唐突にも映る“逆張り”の裏に何があったのか。
「吉野家は4月に牛丼の並を280円に値下げした結果、来客数が3割以上もアップして売上高が2カ月連続で2桁増となった反面、客単価が大きくダウンしました。そこで付加価値を高めた商品を投入することで、客単価のアップを狙ったのです」(食品アナリスト)
先行して牛丼並盛を280円にしているすき家、松屋の両社は既存店売上高の前年割れが止まらず、すき家は5月までで21カ月連続、松屋も14カ月続いている。4〜5月に限れば、両社とも吉野家に大量の顧客を奪われたことになる。
当然、ライバルは対抗策を迫られることになるが、予想外に進んだ円安の逆風に加え、コメ価格の上昇も響く。原価率がいや応なく高止まりする中で利益を確保して成長を遂げるには“脱・低価格路線”にシフトするのが最も効果的というわけだ。
とはいえ、低価格に慣れきった顧客が、その戦略にやすやすと乗るかどうかは疑問。前出のアナリストが喝破する。
「国内の牛丼店は、今年中に5000店を超えるといわれている。限りなく飽和に近いことから、今後、東南アジアを中心に海外出店が加速するでしょう。とはいえ、3社とも国内が主戦場であることには変わりありませんし、お互い『客を奪われたら取り返す』という焦りが常にある。再び値引きの体力勝負を仕掛ける可能性は十分ありますね」
同じく低価格路線で苦しんでいたマクドナルドは『限定1000円バーガー』を発売するなど“高低”織り交ぜた戦略が功を奏し始めた。いっそ、牛丼屋も半端な高額商品ではなく『1000円牛丼』を引っさげて勝負してみては?