松尾駿は美容家・IKKO、長田庄平は狂言師・和泉元彌のものまねでおなじみ。IKKOのものまね芸人はこれまで数多くいたが、松尾の場合は衣装やメイク道具を本人からプレゼントされるほどで、本人公認。チョコプラは過去に3度も『キングオブコント』の決勝舞台を踏みながらも、その後が続かなかった悲運の実力派コンビだが、まさかの道のりで花開いた。
そんなチョコプラ。すでに、ものまね失速後の次の手を打っている。オリジナル体操服に身を包んで、世の中のあらゆる「T」の形状を探すだけのオリジナルゲーム「TT兄弟」だ。もとは、Twitterであげた動画。あまりのくだらなさでジワジワ拡散され、今では芸能人がテレビ番組で「T」を探す姿が多く見られるようになった。今月、全国のティ(T)・ジョイ系映画館、および東映(T)直営館の劇場CMキャラクターに抜てきされ、地味ながらも展開を見せている。
このように、売れっ子芸人が二刀流で活動する例は増えている。チョコプラ同様、18年に跳躍した野性爆弾・くっきーもそうだ。もともと絵画や音楽、コントで使う小道具づくりが得意。同期の次長課長やチュートリアル(徳井義実のみ)、ブラックマヨネーズは高く評価していたが、ようやく時代が追いついた。
顔面を白塗りにした誇張しすぎるものまねが、メガヒット。オリジナリティーあふれる作品も火が点き、17年に東京・原宿で個展を初めて開催すると、以降は中国、台湾にも進出。本職のお笑いのみならず、顔ものまね、クリエイターという3足のワラジをはくこととなった。
ものまねの域を超えて、“なりきる”ことで大成したのは、ロバート・秋山竜次。『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』は、フリーペーパー『honto+』の連載から生まれたものだが、登場人物はおよそ50人。アジアスター、パーソナルヒップトレーナー、ダンスパフォーマー兼振付師、スローフードアドバイザー、天才子役ほか、どれもがクセモノ。こちらも個展は大盛況で、17年にはテレビ東京系で『黒い十人の秋山』としてドラマ化されている。
同様に、キャラを独立させたのは、友近。親友の演歌歌手・水谷千重子は、芸歴50年で演歌歌手デビュー40周年というふれこみ。12年にキャラを誕生させて以来、冠番組を抱え、単独コンサートを開催。五木ひろしや八代亜紀ほか、さまざまな大御所ともコラボしている。
SNSの駆使や、ものまね、アート、なりきり……。芸人の生き残り術はさまざまだ。
(伊藤雅奈子)