政府が4月末に国会に提出する平成21年度補正予算案への対応について、民主党の代表・小沢一郎は、「政権交代に重要な局面だから、私なりに言うことは言う」と、これからの総選挙に向けての最終局面に臨む姿勢をこう披歴した。
それというのも首相・麻生太郎が「解散・総選挙」を口にしたことから、一気に政局の機運が高まった。これを受けてライバルの小沢が民主党の主だった“サムライ”たちを前にして「近い将来、行動を開始するぞ!」と語り、総選挙前の地方行脚を行うことを明言した。
小沢は、民主党の参院議員会長・輿石東や副代表・石井一、議院運営委員長・西岡武夫らとの酒席で、いつもと違って次期総選挙への意気込みを語った。この席にいた民主党の“参謀”たちはすっかり煽(あお)られ、マジマジと小沢の顔を見た。
「これは、大将(小沢)がその気になったな。あの西松建設のことも、もう国民の頭の中からは徐々に消えたし、それこそ反転攻勢をかけるのは今だ。さすがに選挙上手の大将だ」
と感服しながら、小沢と酒を酌み交わした。これまでの選挙では、小沢が行脚したところはその勝率がすごくいい。自民党はその小沢が行脚することをことのほか嫌っている。先の参院選では小沢が動いたことで大きくプラスして、攻守所を変えた。
ねじれ国会の遠因は小沢の行脚に尽きる。自民党の幹事長・細田博之は、何よりも小沢の行脚が気にかかる。西松建設問題で小沢が動けなかったころは、「今こそ自民党が浮上するチャンス」とばかりに得々と語った。
しかし、麻生はそれでも総選挙については「ゴー」の号令をかけなかった。自民党内の反麻生の面々は、「ちょっと反応がなさ過ぎるな。そのうち民主党から巻き返しを食らうよ」と、麻生に対してこう苦言を呈していた。
だが麻生は、「政局(選挙)はオレが決める」と重い腰を上げなかった。そうこうしているうちに自民党は地方選で勝ったものの、民主党の支持者数との差はそれほどではなく、支持率では民主党と自民党が逆転の兆しを見せている。
小沢は、「今はまだ力は拮抗(きっこう)している。逆転のチャンスはオレの動きにかかってきたな」と、その酒席でこう言って、行脚する気構えを表に出した。民主党の候補者の面々は、大将・小沢に頼りながら政権交代のための動きを活発にし始めた。
7月、その総選挙が行われると言われている。さあ戦いはこれから。小沢は気色ばんでいる。(文中敬称略)