山口敏太郎
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ミステリー 2010年09月10日 16時00分
故郷へ帰った棺
占い師は、誰にでも当てはまることを言って信用させるという。結局、決断は自分の手中にあるのだ。しかし、死後に降りかかる運命はどうなのだろう。 1841年、シェークスピア劇の名優チャールズ・フランシス・コフランが産声を上げた。幼くして成績優秀のコフランに、両親は法律家を望んだが、コフランは故郷であるカナダのプリンスエドワード島を飛び出し、ロンドンで苦労の末、世界中で大活躍する大スターとなった。 そんなコフランが折に触れ、周囲に語っていたことがあった。自分はアメリカで公演中に一生を終え、一旦アメリカで埋葬された後、故郷のカナダに帰るのだと。それは、ジプシーの占い師に言われたことで、コフランは固く信じていた。 1899年11月27日、コフランはアメリカテキサス州の港町ガルベストンで、ハムレットの公演中に倒れ、急死してしまった。遺体は故郷には送られず、ガルベストンの共同墓地の地下納骨所に埋葬された。翌1900年9月8日、ガルベストンを大型ハリケーンが襲い、町は大被害を受けた。共同墓地も例外ではなく、激しい大波が納骨所を破壊し多くの棺を露出させ、そのいくつかを海へと流してしまった。町の人たちの懸命な復旧作業により、海へ流された棺も回収されたが唯一つ、コフランの棺だけがメキシコ湾に流され、フロリダ沿岸を漂流し大西洋に達すると、メキシコ湾流に乗って北上していった。 そして、1908年10月プリンスエドワード島で漁師が、浅瀬を浮遊する劣化の激しい棺を見つけた。棺に貼られたプレートにはコフランの名が刻まれていた。アメリカで眠りについて9年、5600km彼方の故郷に帰りついたコフランは、故郷の人たちによって、自身が洗礼を受けた教会の墓地で、今度こそ安らかな眠りについた。七海かりん(山口敏太郎事務所)山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/
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社会 2010年09月10日 14時00分
愛知県西三河地方の怪異「天狗火」
「天狗火」とは、主に水辺に現れる赤みを帯びた怪火のことである。提灯ほどの大きさであるが、いくつかに分裂して飛行することもある。天狗火は、天狗の超能力によって引き起される現象の一つとして考えられ、夜に山から川に下りてきて、川魚を捕まえると森の中を飛び回る。この怪火に出会うと病になるともいわれ、これに出会ったら地面に伏して目を合わせないようにする。または頭に履物を乗せると難を逃れることができるといわれている。 今から90年ほど前、愛知県豊田市高岡地区にある農村で天狗火に遭遇した男の話である。その頃の若者の間では、農閑期の夜になると、娘遊び(合コンのようなもの)をする風習があったという。 春の夜のこと、ある男が隣村の娘と遊び、家に帰ろうと一人で村はずれの田んぼのあぜ道を急いでいた。この時代には道は外灯もなく、月が出ていない夜は本当に真っ暗闇になった。男は急に小便がしたくなり、田んぼの真ん中で立ち止まった。その時、東方の森の上に、赤くて丸い火の玉がポッカリと浮かんでいた。 その夜は、月のない上に生憎の雨模様だったので、その光は月ではない。「あれはいったい何だろう」と不思議に思った。すると、火の玉は音もなく、スーッと男の方に飛んできた。近くの林の上に飛び移ったかと思うと、みるみるうちに火が林全体に広がり、辺り一面火の海になってしまった。 男はびっくりして恐ろしくなり、小便をするのも忘れて急いで家に帰った。そして、ブルブルと震えながら、布団の中にもぐり込んでしまった。 翌朝、男が家の者に昨日の出来事を話すと、「それは天狗さんに驚かされたのだよ」と、おばあさんが笑って教えてくれた。(写真:「天狗」妖怪プロジェクト/GUITAR)(「三州(さんず)の河の住人」皆月斜 山口敏太郎事務所)参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月10日 13時00分
世界一、怪獣映画に冷たいのは日本人? 日本での怪獣人気は復活するのか!?
日本映画最大のスターといっても過言ではないであろう怪獣王ゴジラ。その魅力的なキャラクターは日本だけではなく、世界中で愛されている。1998年に公開されたハリウッド版『ゴジラ』は大きな話題となったが、2012年に再びハリウッドでゴジラ映画が製作されると発表された。 こうなると、再び国産のゴジラ映画もまた見たい! と思うのはファン共通の願いだと思うが、まだ復活には時間が掛かりそうとの声も多い。 現時点での日本産ゴジラ映画最終作である『ゴジラ FINAL WARS』の公開からはすでに6年の時が経つが、その間に公開された怪獣映画『キングコング』『小さき勇者たち ガメラ』『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』といった作品たちはそれぞれ、今までの怪獣映画にはない新たな魅力が描かれ、新たな怪獣ファンを獲得することはできたものの、興行的には苦戦してしまった。特にピーター・ジャクソン監督による『キング・コング』は、世界中で唯一、日本でのみ興行的には当たらなかったという状態で、世界に誇る文化である怪獣映画はいまや、日本人による評価が一番低いという有様なのかもしれない。 だからこそ、怪獣王ゴジラの復活も、怪獣映画発祥の地である日本ではなく、ハリウッドでということになったのだろう。日本人が作ったものなのに、むしろ海外での方が評価が高いという意味では、海外でのジャパニメーションや北野武監督の映画に対する評価などとも似ているのかも知れない。 今や怪獣映画に対して世界一厳しい国となってしまった感もある日本であるが、久々に根強い怪獣人気を感じさせてくれたニュースもあった。 デアゴスティーニ・ジャパンから隔週で発売されている『東宝特撮映画 DVDコレクション』の売り上げが、早くも100万部を突破した。毎号、東宝特撮映画のDVDが付いてくるというこの魅力的なシリーズが、多くの人々の心を掴んだのだ。かつての名作たちの面白さに、改めて気付かれた方も多いことだろう。 8月30日発売の『東宝特撮映画 DVDコレクション』では、平成元年に公開された記念すべき平成最初のゴジラ映画であり、今でも多くのファンに愛されている名作『ゴジラvsビオランテ』が登場する。 このゴジラvsビオランテから、ゴジラvsデストロイアまで続く6作品は、ファンの間では「vsシリーズ」または「平成ゴジラシリーズ」などと呼ばれているが、このシリーズが偉大だったのは、怪獣ブームでもなかった時代に興行的に大成功したということだろう。 平成に突入して、昭和の人気者であった「ウルトラマン」や「ガメラ」といった怪獣界の人気者の新作もなかった時代、ほとんどの子供にとっても「怪獣」という存在は特に求められてはいなかったようで、ゴジラvsビオランテも、興行的には必ずしも大当たりというわけにはいかなかった。 しかし、この映画が公開されたことで、一部の子供たちが「怪獣映画ってこんなに面白いんだ!」ということに気付かされ、子供たちの間で口コミも広まり、その後に続くvsシリーズは、日本映画を代表する大ヒットシリーズとなったのである。 100万部突破の『東宝特撮映画 DVDコレクション』から、名作『ゴジラvsビオランテ』がリリースされることにより、現在の子供たちの間でも再びゴジラブーム、怪獣ブームが起こることを、筆者は願ってやまないのである。(「作家・歩く雑誌」中沢健 山口敏太郎事務所)参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月09日 18時30分
映画『半次郎』 明治維新後の武士を描いた骨太時代劇
NHK大河ドラマ『龍馬伝』の影響からか、2010年下半期に公開される邦画は、江戸から幕末にかけての時代劇が多く見受けられます。今回ご紹介する『半次郎』は、幕末だけでなく、明治維新後の武士の姿も描いた作品としても要注目な作品です。 『半次郎』こと中村半次郎は、幕末の薩摩藩士。貧しい生活の中で薩摩藩の剣術・薬丸自顕流を独力で修得。人並み外れた度胸の良さと剣の腕を買われ、西郷隆盛に重用されました。その剣の腕から後世に「人斬り半次郎」の異名を得ます。 明治維新後は桐野利秋と改名し、陸軍少将に昇進しますが、「征韓論争」にて西郷隆盛が明治政府から退くと、半次郎は西郷とともに下野します。九州各地において旧武士階級であった士族が、明治政府に対して反乱を起こすと、旧薩摩藩の士族は西郷隆盛を擁立し挙兵、西南戦争になります。半次郎も西郷に従い、西南戦争に身を投じたのです。 半次郎を演じるのは薩摩出身の俳優・榎木孝明氏。自身が企画した映画での主演とあり、思い入れの強さが窺える熱い演技に魅了されます。古武術を修得する榎木氏の薬丸自顕流の殺陣演技は、見事としか言いようのない美しさ。負けると知りながらも武士して戦わねばならぬ男の志が、その剣の刃筋から伝わってきます。京都の「村田煙管店」の娘「さと」との、結ばれぬ恋に悩む半次郎の姿、愛妾・藤とのロマンスにも注目。半次郎の等身大の姿も惜しみなく描かれています。 また、半次郎の同志・永山弥一郎は人気歌手・EXILEのAKIRA氏が好演。時代劇初挑戦と思えない殺陣に圧倒されること間違いなしです。 監督は『地雷を踏んだらサヨウナラ』『長州ファイブ』の五十嵐匠監督。撮影監督は『男たちの大和』の阪本善尚氏。骨太な人間ドラマを得意とする二人のタッグにより、映画『半次郎』も正統派骨太時代劇に仕上がっています。 鳥羽・伏見の戦いや国内最後の内戦となった西南戦争における戦闘シーンの描写は鮮明かつ臨場感に溢れ、リアル感にこだわりが感じられる反面、少々残酷なシーンも見受けられます。しかしながら、これこそが本来の戦争の姿であり、幕末・明治を生きた武士の、最後の意地の姿でもあるのだと思います。 薩摩の“ぼっけもん”半次郎の熱い魂が惜しみなく描かれた映画『半次郎』、ぜひスクリーンで体感ください。 映画『半次郎』は10月9日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次ロードショー!! 9月18日(土)九州先行公開!キャスト:榎木孝明、AKIRA、白石美帆、津田寛治、坂上忍、永澤俊矢、広島光、北村有起哉、田中正次、田上晃吉、雛形あきこ、葛山信吾、竜雷太 ほか企画:榎木孝明プロデューサー:坂上也寸志製作事務局:度會由美子、西田建一監督:五十嵐匠脚本:丸内敏治、西田直子音楽:吉俣良(「歴女ライター」みかめゆきよみ 山口敏太郎事務所)参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月09日 15時30分
仮面ライダー&スーパー戦隊出身俳優が結成したムード歌謡グループ「純烈」、そのライブに潜入取材!(2)
「涙の銀座線」を歌い終えた後は、純烈メンバーの簡単な自己紹介が行われたのですが、六本木ヒルズといえばテレビ朝日。酒井、白川、友井、涼平といった、かつてテレビ朝日系で放送されていたヒーロー番組に出演していたメンバーは、それぞれが演じていたヒーローの変身ポーズを披露して客席を沸かせていました。 この自己紹介の際に、メンバーの友井雄亮(仮面ライダーギルス)は、「涙の銀座線は、振り付けも覚えやすいので是非、皆さんも覚えてみてください!」と言っていたのですが、彼らの演じるヒーローの変身ポーズを、多くの子供たちが一生懸命まねていたように、純烈の振り付けも思わずマネをしてみたくなってしまうような不思議な魅力が感じられるものでした。 そして、改めて気付かされたのですが、この暑い中、屋外のステージで黒のスーツを着込んで、歌っているだけでも大変だろうに、彼らは一生懸命に踊ってまでいたのです。いつの間にか、純烈のパフォーマンスに夢中になっていた私は、暑さもカキ氷を食べるのも忘れていたのですが、彼らは本当に全身汗だくになっていたのでした。 ですが、まったく辛そうな表情を見せることなく、純烈は、黒沢明とロス・プリモスの名曲「ラブユー東京」と、「それからの夕子さん」を続けて熱唱したのでした。 その後は、CD販売と握手&サイン会が行われ、あっという間に長蛇の列ができました。 並んでいるお客さんの中には、手作りだと思われる「純烈」メンバーの写真がプリントされたうちわを持った方や、熱狂的なファンだと思われる、純烈Tシャツを着ている方の姿も見えます。 純烈のメンバーたちは、一人ひとりのファンとしっかりと熱い握手を交わして、ファンの方々とのコミュニケーションを図っていました。 そんな純烈の様子を見て、私は思いました。純烈のメンバーはかつてヒーローに変身した時のように、今また新しい“変身”をしたのだと。そして、この新しく現れた変身ヒーローに、また多くのファン達が夢中になっているのだと…。(つづく) 「純烈 オフィシャルサイト」http://www.junretsu.com/「純烈 公式ブログ」http://gree.jp/junretsu「純烈リーダー酒井一圭 twitter」http://twitter.com/junretsusakai(「作家・歩く雑誌」中沢健 山口敏太郎事務所)参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月09日 13時00分
『超電子バイオマン』:坂元亮介の玩具道
玩具コラム番外編として、今回は『超電子バイオマン』(1984年・東映)にて主演のレッドワン=郷史朗を演じた、俳優の坂元亮介さんに玩具関連あれこれを語っていただきました。 −−全然持ってない! 僕自身、バイオマン関連の玩具を全然持ってないんですよ。イベントやライブ等のゲストの際につけている「テクノブレス」(※変身ブレス)もファンの方から頂いたものです。何が出ているのかも正直、殆ど把握できてませんね…。 だって、撮影当時は早朝に起きて、深夜に帰宅し泥の様に寝る! そんな生活サイクルな訳でして…。撮影がない日はアフレコや遊園地やデパートでステージショー等があるんですよ。「バイオマンの関連商品何が出てるのかな?」なんてあまりチェックする余裕がありませんでしたねぇ…。 当時おもちゃ等のグッズをいくつか、関係者やファンの方から貰った記憶もなんとなくあるんですが、ついつい知り合いの子供や親戚とかにあげちゃったんですよね。(苦笑) −−懐かしく、嬉しい贈り物 今回は、バイクのおもちゃ(レッドワンの専用マシン=バイオマッハ)をファンの方から頂いたのですが、こういったものが出ている事すら知りませんでした(しみじみと見つめて)。 当時の『バイオマン』関連のグッズをプレゼントしていただく度、懐かしく嬉しさで一杯ですね。この当時のグッズ、大事にしますよ。ありがとうございます! −−バイオマングッズ新商品 最近、ゴレンジャーからバイオマンも含めて、歴代レッドのマスクが出たんですよ。あれは嬉しかったですね! また、バイオマン関連の新商品出ないかな? なんて期待してしまいますね。バイオロボも今の戦隊ロボに負けないくらいかっこいいと思うんですけど…!? (坂元さん出演の舞台最新作「SAZEN」が2010. 9.29(水)〜10.3(日)銀座博品館劇場ににて上演。坂元さんのHPにてチケット予約を受け付けています)●坂本亮介公式HPhttp://www4.ocn.ne.jp/~rsoldier/●「SAZEN」公演案内HPhttp://www.waki-gumi.com/(小野寺浩 山口敏太郎事務所)【参照】山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月07日 15時00分
映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』に出演した茂木健一郎氏に山口敏太郎が聞く、恋と脳と記憶の不思議な話(3)
茂木 そうですね。まさにそうだと思います。ただ、そこで客観性っていうものをある程度確保しておくことも、人類の文明の中では役に立ったわけで。誰が誰にいくら借金してるとか、そういうのってある程度客観的に分からないと困りますからね。その狭間の中で人間って揺れてきたと思うんですけど、少なくとも恋愛って、思いっきり主観的でいいし。恋愛なんてある意味で全部イリュージョンだから。 山口 そうですね、完全にイリュージョンですよね。 茂木 だって「この人じゃなきゃいけない」っていうことはないわけだから。 山口 結局それぞれ恋愛をしてる。恋愛を演じている男女、あるいは三角関係、四角関係を形成する誰もが、幻想を持ち合っている。ひとつのファンタジックなお芝居をやっている、みたいなことでしょうか? 茂木 そうですね、「幻想」という共通の言葉で、お互いにコミュニケーションしているわけですけど、でもそれが何かね、物語を動かす原動力になっているわけです。だから僕はね、「想い」が最初にあると思います。やっぱり恋愛でもそうですけど、誰かと繋がりたいという想いがあったり、ご飯にしても、おいしいものが食べたいという想いがあったとすると、逆に食べさせたいっていう想いもあって、その想いがどのように絡んで物語になっていくかっていうのが、我々の人生なんです。それって、まだ無限にあるんですよ。その物語の組み合わせのパターンというか、可能性というか。だから人と人との心が入れ替わるっていうことで、無限の可能性のひとつが見えてくるわけだよね。 山口 そうですね、だから割と人格が入れ替わるっていうパターンの映画は今まで何本もあったんですけれども、今回は一人の人間の中に二つの人格が入ってしまうというパターンで、大変興味深く思っておりますが、それが決してオカルトチックにとか、おどろおどろしくではなくて、さらっと日常生活のワンシーンで描かれているというところに、制作サイドの表現の上手さというのを非常に感じたんですね。 茂木 そうですね、今風ですよね。空気感がね。 山口 若い女性がスッと入っていけるような。一歩間違えればかなりSFチックな話になってしまうのに。本来なら男の子しか入っていけない設定なんですが、割と女性でも入っていけるところが不思議という感じがします。 茂木 今そういう、超常的なもの、オカルト的なものが、日常化してるんでしょうね。ライトなものになったというか。 山口 スピリチュアルブームとか、一連のブームがありましたからね。そこら辺で日常化してしまった感はありますね。 茂木 ヘビーウェイトじゃなくて、それもひとつのバランスっていうか。命ってバランスが大事だから。バランスを崩さないウェイトだったら、僕は妄想とか、そういうのもいいと思うんですよ。 山口 やはり、時々妄想すると楽しいですよね。 茂木 そうです。でも、それがバランス崩しちゃって、要するになんだかイッちゃってる人がいるじゃないですか?(笑)。 山口 振り切っている人ですね(笑)。 茂木 振り切っちゃって、やることやってないっていうのがおかしいんですよ。やることやってれば、妄想はいいんです。 山口 妄想癖の人で、税金も払っていない、年金も払っていないとかいう人いるじゃないですか。そういう人はやっぱり駄目なんですね。社会人として、仕事をやって、時々妄想に浸るのがベストだと。 茂木 生活をちゃんと営んでないとね。自分がなんもマトモな生活もしてないのに、大きなことばかり言う人っているよね。そうじゃなくって、ちゃんと足元をしっかりすべきかと。 山口 ああ、そうですよね。やっぱりそこら辺で、妄想と現実のバランスが取れる人が一番面白くて。テーマパークでも全部「楽しい」という世界観だけじゃなくて、ちょっとお化け屋敷のようなものが混じってるから、バランスが取れる。陰陽思想でしょうね。そういうバランスが取れる人っていうのが、素敵な現実主義者で。科学偏重主義、頑なな現実主義になっちゃうと、四角四面のつまらない人になってしまうっていうところがあるんですよね。 茂木 坂本龍馬だってそうだよね。妄想ですよね。 山口 坂本龍馬の言動は、完全に妄想ですよね。自分の立場とか考えたら普通できないことを口にしている。でも妄想をちょっとずつ現実にしていって、新しい妄想をどんどん広げて現実化していきましたよね、龍馬は。 茂木 全然『恋ナポ』とは関係ない方に話は行ってますが(笑)。 山口 『恋するナポリタン』を見た人は、ちょっとだけ妄想力をつけて、後は現実を豊かにしてくださいという(笑)。 茂木 なるほど、それはいいね。 山口 いいですね。微かなる狂気は大いなる力になるってことですよね。この映画そのものですよ。主人公の女性もね、ちょっとだけ不思議。不思議な部分を体験しながら、実生活では一流のシェフをフィアンセにもつ現実主義を持ちながら。現実主義だけど、ちょっと不思議なところも持っているじゃないですか。だから先生がおっしゃった、「ちょっとだけ不思議」っていう感じで、いいじゃないですか。 茂木 ちょっとだけ不思議が、日本を救うね。 山口 そうですね。科学偏重主義とか、そういうのは駄目になっちゃいますね。 茂木 ああ、ウマい! また機会があったら是非。 山口 是非、今後とも宜しくお願いします」(了)映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』9月11日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー<ストーリー>「プロポーズの返事をしないといけない!」 幼なじみでグルメライターの佐藤瑠璃(相武紗季)から入っていた留守電のメッセージ。驚いたイタリアンシェフ田中武(塚本高史)は、彼女の元へ駆けつけるが、瑠璃の傍には先輩シェフの水沢譲治がいた。 武が瑠璃に想いを伝えようとしたその時、ピアニスト槇原佑樹(眞木大輔)が起こしたアクシデントに巻き込まれてしまう。 奇跡的に一命を取り留めた佑樹には、なぜか武の記憶が宿っていた。 あの日、武が瑠璃に伝えたかった想いとは?〔STAFF & CAST〕企画/プロデューサー:野間清恵監督:村谷嘉則出演:相武紗季 眞木大輔 塚本高史/市川知宏 岡山智樹/茂木健一郎/真琴つばさ 市川亀治郎/北大路欣也(C)2010「恋も仕事も腹八分目」フィルムパートナーズ
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トレンド 2010年09月06日 15時00分
映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』に出演した茂木健一郎氏に山口敏太郎が聞く、恋と脳と記憶の不思議な話(2)
茂木 というようなことも考えられますね。そもそも愛っていうもの自体、現実が変容しているわけでしょう? 山口 そうですね、かなり、わん曲していますね(笑)。 茂木 だから、現実って一つじゃないんですよね。むしろ感情が現実を作るって言えばいいのかな。脳の働きでもよく知られているんですよ。妄想なんかも、客観的な事実はあるんだけれども、自分がある感情を持っていて、その結果現実を歪めてしまっている。でも、本人はそれに気付かない。 山口 それは、オカルト現象でもありますよね。 茂木 お得意の(笑)。オカルトっていわれている現象は、実は人間の真実を表しているわけで、例えば、そうだなあ…えっと困ったな、不適切な事例しか思い浮かばない(笑)。 山口 割と心に闇がある人が幽霊を見やすい、とかですか? 茂木 逆に言うと、それだけ(オカルト現象は)クリエイティブだってことですよ。100年とか200年、バレないような嘘をつくっていうのは、物凄く創造的なことだから。だから映画も、100年200年バレない様な嘘をつける映画がよい映画だっていうことですよね。 山口 だから、この作品にはうまく騙されましたよ(笑)。映画の随所においしい料理が出てきて、観ていて食べたいなって思ったんですね。それでいい音楽が流れてきて気持ちよくなって、おいしい料理、気持ちいい音楽とストーリーが絡み合って、まさにナポリタンのように絡み合って(笑)。 茂木 おっ!(笑)。 山口 ウマいこと言ってしまいました(笑)。グルメも音楽も、わざと演出で入れていて、心地よい記憶とともに映画のストーリーを記憶させる。多分、何年か経って思い出した時に「『恋するナポリタン』、ああ、あれいい映画だったね」っていう風に言わせるために、おいしい記憶、気持ちいい音楽の記憶が、映画と同じようにハーモニーを奏でてる。ここらへんの演出については、先生はどう思われますか? 茂木 おいしさって、すべての人間の幸せの原点なんですよ。だって「衣食住」っていうけど、その中で「これがないと命が繋げない」っていうのは「食」だから。しかも食って、脳にとっても単に栄養素を摂るということ以上に意味があって。おいしさって、2種類あるってことですよ。 山口 どういう意味でしょうか? 茂木 体にいい栄養が行くっていう意味においては、タンパク質とか脂肪だとかビタミンだとか、いろんなものが入っていなくちゃならないんだけど、“味わい”っていうのはね、脳の神経細胞がそれで活動して喜びを感じて、脳内でドーパミンっていうのが出て、脳が生きる力を得るわけですよ。それって栄養素とは別の話なんです。脳に与えられる喜びなんですよ。その脳に与えられる喜びっていうのは、食事を誰と食べるとか、誰が作ってくれたか、どういう思いで作ってくれたかっていうことも含めて、おいしさっていうのは脳の中で生まれるんです。 山口 なるほど。 茂木 やっぱりおっしゃったようにね、素敵な音楽とおいしい食事と、仲間とか恋人とか、そういうものの存在がトータルでおいしい味わいになっているわけです。だから『恋するナポリタン』っていうのは、究極のおいしさのテーマなんでしょうね。だってナポリタンって、普通のスパゲッティですよ。それが恋していて愛していて、大事な人が作ってくれると、最高の天国の味になるんでしょう。 山口 そうですよね。だから主人公が「ナポリタンは無理!」って言った背景には、お母さんを亡くした悲しみがあって、「ナポリタン=お母さんの味」だというイメージがありますから、お母さんの思い出そのものだから作れない、無理だって言っていても、でも大好きな幼なじみのために、人生最良の日に作ってあげたいっていうのは、やっぱり彼女に対する思いやりであったのかもしれませんね。 茂木 そうですね。 山口 料理とメモリーっていうのは連動してるんだなあ、っていうのが僕の勝手な話なんですが、先生のお話で脳に栄養が行くから、おいしい料理を食べてた時の記憶は鮮明だし、なぜ恋人同士がホラー映画を見に行ったり、おいしい料理を食べに行ったりするのか、やっと理解できました。恐怖とかグルメとか感動という脳の体験は、恋愛感情と非常に密接にリンクしているのかなあ、という気がしたんです。 茂木 そうですよ。だって守ってほしい訳だからね、女の子からすると。「つり橋効果」っていうのがあって、つり橋渡って出てくると、そこで会った人を好きだと思っちゃう。自分がドキドキしてつり橋を渡って、そのドキドキが相手を見る目に移ってしまう。恋をするって、生きることの不安とか、そういうことと絶対関係してくるんですよ。自分一人でもう全部充足しちゃってる人なんて恋をしないんですよ。自分が一人で生きる上で、いろいろ不安とか怖いこととかがあるから、他人を必要とするんで。 山口 あと、今回記憶が他人に移るということだったんですけど、こういうことって可能性的にはあるんでしょうか? 例えば今、人工海馬とかいろいろ言われてますが、ああいうものが普通にチップとして埋め込まれてる未来があったとしたらですね、他人の記憶を垣間見るってことができるんでしょうか?」 茂木 うーん、原理的には可能かもしれないですが、当分無理だと思いますね。 山口 数百年先の話でしょうか? 茂木 そうですね。ただ人間、無理なことでもそれを想像することでね、脳で作るから。透明人間なんかもそうでしょ? タイムマシンもそうだよね。タイムマシンだって、一般相対性理論でいうと、一応可能ってことになってる。だけどそれを現実に構築するっていうことを行うのは無理だから。 山口 そうですね、予算的にちょっと無理ですね。でも、人間の脳って本当に不思議だなあって思いますよ。子供の頃に体験した記憶でも、じつは模造記憶である場合があって、親から「こういうことがあった」って言われて、思い込んだ記憶とかありますよね。 茂木 よくあります。逆に言うと、人の記憶っていうのは、正確に覚えていることが一番大事なことじゃなくて、生きる上で役に立つっていうことが大事なんですよ。だから、いろいろ妄想してしまったり、偽の記憶を作ってしまうことが、正確な記憶を覚えてることよりもむしろ、その人が生きる上で役に立つことだったら、やっちゃっていいんです。極端な話ですが。 山口 自分の記憶に、実用的にちょっと手を加えてデータとして残しておくのは構わない、ということですか? 茂木 自分を支えてくれているのだったら、いいと思いますよ。 山口 なるほど。それだと人間の存在とか歴史的事実っていうのは結局、皆が客観的に持っている保存記憶の集合体でしかない。ということは歴史って、人の思い込みとか、思い込みの強い人の妄想で変わっちゃったりするわけですか?(その3に続く)映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』9月11日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー<ストーリー>「プロポーズの返事をしないといけない!」 幼なじみでグルメライターの佐藤瑠璃(相武紗季)から入っていた留守電のメッセージ。驚いたイタリアンシェフ田中武(塚本高史)は、彼女の元へ駆けつけるが、瑠璃の傍には先輩シェフの水沢譲治がいた。 武が瑠璃に想いを伝えようとしたその時、ピアニスト槇原佑樹(眞木大輔)が起こしたアクシデントに巻き込まれてしまう。 奇跡的に一命を取り留めた佑樹には、なぜか武の記憶が宿っていた。 あの日、武が瑠璃に伝えたかった想いとは?〔STAFF & CAST〕企画/プロデューサー:野間清恵監督:村谷嘉則出演:相武紗季 眞木大輔 塚本高史/市川知宏 岡山智樹/茂木健一郎/真琴つばさ 市川亀治郎/北大路欣也(C)2010「恋も仕事も腹八分目」フィルムパートナーズ
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トレンド 2010年09月06日 13時30分
玩具道〜「ソフビ魂」の巻
【ソフビ魂とは?】 親しみやすいソフビ素材に超造形・超彩色を施したソフトビニールフィギュアシリーズ。「大人向けのソフビ」をコンセプトに、高いクオリティを実現している。特撮ヒーローからアニメキャラクター、海外キャラクターなど幅広く柔軟なラインナップを見せる。(魂ウェブ紹介HPより) 今回取り上げるのは初の固定フィギュアにして、初の“残念なシリーズ”だ。ソフビ魂は第一弾の『人造人間キカイダー』から始まり『イナズマン』、『宇宙鉄人キョーダイン』、『超人バロム・1』そして写真の『快傑ズバット』や『変身忍者嵐』、『アクマイザー3』など東映ヒーローを中心にラインナップを展開。 シリーズ中盤から『仮面ライダーシリーズ』もついに参戦し、ますますのヒートアップ…のはずだったのだが、シリーズは『アマゾン』『クウガ』を最後にして、その後のラインナップからはいきなりの“サイズ変更”がなされた。 つまり、同じ名称のハイクオリティソフビ=ソフビ魂シリーズとはいえど、殆ど別のシリーズになってしまったと言って良いだろう。シリーズのラインナップも『新世紀エヴァンゲリオン』や『バットマン』『スパイダーマン』といった面々がプッシュされ、仮面ライダーは『THE FIRST』、『THE NEXT』に絞られている。キャラクターのチョイスという側面からしてもまるで毛色が異なっているのが明確だろう。 このシリーズの刷新の際には様々な問題が生じた。まず初代・仮面ライダー=旧一号からZXまでのライダーをリリースしていながら、新一号、新二号、スカイライダーを出さないまま旧ラインナップを打ち切ってしまったこと。つまり、10人ライダーが揃わないのだ。これはそれまでのシリーズを集めたファンにとっての裏切り行為ではないのか? これが、ユーザーからの激しいバッシング=非難の的となった大きな問題点の一つだ。 もう一つはユーザーの希望をまるで反映しないシリーズに変貌してしまった点である。シリーズの展開にあたって、雑誌などで発売希望キャラクターランキング=人気投票が行われたのだが、第一位に輝いたのは『ロボット刑事』であった。がしかし、シリーズ改変に伴ってそれまで応援し続けたユーザーの声は見事に無視されてしまった。 2010年9月現在まで、当然の如く『ロボット刑事』は発売されておらず、一方新シリーズのソフビ魂は多量の在庫を余しているようにしか見受けられない。 これは、どう考えてもこのシリーズ途中でのサイズ変更がユーザーの反感を買った=見捨てられてしまったのではないか? メーカーがユーザーに仇なすような事があっては絶対にならない。 ハイクオリティソフビの復興を願って止まないのと共に、こうした悲惨なシリーズラインナップは二度と見たくないという思いで一杯だ。●ソフビ魂ラインナップ一覧http://tamashii.jp/item/itemlist.php?pageno=1&pref=135(小野寺浩 山口敏太郎事務所)【参照】山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」http://blog.goo.ne.jp/youkaiou
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トレンド 2010年09月04日 17時00分
映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』に出演した茂木健一郎氏に山口敏太郎が聞く、恋と脳と記憶の不思議な話(1)
茂木健一郎(以下「茂木」) 今回は、映画の評論みたいなことを喋ればいいんですか? 山口敏太郎(以下「山口」) 僕は作家として、主に不思議な映画を中心に評論してるんですが、今回の作品『恋するナポリタン』は、人格が移るということで超常現象かなと思いまして。 茂木 なるほど、そういうことなんですね(笑)。 山口 脳内で創られる幻覚の一種である脳内幽霊の話とか。あと宇宙人にさらわれる人がだいたい、幼少期にドメスティックバイオレンスの経験があったりですね、結構、超常現象って脳に関係あるじゃないですか? 茂木 あります。僕も好きなんで超常現象の話になっちゃいそうですね(笑)。 山口 今回の作品『恋するナポリタン』なんですが、VTR見せていただきました。大変面白かったです。先生がお医者さんの役で出てらっしゃって、思ったより違和感がないんですよね。学者さんとお医者さんって、職業が違うはずなのに、脳というテーマが絡むだけで、なんとなく本当に脳外科関係のお医者さんかなって思えてきちゃうのが、やっぱり脳への刷り込みなんでしょうかね。 茂木 僕は映画って、とにかく凄くリスペクトを持ってるんです。僕は子供の頃から日本映画をいろいろ観て育ってきたんで、自分がまさか出るなんて思わなかったんですけど、今回プロデューサーの野間さんが突然押しかけてきて「出てほしい!」って言われて(笑)。 山口 (笑)。 茂木 相武紗季ちゃんと共演できるって聞いたから、「じゃあ出ようか」と思って台本見たら、共演シーンなんて全然なかったんですよ(笑)。また現場では、真琴さんが凄く素敵な人で、いろいろ教えていただきましたね。それにしても、役者って別の人格が憑依する職業だと思うんですよ。そういう意味でいうと、僕は地でやってまして、たまたま役柄が医者だったからそれらしく見えた。科学者と医者って近いじゃないですか? だから、僕は素で出演している気がして、ちょっとだけ恥ずかしい感じかな。 山口 映画でも、演技は恥ずかしかったですか? 茂木 うーん、出来上がりを見るとね。「おっ、素で出てる」みたいな(笑)。 山口 皆がペルソナ(仮面)を被っている中で、一人素顔ですからね。 茂木 やっぱり、いい役者っていうのはね、豹変しますからね。 山口 その人格になりきっていますよね。 茂木 カメラがパッと回った瞬間に、全然パーっと変わるから。相武紗季ちゃんだって、絶対これはペルソナ被ってる。可愛い顔をしてるけど可愛くないとか、そういうんじゃないよ(笑)。可愛い女の子を演じるっていうプロ根性が凄いと思いましたね。今回の映画出演を契機に、脳科学者として解明しようと思ったんですけど、なかなかそこまでは。 山口 結構、お芝居って民俗学的にも意味が深いんですよ。日本だと神前芝居といって、神社に奉納するお芝居であったり。役者さんって神を降ろして、演技を神に捧げるってところがあるじゃないですか? そういった部分で人格変換っていうのは興味深いです。 茂木 だからね、真琴さんなんかもそうなんですけど、いい役者さんって、自分を外から見てるカメラみたいな、もう一人の自分がいるんですよね。我々の言葉でいうと「メタ認知」っていうんですけど、メタ認知が立ち上がっていて、そういう風に熱く演じている自分を、ちょっと客観的に見ている。そういうことができる人ほどいい役者だと思うんです。 山口 みうらじゅんさんも、先生と同じような話をされていて。矢沢永吉は自分のことを「矢沢」と客観視し、水木しげるは自分のことを「水木さん」と客観的に呼ぶ。だから二人は成功したんだっていう話があるんですよ。 茂木 そうだと思います。ああいうキャラクター性が高い人っていうのは、必ず自分を客観視する。 山口 面白いですね。 茂木 だから、映画ってメタ認知のアスリートたちが集まってやっているという点では、凄いなって僕は思いますけどね。 山口 今回の映画は模造記憶というのがひとつのテーマですが、他人の記憶が自分の中に入ってしまう現象について描かれていますが。 茂木 おーっ、そっちからきたか(笑)。 山口 映画というものも、ひとつの模造の現実じゃないですか? 模造の現実という映画の中で、ある人物の中に他人の記憶が入っていくという模造が描かれる。二重の模造構造を映画の客席から客観的に見るという点に関してはどう思われますか? 茂木 そこは、やはり一番エキサイティングなところだと思うんですよね。事故で他人の記憶が脳内に入るということは科学的にはないんですが、でもおっしゃっているように、そういう妄想を抱いてしまうということは大いにありうる。自分が他人の記憶を持ってしまっている。つまり、多重人格、最近は解離性同一障害というのがありますし、そういう症例がいっぱいあるので。 山口 移植ってどうなんですか? よく、他人の臓器を移植したら趣味思考が変わるとかいいますよね? 茂木 それも科学的にはないんですよ。でも、脳って暗示にとても弱いんです。自分の心臓が他人の心臓に変わったっていうことを、知るだけですでに暗示されているわけです。 山口 今までの俺とは違うぞ、みたいな暗示が無意識にかかってしまうんですか? 茂木 直接的なメカニズムとしては、ちょっとそう考えてもいいですかね。脳が暗示にかかりやすいということに、人間の真実が現れていると思うんです。設定として脳が入れ替わるっていうのは、様々なドラマが生み出されることになると思うんですよ。 山口 そうですね。例えばiPhone同士で情報交換とか、携帯同士で赤外線交信とかで番号を交換したりするじゃないですか? 頭と頭が触れ合うことによってデータが移転してしまう。そういう設定が今風で面白かったんです。ひょっとしたら主人公である彼女の気持ちが、ナポリを失ったということを受け入れられないことから生み出した模造記憶かもしれないし、はからずもアクシデントを引き起こしたピアニストが罪の意識から、シェフの模造記憶を脳内で作り上げてしまったのかと。(その2に続く)映画『恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜』9月11日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー<ストーリー>「プロポーズの返事をしないといけない!」 幼なじみでグルメライターの佐藤瑠璃(相武紗季)から入っていた留守電のメッセージ。驚いたイタリアンシェフ田中武(塚本高史)は、彼女の元へ駆けつけるが、瑠璃の傍には先輩シェフの水沢譲治がいた。 武が瑠璃に想いを伝えようとしたその時、ピアニスト槇原佑樹(眞木大輔)が起こしたアクシデントに巻き込まれてしまう。 奇跡的に一命を取り留めた佑樹には、なぜか武の記憶が宿っていた。 あの日、武が瑠璃に伝えたかった想いとは?〔STAFF & CAST〕企画/プロデューサー:野間清恵監督:村谷嘉則出演:相武紗季 眞木大輔 塚本高史/市川知宏 岡山智樹/茂木健一郎/真琴つばさ 市川亀治郎/北大路欣也(C)2010「恋も仕事も腹八分目」フィルムパートナーズ
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