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やくみつるの「シネマ小言主義」 本音で生きる「障がい者」と“ボラ”たちの物語「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」

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提供:週刊実話

 最近、長いタイトルの映画が増えていますが、だいたい外れがないように思いますね。「長いタイトル=面白い」というのは“あるある”になってきているかも。

 大泉洋はどの芝居を見てもあのテンションだからなぁ…と自分と同じように懸念されている方も大丈夫です。今回は、彼なりの演技プランであることが次第に分かります。主人公である鹿野靖明は、幼少より筋ジストロフィーを患い、動かせるのは首と手だけ。しかし、とことんポジティブで明るく、しゃべることが唯一の生き甲斐だからこその大泉洋の演技だと納得できてからは、この役柄として見ることができました。

 しかし、注目は鹿野さんに反発しながら、次第に心を開いていく新人ボランティアを演じる高畑充希。完全に主役を食う見事な存在感です。ゴニョゴニョとつぶやく演技など、うまい女優だなぁ…とつくづく感じ入りました。

 今年の流行語大賞にも「スーパーボランティア」という言葉がトップ10の中に入りましたが、鹿野さん1人のために、通算500人ものボランティアが集結して彼の生活を支えてきたという話が実話であったことに驚きました。時代は阪神淡路大震災の前のことで、ボランティアがまだ広くは認知されてはいなかったと思うのですが、呼びかけ次第では、可能なのかと。

 24時間、入れ替わり立ち替わり、何の見返りもなく献身的に彼の自立生活を支え続ける人々。しかも本人はずうずうしいほどにわがままで、言いたい放題。フィクションであればやりすぎだろうと思うほどですが、これは実話なのですから受け入れるしかありません。

 一番驚いたのは、鹿野さんとボランティアの人々との人間関係。本音のぶつかり合いが半端ないです。

 それに対して、自分のような形式的で上っ面の関係しか結べない人間は変に気を遣いすぎて、ボランティアになったとしても半日ともたないかも。ましてや自分がこの先、要介護まで生きのびた場合、こんな偏屈な性格の人間の面倒をみてくれるボランティアの方がいるとも思えません。野垂れ死ぬしかないですね。

 ところで、自分が初めて映画館で見た映画も、主人公が手足の自由を失う不治の病に侵されていく『父ちゃんのポーが聞える』でした。今は亡き小林桂樹が父親役、娘役が吉沢京子で、蒸気機関車の運転士をしている父が娘のいる療養所の近くを通るたびに汽笛を鳴らす話。同級生に誘われて行き、感動して同時上映の『潮騒』を見ずに帰ったことを今でもはっきりと覚えています。

画像提供元:(C)2018 映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
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■こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
監督/前田哲 出演/大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市、原田美枝子 配給/松竹 12月28日(金)より全国ロードショー。
■北海道の医学生・田中(三浦春馬)は、ボランティア活動を通じて体が不自由な鹿野(大泉洋)と出会う。筋肉が徐々に衰える難病・筋ジストロフィーの鹿野は病院を出てボランティアを募り、一風変わった自立生活をスタートさせるが、超ワガママぶりで周囲を振り回してばかり。そんなある日、新人ボランティアの美咲(高畑充希)に恋をした鹿野は、ラブレターの代筆を田中に頼むが…。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中

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