ここに、アメリカよりむしろヨーロッパで有名になった実話とも伝説とも思われるタイムトラベラーの話がある。
1950年6月の夜11時過ぎ、劇場がはねて出てきた観客も多く、タイムズ・スクエアはいつも通り活気を呈していた。車が行きかう道路上にどこからともなく1人の男性が現れたのはちょうどその時だった。30代と思われるその男性は、髭といい、着ている服といい、時代がかって古い時代の人物のようだった。
パニックに襲われたその男性が慌てて走り出したところ、折悪しくタクシーに轢かれて即死してしまった。
その後の警察の調べによると、彼の財布には古い時代のお金が入っており、彼の名前宛ての1876年の消印が押された手紙も持っていたという。彼の身元はなかなか割り出せなかったが、1人の警官が1939年の電話帳にルドルフ・フェンツの名前を見つけた。そこに電話をすると、彼の息子の未亡人という女性が出て、義父に当たるルドルフは1876年にタバコを吸ってくる、と言って外に出たまま行方不明になり、捜索願いも出している。
そして74年後にタイムズ・スクエアに忽然と現れて車に轢かれてしまった事になる。ルドルフ・フェンツはタイムトラベラーだったと多くの人々が信じているという。
(セリー真坂)