新日本
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スポーツ 2016年08月07日 12時00分
新日本G1中盤戦はオカダがAブロックを独走! Bブロックは大混戦!
新日本プロレス真夏の最強決定戦『G1クライマックス26』は中盤戦を終えた。 7・28所沢大会から8・4福岡大会までを振り返りたい。<Aブロック>オカダ・カズチカ 5勝1敗 10点真壁刀義 4勝2敗 8点丸藤正道 4勝2敗 8点棚橋弘至 3勝3敗 6点後藤洋央紀 3勝3敗 6点バッドラック・ファレ 3勝3敗 6点石井智宏 2勝4敗 4点タマ・トンガ 2勝4敗 4点SANADA 2勝4敗 4点天山広吉 2勝4敗 4点▼7・28所沢○真壁vs天山×○SANADAvs後藤×○石井vs丸藤×○オカダvsタマ・トンガ×○棚橋vsファレ× 序盤で起きた番狂わせの嵐は中盤戦に入っても止まることがなく、SANADAが後藤から、石井が丸藤から勝利を収めた。真壁は天山を破り無傷の4連勝。一方、開幕から3連敗と連覇へ向け絶対絶命のピンチだった棚橋は、苦手のファレを下し初白星。エアギターを3回披露すると「ちょっくら2連覇してきます」と宣言。「会場の皆さーん! 愛してまーす!」の叫びで大会を締めた。▼7・31岐阜○タマ・トンガvs石井×○ファレvsSANADA×○丸藤vs真壁×○オカダvs天山×○棚橋vs後藤× 岐阜大会はタマ・トンガが石井を破る波乱のスタート。丸藤は真壁のパワーに苦しむも、不知火で逆転勝ち。真壁は初黒星。後がない天山はオカダに猛攻を仕掛けるが、最後はムーンサルトを狙った天山にドロップキックを放ったオカダがジャーマンからのレインメーカーで完勝した。メインでは地元出身の棚橋がハイフライフロー2連発で勝利。「岐阜の! 誇りを胸に、『G1』、ちょっくら2連覇して来ます」と地元のファンに連覇を約束した。▼8・3鹿児島○ファレvs天山×○後藤vsタマ・トンガ×○丸藤vsSANADA×○棚橋vs石井×○オカダvs真壁× 3,202人超満員の観衆で盛り上がった鹿児島大会。時代は違えどもお互いに全日本プロレス出身という共通項がある丸藤とSANADAの初対決は丸藤が接戦を制したが、試合後のバックステージで丸藤は「あいつはプロレス界の未来だ」と称賛。SANADAも「もう一度やる」と再戦を誓った。メインではオカダが今シリーズ絶好調の真壁に苦戦するもレインメーカーで勝利。同点対決を制した。試合後には「真壁さん、甘くなかったよ、ホント」と苦しい闘いだったことを明らかにした。<Bブロック>マイケル・エルガン 4勝2敗 8点内藤哲也 4勝2敗 8点柴田勝頼 3勝3敗 6点永田裕志 3勝3敗 6点矢野通 3勝3敗 6点YOSHI-HASHI 3勝3敗 6点ケニー・オメガ 3勝3敗 6点中嶋勝彦 3勝3敗 6点本間朋晃 2勝4敗 4点EVIL 2勝4敗 4点▼7・30愛知○矢野vs本間×○YOSHI-HASHIvsEVIL×○中嶋vs永田×○エルガンvsケニー×○柴田vs内藤× Bブロックでも番狂わせの嵐は止まず。愛知大会では、YOSHI-HASHIがEVILに、中嶋が永田に勝利。開幕3連勝だった永田に土をつけた。セミではエルガンがケニーを返り討ち。メインでは柴田が内藤を絞め落として2勝目をあげる。試合後柴田は負傷している右肩を押さえながら「内藤、お前、この負け、なかったことにすんなよ」と内藤に対して注文をつけた。▼8・1高松○YOSHI-HASHIvs中嶋×○エルガンvs永田×○矢野vs柴田×○ケニーvsEVIL×○内藤vs本間× 今シリーズ好調をキープしているYOSHI-HASHIが中嶋に勝利すると、エルガンは永田をパワーで圧倒。矢野は柴田を巧みに丸め込み僅か65秒で秒殺した。メインではかつての盟友である内藤と本間がギリギリの好勝負を展開。観客は大本間コールで後押ししたが、すべては内藤の手のひらの上に転がされていたのか、最後はデスティーノで内藤が20分を超える熱戦を制し、「LOS INGOBERNABLES de JAPONによる、LOS INGOBERNABLES de JAPONのための『G1』、この夏の結末は、もちろん! トランキーロ…あっせんなよ」と叫び大会を締めた。▼8・4福岡○矢野vs永田×○エルガンvsYOSHI-HASHI×○EVILvs本間×○柴田vsケニー×○内藤vs中嶋× 矢野が永田を場外で左右の足をテーピングでぐるぐる巻きにしてリングに生還しリングアウト勝ちを収める頭脳? プレーで幕を開けた福岡大会。永田は3連勝からの3連敗という最悪の結果に。初対決となった柴田対ケニーは片翼の天使を狙ったケニーをスリーパーで捕獲した柴田がPKで勝利。メインでは地元出身の中嶋が内藤を相手に燃えていたが、必殺のパーティカルスパイクをデスティーノで切り返され万事休す。正調のデスティーノで敗れた。試合後、内藤は「ベルトは落としてしまいましたが、しっかりとメインイベンターとして福岡に帰ってきました」と堂々としたマイクで大会を締めた。 これで、A・B両ブロックともに、公式戦6試合終了。残るは3試合となった。Aブロックでは本命のオカダが独走状態。やはり8・12両国大会の棚橋戦が鍵となりそう。ノアの威信をかけても決勝進出が義務付けられている丸藤も8.6大阪大会の棚橋戦がポイントになるだろう。連覇を狙う棚橋はオカダ戦までひとつも落とさなければミラクルが起こるかもしれない。 Bブロックはエルガンと内藤がトップの8点だが、内藤は本人も警戒している8.7浜松大会で行われる同門対決EVIL戦の結果が大きく左右しそう。8・13両国大会ではケニーとの対決も控えている。内藤に比べるとエルガンは大物との対決を終えており、矢野、本間、中嶋を相手に取りこぼさなければ優位であることに変わりない。しかし続く6点が6選手と大混戦なだけに、Aブロックより読み難い部分がある。 1年で一番過酷なツアーを制するのは誰だ? いよいよG1は終盤戦に突入する。(どら増田)<新日Times VOL.29>
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スポーツ 2016年07月31日 12時00分
棚橋弘至がまさかの3連敗で連覇に赤信号!新日本G1波乱の幕開け
新日本プロレス真夏の最強決定戦「G1クライマックス26」が18日、札幌・北海きたえーるで開幕した。A、B両ブロックの開幕から3試合を振り返ってみたい。 開幕戦ではAブロック公式戦が行われ、棚橋弘至が初出場のSANADAに、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカがノアから参戦した丸藤正道に敗れるという波乱の展開に。開幕戦の最後をノアの選手が締めるという新日本勢にとっては屈辱的な出来事があった。 Bブロック公式戦の初戦となった22日の後楽園ホール大会では、YOSHI-HASHIが前IWGPインターコンチネンタル王者ケニー・オメガを新技カルマで破る大金星を挙げる。YOSHI-HASHIは「試合前に俺が勝つと思った人は少なかったはず。でもこれでコイツちょっとやるんじゃないか? って思ったヤツが増えたでしょ。その繰り返しが積み重なることで、ものごとは一瞬で変わる」とケニーの一瞬のスキを逃さずに畳み込んで勝てた喜びを語った。この日はさらに、永田裕志が“本命”内藤哲也に完勝。EVILはIWGPインターコンチネンタル王者マイケル・エルガンに力負けすることなく圧勝。メインでは本間朋晃がNEVER無差別王者の柴田勝頼に勝利を収めるなど、怒涛の金星ラッシュに会場は最後まで興奮の坩堝だった。 この結果により、IWGPヘビー、インターコンチ、NEVERの新日本三大王者が揃って初戦を落としたことになる。43年ぶりに開催された23日の東京・町田大会。ここでも波乱は止まらない。バッドラック・ファレが丸藤を圧殺。丸藤はノアにはいないタイプであるファレのパワーファイトに終始押されていた。オカダはSANADAを返り討ちにして初日を出したが、メインでは地元から近い真壁刀義が大奮闘。棚橋を相手に必殺フルコースで勝利した。 24日は再び東京・後楽園でBブロック公式戦が行われ、注目の柴田vs中嶋勝彦は柴田が勝ち、メインでは内藤がエルガンに勝利。最後はマイクで内藤節を炸裂させ大会を締めた。 25日の福島大会は、開幕から2連勝と小島聡から譲り受けた“最後のG1”で、好調なスタートを見せている天山が、丸藤と対戦。この試合が手に汗を握る大熱戦となり、最後は丸藤が不知火で勝利したものの、最後まで怯まずに向かっていった天山に対して大きな拍手が送られ、丸藤も敬意を払って一礼した。前日の後楽園大会では「明日から行きます」と仕切り直しを誓っていた棚橋だが、タマ・トンガが盟友カール・アンダーソンの必殺技ガンスタンを見事に決めて棚橋から大金星を挙げる。棚橋はまさかの3連敗でいよいよ後がなくなった。メインではオカダがCHAOSの仲間になってから初めてとなる後藤洋央紀との対決を制して2勝目。オカダはペースを取り戻したように見える。 27日の長野大会。永田がYOSHI-HASHIを破り無傷の3連勝とすると、メインではNEVER王者の柴田とインターコンチ王者のエルガンによるチャンピオン対決が実現。開幕2連敗中のエルガンが奮起し、柴田をパワーで圧倒。うれしい公式戦初勝利を挙げ、マイクで大会も締めた。 3試合を終えた両ブロックの成績は次のとおり。(※勝ち2点、引き分け1点、負け0点)<Aブロック>真壁刀義 6点天山広吉 4点オカダ・カズチカ 4点後藤洋央紀 4点丸藤正道 4点石井智宏 2点SANADA 2点バッドラック・ファレ 2点タマ・トンガ 2点棚橋弘至 0点<Bブロック>永田裕志 6点本間朋晃 4点内藤哲也 4点中嶋勝彦 4点ケニー・オメガ 4点柴田勝頼 2点マイケル・エルガン 2点YOSHI-HASHI 2点EVIL 2点矢野通 0点 序盤3試合では両ブロックともに得点配分が同じ結果となった。しかし、序盤の結果がそのまま最後まで反映されたのは第1回大会で全敗し、第6回大会では逆に全勝優勝を収めた長州力ぐらいで、G1は中盤から終盤にかけてもつれていく傾向が強い。出場選手が増えてきた近年は特にそういうイメージがあるが、中盤以降に連敗すると優勝争いから脱落してしまうだけに、どの選手もまだまだ予断を許さない状況にあるが、棚橋が序盤で3連敗したのは痛い。優勝ラインが3敗までと想定すると、このあと6連勝する以外道はなく、昨年優勝の棚橋連覇への道は極めて厳しいと言わざるを得ない。はたして棚橋弘至にミラクルは起きるのだろうか?(どら増田)<新日Times VOL.28>
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アイドル 2016年07月30日 15時40分
【帰ってきたアイドル親衛隊】きっと無かったことにしてると思うけど…ジャガー横田が歌う『愛のジャガー』をまた聞いてみたい
自分の子供のころは、多くの少年はプロレスが大好きで、テレビ放送があった翌日には、学校ではいつもプロレスの話題になることは当たり前だった。当時はアントニオ猪木の新日本プロレスとジャイアント馬場の全日本プロレス、そして女子プロレスの3つの団体があり、どの団体も子供からの支持は絶大だった。私もそれに漏れることなくドップリとプロレスにハマっていた少年だった。 その中でも女子プロレスは男子と違った楽しさがあり、特に1970年代後半のビューティーペア(マキ上田・ジャッキー佐藤)ブームはプロレスの枠を超えて社会現象になるほどだった。そんなビューティーペアが解散した79年ごろから、若手の横田利美(後のジャガー横田)が注目されるようになり、81年には女子プロレス最高峰のベルトと言われている「WWWA世界シングル王座(通称赤いベルト)」を当時のチャンピオンだったジャッキー佐藤を倒して奪取し、王座に輝いた。 女子プロレスは、完全にジャガー横田がエースとなり、新たな時代をスタートさせた。チャンピオンになった横田は、世界の強豪を相手に、ベルトの防衛戦を重ねていくのだが、ラ・ギャラクティカとの防衛戦で、史上初となる髪切りデスマッチを決行することになった。熱戦の末、試合に敗れてしまい、リング上で坊主頭になってしまった横田だが、これまでの凛々しい姿以上に恐さに磨きがかかり、この敗戦をキッカケにさらにパワーアップしていった。 このころの私はまだテレビの視聴者にすぎなかったが、この試合の翌年の84年1月に女子プロレスを後楽園ホールで初めて生観戦をすることになった。ここで何と横田がリリースしたばかりの新曲『愛のジャガー』をリング上で披露したのだ。髪切りデスマッチから数か月しか経っていない時期でもあるので、髪の毛は微妙なショートカットだったが、ピンクのパンツスーツを着て、堂々と歌い上げていた。試合をしているときの闘志ムキ出しの顔と違い、ちょっとアイドルっぽく見える部分もあって可愛さも見え隠れした。休憩時間には横田のサイン会が行われて、私はもちろん参加した。話してみると優しいお姉さんのようで、これまでテレビで見ていたイメージをイイ意味で覆してくれた。 女子プロレスのエースとなった横田は、ライバル選手を蹴落とし、後輩の大きな壁になって突き進んで行った。しかし、86年に大きなケガをしてしまい、長期休養をすることになるのだが、この年で年齢が25歳になるということで、志半ばで引退することになってしまった(当時の女子プロレスは25歳引退制度があった)。引退後はコーチとなり、その後フリーという立場で女子プロレスラーを続行した。それから95年に吉本女子プロレスJd’にコーチ兼任選手として参加。98年には二度目の引退となった。 確かそのころに私が池袋駅構内を歩いていたら目の前から横田が歩いてきた。凄い偶然で嬉しかったのだが、全身クロのコーディネイトで、鋭い視線で歩いていたので、その強そうなオーラに圧倒されてしまった思い出がある。 それから芸能の仕事をメインでするようになるのだが、女子プロレスのリングドクターを担当していた木下博勝医師と結婚。40歳を過ぎての高齢出産が話題になった。産休後に芸能界に戻って来て芸能活動をするのだが、それは想定内。何とこの時にプロレスの現役復帰も果たしてしまった。今でもスポット参戦ではあるが、現役でリングに立って試合をしているのだ。現在55歳の横田は最古参女子プロレスラーであるが、まだまだ元気なので、生涯現役を貫いて欲しい。 それと本人の中ではきっと無かったことにしたいことだと思うけど、かつて歌った『愛のジャガー』を再び歌ってもらいたい。旦那さんのひと押しがあれば実現する可能性も高まる気がするけど、果たしてどうなるか?(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。
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スポーツ 2016年07月25日 14時00分
プロレス解体新書 ROUND11 〈“選ばれし神の子”の試練〉 中邑真輔vsダニエル・グレイシー
今春、新日本プロレスから米WWEへと活動の場を移した中邑真輔。デビュー当初の格闘スタイルから変貌し、「イヤァオ!」と叫びながら体をクネらせる独自のファイトが、いまや米マット界でも認められつつある。 新日入団当初から大きな期待を寄せられた中邑だが、果たしてそれは当人の望むものだったのか…。中学の頃からプロレスラーに憧れていたが、周囲の勧めもあって青山学院大学に進学。中邑は同大レスリング部の主将まで務めた。 ようやく新日入門となったのは2002年。しかし、当時のプロレス界、中でも新日は総合格闘技という荒波に飲み込まれようとしていた。 PRIDEに参戦した藤田和之を筆頭に、永田裕志、安田忠夫、石澤常光(ケンドー・カシン)、小原道由らが相次いで総合格闘技のマットに挑戦。その当初には、藤田が“霊長類最強”とうたわれたマーク・ケアーに勝利し、'01年の大みそかには安田もジェロム・レ・バンナに涙の勝ち名乗りを上げる金星もあったが、一方で同年には藤田と永田がミルコ・クロコップに連敗するなど、格闘技路線における新日の先行きは決して明るいものではなかった。 そこに入門してきたのが中邑である。レスリングの実績があり、さらには和術慧舟會で総合の練習もしていた。加えて、体格に恵まれマスクもいいとあっては、新日関係者が色めき立つのも当然だった。 デビュー戦は'02年8月、藤田和之プロデュースと銘打たれた新日の日本武道館大会。相手に選ばれたのは元IWGP王者で、当時は魔界倶楽部のリーダー格だった安田。試合順は休憩明けの第7試合という破格の扱いだった。 いざ試合となっても素早いタックルからマウントを奪い、安田の巨体をジャーマン・スープレックスで投げ捨てるなど見せ場はたっぷり。結果、安田のフロントチョークで敗れたとはいえ、今後の飛躍を大いに期待させるパフォーマンスを披露してみせた。 これにより中邑には“選ばれし神の子”というキャッチフレーズが与えられた。 「この頃の新日で“神”といえば、もちろん創業者であるアントニオ猪木のこと。つまり、猪木に選ばれた中邑が、当時、猪木が執心していた格闘技路線に進むことを意味していました」(プロレスライター) だが、幼い頃から祖母に抱かれてテレビのプロレス中継に親しみ、プロレスゲームに熱中してきたという中邑にとって、格闘技路線は本来の望む姿とは別物だった。 「新日入団前のファンの時代には、『誰かプロレスラーが格闘家に落とし前をつけてくれ』との思いを抱いていたそうで、それを自身が担うことにも矛盾はなかったでしょう。それでもプロレスラーとしての修行もそこそこに、格闘技路線へ進むことへの違和感は少なからずあったのでは…」(同) しかし、そんな中邑の本音から離れて事態は進んでいく。デビュー戦を終えると間もなく米国の新日LA道場へ飛び、総合格闘技のトレーニングを積むことになった。 そうして迎えた同年の大みそか『INOKI BOM-BA-YE2002』において、中邑のデビュー第2戦が行われた。 人気急上昇中のボブ・サップvs高山善廣をメーンとし、藤田vsミルコのリベンジマッチ、吉田秀彦vs佐竹雅昭の柔道と空手対決などがラインナップされる中、中邑はヘンゾ・グレイシーの従弟にして弟子のダニエル・グレイシーに挑むことになった。 ところが、周囲の期待も空しく、試合はダニエルの完封といっていい内容に終わった。左のリードブローからタックルに入ったものの、中邑はそこからの攻め手を欠いた。 途中で眉尻をカットする不運もあったが、終始、グラウンドで主導権を握るダニエルに対し、中邑は反撃らしい反撃もできず、最後は見え見えの腕十字狙いからしっかりと極められて、2Rタップアウトとなったのだった。 「ダニエルもそれまでプロとしては、ノアの杉浦貴に勝ったのみで、中邑と同じくデビュー2戦目でしたが、長きにわたり柔術を学んできた経験値が違う。付け焼刃の特訓でかなう相手ではありませんでした」(格闘技記者) その後も中邑は、アレクセイ・イグナショフとの無効試合をめぐるいざこざなどがあり、格闘技戦において目覚ましい結果を残すことはなかった。 「中邑がいい意味で開き直ったのは'03年の大阪ドーム大会。新日マットに格闘色を求める猪木に反旗を翻し、リング上で鉄拳制裁された一件からです。これ以降、猪木の呪縛から解き放たれたのではないでしょうか」(前出・プロレスライター) '04年、IWGP王者のボブ・サップに挑戦表明した際、中邑は「K-1とかPRIDEとかよく分かんねえけど、一番スゲエのはプロレスなんだよ」と言い放ったが、その言葉通り格闘技のイメージを離れて、純プロレスラーとしてスター街道を歩み始めることになる。
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スポーツ 2016年07月24日 12時00分
ライガー「これが『J-CUP』だ!」Jr.オールスター『SUPER J-CUP』開幕!
プロレスジュニアヘビー級選手16人(8団体と鈴木軍)参加によるオールスター戦『SUPER J-CUP 2016』が20日後楽園ホールで幕を開けた。準々決勝、準決勝、決勝戦は8月21日に有明コロシアムで行われる。 「『J-CUP』面白いじゃないか。新日本のファンも知らなかったと思う、Eita選手のこと。知ってても、今日の試合後のあのコール、あれが『J-CUP』だよ。拳王とやったグルクン、彼もそんなに新日本のファンに知名度があるわけじゃない。けど、試合が終わってみれば、“グルクン大合唱”だよ。これが、『J-CUP』なんだ。これが、『J-CUP』の意味するところなんだよ」 DRAGON GATEのEitaを破り、1回戦を突破した獣神サンダー・ライガーは、試合後バックステージに現れると『J-CUP』の存在意義について一気にまくし立てた。 プロレスジュニアヘビー級のオールスター戦『SUPER J-CUP』は1994年に「団体を背負っているヘビー級の選手にはできないオールスター戦を、ジュニアの選手ならできるんじゃないか?」とライガーが雑誌の企画で行われた他団体のジュニアヘビー級選手との対談で提唱したことがキッカケで実現。新日ジュニアの中心選手はもちろん、当時新日本と交流があったWARからは折原昌夫が選ばれていたが、怪我により外道が代打出場。また逆に新日本と交流がなかったFMWのリッキー・フジ、ハヤブサ、みちのくプロレスのザ・グレート・サスケ、スペル・デルフィン、TAKAみちのく、SPWFの茂木正淑が参戦を果たしている。16人参加のワンナイトトーナメントで開催された第1回大会では、提唱者のライガーが準決勝でサスケに敗れるハプニングがあり、会場はサスケコールが大爆発。その模様がテレビ朝日系列『ワールドプロレスリング』で全国放送されたことにより、サスケとみちのくプロレスの名を全国区に押し上げた。 ライガーが語った「『J-CUP』の意味するところ」というのは、サスケをはじめとしたみちのく勢や、一回戦でライガーと対戦し、インパクトを残したハヤブサのような選手を生み出す力が『J-CUP』にはあるということだろう。 『SUPER J-CUP 2016』トーナメント1回戦 7・20後楽園ホール大会試合結果○マット・サイダル<ROH>(7分56秒 エア・サイダル→片エビ固め)●梶トマト<K-DOJO>○拳王<NOAH>(11分33秒 羅喉→体固め)●グルクンマスク<琉球ドラゴン>○タイチ<鈴木軍>(12分5秒 ラストライド→エビ固め)●青柳優馬<全日本>○獣神サンダー・ライガー<新日本>(9分12秒 垂直落下式ブレーンバスター→体固め)●Eita<DRAGON GATE>○ウィル・オスプレイ<CHAOS>(9分14秒 オスカッター→片エビ固め)●ティタン<CMLL>○金丸義信<鈴木軍>(10分25秒 タッチアウト→片エビ固め)●BUSHI<ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン>○田口隆祐<新日本>(14分56秒 どどんスズスロウン→片エビ固め)●原田大輔<NOAH>○KUSHIDA<新日本>(16分25秒 ミスティカ式ホバーボードロック)●石森太二<NOAH> 今回の『J-CUP』は新日ジュニアとノアジュニアで活躍している選手の強さが目立ち、普段、新日本またはノアのリングに上がっていない参加選手は一人も1回戦を突破できなかった。しかし冒頭のライガーの発言にもあるように、Eitaやグルクンマスク、梶トマトといった選手は『J-CUP』らしいインパクトを残したと言ってもいい。全日本の青柳優馬も恵まれた身体を活かして異彩を放っていた。 また新日本とノアの本隊ジュニア頂上決戦的な意味合いもあった、セミとメインの試合はどちらも手に汗を握る大熱戦で、試合中、何度も後楽園ホールが揺れた。ノア勢にとっては悔しい結果になってしまったが、田口に敗れた原田は「ノアと新日本のジュニアの闘いはまだ終わらない」と再戦を要求している。新しい闘いのキッカケになる可能性を秘めているのも『J-CUP』の魅力だ。 一回戦の結果を受けて8・21有明コロシアムで行われる準々決勝のカードが次のとおり決定した。▼ウィル・オスプレイ<CHAOS> 対 マット・サイダル<ROH>▼金丸義信<鈴木軍> 対 田口隆祐<新日本>▼獣神サンダー・ライガー<新日本> 対 タイチ<鈴木軍>▼KUSHIDA<新日本> 対 拳王<NOAH> IWGPジュニアヘビー級王者のKUSHIDAが本命であることには変わりないが、NOAHで唯一残った拳王の存在は非常に不気味。GHCジュニアヘビー級王者の金丸と田口のカードが発表されると、後楽園ホールからはどよめきが起こった。こちらも注目のカードだ。そして16年ぶり3回目の優勝を狙っているライガーは「別にこれが挑戦者決定戦とは思わないけど」と前置きをした上で、「優勝したらIWGPジュニアに挑戦したいと言ってもいいと思う」と優勝の先の目標を口にした。 ジュニア戦士たちには現在開催中の『G1』に負けない熱を『J-CUP』で見せつけてもらいたい。(どら増田)<新日Times VOL.27>
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スポーツ 2016年07月18日 16時00分
プロレス解体新書 ROUND10 〈第2回IWGP決勝戦〉 不透明な決着にファンが暴徒化
1984年6月14日、蔵前国技館。悪夢のKO敗戦からの雪辱を期して、第2回IWGP王座決定リーグ戦で決勝に進出したアントニオ猪木と、対するは因縁の相手ハルク・ホーガン。 新日本プロレスはこの1年間、御難続きだった。そのモヤモヤを晴らすような猪木の快勝をファンは期待していたのだが…。 思えば第1回IWGP決勝戦での“舌出し失神事件”以降、猪木と新日にとってはまったくロクなことがなかった。社内クーデターによる猪木の社長解任、タイガーマスクの引退宣言、UWFの設立と前田日明以下選手の大量離脱…。 その原因のすべては、時期を前後して猪木が入れ込んできた『アントン・ハイセル事業』にあった。絶好調だった新日の稼ぎのほとんどを、猪木はそのブラジルでの事業につぎ込み、さらに自身の会社である新日から借金を重ねていた。 サトウキビの廃液を牛の餌に変えるバイオ産業。今ならエコ事業として称賛されそうだが、アントン・ハイセルの問題は一切、実用段階に進まなかったことだ。 また、当時のブラジルはハイパーインフレ状態にあり、砂漠に水を撒くがごとく、つぎ込んだ資金が翌日には二束三文となっていった。そんな状況に業を煮やしたタイガーが去り、不平分子のクーデターも起きた。 もともとはUWFの設立も、猪木が新たにカネをせしめる算段からのものであり、つまり、すべては自業自得だった。だからといって不遇の状況に甘んじる猪木ではない。 「猪木抜きの新日は考えられない」 とのテレビ朝日の意向によって社長復帰を果たすと、リング内でも同様。第2回IWGP王座決定リーグ戦決勝は、猪木復権の狼煙を上げるべき舞台であった。 「今日、俺が勝って、この1年の悪夢が消えるだろうか? いや消えないだろうな。だが、今日は何としても負けられない」 試合前の控室で、猪木はそう意気込みを語っていたのだが…。予選ではアンドレ・ザ・ジャイアントやディック・マードック、マサ斎藤、長州力らを相手に全勝し、決勝進出を果たした猪木。相手はシード枠の前年覇者、ハルク・ホーガンだった。 '82年の『ロッキー3』に出演以降、その人気は沸騰。'84年1月にWWF王座を奪取して全米侵攻のエースに抜擢され、日本でもリングインの際の掛け声『一番』のプリントされたTシャツが大ヒットしていた。 シリーズ開幕戦の福岡大会では特別試合でいきなり猪木vsホーガンが組まれ、結果は猪木の暴走による反則負けとなるも、「この決着は(IWGP決勝の)蔵前でつけるぞ」と叫ぶ猪木の姿に、ファンの期待は否応なく高まっていった。 そうして迎えた決勝戦。じっくりとグラウンドで攻める猪木に対し、いら立ちを隠せないホーガン。猪木ペースで試合は進むが、ホーガンの“斧爆弾”アックスボンバーをかわして共に場外へ転落すると、そのまま両者リングアウトとなる。 観客席から湧き上がる「延長」コールを受けて協議の結果、時間無制限の延長戦に突入すると、猪木はアリキックの連発から足4の字固め。だが、ホーガンがエプロンへ逃れると、またもや両者カウントアウトとなる。 もちろん、観客は再度の「延長」コール。再延長戦が始まると、再びホーガンの斧爆弾が炸裂。フラフラの猪木はホーガンを持ち上げるが、バランスを崩して場外転落し、ファンに「またか」の悪い予感が走る。しかし、待ち受けていたのはそんな予想をはるかに超えるバッドエンドだった。 リングサイドに現れた長州力が、唐突に猪木へリキラリアット、返す刀でホーガンにも一撃を加える。斧爆弾との相打ちで両者ダウンするのを尻目に猪木がリングインすると、その勝利が告げられたのだ。 いきなり訳の分からない結末を見せられた観衆が収まるはずもなく、「カネ返せ!」コールに始まって、リング内には座布団や飲食物が際限なく投げ込まれる。一部ファンは場内の椅子や大時計を破壊するなど暴徒化し、蔵前警察署から10人以上の警官が駆けつけるまでの騒ぎとなった。 「すでに大スターとなっていたホーガンを相手に、猪木が完全勝利するのは契約上も慣習上も無理な話。大会中に先代のビンス・マクマホンが亡くなったため、『ドサクサでやっちまうか』なんて話もあったけど、それはホーガン自身が納得しなかっただろう。長州に乱入させたのは、今後、長州を売り出していこうという考えからだった」(新日関係者) 観客おいてけぼりの乱入劇は、特に前フリもないまま団体の都合だけで決行された。それでも結果的には思惑通りに長州はトップスターとなり、良くも悪くも伝説の一戦として後々まで語られることになった。 新日の歴史の中で汚点とされる暴動騒ぎも、今になって振り返ってみれば“大成功アングル”だったと言えるのかもしれない。
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スポーツ 2016年07月17日 12時00分
メイン最多出場は内藤もオカダの16年ぶり快挙に期待【新日本G1展望】
新日本プロレス真夏の最強決定戦『G1クライマックス26』が18日、北海道、北海きたえーるで開幕する。今年も8月14日の両国国技館まで続く約1か月の過酷なロングツアーだ。先月末に発表された出場選手とブロック分けに続いて試合順が決定した。メインイベントで行われるカードは次のとおり。7・18 札幌 Aブロックオカダ・カズチカ 対 丸藤正道7・22 後楽園 Bブロック柴田勝頼 対 本間朋晃7・23 町田 Aブロック棚橋弘至 対 真壁刀義7・24 後楽園 Bブロックマイケル・エルガン 対 内藤哲也7・25 福島 Aブロックオカダ・カズチカ 対 後藤洋央紀7・27 長野 Bブロック柴田勝頼 対 マイケル・エルガン7・28 所沢 Aブロック棚橋弘至 対 バッドラック・ファレ7・30 愛知 Bブロック柴田勝頼 対 内藤哲也7・31 岐阜 Aブロック棚橋弘至 対 後藤洋央紀8・1 高松 Bブロック本間朋晃 対 内藤哲也8・3 鹿児島 Aブロック真壁刀義 対 オカダ・カズチカ8・4 福岡 Bブロック中嶋勝彦 対 内藤哲也8・6 大阪 Aブロック棚橋弘至 対 丸藤正道8・7 浜松 Bブロック内藤哲也 対 EVIL8・8 横浜 Aブロック真壁刀義 対 後藤洋央紀8・10 山形 Bブロック本間朋晃 対 マイケル・エルガン8・12 両国 Aブロック棚橋弘至 対 オカダ・カズチカ8・13 両国 Bブロック内藤哲也 対 ケニー・オメガ8・14 両国優勝決定戦 8・12&13の両国大会はそこまでの得点状況によって試合順が決定するとのことで、メインに組まれそうなカードを私なりに予想して書かせてもらった。 昨年のメインイベント登場回数を調べてみると、棚橋が断トツの7回。それに5回のオカダ、4回の中邑真輔、3回の内藤哲也と後藤洋央紀が続いている。しかし今年(最終公式戦は除く)は棚橋が4回、真壁、柴田、本間、エルガン、オカダ、後藤が3回で並び、内藤がなんと5回のメイン出場でトップに立った。ブロック別総当たりリーグ戦のG1においても、各大会のメインの勝者が大会を締めるのが慣例となっており、昨年は棚橋がメインで6勝1敗という圧倒的な強さを発揮して、そのまま決勝も制して最終日も「愛してまーす」の決め台詞で締めた。 しかし内藤も昨年はメイン3回出場で、3戦全勝の好成績を残している。しかもその相手が優勝した棚橋、飯伏幸太、AJスタイルズと強敵ばかり。昨年のこの時期はファイトスタイルを現在の形に変えて本隊とは距離を置いていたが、仲間は1人もいなかった。いわば孤軍奮闘状態。そんな内藤がロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを率いてからは初となるG1で、どんな闘いを見せるのか注目だ。特に8・7浜松大会ではEVILとの同門対決がメインで行われる。内藤はIWGPヘビー級王者になり、石井智宏を相手に防衛した翌日に行われた記者会見で、「今やりたいのはオカダよりEVIL」と話しており、結果的にIWGPのベルトは6・19大阪城大会でオカダに明け渡してしまったが、EVILとの一戦は期待してもいいだろう。 今回のメイン登場回数がトップというのを見ても、内藤は王座から陥落しても勢いが衰えるどころかどんどん増している感がある。1・4東京ドーム大会のメインに“ファン投票”での選出を狙う意味でも内藤にとってG1優勝は譲れないところだ。 「今年こそチャンピオンのまま優勝する」 6・19大阪城大会で内藤からIWGPヘビー級王座を奪還したオカダはリング上でファンに対しこのような公約をした。IWGP王者のままG1を優勝したのは過去に1995年の武藤敬司と、2000年の佐々木健介の2人しかいない。ちなみに95年の武藤はその後、UWFインターナショナルの高田延彦との世紀の一戦(10・9東京ドーム大会)を制している。 G1を優勝すればIWGPへの挑戦表明がしやすく、チャンピオンは常に狙われる立場にあるため、IWGPとG1の2冠は厳しいと言われている。特に2012年にオカダが優勝してからはG1優勝者に翌年の1・4ドーム大会のメインでIWGPヘビー級王座への挑戦権利証が与えられるようになり、IWGP王者の優勝はより難しくなったように思う。その流れを断つには、初代権利証所有者であるオカダ自身が王者のまま優勝して終わらせるしかない。 オカダが王者のまま優勝したら内藤が1・4ドームに向けてどんな行動をしていくのか? 6年連続でドームのメインに立ち続けている棚橋も簡単には諦めないはずだ。G1後に新たな風景を見たいという意味を込めて今年はオカダの優勝に期待したい。(どら増田)<新日Times VOL.26>
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アイドル 2016年07月16日 16時40分
【帰ってきたアイドル親衛隊】出て来た瞬間のオーラはハンパ無かったデビル雅美のそばに恐る恐る寄ってみると…
父親がプロレスが大好きだったことで、私は子供のころから父親の影響で熱狂的なプロレスファンになっていた。当時は新日本プロレスと全日本プロレスと全日本女子プロレスがテレビ放送をやっていた。男子のプロレスは猪木と馬場の団体と言われて人気だったが、このころの女子プロレスはビューティーペア(ジャッキー佐藤・マキ上田)が盛り上がっていた。しかしビューティーペアの引退後は、ミミ萩原などの正統派レスラーやジャガー横田が女子プロレスを支えていた感じだったが、個人的にはこのころに大きな存在感を出してきたデビル雅美に注目するようになっていた。デビル雅美といえば、パワフルで力強い感じであり、時折見せる不敵な笑みが魅力的だった。 しかしそのころの私は現場へ観に行くことをせずに、ひたすらテレビで観ていただけの在宅ファンにすぎなかった。ようやく腰を上げるキッカケとなったのが、クラッシュギャルズやジャンボ堀・大森ゆかりなどの選手が出てきたころである。1984年1月に後楽園ホールで行われた女子プロレスを観に行くことにした。当時の女子プロレスラーは、レコードデビューしている選手も多くいたので、興行の中で歌うことがお約束だった。この日はデビルが『デビル・命の限り』という曲をリング上で熱唱して、あまりの歌の上手さにビックリした。その曲を聞いて後に、ハードな試合を見せてもらい、ますますデビルの魅力に取りつかれていった。 試合終了後には、会場前で選手の出待ちをしていたのだが、デビルが出て来た瞬間のオーラはハンパ無かった。近寄りがたい雰囲気だったが、恐る恐るそばに寄るとビックリされたが、リング上とは裏腹に優しく微笑んでくれたのが印象的だった。そこでサインも頂き2ショット写真も撮らせてもらった。これまでの印象とガラッと変わり、良い意味で私の見る目が変わっていった。 その後はクラッシュギャルズやダンプ松本率いる極悪同盟などの台頭もあり、メインから退く感じになってしまったが、25歳引退制度のあった全日本女子プロレスを退団後はフリーとして活躍するようになった。 そんなデビルが92年に設立された新団体のJWPの所属になり、同団体に参加することになった。94年頃に縁あって私はJWPでリング設営や売店での販売を手伝っていた。そこでデビルと再会するのだが、当然のように私のことなんて覚えていない。当たり前のことだが、同じ空間にいられることが嬉しかった。ある日、デビルと一緒に売店に立つことがあった。デビルのサイン会があり、そこでの担当が私だったのである。しかしこの時の私は会計を間違えてはいけないとか、お客さんに失礼が無いようにしないといけないとか、集まったファンにデビルとの対面に満足してもらえるように心掛けるだけで精一杯だった。サイン会が終わって最後にデビルが「ありがとね」と言ってくれた一言が今でも忘れられない。 そのJWPを2000年に離れることになったデビルだが、そこからもフリーのレスラーとして08年まで現役を続けていた。現役を30年も続けた偉大な女子プロレスラーである。引退後は女子プロレスや芸能界に関わることも無く、地元の北九州で漬物屋の店長として働いている。女子プロレスとまったく違う人生を歩んでいるデビルだが、いつか私も北九州に行ってデビルに会いに行きたい気持ちもある。きっと一方的になってしまうが、これまでの私の思い出話しを聞いてもらいたい願望もある。 でもあくまでも個人的な意見だが、今の生活も良いと思うが、やはり女子プロレスラーの圧倒的な凄さを今の選手に伝えてもらいたい気持ちもあるので、できるなら混沌としている女子プロレスに喝を入れる意味も含めて、女子プロレスに携わって欲しい。(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。
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スポーツ 2016年07月10日 12時00分
“盟友”小島が出場枠譲渡で天山が新日本G1電撃参戦!
6・27後楽園大会で発表された「G1 CLIMAX 26」の出場選手の中に自身の名前がなかったことに対して怒りを露わにしていた天山広吉だが、その後もシリーズ中、出場アピールをし続けた。そんな天山に対して一人の男が立ち上がる。シリーズ最終戦の7・3岩手大会でNEVER無差別級6人タッグ王座をリコシェ&マット・サイダルとともに奪取した“盟友”小島聡だ。小島はリング上に天山を呼び込むとこう叫んだ。 「天山が最後の『G1』って言うんだったら、これは俺の出場枠を天山に渡す!」 「ホンマにええんか…」と戸惑う天山に対し大きく頷いた小島はバックステージで「カッコ良く優勝して来い」とエールを送った。小島の意向を受けた新日本プロレスは翌4日にこれを尊重し、小島の公式戦の日程を天山に変更すると発表。『G1』26回の歴史の中でこのような形での出場はもちろんはじめて。天山、小島とは“第3世代”の仲間である永田裕志も、天山が選出されなかったことに対して複雑な心境を抱いていただけに、Twitter上で「何と!!」とツイートするなど、今回の譲渡劇には驚いていた様子が伺える。 天山の「G1 CLIMAX 26」公式戦(Aブロック)の日程は次のとおり。7・18 札幌対 石井智宏 初7・23 町田対 タマ・トンガ 初7・25 郡山対 丸藤正道 初7・28 所沢対 真壁刀義 1年ぶり7・31 岐阜対 オカダ・カズチカ 2年ぶり8・3 鹿児島対 バッドラック・ファレ 1年ぶり8・6 大阪対 後藤洋央紀 2年ぶり8・8 横浜対 棚橋弘至 1年ぶり8・12 両国対 SANADA 初※対戦相手の右はG1での対戦歴 今年で史上最多となる21回目の出場で、3度優勝している天山だが、2006年の優勝を最後に『G1』で目立った成績は残せていない。昨年は3勝6敗でAブロックの最下位だった。しかし、柴田勝頼と内藤哲也から白星を挙げており、14年も後藤から、途中欠場となった13年は優勝した内藤と鈴木みのるから白星を挙げることで、リーグ内に混戦を招く役割を果たしている。今回は『最後のG1』という強い意志と、それに応えてくれた小島の気持ちも背負ったことで、優勝が義務付けられる闘いになるが、Aブロックのメンバーは強敵揃いで、例年よりも苦戦が予想される。 同じタイプの石井、真壁、後藤を相手にどこまでやれるのかがポイントとなるだろう。4・10両国大会でのNEVER無差別級王座戦では柴田をあと一歩まで追い詰めてはいるが、一発勝負のタイトルマッチと連戦の『G1』では闘い方も、調整法も変わってくるので、ベテランならではのテクニックで対峙してもらいたい。 個人的な注目は7・31岐阜大会のIWGPヘビー級王者オカダとの2年ぶりのシングル対決。2年前は2戦目となる弘前で対戦し、オカダが勝利を収めたが、弘前のファンから終始大声援を受けた天山も期待に応える動きを見せ、オカダを苦しめている。今年は天山絡みのカードでは一番後ろのセミファイナルとして組まれているので、天山の健在ぶりをアピールするには格好の舞台になるはずだ。強敵揃いのAブロックを制して11年ぶりに決勝の舞台に立つことはもちろん夢があり浪漫を感じるが、今、第一線で闘っている選手から一つでも白星を挙げてファンに勇気や希望を与えるのが、これまで『G1』で色んな世代や、他団体や世界のエース級の選手と闘ってきた天山の務めだと思う。 21回目となる天山の夏。天山と一緒に一度でも多くのうれし涙を流したい。(どら増田)<新日Times VOL.25>
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スポーツ 2016年07月04日 16時00分
プロレス解体新書 ROUND8 〈北尾光司“笑撃”デビュー〉 話題性のみを求めたが故の結末
現役横綱からのプロレス転向となった北尾光司。大相撲時代には小錦をひねり潰すほどのパワーを誇り、まだ20代と若いこともあって将来を嘱望する声も多かった。しかし、その船出はプロレス史に残る惨憺たるものだった。 1990年2月、『笑っていいとも』にゲスト出演した長与千種は、とあるポーズを何度も繰り返した。左の手のひらを前方やや上に突き出し、拳をつくった右腕はガッツポーズのように折り曲げる。 司会のタモリはまったくピンときていないようだったが、プロレスファンなら一目でそれと分かった。前日にプロレスデビューを果たした北尾光司を真似たのだ、と。 「もちろん、北尾をリスペクトしてのものではない。終始、半笑いだった長与の様子から、北尾を小馬鹿にしていたのは明らかです」(プロレスライター) この頃、多くのプロレスファンの女子プロレスに対する認識は、闘いではなく芸能に近かった。 「これは業界内でも同様で、プロレス専門誌が女子プロを扱うことに、拒否反応を示すファンや関係者も多かった」(同) そんな女子プロレスラーの長与が、鳴り物入りで新日本プロレスのマット、しかも東京ドーム大会でデビューを果たした北尾を揶揄すれば、反感を買いそうなものだが現実は違った。 「むしろ『長与、よくやった』との声が大きかった。これはファンに限らず関係者も同じで、それほどまでに北尾は嫌われていたのです」(同) 大相撲の横綱だった双羽黒が所属する立浪部屋を脱走し、廃業となったのは'87年のこと。以後は本名の北尾光司として、スポーツ冒険家の肩書で活動を試みるもパッとしなかった。 〈師匠のおかみさんに暴行を加えた〉などと報道されたことで、北尾の評判は最悪。実際は部屋側にも問題があったようだが、横綱在位中でありながら「相撲界に未練はない」と言い放った北尾が、問題児であったことに違いはない。 また、廃業後すぐにプロレス入りが取り沙汰された際、『そんな安易な考えはない』と斬って捨てたことも、プロレスファンから不評をかこつ一因となった。 さて、北尾のデビュー戦は『'90スーパーファイトin闘強導夢』で行われた。全日本プロレス勢の参戦により大きな注目を集めたこの大会で、ビッグバン・ベイダーとスタン・ハンセンによるド迫力の外国人頂上決戦が繰り広げられた後、北尾はセミファイナルのリングに上がった。 なお、この大会のメーンイベントは橋本真也の「時は来た! それだけだ」と、アントニオ猪木の「出る前に負けることを考えるバカがいるかよ」の名言で知られる、猪木&坂口征二vs橋本&蝶野正洋の世代闘争タッグマッチだった。 新日vs全日の対抗戦よりも後に、北尾の試合が組まれたのは、放映権の都合で全日勢の試合がテレビ中継できないという事情があってのこと。世間一般にとって、元横綱のプロレスデビューは話題性抜群であったが、プロレスファンからすれば話は別だった。新日vs全日の歴史的邂逅と比べれば、いかに元横綱であろうともかすんでしまう。北尾が真剣に取り組む姿勢を見せたなら、それでも支持は得られたのだろうが…。 デーモン小暮作『超闘王のテーマ』にのせて、カクテルライトの飛び交う中を悠然と登場した北尾は、金メッシュの角刈り頭にサングラス。鋲だらけの革ジャンを脱ぎ捨てると、下には黄色いタンクトップを着込んでいた。 そうして、これを怪力一番に引き裂く、当時のハルク・ホーガンそのままのパフォーマンスを見せた。だが、よく言えばナチュラルな、言い換えれば締まりのないその肉体では、ビルドアップされた“超人”ホーガンと似ても似つかず、早くも観客席のあちこちから失笑が起こった。 いざ試合が始まっても、一つ攻撃を加えるたびに長与が真似た例のポーズを差し挟むから、どうにもこうにも間が悪い。 対するクラッシャー・バンバン・ビガロは、頭部にまでタトゥーを施した怪異な容貌とは裏腹に“ホウキが相手でもプロレスができる”と評される試合巧者。新日ではサルマン・ハシミコフやトニー・ホーム、WWFでも元NFLスーパースターのローレンス・テイラーら、いわゆる“プロレス初心者”のデビュー戦で相手を務めている。 「それらの試合と比べてもこの試合の出来は悪く、それほどまでに北尾のプロレス勘が鈍かったということでしょう」(プロレス記者) フィニッシュもやはりホーガンを真似たギロチンドロップであったが、これも最初に走る方向を間違える始末では、観客から嘲笑が起こっても仕方あるまい。 しかし、北尾ばかりを責めるわけにもいかない。 「北尾は、プロレス転向にあたって新日に入団したわけではなく、契約上はフリーランスとしての参戦だった。つまり、のちのハッスルに参戦したインリンやレイザーラモンHGのようなもので、現場監督の長州力が新日の稽古に参加しないことで非難したのも、北尾からすれば筋違いの話。結局、両者が決裂となったのも仕方がない。問題はそんな契約をした新日側にもあったのでは…」(同) 北尾と新日、両者ともに話題性だけを求めたが故の、不幸な結末と言えようか。