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芸能 2018年12月30日 18時20分
チョコプラ、くっきーに見る二刀流芸人の在り方
2018年は、才能があるとされながらも正当な評価を受けなかった芸人が、まさかの形で世に出た。今なお引く手あまたのチョコレートプラネットは、そんな1組だ。 松尾駿は美容家・IKKO、長田庄平は狂言師・和泉元彌のものまねでおなじみ。IKKOのものまね芸人はこれまで数多くいたが、松尾の場合は衣装やメイク道具を本人からプレゼントされるほどで、本人公認。チョコプラは過去に3度も『キングオブコント』の決勝舞台を踏みながらも、その後が続かなかった悲運の実力派コンビだが、まさかの道のりで花開いた。 そんなチョコプラ。すでに、ものまね失速後の次の手を打っている。オリジナル体操服に身を包んで、世の中のあらゆる「T」の形状を探すだけのオリジナルゲーム「TT兄弟」だ。もとは、Twitterであげた動画。あまりのくだらなさでジワジワ拡散され、今では芸能人がテレビ番組で「T」を探す姿が多く見られるようになった。今月、全国のティ(T)・ジョイ系映画館、および東映(T)直営館の劇場CMキャラクターに抜てきされ、地味ながらも展開を見せている。 このように、売れっ子芸人が二刀流で活動する例は増えている。チョコプラ同様、18年に跳躍した野性爆弾・くっきーもそうだ。もともと絵画や音楽、コントで使う小道具づくりが得意。同期の次長課長やチュートリアル(徳井義実のみ)、ブラックマヨネーズは高く評価していたが、ようやく時代が追いついた。 顔面を白塗りにした誇張しすぎるものまねが、メガヒット。オリジナリティーあふれる作品も火が点き、17年に東京・原宿で個展を初めて開催すると、以降は中国、台湾にも進出。本職のお笑いのみならず、顔ものまね、クリエイターという3足のワラジをはくこととなった。 ものまねの域を超えて、“なりきる”ことで大成したのは、ロバート・秋山竜次。『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』は、フリーペーパー『honto+』の連載から生まれたものだが、登場人物はおよそ50人。アジアスター、パーソナルヒップトレーナー、ダンスパフォーマー兼振付師、スローフードアドバイザー、天才子役ほか、どれもがクセモノ。こちらも個展は大盛況で、17年にはテレビ東京系で『黒い十人の秋山』としてドラマ化されている。 同様に、キャラを独立させたのは、友近。親友の演歌歌手・水谷千重子は、芸歴50年で演歌歌手デビュー40周年というふれこみ。12年にキャラを誕生させて以来、冠番組を抱え、単独コンサートを開催。五木ひろしや八代亜紀ほか、さまざまな大御所ともコラボしている。 SNSの駆使や、ものまね、アート、なりきり……。芸人の生き残り術はさまざまだ。(伊藤雅奈子)
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芸能 2018年12月30日 18時10分
霜降り明星せいやだけじゃない 壮絶ないじめを克服したお笑い芸人たち
2018年度にブレークしたお笑い芸人の代表格といえば、霜降り明星だろう。『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)で25歳と26歳で大会史上最年少の優勝コンビとしても話題になった。霜降り明星の魅力といえば、会場を動き回りながら次々と繰り出されるせいやのボケだろう。一見すると明るいキャラクターにも見えるが、せいやはいじめを受けていた暗い過去を持つ。 「せいやは中学時代はひょうきん者として通っていたようですが、高校に入ると逆に“生意気な奴”扱いを受けるようになり、いじめのターゲットとなります。母親からは転校をすすめられるほどでしたが、笑いをいじめで跳ね返そうと決意したそうです。文化祭の劇を一人でやれと押し付けられ、ここがチャンスとばかりに一人コントを披露し爆笑を獲得。以降いじめはなくなったそうですね」(芸能ライター) せいやの場合は、いじめに対して笑いで真っ向勝負で挑めたレアケースといえる。やはりほとんどの場合は、心の内側にためこんでしまうようだ。 「エキセントリックなキャラクターでブレークした鳥居みゆきは、中学高校時代、自転車をパンクさせられる、上履きを隠されるなどのいじめを受けていたそうです。ただ、せいやのようにいじめを跳ね返すことはできず、リストカットなど自傷へ向かっていったそうですね。楽しんごも、中学時代はいじめを受けていた一人です。暴行はもちろん、唇をカッターで切られるといったひどい体験もありました。それでも親や教師にも言い出せなかったようですね」(前出・同) このほか、なだぎ武や髭男爵の山田ルイ53世も、いじめ体験から引きこもりを経てお笑い芸人となっている。一度人生のどん底を経験した彼らがお笑い芸人として人を楽しませる仕事についていることは、現在いじめられている立場にある者たちを勇気づけることにもなりそうだ。
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芸能 2018年12月30日 18時00分
ドラマ『SUITS』続編に難色を示すフジテレビの悲しき懐事情
あの市川海老蔵(41)がガ然やる気になっている。スペシャルゲストとして出演した月9ドラマ『SUITS/スーツ』の続編制作を主演の織田裕二(51)に提案したというのだ。「視聴率を聞き、海老蔵は続編ができるものと信じ込んでいます。何とも気の早い話ですが、ドラマ共演で打ち解けた織田に“絶対、やりましょう”と直訴したばかりか、制作サイドにも自分を売り込んだというんです。シーズン2はゲストではなく、レギュラー出演するというオーダー付きでした」(制作事情通) 海老蔵が続編制作に向け、確信を持ったという最終回の視聴率は10・8%。平均視聴率は今年の月9ドラマで最高記録となる10・8%となり、主演の織田も何とか面目を保った格好だ。「当然ですが、ドラマを巡っては、海老蔵同様、出演者からも続編や映画化を期待する声があちこちから上がっています。なかなか続編制作に承諾しない織田も、珍しく、“やりたい”と意思表明をしたといいます」(フジテレビ関係者) ところが…である。にわかに信じ難い話なのだが、なぜか制作元のフジテレビのリアクションがイマイチだというのだ。「いや、イマイチどころかものすごい後ろ向きで、やる気が感じられないんです。本当に残念な話です」(同) だが、取材を進めると意外な真実が浮かび上がってきた。ドラマ『SUITS/スーツ』はアメリカの人気同名ドラマシリーズが原作。制作するに当たり、フジテレビは莫大な制作権利金を支払っていたという。「1話につき100万円〜。全10話で1000万円だというんです。プラス制作協力金として2000万円〜。今回、フジは制作元のUSAネットワークと続編も含む包括契約を交わしていたと考えていたが、シーズン2に関しては別途協議だという話。今のフジテレビにはかなり苦しいと思います」(テレビ関係者) 海老蔵も織田も熱望するドラマの続編制作。果たして、実現するのだろうか。
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アイドル 2018年12月30日 18時00分
関ジャニは“お笑いジャニーズ”じゃない! ストイックな一面が堪能できる番組
ジャニーズグループの中でもっともバラエティ色が濃いのは、関ジャニ∞。関西ジャニーズJr.から生まれたユニットとしては、KinKi Kidsに次いで2組目となる西の成功集団だ。全員が関西出身で、Jr.時代に地元の芸人たちとレギュラー番組に出演して、急スピードで話術を鍛えられたため、押し並べてトークスキルが高い。その上で、KinKi同様に関ジャニも、楽曲制作と演奏も、歌唱と同じエネルギーで取り組むタイプ。所属するジャニーズ事務所の傘下ではあるものの、自主レーベルのINFINITY RECORDSを発足している。 担当は、それぞれだ。横山裕はパーカッションとトランペット。村上信五はキーボード。丸山隆平はボーカルとベース。安田章大はボーカルとギター。錦戸亮はボーカルとギター。大倉忠義はドラム。昨年5月21日には、音楽通が集まることで知られる音楽フェスイベント「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL」で野外フェスに初参加して、ロックファンをうならせた。それだけに今夏、メインボーカリストとして関ジャニの音楽をけん引してきた渋谷すばるの脱退は衝撃的だった。 渋谷は、音楽に関しては孤高で、人一倍ストイックだ。そんな渋谷の魂に火をつけたきっかけのひとつが、音楽バラエティ番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)だ。15年5月にスタートした同番組は、ライブ&トークハウスを模したスタジオに音楽関係者を招き、村上と宇賀なつみアナウンサーが進行を務める。 作詞・作曲家やプロデューサー、演奏者たちはアーティストゲストという呼称。番組ラストで、メンバーと一夜限りのジャムセッションを繰り広げるセッションゲストは、週替わりの歌手だ。レギュラー陣の俳優・古田新太、メンバーと並んでひな壇に座るトークゲストの中には、お笑い芸人もいる。素人同然の素朴な疑問を投げる芸人は、マニアックになりがちな内容を軌道修正して、視聴者との距離を縮める中和剤だ。 先の渋谷と同じく、音楽人生を変える者もいる。「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音だ。16年1月オンエア回で川谷は、急きょスタジオでお題をもらい、即興で曲を作ることになった。スマートフォンに歌詞を打ち込み、わずか8分で歌詞が完成。そのフレーズでバンドがサウンドを組み立て、トータルたった35分で1曲を作り上げてしまった。その工程作業をノーカットで放映。視聴者はSNSで「神回」と絶賛し、川谷の天才ぶりが再確認させられた。 いちミュージシャンの運命を変えかねない“完全燃SHOW”。アーティスト・関ジャニの延命プログラムといえる。(伊藤雅奈子)
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芸能 2018年12月30日 17時50分
報道陣が“逆スルー”せざるを得なかったJUMP・有岡への熱愛質問
大みそかに放送される「第69回NHK紅白歌合戦」のリハーサルが、29日と30日に会場となるNHKホールで行われた。 各スポーツ紙になると、2回目の出場となるHey!Say!JUMPも集まった報道陣の囲み取材に応じたという。 「有岡といえば、女優の松岡茉優と交際中であることが先日、一部スポーツ紙などで報じられた。共通の知人を通じて知り合い、すでに交際期間は2年にわたるのだか。交際報道後、双方の事務所は否定せず。紅白のリハは、普段ならジャニーズの取材がNGな媒体も数多く許可されている。そのため、どこの媒体が直撃するかが注目された」(紅白を取材した記者) ところが、各スポーツ紙などによると、薮宏太(28)が「来年で平成が終わっても“Hey!Say!JUMPってすごいんだ”と思っていただけるように頑張りたい」と抱負。それを受けた有岡が、「あとはジャニーさんが新年号(の名前)で新しいグループをつくらないことを祈ります」とジャニー喜多川社長(87)に要請したというのだ。 「囲みの横ではジャニーズの名物広報マンが目を光らせ“監視”とても熱愛に関することを聞けるような雰囲気ではなかった。聞いたらジャニーズがNHKに圧力をかけ、紅白の取材パスを取り上げられてしまうリスクもあったので、どこの媒体も無茶はしなかった」(同) おかげで有岡は“命拾い”したようだ。
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スポーツ 2018年12月30日 17時40分
「これが立ち技最強のシュートボクシングです!」“若きエース”海人の止まらぬ勢い
今年の終盤、両国国技館という大舞台で、わずか2カ月の間に4試合を行い4KO勝利を収めたイケメン格闘家が注目されている。その男は“シュートボクシングの若きエース”海人(かいと/TEAM F.O.D)である。 海人は11月18日に2年に一度のシュートボクシング(以下SB)の祭典『SHOOT BOXING S-cup 65kg 世界 TOURNAMENT 2018』(両国国技館)で世界の強豪が集まったS-cup‐65kg世界トーナメントに出場。1回戦(対チョ・ギョンジェ)、準決勝(対健太)、決勝戦(対UMA)の3試合でKO勝利し完全優勝を果たすと、今月9日にはキックボクシングイベントKNOCK OUTに初登場。激闘型ファイターである“KNOCK OUTの番人”水落洋祐の勢い、粘りに対応し、3RにTKO勝ちを収めた。 大阪を練習拠点としている海人だが、シュートボクシングへの愛と誇りは強い。今年は7大会に出場し、10試合を行った。これは格闘技の世界としては試合数が多い。RIZIN初出場となった7.29『RIZIN.11』さいたまスーパーアリーナ大会から、8.12『RIZIN.12』愛知県体育館大会までは、2週間しかなかったが、しっかりと連勝。「シュートボクシングここにあり」をエースとして証明している。 KNOCK OUTで対戦した水落は「うまかったです。でも必ずリベンジします」と完敗を認めた。“Mr.KNOCK OUT”こと前KING OF KNOCK OUTライト級王者の森井洋介もこの試合を見ていたいい「海人選手は肘を当てるテクニックがすごい。しっかりと戦略を練らないと肘ありのルールでは勝てない」と解説していた。 KNOCK OUTは昨年ライト級、今年はスーパーライト級のトーナメントを開催しており、海人と同じ、もしくはそれに近い階級の選手が数多く参戦している。現スーパーライト級王者の不可思には、今年4月にSBのリングでTKO勝ちを記録している。普段は負けても「同じ相手とはやりたいと思わない」と話す不可思だが、もう一度やりたい相手として海人の名前を挙げている。この1年の活躍で、海人を取り巻く包囲網ができつつあるのは確かなようだ。 KNOCK OUTの小野寺力プロデューサーも「これから海人クンがどんな相手と、どういう試合をしてくれるのか楽しみ」と期待を寄せている。ただ、海人本人はその前に「まだ倒さなアカン選手がいる」という。その選手とは昨年敗れたザカリア・ゾウガリーと、今年唯一の黒星を与えたチャムアトーン・ファイタームエタイである。特にチャムアトーン戦は「今年は全勝すると思ってたので悔しい」という。「来年は2人にリベンジして、世界のトップに立ちたい。他の選手のことはその後に(頭の中に)出てくるんじゃないですかね」。今年最後の試合を終えた海人は安堵の表情を浮かべながら、早くも来年の目標を掲げていた。 「これが立ち技最強のシュートボクシングです!」 21歳の若さエースは来年も歩みを止めることなく、こう叫び続けるはず。急成長を遂げた2018年の海人には、来年さらに進化した姿を見せてもらいたい。取材・文・写真 / どら増田
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スポーツ 2018年12月30日 17時30分
あの“神の子”が3冠?プロ野球投手6部門の“平成”記録
平成のプロ野球において、トップの数字を記録したタイトルホルダーは一体誰なのか。本稿では防御率、勝利数、勝率、セーブ、ホールドポイント、奪三振の6部門を対象に、平成記録を打ち立てた選手たちを以下に見ていきたい。■防御率:田中将大(楽天/1.272/2011年) 現在はメジャーリーグでも活躍する右腕が、マークしたこの記録。2位の自身の記録(1.274/2013年)、3位の前田健太(広島/1.53/2012年)を上回り、平成最高記録となっている。■勝利数:田中将大(楽天/24勝/2013年) 江夏豊(阪神/1973年)以来、40年ぶりに24勝をマークしたこの年の田中。当時と違い、投手分業制が浸透した現代のプロ野球では、ある意味限界点の数字であるといえるのかもしれない。■勝率:田中将大(楽天/1.000/2013年) 前述の通り24勝をマークしながら、レギュラーシーズンではただの一度も負け投手にはならなかった田中。なお、田中の他に勝率10割を記録したのは、景浦将(タイガース/1936年秋)、御園生崇男(タイガース/1937年秋)、間柴茂有(日本ハム/1981年)の3名のみである。■セーブ:デニス・サファテ(ソフトバンク/54セーブ/2017年) 昨年に樹立されたばかりということで、打撃部門を含め最も記憶に新しいと思われるこの記録。同年のチームはリーグ優勝及びに日本一を達成したが、獅子奮迅の働きを見せたクローザーの存在も大きかったことだろう。■ホールドポイント:浅尾拓也(中日/59ホールドポイント/2010年) 今季限りで現役を引退した浅尾が、8年前に残したこの大記録。ちなみに、同年の浅尾はホールドポイントだけでなく、ホールド(47ホールド)でも平成記録、プロ野球記録を樹立してもいる。■奪三振:野茂英雄(近鉄/287個/1990年・1991年) 「トルネード投法」で名を馳せた右腕が、2年連続で記録したこの数字。なお、野茂はこの2年を含め奪三振のタイトルを4年連続(1990年〜1993年)で獲得しているが、1995年から参戦したメジャーでも1995年(ドジャース/236個)、2001年(レッドソックス/220個)にタイトルを獲得している。文 / 柴田雅人
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スポーツ 2018年12月30日 17時00分
非業の死を遂げた名力士 最終回「板井(小結)」
死ぬときは誰でも独りぼっち。とはいえ、多くの人が家族や友人知人に見守られながら逝くが、本当に周りには誰もいない孤独の中で、ひっそりと亡くなった力士もいる。昭和50年代後半から平成の始めにかけ、激しい突き押し相撲で活躍した板井(本名・板井圭介、大鳴戸部屋)のことだ。板井は現役引退後、横綱千代の富士の八百長を告発して注目を浴びた力士でもある。 板井は、昭和31年3月21日、大分県臼杵市で生まれている。中学までは野球少年だったが、大分県立水産高校に入学後、173センチ、80キロの体を見込まれて相撲部に入り、メキメキと頭角を現した。力士には様々なタイプがあり、多彩なワザを駆使する相撲巧者も多いが、板井が徹底的に叩き込まれたのは突き、押し。それに、それを利したはたきの3つだけだった。 しかし、板井はたったこれだけで高校3年時に国体で3位入賞、黒崎窯業に就職後はやはり国体青年の部で優勝。大相撲入りすると幕内を54場所も務め、小結までのぼり詰めたのだから、脇目も振らずに一つのことを追求することがいかに大事か、よく分かる。 高校卒業時も相撲部屋や大学相撲部から声がかかったが、就職して4年目の昭和53年秋場所、大鳴戸部屋に入門。22歳だった。 幕下に付け出されてもおかしくない実績を残していたが、板井のスタートは一番下の前相撲。だが、そこから目覚ましい記録を作る。序ノ口、序二段、三段目と3場所連続して全勝優勝。4場所目の幕下の6番相撲で元小結大錦に敗れるまで、なんと26連勝したのだ。 これは当時のデビューからの最多連勝記録だった。デビュー1年後の昭和54年秋場所で早くも十両に昇進。これもまた、スピード昇進の新記録だった。 この十両昇進を機に、四股名を本名の「板井」から師匠の大鳴戸親方(元関脇高鐵山)が名乗っていた「高鐵山」に改めた。しかし、けがなどで低迷したため、1年半後に再び「板井」に戻している。 その1年後の昭和55年秋場所、24歳で入幕を果たしたが、間もなく左ひざのけがなどで幕下45枚目まで降下した。スピード昇進の反動が出たのだ。この試練は2年あまり続いたが、昭和58年春場所、4度目となる入幕を果たすとようやく成績も安定し、前頭上位で活躍するようになる。 板井のヒールぶりを強く印象付けたのは、横綱大乃国戦だった。板井は両手にウレタンなどのパットを入れてその上を包帯で分厚く巻き、さらにたっぷり水を含ませてパンパンの状態にして、大乃国の顔面めがけて張り手、というよりもパンチを浴びせたのだ。この容赦のないパンチ攻撃を磨くため、ひそかにボクシングジムに通っていたという話もある。 こんな反則まがいの攻撃をされては、いくら横綱でもたまったものではない。生涯3個の金星をあげた板井だが、そのすべてが大乃国からあげたもの。一発KOされたこともある大乃国は、後にこう語っている。「あまりにも腹が立ったので、腕をへし折ってやろうかと思ったこともある」★引退後、親方不適格の報復 板井のピークは、平成元年春場所。大関小錦や、すっかりカモにしていた大乃国などを相次いで破って自己最多の11勝をあげ、初三賞となる殊勲賞、技能賞をダブル受賞。翌場所、自己最高位の小結に昇進した。「気分いいス」 我が世の春の到来に板井はご機嫌だったが、ほどなくして次第に下降線を辿ることになる。得意の突き、押しが徐々に通じなくなったのだ。 もはやここまで、と強く痛感させられたのが、平成元年名古屋場所。幕尻近くの東前頭14枚目まで落ちていた板井は、なんと初日から千秋楽までオール黒星を記録、全敗したのだ。幕内力士としては史上4人目の屈辱だった。 この翌場所、十両に転落した板井は3日目に引退。すでに35歳になっていた。 この引退するとき、板井は好き放題ですごした現役生活のしっぺ返しを受けることになる。年寄「春日山」を襲名すべく準備を整えていたにもかかわらず、当時の二子山理事長(元横綱初代若乃花)に拒否されたのだ。こんなことは前代未聞のことだった。 なぜ板井は親方になれなかったのか。理由は明らかにされなかったが、思い当たるフシはいくつもあった。その一つが「八百長疑惑」だった。 当時の大相撲界は八百長の蔓延が噂され、その仲介役、いわゆる“中盆”として板井の名前が挙がっていた。 さらに素行の悪さも影響した。大乃国に対して反則すれすれの攻撃を仕掛けたほか、巡業にも左ひざの不調を訴えてほとんど参加せず、参加してもまったくと言っていいほど稽古しなかったりしたため、協会首脳に睨まれていたのだ。 15戦全敗も影響したと見られている。こんなことが積もり積もって「親方不適格」の烙印を押されてしまったのである。 このため、大相撲界を去らざるを得なくなった板井は、一時、東京都江戸川区内でちゃんこ店を開業したが、すぐ潰れた。あまりにも出世が早かったため、ちゃんこ番の経験が少なく、うまく味付けができなかったのだ。 こうして表舞台から消えた板井だったが、平成12年、意外な形でマスコミに再登場することになる。日本外国特派員協会で講演を行い、31回優勝し、国民栄誉賞も受賞している大横綱、千代の富士の八百長を告発したのだ。 その中で、昭和63年の夏場所から九州場所にかけて達成した当時史上2位(現在は3位)の53連勝についても詳述している。「3分の1がガチンコで、残りの3分の2は事前に星を譲ってもらう約束ができていた八百長だった。横綱、大関はその場で清算する買い取りが多かった」 記者たちに「証拠はあるか」と問われると、板井はこう言って胸を張った。「証拠はこの私です」 つまり、自ら中盆だったことを明かしたのだ。★仕事もできず最後は孤独死 さらに、八百長を克明に書いた暴露本も出版。これらの記事、証言を巡る裁判にも証人として出廷し、八百長の存在を認めるなど、大相撲界に大きな揺さぶりをかけた。板井はかつての古巣に真っ向から戦いを挑んだのだ。 ただ、こういう行為が命がけであることも、誰より分かっていた。というのも、板井が告発する4年前、元師匠の大鳴戸親方こと菅孝之進さんも、やはり横綱北の富士の八百長などを週刊誌上で告発。板井と同じように日本外国特派員協会で講演しすべてを明らかにする予定だったが、その直前に息苦しさを訴えて愛知県豊明市の病院に緊急入院し、3日後に急死したのだ。病名は「重症肺炎」だった。 このとき、同じ症状を見せた後援者と一緒に入院しているが、奇妙なことに、この15時間後に後援者も同じように死亡。2人とも解剖もされずにすぐさま荼毘に付された。 こんな謎だらけの物騒な前例に怖れをなしたのか、板井は自ら騒ぎに火を付けながら深追いはせず、ほどなくしてまた市井に身を潜めた。自分1人では、どうにもならないことを知っていたのかもしれない。 板井が三たび、マスコミの前に姿を現したのは、今年の夏の真っ盛り、8月15日のことだ。それは新聞の死亡欄だった。 現役時代の食生活の乱れから重度の糖尿病を患い、人工透析を受けていた板井。心臓にはペースメーカーも埋め込まれていたという。 この日、予約を入れていた人工透析の病院に現れず、親族から依頼された元付け人が自宅を訪ねたところ、床に倒れている板井を発見。急いで救急車を呼んだが、すでに息を引き取っていたという。享年62。絵に描いたような孤独死だった。 発見時、水道の蛇口は開けっ放しだったというから、止める暇もなく急に倒れた可能性が高い。死因は特定されなかった。「現役時代に結婚し、子供もいたが、その後に離婚。体が悪かったこともあって働くこともできず、独り暮らしだった。愛犬をかわいがり、一緒に散歩するのが日課で、現役時代に左ひざを痛めていたが、自力で歩いていた」 引退後もずっと交流を続けていたという、板井を発見した元付け人はこう話している。 これらの言葉の向こうに、板井の寂しかった晩年が透けて見える。栄光は束の間。板井がどんな思いで息を引き取ったか、今となっては誰も分からない――。相撲ライター・大川光太郎
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その他 2018年12月30日 15時00分
やくみつるの「シネマ小言主義」 本音で生きる「障がい者」と“ボラ”たちの物語「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」
最近、長いタイトルの映画が増えていますが、だいたい外れがないように思いますね。「長いタイトル=面白い」というのは“あるある”になってきているかも。 大泉洋はどの芝居を見てもあのテンションだからなぁ…と自分と同じように懸念されている方も大丈夫です。今回は、彼なりの演技プランであることが次第に分かります。主人公である鹿野靖明は、幼少より筋ジストロフィーを患い、動かせるのは首と手だけ。しかし、とことんポジティブで明るく、しゃべることが唯一の生き甲斐だからこその大泉洋の演技だと納得できてからは、この役柄として見ることができました。 しかし、注目は鹿野さんに反発しながら、次第に心を開いていく新人ボランティアを演じる高畑充希。完全に主役を食う見事な存在感です。ゴニョゴニョとつぶやく演技など、うまい女優だなぁ…とつくづく感じ入りました。 今年の流行語大賞にも「スーパーボランティア」という言葉がトップ10の中に入りましたが、鹿野さん1人のために、通算500人ものボランティアが集結して彼の生活を支えてきたという話が実話であったことに驚きました。時代は阪神淡路大震災の前のことで、ボランティアがまだ広くは認知されてはいなかったと思うのですが、呼びかけ次第では、可能なのかと。 24時間、入れ替わり立ち替わり、何の見返りもなく献身的に彼の自立生活を支え続ける人々。しかも本人はずうずうしいほどにわがままで、言いたい放題。フィクションであればやりすぎだろうと思うほどですが、これは実話なのですから受け入れるしかありません。 一番驚いたのは、鹿野さんとボランティアの人々との人間関係。本音のぶつかり合いが半端ないです。 それに対して、自分のような形式的で上っ面の関係しか結べない人間は変に気を遣いすぎて、ボランティアになったとしても半日ともたないかも。ましてや自分がこの先、要介護まで生きのびた場合、こんな偏屈な性格の人間の面倒をみてくれるボランティアの方がいるとも思えません。野垂れ死ぬしかないですね。 ところで、自分が初めて映画館で見た映画も、主人公が手足の自由を失う不治の病に侵されていく『父ちゃんのポーが聞える』でした。今は亡き小林桂樹が父親役、娘役が吉沢京子で、蒸気機関車の運転士をしている父が娘のいる療養所の近くを通るたびに汽笛を鳴らす話。同級生に誘われて行き、感動して同時上映の『潮騒』を見ずに帰ったことを今でもはっきりと覚えています。画像提供元:(C)2018 映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会----------------------------■こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話監督/前田哲 出演/大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市、原田美枝子 配給/松竹 12月28日(金)より全国ロードショー。■北海道の医学生・田中(三浦春馬)は、ボランティア活動を通じて体が不自由な鹿野(大泉洋)と出会う。筋肉が徐々に衰える難病・筋ジストロフィーの鹿野は病院を出てボランティアを募り、一風変わった自立生活をスタートさせるが、超ワガママぶりで周囲を振り回してばかり。そんなある日、新人ボランティアの美咲(高畑充希)に恋をした鹿野は、ラブレターの代筆を田中に頼むが…。********************やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中
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スポーツ 2018年12月30日 15時00分
数多くの名選手、関係者が亡くなった2018年のマット界
来年の4月30日で、約30年3カ月に渡った時代を終える平成。その平成の終わりを感じるかのように、今年も数多くの芸能人、著名人が亡くなった。プロレス・格闘技界でも歴史に名を刻んだ名選手や、記憶に残る選手、そしてマット界に貢献した関係者が天国へ旅立っていった。 今年亡くなられたプロレスラー、格闘家、関係者(OB、OGを含む)の方々を振り返りたい。※12月6日現在、敬称略4月7日 KOICHI(格闘家)4月14日 馬場元子(元全日本プロレス社長)4月18日 ブルーノ・サンマルチノ(元プロレスラー)4月20日 渡辺えりか(プロレスラー)6月18日 ビックバン・ベイダー(プロレスラー)7月14日 マサ斎藤(プロレスラー)7月29日 ニコライ・ボルコフ(プロレスラー)8月13日 ジム・ナイドハート(プロレスラー)8月27日 亜利弥(プロレスラー)8月30日 Ray(プロレスラー)9月18日 山本“KID”徳郁(格闘家)10月8日 輪島大士(大相撲元横綱・プロレスラー)10月18日 ディック・スレーター(プロレスラー)11月3日 ビクトル古賀(サンボ)12月5日 ダイナマイト・キッド(プロレスラー) KOICHIさんは元K-1ファイター。馬場元子さんは故・ジャイアント馬場さんの夫人として、全日本プロレスをサポート。故・三沢光晴さんが退団に伴い社長を辞任した際には、元子さんがオーナー兼社長として全日本の看板を守り抜いた。 “人間発電所”として強さを発揮していたサンマルチノさんは、馬場さんの長年のライバルであり友人。WWEのスーパーレジェンドとして殿堂入りを果たしている。渡辺えりかさんは元JWPで人気があった選手。パーキンソン病と闘病していたマサさんは、最後までプロレスラーとして諦めない気持ちを貫いた。ボルコフさんと、ナイドハートさんはWWEで活躍した。 亜利弥さんとRayさんは、女子団体には欠かせないフリーの選手だったが、若くしてこの世を去った。KIDさんの早すぎる死は格闘技界全体に衝撃を与え、現在もショックを受けている関係者や選手は多い。輪島さんの死は角界、プロレス界ともに惜しむ声が多く、輪島さんのイズムは現在も角界やプロレス界に受け継がれていることが証明されている。 “喧嘩番長”スレーターさんは、日本では全日本プロレス、IWAジャパンで活躍。“右利きのテリー”として、テリー・ファンクやファンクスファミリーとタッグを組むことが多かった。ビクトル投げで有名な古賀さんは、プロレスラーや格闘家が出稽古に通っていたことをプロレスファンは知っている。そして、12月に入りキッドさんが死去。ライバルだった藤波辰爾や初代タイガーマスクだけでなく、キッドさんに影響を受けた選手からも惜しむ声が相次いだ。 マット界にとって大切な人材を多く失った2018年。もっと話を聞いてみたかった方ばかりだが、本当に悔やまれる。訃報記事ほど書いていて辛いものはない。 レスラーや格闘家はマサさんのように長年の激闘による蓄積からパーキンソン病のような難病を患うリスクも背負っている。元プロボクシングヘビー級王者の故・モハメド・アリ氏もパーキンソン病を患っていた。輪島さんも晩年は声を失うなど、厳しい生活を送っていた。現役選手には偉大な先輩たちが残してくれたものを受け継ぎつつ、しっかり体をケアして長生きしてもらいたい。命には限りがあるので仕方ないことではあるが、来年は訃報記事が少なくなることを願いたい。今年亡くなられた方々に改めて感謝の言葉を送りたい。文 / どら増田写真 / ©2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.
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