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連載ラノベ 夢ごこち(16)

 おばあちゃんと、伯母さんと、伯父さんを見送ったあと、戸締まりをして、健太君といっしょに家を出た。
 空はどんよりしている。けど、残暑の空気は暖かい。

 おばあちゃんの家から駅までは、健太君といっしょに歩いて、小一時間くらいの距離だ。

 二人で並んで歩き始めたのに、健太君は途中で走りだした。少し進んだ先で立ち止まった。
 振り返り、私を待っている。

 追いつくと、片手を唇に当てながら聞いてきた。
 「ねえ、お姉ちゃんは、なんで、お姉ちゃんなの」

 健太君は首をかしげて、不思議そうな顔をしている。口もとが膨らんでいて、かわいい。
 触ったら、やわらかそう。

 健太君は、よく食事のときに、脇から伯父さんのあぐらの中に座り込んでしまうことがあった。
 それから、ボールとグローブを持って外へ遊びに行くと、伯父さんの背中に飛びついたり、伯父さんのお腹に頭を押しつけて、さらさらの髪の毛をぼさぼさにしていたりした。
 そんなときの伯父さんは、いつも「やめろ、やめろ」と言うけど、うれしそうだ。

 健太君は、もの心がついてからは、私に抱きついたりはしなくなった。でも、赤ちゃんのころは、私の胸で、泣いたり、笑ったり、暴れ回ったりしていた。

 私は健太君のお姉ちゃんで、健太君は私のかわいい弟だ。

 「お姉ちゃんはね、健太君のことが大好きだから、お姉ちゃんなのよ」

 そう告げたら、健太君は、口もとをほころばせて、それからまた駆けていった。

 デパートは、三階建ての大きなビルだった。屋上が遊園地になっていた。

 けど、健太君よりももっと小さな子どもたちが、馬の乗り物にまたがったり、汽車に乗ったりしていた。

 健太君は、ここへはよく来るようで、一目散に、アスレティックコースへ走っていった。

 網をつたって台によじ登り、木橋の途中で、丸太の透き間へ体をすべり込ませた。そのまま近道をして、ゴールへたどり着いてしまった。

 一周して戻ってきた健太君は、おでこに汗をかいているけど、息は整っている。

 健太君が体を寄せてきた。それから、珍しく、私の服を引っぱった。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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