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日本の空 夏の陣 トラブル続きの米・ボーイングを仏・エアバスが切り崩し!

 日本の空を舞台に、ボーイング社(米)とエアバス社(仏)が仁義なき攻防戦を展開中だ。

 日本市場で9割と圧倒的シェアを誇るボーイングは今年の1月、最新鋭の787型機でバッテリー火災事故が相次ぎ、6月に運航を再開したばかり。しかし、事故原因が解明されないままの見切り運航とあって、利用者の不安感は拭えない。
 そこでエアバスが「千載一遇のチャンス」とばかり、日本航空(JAL)や全日空(ANA)に猛然と売り込み攻勢を掛け、これにボーイングが神経を尖らせているのである。

 エアバスがボーイングの牙城切り崩しに目の色を変える理由は明快である。両社は世界の航空界を二分する大勢力で、エアバスはボーイングの母国・米国でも3割のシェアを持つ。ところが日本でのシェアは前述の通り1割に過ぎず、それもスカイマークやピーチ・アビエーションなどの新興勢力がメーン。JALに至ってはゼロで、ボーイングを130機余り保有しているのとは対照的だ。
 そんな中、ボーイング787の安全性に再び懸念が浮上。運航再開から1カ月後の7月12日、ロンドンのヒースロー空港に駐機中のエチオピア航空ボーイング787が出火事故を起こし、株価が急落したのだ。
 後に英航空事故調査局が「火災とバッテリーに直接の因果関係はない」との声明を発表したことで多少持ち直したが、投資家の大半は半信半疑だった。その直前にはサンフランシスコ国際空港で、アシアナ航空のボーイング777型機が着陸失敗事故を起こしたばかり。操縦ミスの可能性が指摘されているものの、これでは投資家どころか、世界の航空関係者がボーイングへの不信感を増幅させたとしても無理はあるまい。
 「エアバスのファブリス・ブレジエCEOは含み笑いをこらえるのに懸命でしょう。彼は1月半ばに米連邦航空局が787の運航停止を命じると、すかさず自社のA350へのリチウムイオン電池の搭載禁止を発表し、エアバス機の安全性をアピールしているほどです。傍観しているはずはありませんよ」(航空アナリスト)

 敵失に乗じたエアバスの対日戦略は、確かに巧妙である。関係者によると、ブレジエCEOは3月末「日欧ビジネス・ラウンドテーブル」の共同議長として安倍普三首相を表敬訪問した際、エアバスの経営トップとして「今後、日本企業との取引を活発化させていきます」と“仁義”を切った。この関係者は、その言葉を「JALやANAに積極的に売り込むのは、空の安全を守るため。決して火事場ドロではないということ」と翻訳する。その駄目押しが、フランスのオランド大統領の来日(6月6〜8日)だった。
 「国賓としての来日とあって閣僚6人、経営トップ約40人を引き連れてきた。経済協力の目玉はフランスを代表する原発企業アレバとエアバスの売り込みでした。大統領自らのトップセールスとなれば当然、相応の成果が期待される。といっても、決めるのはJALやANAですからね。これまで米国=ボーイング一辺倒だった政府は落としどころに苦慮しています」(情報筋)

 果たせるかな、ANAの篠辺修社長は6月初め、耐用年数が迫ってきたボーイング777の後継機としてエアバスの「A350-1000(A350型機シリーズの中で最大)が有力候補になる」と初めて言及した。JALの大西賢会長も、現在保有する777型機46機を2019年から交代させる際、エアバスのA350-1000とボーイング787-10X、777-9Xの3機種が検討対象になっていると記者団に明かしている。

 これまでエアバスとは一線を画してきた両社が採用に前向きな姿勢を見せたことから、市場関係者は「これぞ、トップセールス効果」と解説し、こう付け加える。
 「JALがエアバスの購入に消極的だった最大の理由は、米国(ボーイング)ベッタリの自民党運輸族に逆らえなかったからです。これに不満を持ったのが民主党政権で、経営トップに稲盛和夫(=現名誉会長)さんを担いだ。エアバスとボーイングを競わせれば調達コストが下がると唱え、去年の暮からエアバスに急接近しました。今年に入ってのCEOや大統領の訪日は、そのお膳立てを受けてのことです」

 そんな舞台裏を知れば、日本の空で存在感を誇ってきたボーイングも手をこまねいているわけにはいかない。噂では、787型機の運航停止中だった5月6日から3日間、ジェームズ・マックナーニCEOが多忙なスケジュールを縫って来日、航空会社首脳や政府要人と面談したという。
 その行動は明らかになっていないが、目的は「エアバスによる切り崩し阻止だった」と複数の関係者が証言する。これには「だからこそ稲盛さんは執拗な面会要請を断った」と“怪説”する向きさえいた。言い換えれば、手負いのトラと化したボーイングは、エアバスの対日攻勢を実力で阻止しなければ「王国が崩壊しかねない」と危機感をあらわにしているのだ。
 「日本での空中戦を苦々しく思っているのはオバマ政権です。ボーイングは民間向け航空機事業だけでなく、米国を代表する軍需企業の顔を持つ。787のトラブル原因が特定されないまま運航再開にGOサインが出たのも、会社をつぶすわけにはいかないからです。これで安倍政権がエアバス擁護の姿勢を打ち出せば、オバマ政権が激しく揺さぶってくるのは必至でしょう」(永田町関係者)

 ボーイング777の製造では、日本の企業が約20%のシェアを持った。787では35%に拡大した。この関係に、エアバスがどう風穴を開けるのか。
 真夏の空が熱い。

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