『ダッ!ダッ!脱・原発の歌』はアイドル・ソング専門配信チャンネルA.I.S.Aで6月8日に初披露され、6月11日の新宿の脱原発アクションでも歌われた。アイドルが社会的メッセージの強い曲を歌うだけでも話題であるが、かわいらしいアイドル・ソングと辛辣な歌詞のギャップが原発に否定的な市民の間で評判になっている。
歌詞には「忘れない」という言葉が繰り返されている。原発の害悪や放射能汚染被害を歌うだけでなく、原発事故や原発推進派の嘘を忘れないことを強調する。これは斉藤和義の反原発ソング『ずっとウソだった』に通じるものがある。『ずっとウソだった』も原発の安全神話が嘘だったことを強調している。
制服向上委員会は1992年に結成された女性アイドルグループの老舗である。国民的アイドルグループとなったモーニング娘。やAKB48に影響を与えた存在である。モー娘。がデビュー時にテレビ番組『ASAYAN』でMCの岡村隆史から「制服向上委員会か」と突っ込まれた話は有名である。
女性アイドルグループの源流としては、おニャン子クラブが挙げられる。しかし、おニャン子クラブがヤンキー御用達であったのに対し、モー娘。やAKB48はヲタという言葉が生まれるほどヲタク層をコアなファンとする点で性格の断絶がある。アイドル・ファン層の転換には、「清く正しく美しく」をモットーとする名門女子高の優等生的な制服向上委員会のイメージが大きく寄与している。
制服向上委員会は日本国憲法第9条を肯定する『理想と現実』や地上波デジタル移行を批判する『TVにさようなら』など社会性の強い歌を発表してきた。ボランティアなどの社会活動にも熱心である。『ダッ!ダッ!脱・原発の歌』も、これまでの活動の延長線上にある。
制服向上委員会オフィシャルサイトでは「悪政を真似て選挙をし、無駄なエネルギーを消費する事より」とAKB48への対抗意識を明らかにしており、ネット上では脱AKBで脱原発との表現も生まれている。タブーに挑戦する社会派アイドルの反原発ソングが、どれだけの広がりを持つか注目である。
(林田力)