社会
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社会 2009年04月30日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(38)
松井町に住んでいたころのこと。本所も堀割が多く、松井町の河岸には炭屋が並んでいた。2月のある夕刻、黒の細股引に足袋、紺の手甲(てっこう)、細半纏(はんてん)、腹掛けに草鞋(わらじ)という格好をした男が仕事場の入り口で声をかけた。「親方、急に金がいるんだ。値引きしとくから2俵だけ買ってくんねえか。備長(上等の堅炭)の上物なんだ」と言って、2俵の炭俵を徳次の前に置いた。 いかにも炭屋の番頭のようである。仕事場では堅炭を使用するから備長はちょうどいい。幾らだい、と聞くと「2俵で65銭にしておかぁ。まあ見てくんな。ぴかぴかの品だよ」と1つの俵の下から光った炭を取り出して見せた。なるほど備長の上物だった。65銭は1俵の値段だ。持ってみると目方も十分にあったので、徳次は買うことにして金を払った。 2、3日して買った炭俵の1つを開けてみて驚いた。上っ面は炭が並べてあったが、下の炭は水にぬらして重くしてあり、中は藁(わら)を詰めて、石や瓦のかけらがごろごろ入れてある。もう1つも同様だ。詐欺に引っかかったのだ。 そんな思い出を松井町に残して林町に引っ越した。職人も増やし、事業も拡大させていた。ある日、外出から戻ると以前の炭詐欺男が服装も手口も同じように、2俵の炭を売り込もうとしていた。 徳次は咄嗟(とっさ)に戸口に錠をかけた。そして男の前に立つと「お前さん、おれを覚えていなさるかい」と言った。男の顔色が見る見る変わった。 「あれから3年、お前さんに騙(だま)された私は一生懸命働いて、どうにか一軒家を買うことができた。そして松井町から越してきた。お前さんは今度は立ち直りなさったか。炭は頂くとして、ひとつ中身を拝見しようじゃねえか」 工場の連中で事情を知っている者は興奮して先ほどから仕事の手を休めてこちらをうかがっている。 しかし徳次は冷静だったし、男を憎んでもいなかった。
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社会 2009年04月30日 15時00分
永田町血風録 総選挙へ麻生首相のゴーサイン待ち
西松建設のあの“事件”がこのところ静かになったこともあり、民主党は息を吹き返してきている。 「みんな一緒になって頑張ろう、という声が起きている。しかも、自民党が提出する景気対策の経済法案はまったくばらまきだけ…」 民主党代表・小沢一郎が全国行脚でこう言えば、党の主な幹部は「至極ごもっとも、民主党に対して逆に応援メッセージが多く届いている」と、すっかり元気になり、そして「さあ、選挙がくるぞ!」と手綱を締め始めた。 確かに小沢が動くことで、地方も同じように動き始めた。「早く民主党としてのマニフェストを作って出してほしい」の声も出ている。 幹事長・鳩山由紀夫らの幹部は、巷(ちまた)での民主党に対する声援の大きさを十分すぎるほど肌身に感じているはずだ。 「しかし、それで気をよくしてはいけないのです。まだ代表・小沢の西松建設事件の説明責任が果たされていないこと。これは、やはり民主党に対して国民が全幅の信頼というか、信用をしていないのは否めません」(鳩山由紀夫) 副代表・石井一も「やはり小沢の説明が不十分なのは、わだかまりとして残っている。これは総選挙になったら、マイナスな面となってくる」と、かつての盟友だけに気がかりでならない、と言った口ぶりである。 首相・麻生太郎の今のはしゃぎようは、自民党に風が吹き始めたことに気をよくしてのものである。だが、そのはしゃぎぶりに危惧(きぐ)を抱く声も聞こえてきている。 「さあ、選挙だ、というわけにはいかないのだ。麻生にとって、やはり総選挙という行事は、ひとつ間違えれば、自分の首を絞めることになる。そして、もうひとつは友党・公明党のお家の事情からこちらのご意見も聞かずに選挙というわけにはいかないからだ。だから少し風向きがよくなったからといって、有頂天になってはいられないよ」(政界アナリスト) 官房長官・河村建夫は、とくに総選挙になると「公明党のお家の事情をよく考えてから事を起こさないと、公明党に申し訳ないことにもなりかねない」と、しきりに公明党を気にしている。 ただ、民主党も与党もいつ総選挙になってもいい、そういう準備に入っていることは事実である。 「公明党が8月に総選挙だ、としきりに喧伝(けんでん)している。あれってどういうこと? 麻生と公明党との間で“密約”でもあるのかな」と野党の方では訝(いぶか)しむ見方もあるようだ。 なにはともあれ、永田町は総選挙に向けて大きな動きとなってきている。その動きも、それぞれの政党に思惑があり、とにかく麻生の“総選挙ゴー”のサインというか“号令”がいつ出るか、それを待っているのは確かだ。 いつ麻生が、総選挙だ、というかわからない。与党も野党も、この“待ち時間”を活用して、少しでも選挙にプラスになるよう、動きはさらに拍車がかかってきている。(文中敬称略)
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社会 2009年04月28日 15時00分
WHO「フェーズ4(世界警戒水準4)」発令 新型インフル発生
豚インフルパニックが日本においても現実のものとなりつつある。世界保健機関(WHO)は同問題にかかる緊急委員会を日本時間27日夜、前倒しで開催。ついに、恐怖の「フェーズ4(世界警戒水準4)」を発令した。感染力の強さが未知だけに、パンデミック(世界的大流行)ぼっ発となれば、かつて世界中で4000万人以上が死亡した「スペイン風邪」クラスの被害も想定せざるを得ない。果たして日本はどうなる? WHOによる「フェーズ4」の発令は、すなわち、人から人へ感染する新型インフルエンザの誕生を意味する。つまり、爆発的な感染拡大につながる可能性をも示唆するものだ。この状況に「鳥インフルエンザでなかったのが相当に痛い」と頭を抱えるのは厚生・医療分野に詳しいジャーナリスト。 「ここ数年、政府は新型インフルエンザ対策をそれなりにやってきた。しかし、備蓄したプレパンデミック(大流行前)ワクチンはほとんど効かないと見たほうがいい。新型インフルエンザ対策は大きく変更する必要があるが、もしこのままの勢いで豚インフルがパンデミックの事態を迎えたら、政府にできることは少ないはず」 政府は、鳥インフルエンザ「H5N1型」由来の新型インフルエンザでパンデミックが発生した場合、日本でも3200万人が罹患し、最大で64万人が死亡する可能性があると想定。「H5N1型」に対するワクチンの製造・備蓄を進めてきた。しかし、このワクチンもH5N1型以外のウイルスには無効とされる。「今回の豚インフルは、政府にとって、まさにその『想定外の事態』になってしまった」(同) ウイルスの型が違っても、ある程度は効果が見込めるとされてきたのがタミフル等の抗インフルエンザ薬。政府はこの備蓄も進めてきたが、「近年、タミフルの効かないウイルスが現れて信頼が揺らいでいた上に、豚インフルエンザにどの程度効くのか不安視する声もある。仮に効果が望めるとしても、日本の備蓄は3380万人分しかなく、日本人全員に配るにはほど遠い」(同)という状態だ。 そう、日本の新型インフルエンザ対策はそもそも遅れていた。それは医療現場の対応にも顕著に表れている。 文科省による昨年12月1日時点の調査では、国公私立大学病院のうち、新型インフルエンザに特化したマニュアルを作成しているのは全国140病院のうち44%となる61病院にとどまっていた。新型インフルに絞ったマニュアルを作成していないのは18病院。61病院は「整備中」と回答した。作成済みは、国立が43病院のうち32病院、公立は11病院中、3病院で、私立に至っては86病院中、たったの26病院だった。 もっとも、発生早期では感染症指定医療機関や結核病床を持つ病院が治療にあたる予定。患者数が急速に拡大、日本全土にまん延した段階で、地域の拠点病院となる大学病院も診療を行うことが想定されるが、「このお粗末さでは満足な診療が行われるとは到底思えない」(医療関係者)との指摘も。 これまでの状況や関係者らの話を総合して考えると、日本では鳥インフル由来の新型インフルエンザにさえ満足に対策が整っていなかった状況。その上で豚インフル由来のウイルスへの対策を取るとなると、抜本的なやり直しが必要となるが、それは今からではとても間に合わない、という悲しい結論が出る。 前出・ジャーナリストは「こんな状態では、これまでの政府見通しである『日本全国で最大64万人の死者』という数値も上方修正する必要があるかもしれない」と警鐘を鳴らしている。
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社会 2009年04月28日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(37)
徳次が特許を取った水道自在器は爆発的に売れ行きを見せ、職人と丁稚をさらに数人雇い入れることになった。徳次も今や立派な“親方”だ。バックルと水道自在器のほかにも新規の考案をした。 例えばコテの金具にニッケル鍍金(ときん)を施して塗の柄に入れ、「不思議なコテ」と名付けて発売した。従来のコテはすぐ錆(さび)がきて、使用前にいちいち錆を落とす必要があったので、改良して錆びない工夫をしたのだ。兄・政治が販売を担当し、目新しさも手伝ってよく売れた。 政治からの依頼で液体ハンダを製造したこともある。当時、アメリカから輸入していたチノールという液体ハンダが高価だったため、現品を分析して模倣品「和製チノール」というのを作ったのだ。廉価なので売れたが、これはしばらくするとハンダに錆ができてしまう欠点があった。徳次は失敗の考案と言っている。 政治と徳次は気が合った。政治はいっとき、林町の徳次の家に同居したこともあった。二葉屋自転車から独立して友人と2人、銀座に自転車のタイヤ修理店を出したが、まだ自転車が行き渡らないころだったので失敗し、以後は雑貨の外交販売で地方を営業して回った。 政治の扱う雑貨の中に金属文具があった。まだ初期のことで工夫すれば改良の余地のある物が多かった。徳次は万年筆の付属金具のクリップや金輪に新味を加えて製造してみた。これも本格的に製造を開始できるほどの注文が入った。 徳次はさらに新製品の研究を続ける。大正3(1914)年、まだ家内工業の域を出なかったが、徳次の仕事場は活気に満ちていた。仕事は順調に発展していた。 巻島が徳次に、そろそろ身を固めたらどうだと縁談を持って来たのはこのころだ。徳次は20歳になっていた。当時は、縁談は親や周囲の年長者が進めるのが普通だったから、徳次は巻島にすべて任せた。 大正3年3月、徳次は巻島と同業の清水政吉の長女・文子と結婚。同年12月には長男・煕治(ひろじ)が生まれた。
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社会 2009年04月28日 15時00分
永田町血風録 渡辺元行革相と江田憲司が新政党結成へ
与党・自民党にはそれぞれ思惑があり、衆院選を「5月だ」「6月だ」と自分たちで勝手に決めて発言する領袖たちがこのところ、やたらと目につく。 自民党元副総裁・山崎拓に至っては、したり顔で“自己流”の選挙日程をぶち上げている。自民党の領袖たちはそれこそ、さも自分が首相であるかのような言動をことあるたびに繰り返している。 「いやはや、驚きの極みです。首相・麻生太郎にほとんど働かせず、場合によってはプレッシャーを与えることのほうが多いのに…。自民党は『いろんな意見があっていいんだ』と幹事長・細田博之がこう言って、領袖たちの言動を必死に打ち消しているのは気の毒を絵に描いたようなものです」(政界アナリスト) その一方で、いろいろと話題が出ると、なぜか民主党議員の名前が出たり消えたりしている。民主党幹事長・鳩山由紀夫は「はっきり民主党の議員の中傷や批判をマスコミがやっている」と目くじらを立てた。 というのは、障害者団体向けの割引郵便制度の悪用事件で民主党議員・牧義夫(愛知4区)の政策秘書が、この事件の当事者である自称「障害者団体」白山会会長・守田義国容疑者の日本郵便の障害者団体向け割引郵便制度違反に関与したとされていることについて、「容疑者から献金があったという報道もあるが、彼はそんな違法なことはやっていない。これははっきり言って、4月26日投開票の名古屋市長選を狙った問題提起だ」と、鳩山は必死に打ち消していた。 しかも代表・小沢一郎が、やっと重い腰を上げての地方行脚を始めたところであった。 「自民党の麻生は、しきりに自分の政治力をマスコミに流している。その証拠に麻生はことのほか明るくなった。その麻生に対抗して、(小沢)代表に急ぎ国内の行脚をしてもらいたい」 鳩山のこうした願いに小沢は全国行脚を始めた。民主党の場合、やはり小沢でないといけない。「菅(直人)がきたけど、小沢とは迫力が違う。地方は小沢を待っている」と、地方議員の中にははっきりこう言う者も少なくない。 だから、永田町は選挙モードに突入しているのだ。先に自民党を離党した元行革相・渡辺喜美と、今は無所属の江田憲司が新党を立ち上げる動きがある。 すでにこの2人の新党構想は、何人かの議員に「参加できないか」と打診をしている。 「ただ、今、そういう新党に加わっても、すぐ行われる国政選挙にプラスになるとは思えないので、模様ながめの連中もいる」(前出・政界アナリスト) いずれにしても、麻生の活発なパフォーマンスと小沢の行脚を照らし合わせると、衆院は任期いっぱいではなく、6月か7月には選挙演説車がガナリ立てて走るのは必至だ。(文中敬称略)
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社会 2009年04月27日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(36)
幸いなことに徳尾錠はよく売れて、仕事はいくらでもあった。 職人を2人雇った。以前は足袋職人をしていたという徳次よりだいぶ年長の大熊と、小学校を出たばかりの13歳の少年だ。徳次は作業もしたが、営業に出たり、雑用をこなしたりで、床に就くころには大抵、日が替わっていた。まさに馬車馬のように働く日々だったが、自分が独立して事業をやっているという意識、将来に対する希望が徳次を駆り立てていた。徳次には働くことが無上に楽しかった。 独立して3カ月がたった年の暮れには120円近い収益を上げ、巻島に借りた40円は翌月には返済していた。徳尾錠の追加注文もきた。製作技術も進んで改良を加えたより洒落(しゃれ)たものをさらに手早く作れるようになった。 洋傘の付属品については、金具に模様を付けることを徳次は思いついた。それまでは手間のいる難しいものとされていたが、転写(ロール写し)と呼ぶやり方で簡単に石突の金具に模様を彫り込むことに成功した。この模様付き石突も人気になったが、技術は徳次のオリジナルであった。 独立して1年もしないうちに、松井町の家では材料も置ききれなくなり、巻島の世話で松井町からは目と鼻の近さの本所林町(現・千歳3丁目付近)に引っ越した。家賃は月5円50銭。職人も1人増やした。洋装はまだ普及していなかったので、バックルの注文は下火になり、洋傘の付属品と水道自在器の部品が仕事の中心になっていた。 少し時間にゆとりのできた徳次は、さっそくかねて考えていた水道自在器の改良に取り掛かった。9つ必要だった部品を3つにまで減らすことに成功し、試作品を巻島に見せてみると「こいつは売れる、間違いねえ」と太鼓判を押された。徳次は”巻島式五号水道自在器”として特許を取った。この特許は、まだ20歳に手の届かない徳次に資金を貸してくれたり、ほかにもさまざまな世話になっていたので、巻島にいずれは譲るつもりで“巻島式”と命名したのだ。 巻島式水道自在器は爆発的な売れ行きだった。(経済ジャーナリスト・清水石比古)
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社会 2009年04月27日 15時00分
名古屋市長選 河村たかし氏圧勝で民主に追い風、自称「総理を狙う男」の桶狭間後
任期満了に伴う名古屋市長選は26日投開票され、無所属新人の前衆院議員河村たかし氏(60)=民主推薦=が、自民、公明両党の県組織が支持する元中部経済産業局長の細川昌彦氏(54)、愛知県商工団体連合会長の太田義郎氏(65)=共産推薦=らを大差で破り、初当選。民主党に追い風を呼んだ。名古屋弁丸出しの自称「総理を狙う男」が、“桶狭間”後に仕掛ける謀略が注目される。 河村氏は選挙事務所前で、地元中日ドラゴンズの帽子をかぶって水をかぶる衆院議員時代からのパフォーマンスを披露した。約100人の支援者を前に、おなじみの名古屋弁で「ろくでもない政治はやめ、歴史に残るナゴヤをみんなでつくろう。協力してちょ」と勝利宣言。「どえりゃーうれしいですわな」と喜びを爆発させた。 生まれも育ちも名古屋。郷土の英傑、織田信長を敬愛する。選挙戦では信長の「楽市楽座」を「庶民革命」ととらえ、市民税10%減税や住民自治強化を公約に掲げた。名古屋発庶民革命の第一歩として、「民主党も河村の言っている(政策)ことをやればいいんです」と自信たっぷりに話した。 河村氏の口癖は「総理を狙う男」。しかし民主党代表選では20人の推薦人を集められず、テレビ討論番組などでさんざん茶化されてきた。信長が桶狭間の戦いで今川義元を破り天下統一の道を突き進んだように、河村氏もこの民主党への恩返しをきっかけに中央政界への発言力を強めそう。今後の動向が注目される。 民主党は、河村氏の圧勝が小沢一郎代表の公設秘書が起訴された西松建設巨額献金事件による士気停滞ムード脱却の足掛かりになると期待している。ただ、河村氏の知名度の高さが主な勝因との見方が大勢で、党勢浮揚に直接結び付くかは見通せないでいる。 それでも小沢氏の進退問題の再燃は当面回避される。鳩山由紀夫幹事長は26日夜、小沢氏の進退問題との関係について「自公候補に圧勝した。プラスの影響は当然ある」と記者団に述べ、今回の勝利が、代表続投への追い風になるとの認識を表明。輿石東参院議員会長は「反転攻勢の時を迎えた」と、今後の国会論戦への意欲を示した。
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社会 2009年04月25日 15時00分
草なぎ容疑者はそんなに悪くないけど…ジャニーズ事務所のふざけた報道規制
泥酔全裸逮捕された人気アイドルグループSMAPの草なぎ剛容疑者(34)は24日、処分保留で釈放され、同日夜に謝罪会見を開いた。「飲み過ぎたのは僕の弱さ」などと反省しきりの草なぎさんに対し、所属先のジャニーズ事務所は相も変わらぬ横暴ぶり。“SMAP抜きじゃ商売できねえだろう”とばかり取材規制を敷き、インターネット上の写真使用を認めないなどの暴挙に出た。 トップアイドルのフルチン逮捕事件とあって、会見場がセッティングされた東京・北青山のレコード会社の会議室には、約300人の報道陣が集まった。草なぎさんは黒いスーツ姿で登場。直立不動で「たくさんお酒を飲んで、自分でも訳が分からなくなってしまった。大人として恥ずかしい行動を起こしてしまった。本当に反省しています」と深々と頭を下げた。表情は終始こわばったままだった。 釈放された当日に会見し、繰り返し頭を下げる姿には男らしささえ感じた。しかし、ちっとも男らしくないのがジャニーズ事務所。集めた報道陣に対して、テレビの生中継NGを譲らず、インターネットなどでの映像使用や画像使用を認めないなど取材条件を厳しく制限した。これをめぐり報道側と押し問答になる場面もあったという。 関係者によると、午後9時スタートの会見はあらかじめ30分と限定され、オンエア解禁時間は会見終了後の同9時半に設定された。これに対し、生中継を予定していたNHKは抵抗。結局、会見開始時刻が迫ったこともあって取材条件をのんだというが、9時の「ニュースウオッチ9」では3分遅れで中継。リアル生中継ではないものの解禁時間を破ったため、会見後に事務所から厳重注意を受けたという。 関係者の話などを総合すると、事務所サイドの主張は、会見場が狭く、報道陣をひとりでも多く入れるためには、スタッフが多くなる生中継は難しいとのこと。報道陣からは「謝罪する気が感じられない」などの声が出たという。 東京区検は同日、草なぎ剛さんを釈放した理由について「証拠隠滅や逃亡の恐れがない」と説明した。今後、在宅のまま捜査し処分を決める方針。 警視庁によると、草なぎさんは23日午前3時ごろ、東京都港区赤坂の公園で全裸になったとして、赤坂署に公然わいせつで現行犯逮捕された。逮捕時は泥酔状態だった。 草なぎさんは会見で、逮捕されたときの記憶はなかったとした。「意識がなくなっていて、次に意識があったときは警察にいた。まだ酔っていたので、夢なのか現実なのか分からないような気分で、ふわふわした感じだった」と振り返った。 過去にも飲酒についてSMAPのメンバーから注意されたことがあったといい「飲みすぎてしまったのは僕の弱さ」と語った。釈放後、メンバーに電話をかけた際、今後の活動について「またみんなで考えよう」と励まされたことを明かした。 弁護士は具体的な復帰の時期について「関係者と協議し、処分の行方を考慮しながら決めたい」としている。
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社会 2009年04月25日 15時00分
永田町血風録 政権交代へのカギを握る小沢の行脚
政権交代まであとわずか。 政府が4月末に国会に提出する平成21年度補正予算案への対応について、民主党の代表・小沢一郎は、「政権交代に重要な局面だから、私なりに言うことは言う」と、これからの総選挙に向けての最終局面に臨む姿勢をこう披歴した。 それというのも首相・麻生太郎が「解散・総選挙」を口にしたことから、一気に政局の機運が高まった。これを受けてライバルの小沢が民主党の主だった“サムライ”たちを前にして「近い将来、行動を開始するぞ!」と語り、総選挙前の地方行脚を行うことを明言した。 小沢は、民主党の参院議員会長・輿石東や副代表・石井一、議院運営委員長・西岡武夫らとの酒席で、いつもと違って次期総選挙への意気込みを語った。この席にいた民主党の“参謀”たちはすっかり煽(あお)られ、マジマジと小沢の顔を見た。 「これは、大将(小沢)がその気になったな。あの西松建設のことも、もう国民の頭の中からは徐々に消えたし、それこそ反転攻勢をかけるのは今だ。さすがに選挙上手の大将だ」 と感服しながら、小沢と酒を酌み交わした。これまでの選挙では、小沢が行脚したところはその勝率がすごくいい。自民党はその小沢が行脚することをことのほか嫌っている。先の参院選では小沢が動いたことで大きくプラスして、攻守所を変えた。 ねじれ国会の遠因は小沢の行脚に尽きる。自民党の幹事長・細田博之は、何よりも小沢の行脚が気にかかる。西松建設問題で小沢が動けなかったころは、「今こそ自民党が浮上するチャンス」とばかりに得々と語った。 しかし、麻生はそれでも総選挙については「ゴー」の号令をかけなかった。自民党内の反麻生の面々は、「ちょっと反応がなさ過ぎるな。そのうち民主党から巻き返しを食らうよ」と、麻生に対してこう苦言を呈していた。 だが麻生は、「政局(選挙)はオレが決める」と重い腰を上げなかった。そうこうしているうちに自民党は地方選で勝ったものの、民主党の支持者数との差はそれほどではなく、支持率では民主党と自民党が逆転の兆しを見せている。 小沢は、「今はまだ力は拮抗(きっこう)している。逆転のチャンスはオレの動きにかかってきたな」と、その酒席でこう言って、行脚する気構えを表に出した。民主党の候補者の面々は、大将・小沢に頼りながら政権交代のための動きを活発にし始めた。 7月、その総選挙が行われると言われている。さあ戦いはこれから。小沢は気色ばんでいる。(文中敬称略)
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社会 2009年04月24日 15時00分
草なぎ剛のフルチン写真流出危機
公園で全裸になったとして人気グループSMAPメンバーの草なぎ剛(くさなぎ・つよし)容疑者(34)が公然わいせつの疑いで逮捕された事件で、警視庁赤坂署はきょう24日、草なぎ容疑者を送検する。所属するジャニーズ事務所は本人の活動を当面のあいだ自粛すると発表。CM、出演番組の差し替えなど関係各所に波紋が広がっている。草なぎ容疑者のフルチン画像流出も心配される。 前代未聞のトップアイドルグループの一員によるフルチン騒動。逮捕の端緒は一本の電話だった。23日午前2時55分、東京ミッドタウン(東京・港区)に隣接する檜町公園内で酔っ払いが騒いでいるとの110番通報が近所に住む男性からあった。 警視庁赤坂署の警察官3人が現場に駆けつけてみると、裸足にスッポンポンの状態で芝生の上にあぐらをかいていたのはSMAPのメンバー草なぎ剛容疑者だった。職務質問すると「裸になって何が悪い」と叫び、その後意味不明な言葉をしゃべって暴れ出したという。 警察官は手足をばたつかせる草なぎ容疑者を全裸のまま保護用シートでくるんで拘束。頭だけ出した恥ずかしい姿で、3人がかりでシートごとパトカーまで運ばれた。 赤坂署は公然わいせつ容疑で同3時2分、現行犯逮捕。その際「手錠はされなかった」という。 痴態の現場となった檜町公園に向かった。公園は緑や花があふれ、赤坂中学校が隣接している。草なぎ容疑者が全裸であぐらをかいていたのは、公園北側の階段を上がって3つ目の外灯から東に15メートル入った地点。約10メートル離先に脱ぎ捨てたジーパン、ジージャン、ポーチや財布などが置いてあった。世田谷区から来たという女子高生らは「これで芸能界引退とかになったら絶対イヤ」と話した。 午後0時55分、草なぎ容疑者は原宿署に身柄を移送されるため、100人を超える報道陣の前に一瞬だけ姿を現した。自前の水色のTシャツに乱れたままの髪。表情はうつろで、いつも以上に色白く頬がこけて見えた。 心配されるのは、果たして日本のトップアイドルのフルチン姿を撮影した人物がいるかどうかだ。昨年、香港のトップスターらのわいせつ写真がネット上に流出した事件が目新しい。もし、草なぎ容疑者の痴態がファイル交換ソフトなどを介してネット上に流出した場合、天下のジャニーズ事務所といえども回収は事実上不可能となる。 赤坂署によると「逮捕時、公園内には少なくとも一人がいて、そんなに遠くない距離で騒ぎを見ていた」という。さらに、高層住宅が多いこの近辺では、マンションの窓から大声を張り上げる裸の男を見たという目撃情報が続々。“スクープ撮”した人物は存在するのか。(関 淳一)◎露出癖疑惑と江頭2時50分との関係 警視庁赤坂署は23日午後、東京都港区にある草なぎ容疑者の自宅マンションを家宅捜索した。捜索は約30分で終了。押収物はなかった。フルチン案件に伴うガサ入れは異例のことで、業界内では一時、芸能界薬物ルートとの関係や露出癖を疑う声が噴出した。結果的に疑いは晴れつつあるが、今度は江頭2時50分とのただならぬ関係がクローズアップされている。 赤坂署は逮捕後に尿検査を実施、薬物反応は出なかったという。同署は家宅捜索について「動機や事件の背景を探るため」と説明。全裸になった動機や背景が自宅にあるとすれば、それは露出性向を示す物証にほかならない。事件取材に精通するジャーナリストは「泥酔してフルチンになるなんてトップアイドルのすることじゃない。逮捕時の尋常ではない暴れ方からアッパー系の薬物使用を疑うとともに、露出癖がないかチェックしたのだろう。部屋から露出系AVが出てきたら大変だった」と話す。 草なぎ容疑者は調べに、「何で裸になったのかは覚えていない」と供述。連行されてからも酔いがさめず、机に突っ伏すことさえあったという。 泥酔していたとはいえ、なぜ裸になったのか。業界関係者は「裸芸を売りとするお笑いタレント江頭2時50分の悪影響ではないか」と指摘する。 1996年、テレビ番組の企画でトルコを訪れた江頭は、肛門にでんでん太鼓を差した姿を公然にさらし、わいせつ物陳列容疑で逮捕された過去を持つ。「草なぎ容疑者はそんな江頭が大好きで、自らの冠番組に準レギュラー出演させるほど心酔していた。トルコの事件で江頭は、座禅したまま縄跳びするパフォーマンスでは拍手喝さいを浴びている。草なぎ容疑者は逮捕時、全裸で芝生の上にあぐらをかいていたというから、酔って江頭にでもなった気分だったのでは」(同関係者) アイドルらしからぬ感性が招いた悲劇なのかもしれない。(高)