社会
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社会 2013年08月02日 16時00分
女子高生を襲った集団チカン
兵庫県警は7月17日、電車内で女子高生に痴漢したとして、強制わいせつの疑いで3人の男を逮捕した。 「警察の調べによれば3人は、6月12日午前7時10分頃、JR福知山線・西宮名塩−宝塚間を走行中の電車内で、通学途中の女子高生を取り囲んだ上、体や胸を触ったといいます。これを目撃していた別の乗客が、被害者の女子高生とともに宝塚駅で駅員に相談し、防犯カメラの映像などから3人が特定され逮捕となったのです」(社会部記者) 1人の女性を3人で痴漢とは、さながら名作ポルノ映画『痴漢電車』のようだが、不可解なのは3人が互いに面識がなかったという点だ。 「警察は、アイコンタクトがあったのでは、という見方も持っている。加えて、先頃JR和歌山線で起きた“なりすまし”により発生した痴漢事件のように、ネット上の“痴漢情報掲示板”が元になっている可能性も含め、慎重に経緯を調べています」(同) さらに不気味なのは、被害を受けた女子高生が、これまでも複数回、痴漢に遭っていることだ。 「自分からは、なかなか被害に遭ったことを言い出せない。常習的な痴漢から見れば、そんな彼女は格好の獲物です。彼女の情報が、ネットのおかしな掲示板に載っていたとしたら、大変恐ろしいことです」(ネット事情通) もし面識がなかったとしても問題は残る。福知山線にそれだけ多くの痴漢が乗っていた、という事実に変わりはないからだ。 徹底した痴漢対策が求められる。
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社会 2013年08月01日 18時00分
国内事業の低迷でユニクロ大苦戦
“デフレ下の勝ち組”と称賛されてきた『ユニクロ』のメッキが剥げ落ちている。 先ごろ発表した第3四半期決算。営業利益は事前予想(320億円前後)を大きく下回る273億円にとどまり、とりわけ連結売上高の6割を稼ぐ国内ユニクロ事業が4.7%の営業減益に陥るなど、予想外の大苦戦を強いられた。結果、同社株は失望売りが膨らみ、年初来高値の4万4400円を付けてから、わずか1カ月半で1万円近くも下がってしまったのである。 なぜ業績が急速に悪化したのか。証券アナリストは辛らつだ。 「柳井正会長(社長兼務)が唱える『売上高1兆円』の大目標を達成すべく、ユニクロはこれまで土曜日と日曜日に行っていた値下げセールを、去年の秋から金曜−月曜にまで拡大したのです。集客は上がり、これが売上高を押し上げた反面、低価格路線にのめり込んだことで営業利益が落ち込んだ。そのツケが回ってきたのです」 ユニクロの粗利益率は1.2ポイント減の48.7%までダウンし、既存店売上高は2期連続で前年割れが続いている。これに危機感を募らせた柳井会長が、社員の尻を叩いて業績アップの大号令をかけるのは目に見えている。ただでさえ同社は入社3年以内の離職率が5割を超えるなど悪評が高いだけに、以前にも増して尻を叩かれるとすれば、社員はたまったものではない。 「ユニクロは東南アジアへの出店を加速させている半面、国内では値下げ戦略に名を借りた“バッタ屋路線”に依存し、目先の売上高確保に汲々としている。周囲をイエスマンで固め、耳に痛い情報が入らない柳井会長は裸の王様になっているのです」(経済記者) 頑固な柳井会長のこと、まだデフレ経済が続くと確信しているのだろうか。
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社会 2013年08月01日 15時00分
高校時代からの積年の恨み
今年4月、高校時代の同級生だった男性をナイフで刺して重傷を負わせたとして、都内のアルバイト、藤田和也(20)被告が殺人未遂と銃刀法違反の容疑で警視庁に逮捕された。当時の報道によると、動機については「高校時代からの積年の恨みがあった」と話していた。20歳の若さで、何ゆえそれほどの恨みを抱くほどになったのか。7月17日、東京地裁で藤田被告の公判が開かれ、その背景が明らかになった。 情状証人として出廷した母親は、高校時代の藤田被告と被害者の関係についてこう語った。 「息子の性格が変わったのは高校2年生のとき。Sくんによるイジメだったと思います。1万5000円を取られたって言っていたり、ゲームキューブを持っていかれたということで、どちらも何度も催促したけど戻ってこなかった、と本人から聞きました」 さらにこう続ける。 「すれ違ったときに叩くとか、弁当に消しゴムのカスやジュースを入れられた、女の子の胸を揉むように執拗に言われた事がある、と」 また、当時の藤田被告は「生まれなければよかった。アイツが死ぬか俺が死ぬかのどちらかだ」とも語っていたといい、思い詰めていた様子が窺える。 グレーのTシャツにジャージを着て、無表情で被告人席に座っていた藤田被告は、被告人質問で動機をキッパリと「仕返しです。イジメを受けていて」と述べた。 検察官「なんで今更仕返ししようと?」 藤田被告「今更…?」 裁判官「今回の事件、あなたの行動にどんな問題があったと思いますか?」 藤田被告「加害者側の心に問題があったというんですか?」 裁判官「3カ月、勾留されてどうですか?」 藤田被告「酷い事してしまったと思ってます…」 やはり、やり取りの端々に消えぬ恨みが見え隠れする。しかし、一方の被害者は調書で「一方的にいじっていた訳ではない。お互い友だちだと思っていた」と語っており、両者にはかなりの温度差があった。 イジメられた側の心の闇は深い。
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社会 2013年08月01日 11時45分
インターネットのサイトで女性になりすまし他人に痴漢をさせた男に罰金刑 実行犯は不起訴
和歌山区検は7月29日、女性になりすまして、インターネットのサイトに痴漢を呼びかける書き込みをし、別の男に痴漢行為をさせたとして、和歌山県迷惑防止条例違反罪で、大阪国税局海南税務署(同県海南市)の伊勢川洋二・上席調査官(49=同県紀の川市粉河)を略式起訴した。和歌山簡裁は罰金30万円の略式命令を出し、伊勢川上席調査官は即日納付した。 また、和歌山地検は同日、その書き込みを見て、女性に痴漢行為をしたとして、強制わいせつ容疑で逮捕された大阪府岸和田市の男(26)について、不起訴処分とした。金木秀文次席検事は、処分理由を明らかにしていない。 起訴状などによると、伊勢川上席調査官は4月30日、インターネットの痴漢交流サイトの掲示板に、「ゆい」という女性名で「痴漢してくれる人いませんか」などと書き込み、JR和歌山線・粉河(こかわ)駅から乗車した女性(23)の乗車位置や服装の特徴などを記載。その書き込みを見た別の男に、痴漢行為をさせたとしている。 県警などによると、伊勢川上席調査官は「当初は男性名で書き込んでいたが返答がなく、女性名で書き込むと反応があり、楽しくなって今回の書き込みをした。以前から女性を電車で見かけ、好きなタイプだった。痴漢されたところを、善良なふりをして助ければ仲良くなれる。一緒にお酒を飲みに行けると思った」などと供述しているという。 大阪国税局の山本吉伸・国税広報広聴室長は「国民の信頼を損なう重大な事件であり、誠に遺憾。司法当局の判断を踏まえ、組織として厳正に対処する」とコメントした。 伊勢川上席調査官の罰金刑は当然のこととして、被害女性の感情としては、痴漢の実行犯が不起訴になるとは、釈然としない面があるだろう。(蔵元英二)
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社会 2013年07月31日 11時45分
神戸電鉄助役が駅から現金約1500万円などを盗む
なんとも、とんでもない駅助役がいたものである。 兵庫県警捜査3課などは7月26日、神戸電鉄湊川駅(同県神戸市兵庫区)の定期券発売所から、現金約1557万円などを盗んだとして、窃盗などの容疑で、同電鉄・鈴蘭台駅助役の新谷輝夫(50)、妻で無職・ちづる(49)両容疑者=いずれも同市北区=を逮捕した。 輝夫容疑者は「自分一人で盗み、妻は見張り役だった」と供述し、ちづる容疑者も認めているという。 逮捕容疑は、輝夫容疑者らは4月7日夜から8日早朝にかけ、同電鉄・湊川駅の定期券販売所に侵入し、金庫から売上金約1557万円とパスカード2000枚(約329万円相当)を盗んだとしている。 県警によると、徳島県徳島市内の公園で26日朝、輝夫容疑者が薬物自殺を図ろうとして、ちづる容疑者が119番通報。徳島県警が2人を保護、病院に搬送し、行方を追っていた兵庫県警の捜査員が逮捕した。 輝夫容疑者の供述に基づき、兵庫県宍粟市にある、ちづる容疑者の父親の墓の脇の草むらで、ポリ袋に入った現金約900万円も見つかった。 輝夫容疑者は今年3月まで湊川駅に勤務し、6月からは精神疾患を理由に休職していた。会社には数百万円の借金があったといい、県警は任意で事情を聴いていた。 同電鉄の人事総務部は、助役の不祥事に「従業員の管理教育を徹底し、信頼回復に努めたい」とコメントしている。(蔵元英二)
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社会 2013年07月31日 11時00分
音事協会長にホリプロ会長兼社長 親子二代の就任は初めて!
芸能プロの団体である音事協(一般社団法人日本音楽事業者協会・別称JAME)のトップに堀義貴ホリプロ会長兼社長が就任、関係者は熱い視線を注いでいる。 巨大集団・音事協を47歳になる若手経営者が舵をとることになった。任期は2年。 同協会の加入社は100を超える。エイベックス、太田プロ、北島音楽事務所、研音、サンミュージック、長良プロ、バーニング、ホリプロ、吉本興業、渡辺プロなどで発足は1963年、初代会長は中曽根康弘氏だった。 二代目に渡辺晋(渡辺プロ)、続いて堀威夫(ホリプロ)、井澤健(イザワオフィス)、尾木徹(プロダクション尾木)の各氏がポストを受け継いできた。堀義貴氏はホリプロ創業者で音事協三代目会長・堀威夫氏の二男。親子で会長職に就くのは初めてのことだ。 その勢力拡大はハンパではない。今年1月、ザ・プリンス・パークタワー東京で新年会が開かれ、芸能界はもとより、政財界などの関係者1500名が出席した。 「会場内は人が多くてなかなか歩けない。これだけの盛大なパーティーはテレビ局や映画会社主催でも見たことがありません。昨秋、旭日小綬章を井澤健前々会長が、藍綬褒章を尾木前会長が受章したことを祝ったものです。同時に音事協の政事力をみせつけたといえます」(芸能プロ幹部) 堀新体制で脇を支えるのは、専務理事の五藤宏氏、常任理事・神林義弘氏(長良プロ)、同・本間憲氏(レブロエンタテインメント)、同・吉田美樹氏(渡辺プロ)らだ。 協会挙げて取り組んできた私的違法ダウンロード罰則が10月から適用化され、長年の努力が実った。 だが、課題は山積みである。牛歩状態でなかなか進展をみせない私的録音録画補償問題、TPPでも大きなテーマとなっている知的財産に関わる問題などである。 百鬼夜行の世界だけにその手腕が試されることになりそうだ。
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社会 2013年07月31日 11時00分
首位日テレ、フジは3位に転落 テレビ局直近平均給与に変化
テレビ局の直近年間給与が明らかになったが、大きな変化が生じている。 会社四季報によると、'12年3月期決算まで首位を独走していたフジ・メディア・ホールディングスが3位に転落したのだ。 '12年3月期段階までは1510万円(44・3歳)だったが、直近の'13年3月期では1479万円(44歳)に落ちた。フジHDに代わって首位になったのが日本テレビホールディングスで1491万円(47歳)。フジHDは業績がよくないので給与を抑えたようだが、それでも高給であることに変わりはない。 以降は、'13年3月期のテレビ局年間給与ベスト10だ。(1)日テレHD 1491万円('12年3月期1425万円)(2)東京放送HD 1484万円(同1377万円)(3)フジHD 1479万円(同1510万円)(4)朝日放送 1444万円(同1397万円)(5)テレビ朝日 1303万円(同1303万円)(6)スカパーJSAT HD 1222万円(同1161万円)(7)テレビ東京HD 1210万円(同1287万円)(8)RKB毎日放送 1196万円(同1158万円)(9)電通 1143万円(同1145万円)(10)WOWOW 1001万円(同1001万円) 今回は日テレの“年収急増”が目立つ。 '11年3月期では1333万円と低かったが、なぜなのか。 「年収を抑えたのは故氏家齊一郎会長でした。2年前に大久保好男社長になってから、評判が悪かった給与決定システムをやめ、キー局の中では低い年収の増額につとめた。女子アナの大量退社や、'11年に視聴率三冠王を達成したことも上がった要因といえます。反対に、フジHDの凋落は視聴率低下などが原因による総売り上げの減収が響いている。'08年3月期は3829億円だったが、'12年3月期は3290億円。わずか4年で539億円の落ち込みである。毎期平均135億円ずつ下落していたことになる」(テレビ業界関係者) それでも、お笑い芸人がバカ騒ぎする番組を作っただけで、高給をもらうテレビ局社員はうらやましい限りである。
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社会 2013年07月30日 11時45分
神奈川県警の巡査長がキャンプ場の女子トイレをのぞき
もはや、警察官としての良識や倫理観など、あったものではないということなのか…。 山梨県警大月署は7月26日、キャンプ場の女子トイレをのぞいたとして、県迷惑行為防止条例違反の疑いで、神奈川県警高津署の地域課巡査部長・山崎研吾容疑者(41=同県大和市上草柳)を逮捕した。山崎容疑者は容疑を認めている。 逮捕容疑は、同日午前6時半頃、山梨県道志村のオートキャンプ場で、トイレ建物の男女の仕切り壁(高さ2.5メートル)を男子側からよじ登り、上部の約70センチのすきまから、20代女性が利用している隣の女子トイレをのぞいた疑い。 同署によると、女性が110番通報し、署員が任意同行。山崎容疑者は自暴自棄になったのか、署内で事情聴取中にトイレに行き、持っていたナイフで自らの首を刺す自傷行為を行ったが軽傷だった。同署は所持品検査をしていなかった。 神奈川県警によると、山崎容疑者は23日から27日まで休みを取って、家族を連れてキャンプ場に遊びに来ていたという。 県警の保坂都彦監察官室長は「警察官としてあるまじき行為で誠に遺憾。山梨県警の捜査結果を踏まえ、厳正に対処する」とのコメントを出した。 神奈川県警では昨年来、署員による不祥事が相次いでいる。4月には県警相模原署地域2課の20代の巡査が、交番に相談に訪れた女性を公園に連れ込んで、キスをするなど、わいせつな行為をして、特別公務員暴行陵虐容疑で逮捕されたばかり。 いい加減、綱紀粛正してもらわないと、県警に対する神奈川県民の信頼は失われていくばかりである。(蔵元英二)
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社会 2013年07月30日 11時00分
日本の空 夏の陣 トラブル続きの米・ボーイングを仏・エアバスが切り崩し!
日本の空を舞台に、ボーイング社(米)とエアバス社(仏)が仁義なき攻防戦を展開中だ。 日本市場で9割と圧倒的シェアを誇るボーイングは今年の1月、最新鋭の787型機でバッテリー火災事故が相次ぎ、6月に運航を再開したばかり。しかし、事故原因が解明されないままの見切り運航とあって、利用者の不安感は拭えない。 そこでエアバスが「千載一遇のチャンス」とばかり、日本航空(JAL)や全日空(ANA)に猛然と売り込み攻勢を掛け、これにボーイングが神経を尖らせているのである。 エアバスがボーイングの牙城切り崩しに目の色を変える理由は明快である。両社は世界の航空界を二分する大勢力で、エアバスはボーイングの母国・米国でも3割のシェアを持つ。ところが日本でのシェアは前述の通り1割に過ぎず、それもスカイマークやピーチ・アビエーションなどの新興勢力がメーン。JALに至ってはゼロで、ボーイングを130機余り保有しているのとは対照的だ。 そんな中、ボーイング787の安全性に再び懸念が浮上。運航再開から1カ月後の7月12日、ロンドンのヒースロー空港に駐機中のエチオピア航空ボーイング787が出火事故を起こし、株価が急落したのだ。 後に英航空事故調査局が「火災とバッテリーに直接の因果関係はない」との声明を発表したことで多少持ち直したが、投資家の大半は半信半疑だった。その直前にはサンフランシスコ国際空港で、アシアナ航空のボーイング777型機が着陸失敗事故を起こしたばかり。操縦ミスの可能性が指摘されているものの、これでは投資家どころか、世界の航空関係者がボーイングへの不信感を増幅させたとしても無理はあるまい。 「エアバスのファブリス・ブレジエCEOは含み笑いをこらえるのに懸命でしょう。彼は1月半ばに米連邦航空局が787の運航停止を命じると、すかさず自社のA350へのリチウムイオン電池の搭載禁止を発表し、エアバス機の安全性をアピールしているほどです。傍観しているはずはありませんよ」(航空アナリスト) 敵失に乗じたエアバスの対日戦略は、確かに巧妙である。関係者によると、ブレジエCEOは3月末「日欧ビジネス・ラウンドテーブル」の共同議長として安倍普三首相を表敬訪問した際、エアバスの経営トップとして「今後、日本企業との取引を活発化させていきます」と“仁義”を切った。この関係者は、その言葉を「JALやANAに積極的に売り込むのは、空の安全を守るため。決して火事場ドロではないということ」と翻訳する。その駄目押しが、フランスのオランド大統領の来日(6月6〜8日)だった。 「国賓としての来日とあって閣僚6人、経営トップ約40人を引き連れてきた。経済協力の目玉はフランスを代表する原発企業アレバとエアバスの売り込みでした。大統領自らのトップセールスとなれば当然、相応の成果が期待される。といっても、決めるのはJALやANAですからね。これまで米国=ボーイング一辺倒だった政府は落としどころに苦慮しています」(情報筋) 果たせるかな、ANAの篠辺修社長は6月初め、耐用年数が迫ってきたボーイング777の後継機としてエアバスの「A350-1000(A350型機シリーズの中で最大)が有力候補になる」と初めて言及した。JALの大西賢会長も、現在保有する777型機46機を2019年から交代させる際、エアバスのA350-1000とボーイング787-10X、777-9Xの3機種が検討対象になっていると記者団に明かしている。 これまでエアバスとは一線を画してきた両社が採用に前向きな姿勢を見せたことから、市場関係者は「これぞ、トップセールス効果」と解説し、こう付け加える。 「JALがエアバスの購入に消極的だった最大の理由は、米国(ボーイング)ベッタリの自民党運輸族に逆らえなかったからです。これに不満を持ったのが民主党政権で、経営トップに稲盛和夫(=現名誉会長)さんを担いだ。エアバスとボーイングを競わせれば調達コストが下がると唱え、去年の暮からエアバスに急接近しました。今年に入ってのCEOや大統領の訪日は、そのお膳立てを受けてのことです」 そんな舞台裏を知れば、日本の空で存在感を誇ってきたボーイングも手をこまねいているわけにはいかない。噂では、787型機の運航停止中だった5月6日から3日間、ジェームズ・マックナーニCEOが多忙なスケジュールを縫って来日、航空会社首脳や政府要人と面談したという。 その行動は明らかになっていないが、目的は「エアバスによる切り崩し阻止だった」と複数の関係者が証言する。これには「だからこそ稲盛さんは執拗な面会要請を断った」と“怪説”する向きさえいた。言い換えれば、手負いのトラと化したボーイングは、エアバスの対日攻勢を実力で阻止しなければ「王国が崩壊しかねない」と危機感をあらわにしているのだ。 「日本での空中戦を苦々しく思っているのはオバマ政権です。ボーイングは民間向け航空機事業だけでなく、米国を代表する軍需企業の顔を持つ。787のトラブル原因が特定されないまま運航再開にGOサインが出たのも、会社をつぶすわけにはいかないからです。これで安倍政権がエアバス擁護の姿勢を打ち出せば、オバマ政権が激しく揺さぶってくるのは必至でしょう」(永田町関係者) ボーイング777の製造では、日本の企業が約20%のシェアを持った。787では35%に拡大した。この関係に、エアバスがどう風穴を開けるのか。 真夏の空が熱い。
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社会 2013年07月29日 15時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第37回 危険な「改革」論
例えば、「日本の財政は破綻する!」と主張する人がいたとして、彼らが次に何を言い出すかと言えば、「だから、公共事業に民間の活力を導入するのだ!」「だから、医療費抑制のため混合診療解禁だ!」と、新古典派経済学に基づく「改革」を必ず持ち出してくる。 財政破綻論と「改革」の組合せは、要注意である。なにしろ、彼らが推す「改革」を実施したとき、必ず「誰か」が得をし、別の「誰か」が損をすることになる。そして、大抵のケースで、損をするのは一般の日本国民だ。 要するに、彼らが求める「改革」は、後ろにいる誰かのレント・シーキング(自らに都合よくなるよう規制を設定、または解除させることで超過利潤を得ようとする活動)を実現するためである場合が多いのだ。 彼らは、実際には財政などどうでもいいというか、日本の財政が破綻しないことなど理解している。単に、誰かの得となる「改革」を実現するために、財政問題を持ち出しているに過ぎない。 典型的な例が、混合診療を巡る議論である。 日本政府は6月12日に発表した成長戦略に、保険診療と保険外診療(いわゆる自由診療)の併用を「例外的」に認める混合診療の拡大を盛り込んだ。 今秋をめどに、まずは抗がん剤の分野に混合診療が適用される。もっとも、経済界や一部の政治家が求めている「混合診療の全面的解禁」は見送り、あくまで例外的適用という立場を崩していない。 過去にも、厚生労働省は先進医療の分野において、混合診療を認めている。とはいえ、いずれ自由診療を「保険適用にする」ことを前提としていることに変わりはない。 さらに、成長戦略の中には、医薬品や診療の「保険適用」のための審査を迅速にするために、外部機関による専門評価体制の新設を盛り込んだ。 これまでは、1件当たり半年以上を必要としていた審査期間を、3カ月程度に短縮することを目指す。特に保険適用が望まれている抗がん剤の分野において、新薬を迅速に認可し、保険適用とし、医師や患者が金銭的に使いやすくすることが目的だ。 現在も、自由診療を保険診療と併用することはできる。 とはいえ、日本政府は混合診療を原則的に認めていないため、両診療を併用すると、保険診療分に対しても政府の公的医療費は支払われない。保険適用分を含めて、全額自己負担となるのである。 これを改め、両診療を併用した場合に「保険適用分は政府の公的医療費で支出するべきだ」というのが、混合診療推進派の主張だ。 それに対し、日本医師会などは「患者が受けられる医療サービスに、金銭的事情から格差が生じる」と反対している。 筆者はもちろん混合診療の解禁には反対で、 「単に自由診療を保険適用に組み込んでいけばいいだけの話ではないか」 と、考えている。 外国で実績がある抗がん剤などについては、速やかに保険適用とし、患者の負担を最小限に抑えたまま、国民幅広く先端の医療サービスを受けられるようにするべきという意見である(「速やかに」とはいっても、充分かつ慎重な審査が必要なことは、今さら書くまでもない)。 ところが、こうした主張を口にすると、即座に、 「財政問題があるのだから、そんなことができるはずがない! 自由診療を次々に保険適用にしていたら、財政がもたない。公的医療費を抑制するためには、混合診療解禁という改革を遂行するしかない」 という反論が飛んでくるわけである。 だが、この手の反論は極めて「奇妙」だ。混合診療を解禁したところで、別に政府の医療費が抑制されるわけではない。 落ち着いて考えてみれば、誰でもすぐに理解できるはずだ。 混合診療を全面解禁すると、政府の公的医療支出はむしろ拡大する。 これまでは自由診療と保険診療を混合させた場合に、保険診療分についてまで公的医療支出が実施されなかったのだ。 すなわち、両診療を併用した場合、患者が全額自己負担をするか、もしくは治療を諦めていたはずなのである。 自由診療と保険診療を混合させた場合に、保険診療分については政府の公的医療費でカバーする。これが混合診療の解禁であり、当たり前だが、 「これまでの政府は自由診療と混合された保険適用分の診療費を支払っていなかった。混合診療が解禁された場合、これまで払っていなかった保険適用分の診療費について、政府が公的医療費の支払いを求められる」 という話になり、どう考えても政府の公的医療費は拡大する。 混合診療の解禁の理由に「財政問題」を上げる人は、頭が悪いのか、それとも全てを理解し、混合診療解禁を「誰かのためのビジネスチャンス」として見ているかのいずれかだろう。 現実に「経済界」が全面解禁を求めている以上、「ビジネスチャンス」として見ている人が多いのだと思うが、実際に混合診療を全面解禁すると、 「国内の医療格差が拡大し、なおかつ政府の公的医療支出は増大する」 という事態になる。 最終的には、我が国の医療サービスはアメリカ的に、医療費の自己負担分が一方的に膨れ上がっていく構造になるだろう。 「おカネがあれば、命が助かる。おカネがないと、助からない」というアメリカ型の社会を、日本国民は本当に望むのか。 もちろん、最先端の自由診療を審査し、次々に保険適用にしていくと、混合診療解禁以上のペースで公的医療支出が増えていく。 とはいえ、我が国はデフレである。デフレが継続している以上、我が国に財政問題などない。政府はデフレ期には国債発行、通貨発行による財政出動で公的医療費の伸びを賄えばいい。 デフレから脱却し、日本経済が健全なインフレ率の下で成長を始めれば、税収が伸びる。 デフレ脱却後は、税収で公的医療費をカバーしていけば済む話だ。 混合診療に限らず、日本の医療サービスの改革を求める人たちは、果たして「誰のために」それを叫んでいるのか。 日本国民はよく見極めなければならない。三橋貴明(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。