持団体の“スケベ根性”
参院選では自公圧勝ムードが高まりつつあるが、その裏で密かに注目されている事象がある。それが、“機を見るに敏”な業界団体のスケベ根性だ。 「自民党は'09年に野党に転落し、多くの業界団体が民主党支持に回った。ところが、アベノミクス効果で自民大勝が高まると、業界団体が雪崩をうって自民支持に鞍替えし始めたのです」(政治部記者) その筆頭が、『日本歯科医師連盟』(会員数約6万5000人)だ。 「日歯連は、毎年20億円前後を自民に献金していた団体だが、政権交代後は民主党を支援していたのです。だが、今回の参院選では自民党比例の石井みどりを支持。診療報酬のアップを狙い、擦り寄りだしたと評判なのです」(自民党議員) また、『日本医師会』(会員数約16万5000人)もしかりだ。同団体は政権交代後に民主党支持に転換したものの、'10年の参院選では民主、自民、みんなの党を支援するというドタバタぶり。これが裏目に出て推薦候補全員が落選したが、今回の参院選では自民党比例区に副会長の羽生田俊氏を擁立。さらに、東京選挙区でも同党の武見敬三氏を推薦している。 前出の政治部記者が言う。 「他にも、今回は郵政選挙で自民党と袂を分かった『全国郵便局長会』(会員数約2万人)が回帰。組織内候補を自民党から擁立している。ただ、こうした動きがあるのは、選挙後にTPP問題が横たわっているから。郵便局長会は特定郵便局の廃止を求められないかと危惧しており、日本医師会は米国の健康保険制度への介入に怯えている。要は既得権保持のために、自民に擦り寄っただけ」 ただし、安倍総理はこの手の組織票を全くアテにしていないともいわれている。 「100万票といわれた医師会の票田は今では20万票程度で、日歯連も10万票がいいところ。アベノミクスに沸く安倍総理はもともと浮動票狙いで、こうした論功を全く考えていないとみられているのです」(前出・自民党議員) 駆け込み造反組には、辛い現実が待っている?
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社会 2013年07月12日 15時00分
超党派の大物がプロレス!?
6月30日、亀井静香元金融相(みどりの風)の呼びかけで、村山富市元首相、野中広務元官房長官、矢野絢也元公明党委員長、仙谷由人元官房長官など超党派の元国会議員と現職10名が都内のホテルで「緊急円卓会議」を開いた。 ほかにも村上正邦元労相や“小沢一郎の知恵袋”とされる平野貞夫元参議院議員などが出席。また、この日は欠席だったが、賛同者として久間章生元防衛相、古賀誠元運輸相、渡部恒三元通産相、武村正義元新党さきがけ代表、綿貫民輔元国民新党代表らが名を連ね、錚々たる顔ぶれが揃った。 これほどのビッグネームが大同団結すれば、「今の自民にも対抗できるんじゃないか?」と思わせたが、スタートから波乱含み。 「飛び入りで石原慎太郎・維新の会共同代表が会場入りした途端、尖閣問題などで対立している野中さんが『聞いてないぞ!』と怒り出したんです」(取材したジャーナリスト) 会議終了後の記者会見でも、「主義主張はそれぞれ違いますけれども、現在の日本が危機的状況にあるという認識は一致している」と説明する亀井氏に、「具体的にはどのような危機か?」と質問した記者が、「自分で考えなさい。こうなったのはメディアの責任も大きい」と叱られる一幕まであり、まるでプロレス。 そんな亀井氏も今年で77歳。一番の若手が仙谷氏の67歳で、あとは70代後半から80代の御仁ばかり。村山氏(89)と野中氏(87)に至っては大正生まれなのである。 しかも、今後のことは次回会合の日程を含めて「何も決まっていない」という。 『日本の危機に、過去の確執を捨てて立ち上がる老中たち』といえば聞こえはいいが、〈朝まで生ジジイ〉と書かれたネットの評価のほうが正しいのかも(笑)。
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社会 2013年07月12日 11時45分
長野の消防副士長が離婚届を偽造し、不倫相手との婚姻届を提出
長野県警伊那署は7月10日、離婚届を偽造し提出したとして、有印私文書偽造・同行使容疑などで、元伊那消防署の消防副士長・笠井昭紀容疑者(31=同県伊那市中央)を逮捕した。笠井容疑者は容疑を認めている。 逮捕容疑は、今年1月21日、妻に無断で離婚届を書いて偽造し、伊那市役所に提出。さらに笠井容疑者の戸籍がある長野市役所の戸籍データに誤った記録をさせたとしている。 交際していた不倫相手の女性と結婚するため、妻との離婚届を偽造して提出し、交際女性との婚姻届を出したため、1カ月間、重婚になっていたとして、長野・伊那消防組合は7月4日、笠井容疑者を同日付で懲戒免職処分にした。同組合は同日、笠井容疑者を重婚や有印私文書偽造などの容疑で伊那署に刑事告発していた。 同消防組合によると、笠井容疑者は06年に結婚。10年から別の既婚女性との交際が始まり、いったん別れたものの、11年に、相手の女性が離婚すると再び交際を始めた。 笠井容疑者は、妻が離婚に応じなかったため、今年1月21日、妻に無断で離婚届を伊那市役所に提出。数日後、離婚が妻の知るところとなり、離婚無効の調停を家裁伊那支部に申し立て、4月10日に離婚無効の審判が確定した。 ところが、笠井容疑者は調停期間中の同5日に、交際相手との婚姻届を同市役所に提出したため、交際相手との離婚が成立する5月10日までの1カ月間、笠井容疑者には2人の妻が存在する重婚状態になっていた。 笠井容疑者は「とんでもないことをした。公務員として、あるまじき行為だった」と話しているという。 同消防組合消防本部の伊藤清消防長は「市民の信頼を著しく損ない、心からお詫び申し上げたい」と陳謝した。同消防組合は同日付で、消防長と同消防署長を厳重注意とした。 笠井容疑者と元の妻は現在、離婚調停中という。(蔵元英二)
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社会 2013年07月11日 11時45分
追送検された大阪府警の巡査長が「30回くらい痴漢した」
京都府警は7月9日、電車内で女子中学生に痴漢をしたとして、府迷惑行為防止条例違反の疑いで、大阪府警茨木署地域課の北口俊成巡査長(38)を追送検した。 大阪府警は9日、停職1カ月の懲戒処分にし、北口巡査長は同日、依願退職した。 追送検容疑は、6月7日午前7時すぎ、近鉄京都線・興戸〜大久保間の普通電車内で、隣に座った女子中学生の太ももに手の甲を押し当てるようにして触ったとしている。女子中学生が、北口巡査長の顔を携帯電話のカメラで撮影し、京都府警鉄道警察隊に写真を提供したという。北口巡査長は「手の甲なら偶然当たったように装えると思った」と容疑を認めている。 北口巡査長は6月13日、近鉄京都線・丹波橋〜竹田間を走行中の電車内で、京都府内の女性会社員(26)の左太ももを触った疑いで現行犯逮捕された。その際、京都府警の捜査員が、女子中学生から提供された写真をもとに、同日朝から警戒していた。その後、北口巡査長は釈放され、京都府警が任意で捜査していた。 大阪府警監察室によると、北口巡査長は昨年10月頃から月3、4回のペースで、通勤電車内で痴漢をするようになった。「電車が揺れたときに偶然、女性の尻に手が当たったことがきっかけだった。柔らかい感触が忘れられなかった」と話しているという。 北口巡査長は「昨年10月頃から、30回ぐらい痴漢をした」と供述しており、余罪がゾロゾロあるようだ。 偶然、当たった感触が忘れられなかったという言い分は分からぬではないが、さすがに現職警察官が30回も痴漢行為を繰り返していたとは、許されるものではない。(蔵元英二)
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社会 2013年07月11日 11時00分
値下げが待ち受ける『吉野家』vs『松屋』 真夏の高値合戦の限界
吉野家が7月4日から新商品『牛カルビ丼』を全国発売した。並盛480円で、季節商品ではない“定番”の丼では最も高い。この日、ライバルの松屋も同社の丼物では最高値の『唐揚げ丼』(並盛500円)の発売に踏み切っており、これまで「体力の消耗戦」と揶揄されてきた値下げ競争に決別した格好だ。 唐突にも映る“逆張り”の裏に何があったのか。 「吉野家は4月に牛丼の並を280円に値下げした結果、来客数が3割以上もアップして売上高が2カ月連続で2桁増となった反面、客単価が大きくダウンしました。そこで付加価値を高めた商品を投入することで、客単価のアップを狙ったのです」(食品アナリスト) 先行して牛丼並盛を280円にしているすき家、松屋の両社は既存店売上高の前年割れが止まらず、すき家は5月までで21カ月連続、松屋も14カ月続いている。4〜5月に限れば、両社とも吉野家に大量の顧客を奪われたことになる。 当然、ライバルは対抗策を迫られることになるが、予想外に進んだ円安の逆風に加え、コメ価格の上昇も響く。原価率がいや応なく高止まりする中で利益を確保して成長を遂げるには“脱・低価格路線”にシフトするのが最も効果的というわけだ。 とはいえ、低価格に慣れきった顧客が、その戦略にやすやすと乗るかどうかは疑問。前出のアナリストが喝破する。 「国内の牛丼店は、今年中に5000店を超えるといわれている。限りなく飽和に近いことから、今後、東南アジアを中心に海外出店が加速するでしょう。とはいえ、3社とも国内が主戦場であることには変わりありませんし、お互い『客を奪われたら取り返す』という焦りが常にある。再び値引きの体力勝負を仕掛ける可能性は十分ありますね」 同じく低価格路線で苦しんでいたマクドナルドは『限定1000円バーガー』を発売するなど“高低”織り交ぜた戦略が功を奏し始めた。いっそ、牛丼屋も半端な高額商品ではなく『1000円牛丼』を引っさげて勝負してみては?
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社会 2013年07月11日 11時00分
日本にも「ブラックアウト」の脅威
隣国の原発大国・韓国がこの夏「ブラックアウト」(=大停電)に襲われるのではないかと囁かれている。偽造部品の使用など不祥事が相次ぎ、原発23基のうち9基が停止し、電力供給が過去最悪水準にあるのだ。 では、猛暑という見方もある今年の夏、日本は大丈夫なのか。 防災に詳しいジャーナリストの村上和巳氏が言う。 「福島第一原発の事故の際も何とかやりくりして乗り切りましたし、東電は計画停電をするなどの対策を講じ、突然ブラックアウトすることはないでしょう。心配なのは首都圏よりも大阪です。関西電力は、大飯原発3、4号機以外はストップしていますが、原子力規制委員会が示した新基準のもとで他の原発の再稼働が年内に認められるのは難しい。関西圏では過去にも電力需要が高まり、供給予備率が10%を割り込んだことが2度ほどある。それでも危機感が乏しく、再稼働で得られる電力をハナから充て込んでいるんです」 日本原電の敦賀原発も関西電力に供給していたが、老朽化に加え、活断層の問題で廃炉を求める声が高まっている。 さらに関東地区でもこんな心配がある。 「世界遺産登録で話題になっている富士山の噴火です。もしその時が来れば、火山灰が関東圏に2〜10センチ、都内には5センチ程度降ることが予想されている。問題は、首都圏の電力供給源が火力発電に依存していることです。火力発電所の動力であるガスタービンが、火山灰を取り込んで故障する。送電線も破損する可能性があり、電力供給ができなくなるのです」(サイエンスライター) 産業技術総合研究所でも、「降灰の影響で首都源の電気が完全にストップするブラックアウトが起きるかもしれない」と警鐘を鳴らしている。 灼熱地獄にならないことを祈るばかりだ。
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社会 2013年07月10日 15時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第34回 消費者と生産者
日本の経済産業省が、珍しく「まともなデフレ対策」に動こうとしている。経産省と公正取引委員会が、メーカーが小売店に「定価」を指定することを容認する独占禁止法の「緩和」に乗り出したのだ。 これまでは「価格競争」を促進するために、独占禁止法によりメーカーが小売店に販売価格を指定すること(要は定価販売)を一律で禁止していた。 デフレ期というのは、消費者の利益があまりにも重視されてしまう時代である。理由は、デフレによる物価下落が所得の縮小をもたらすためだ。消費者側に所得が不足してしまうと、簡単にはモノやサービスを買ってくれない。 もちろん、所得が十分な人は、「良い製品」「良いサービス」と判断すると、価格について細かいことを言わずにおカネを支払ってくれる。 だが、所得不足の場合はそうはいかない。消費者は「良い製品」「良いサービス」であっても、おカネがないために買えないのである。結果、価格競争は激化し、生産者の所得が小さくなる。すると、その生産者が消費者の側に立った時、「カネがないから安くしろ」という話になる。消費者の要望で価格が引き下げられると、生産者の所得が下がり、価格と所得の低下の悪循環がどこまでも続くのが、デフレーションなのである。 昨今、TPPの議論に絡み、 「日本の農業は付加価値の高い農産物に特化すれば、TPPに加盟しても大丈夫」 などと、無茶な事を言う政治家がいる。彼らは「デフレ」を理解していないか、理解していないふりをしている。デフレが継続し、日本国民の所得が増えない限り、消費者は「付加価値」になど見向きもしない。商品購入時に重視されるのは、価格のみである。 さて、20世紀後半の日本では(日本のみならず世界では、だが)、次第に販売店(特に大規模販売店)のパワーが大きくなっていき、「市場主義」が叫ばれ、独占禁止法が強化されていった。 以前はメーカーが「定価」をつけていたのだが、独占禁止法が強化された結果、「メーカー希望小売価格」「オープン価格」に変わっていった。メーカー側が販売価格を拘束することができなくなっていったのである。 以前の日本は(高度成長期など)、生産者のパワーが強かった。それこそ当時は「セイの法則」が成り立っている可能性があったのである。セイの法則(供給は需要を創出する)が成立している以上、メーカー側は「定価」での販売を強制することができる。何しろ、モノやサービスを「買いたい人」は沢山いるわけだ。結果的に消費者に対する小売価格が高止まりし、 「消費者利益が損なわれている(確かに損なわれているのだが)」 との声が高まり、メーカー側が定価販売の強制で超過利潤を得ることが批判されていく。やがて独占禁止法が強化され、「定価」の押し付けは法的に禁止されてしまった。 同時に、各種の生産性向上が進む。生産性の向上で「セイの法則」が成立しなくなっていくと共に、大規模小売店側のパワーが大きくなっていったのだ。以前とは真逆で、メーカー側は大規模小売店の声に逆らうことが難しくなり、パワーバランスは逆転した。 挙句の果てに、インターネットにより、小売店と顧客との間のチャネルが一気に拡大し、さらにグローバリズム進展で資本の移動が自由化され、企業側は「人件費の安い国で生産する」ことが可能になった。日本の「生産⇒販売」に関する生産性が高まる中、日本銀行がバブル崩壊後であるにもかかわらず十分な金融政策を打つことを怠り、さらに財務省が「需要縮小」の政策を打ち続け、'98年以降の日本は完全なデフレーションに陥る。 気がついてみると、我が国は「消費者天国」となっていた。デフレの始まりは「必ず」バブル崩壊であるが、独占禁止法強化やインターネット販売拡大、さらにグローバリズムが「デフレを促進した」ことも間違いではない。 日本のバブルが崩壊せず、健全なインフレ率の下で名目GDPが成長を続けていたならば、「独占禁止法強化」「インターネット販売拡大」「グローバリズム進展」が、国民経済にポジティブな影響「だけ」を与える結果になったかも知れない。とはいえ、日本のバブルは'90年に崩壊を始めた。 結果、価格の低下が「所得の縮小」を引き起こし、国民は次第に貧しくなっていく。 もちろんスマートフォンやハイブリッドカーなどの「製品の進化」はあるのだが、所得と価格の関係だけでみると、現在の日本国民よりも'97年の日本国民の方が、間違いなく豊かだった。物価は今よりも高かったのだが、所得は「それ以上に高かった」のである。 消費者物価が下がるのはともかく、物価下落で企業の業績が悪化し、リストラクチャリングが進むのでは、国民経済にマイナスの効果しか与えない。 何しろ、日本の全ての消費者は、同時に生産者でもあるわけだ。 国民経済は繋がっている。この当たり前の事実を日本国民が忘失した結果、デフレが長期化したと言えないこともない。 非常によろしくないと思うのは、政治家やマスコミ、評論家などの、「消費者と生産者を対峙させようとする」傾向である。現実には、消費者と生産者は「敵同士」ではない。同じ国民が、時に「消費者」になり、時に「生産者」になるのである。 そして、国家とは消費者と生産者が互いに利益を分かち合いつつ、国民経済全体が成長する道を「模索」していかなければならないのだ。 そのためには、まずは国民が、「とにかく安ければいい」という「デフレ期」の間違った思い込みから解き放たれなければならないわけである。三橋貴明(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2013年07月10日 15時00分
パンドラの箱が開いた! 中国発“影の銀行規制”がもたらす 世界同時大恐慌カウントダウン(2)
中国が国家の威信をかけた2大イベントにまい進した時期と、影の銀行が存在感を発揮し始めた時期は、図らずも一致する。 「中国人民銀行は影の銀行を厄介者のように扱っていますが、現実には表裏一体の関係でした。実体経済に赤信号が点滅し始めた途端、資金流入の抑制カードを切ることで、中央銀行としてのアリバイ工作に訴えたのです」(金融アナリスト) 原因はオリンピックや万博だけに限らない。米国の著名投資家、ジョージ・ソロス氏は4月8日、中国海南省で開かれた経済フォーラムで「影の銀行の急激な成長は、世界的な金融危機を引き起こしたあのサブプライムローンと類似性がある」と指摘。「当局が危険性を認識していたと確信している」と付け加えた。 前出のアナリストは「確かにバブル初期の時点で、中国人民銀行の関係者がプライドを捨てて素早く対応していれば、事態は違っていたかも知れません」と批判する。 ソロス氏だけではない。米ヘッジファンド、グランドマスター・キャピタル・マネジメントを主催するパトリック・ウルフ氏は6月20日、モンテカルロで開かれた業界団体の会合で「中国経済はひどい状態だ。いつクラッシュが起きてもおかしくない」と喝破。返す刀で「(中国では)銀行間金利が急騰し、多くの企業は資金繰りに窮している」と言ってのけた。中国人民銀行が、冒頭の“資金供給宣言”をしたのは、それから5日後のことだ。 今や世界の関心は、いつ中国の金融危機が炸裂するかに尽きる。その場合、過度に中国に依存した企業は深刻なダメージを被る。 「あの反日デモを機に“脱・中国”に方針転換した会社は多いのですが、それでもユニクロや青山商事、東レ、良品計画、さらに日産自動車などは依然として依存度が高い。特にユニクロや日産はまだドップリ漬かっており、大ヤケドの恐れがある。販売不振で撤退を余儀なくされたヤマダ電機は、内心ヤレヤレでしょう」(経済記者) むろん、中国発の世界恐慌に突き進めばアベノミクスなどは吹き飛んでしまう。株価大暴落で、その衝撃はリーマンショックや日本のバブル崩壊の比ではない。繰り返せば“震源地”となる『影の銀行』に溢れる資金は約500兆円。それが濁流となって噴出すれば、どんな事態になるか−−。 「世界同時大恐慌に発展すれば、中国の威信は地に落ちる。それどころか旧ソ連と同様、中国そのものが崩壊して地方政府が独立しかねない。そうなれば、もう尖閣諸島の領有権に対する横槍介入などは不可能です」(同) 恐るべきカウントダウンが、今まさに始まろうとしている。