社会
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社会 2014年04月29日 11時00分
ベンツ快進撃に焦るトヨタ
これぞアベノミクス効果というべきか、国内高級車販売で5年ぶりの大逆転劇が話題を呼んでいる。2013年度の新車販売で独ダイムラーの高級車ブランド『メルセデス・ベンツ』の販売台数が前年度比39.5%増の5万9774台に達し、13.1%増の4万9435台にとどまったトヨタ自動車の『レクサス』を抜き去ったのだ。 「ベンツはラインアップを広めることで国産車からの乗換えを狙い、需要の掘り起こしに力を入れたことが寄与し、購入者の平均年齢が以前に比べて10歳ほど若返っている。この層がベンツの熱烈なファンに育てば、国内勢には大変な脅威です」(ディーラー関係者) そんな中、5年ぶりの逆転を許したトヨタは「屈辱感に溢れている」とウオッチャーは打ち明ける。矢面に立っているのはレクサス事業担当の山本卓常務役員。昨年度の実績でベンツに抜かれたことがわかると、報道陣に対し欧米勢に比べてレクサスの車種が少ないことを理由に挙げ、今後は品揃えの充実を図ると宣言しながらも「台数を増やすために車種を増やすのではなく、選択肢を増やすのが目的だ」と付け加えるのを忘れなかった。顧客のためとは耳障りのいい台詞だが、ウオッチャーは辛らつだ。 「HV車を含む新車販売のトータルでは世界一とはいえ、国内の高級車でベンツの後塵を拝したことで豊田章男社長が激怒したようです。メンツ丸つぶれだから無理もありません。そこで『ベンツに負けるな』『車種を増やせ』と檄を飛ばした。しかし、消費増税で消費者心理が冷え込み、HV車でさえ厳しい中、高級車がそう簡単に売れるわけがありません。レクサス部隊には御曹司への反発が渦巻いているようです」 果たして社内の声は社長の耳に届くだろうか。
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社会 2014年04月28日 11時45分
法務省内女子トイレ盗撮の裁判官出身・幹部職員を書類送検
警視庁生活安全特別捜査隊は4月25日、法務省庁舎(東京都千代田区霞が関)内の女子トイレに、カメラを仕掛けて盗撮したしたとして、同省前財産訟務管理官の男(50)=官房付=を、東京都迷惑防止条例違反と建造物侵入容疑で書類送検した。同隊によると「盗撮に興味があって、初めてやった」と容疑を認めている。 送検容疑は、3月14日午前7時半頃、同省内の女子トイレに侵入し、個室に小型カメラを設置して盗撮したとしている。カメラには数人の女性の姿が映っていたという。 トイレを利用した女性職員が発見したが、カメラはACアダプタに偽装し、個室内のコンセントに挿入されていた。同省から届け出を受けた警視庁が調べたところ、カメラの製造番号などから男が関与した疑いのあることが分かった。 男の自宅からは、他に盗撮したとみられる画像データなどは見つかっておらず、常習性はなかったとみられ、「多大な不快とご迷惑をおかけして、申し訳ないと思っている」と話している。 男は1994年に裁判官を任官し、仙台地方裁判所や東京地方裁判所などを歴任。10年に判検交流で同省に出向し、大臣官房参事官となる。その後、国有財産などの争訟事務を扱う財産訟務管理官として勤務。事件発覚後、3月30日付で官房付となっている。 裁判官が不祥事を起こした場合は、弾劾裁判所で罷免の判断を受けるが、男は異動の際に裁判官の身分を離れているため、対象にはならず、同省職員として懲戒処分が検討される。 同省秘書課は「検察でこれから捜査が行われる事案なので、詳細についてはコメントを差し控えたい」としている。(蔵元英二)
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社会 2014年04月28日 11時00分
捕鯨が不可になった日本外交の甘さ
先ごろ、ハーグの司法裁判所で争われていた南極海での捕鯨の是非について禁止が言い渡された。 最近の日本人は鯨肉を食べる習慣から遠ざかっており、食卓に鯨肉が載ることも稀で、鯨肉が余るために日本は計画通りの頭数を捕獲しておらず、結果的に「調査捕鯨が科学的に行われているとは思えない」というオーストラリアの主張が通ってしまった。 「調査捕鯨といいながら、実際に獲っているのは一種類。耳骨から鯨の年齢などを調べたり、胃の内容物を調べて生態系の観察をすることを目的としているが、日本は科学的調査を行っていなかった。実質的には商業捕鯨なのです。しかも、オーストラリアの指摘に対し有効な反論ができなかったことが、敗訴の原因となった」(社会部記者) これで日本は南極海の捕鯨から離脱するか、IWC(国際捕鯨委員会)を離脱して商業捕鯨を行うしか術はなくなった。 捕鯨には調査捕鯨と沿岸捕鯨の2種類がある。水産庁は沿岸捕鯨には冷たいが、調査捕鯨には10億5000万の予算(2013年度)をつけ利権を守ってきた。その全額が、日本鯨類研究所に渡っているという。鯨研は調査捕鯨で得た鯨肉を一手に販売し、60億円以上を売り上げているのだ。加えて鯨研は、同時に水産庁の天下り団体でもある。 ジャーナリストの大谷昭宏氏が語る。 「日本の外交のまずさもあって調査捕鯨という名の商業捕鯨がオーストラリアに論破されてしまった。オーストラリアの庭先まで出てやっているわけですから、相手の言い分もわからないではない。尖閣列島や竹島問題で日本は中国や韓国に対して司法裁判所に訴えろと主張しているのですから、ここは判決に従い、南極海での捕鯨から撤退した方がいい。鯨の食文化というなら、これまで伝統的にやってきた沿岸捕鯨で十分足りるはずです」 捕鯨保護というなら、水産庁は伝統的な沿岸捕鯨を守るべきなのだろう。
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社会 2014年04月27日 16時00分
福岡・筑後連続失踪事件 中森明菜似・美人妻の金満生活の謎
福岡県筑後市で発覚した連続失踪事件が、地元を混乱させている。同事件ではリサイクルショップを営む中尾伸也(47)・知佐(45)夫妻が窃盗容疑で逮捕され、周辺に多数の行方不明者がいることが報じられた。 だが、掘り返された店と自宅の庭からは痕跡が見つからず、夫婦の浮き沈みの激しい経歴と金満ぶりが注目されだしているのだ。 地元紙記者がこう語る。 「ユンボを使った捜索では物証が見つからず、地元では夫婦の生活ぶりが注目されているのです。もともと伸也容疑者は、行商を営んでいたが、喫茶店やポーカーゲーム屋経営などで失敗。'99年に自己破産したにもかかわらず、'03年にリサイクルショップを立ち上げ、不可解な金満生活を送っていた。そこに、捜査を進展させるヒントが隠されているとみられているのです」 ちなみに、こうした容疑者夫妻の金満ぶりは近所でも有名で、以前から注目を集めていたという。 地元住民がこう話す。 「あの夫婦は豪邸に住んで高級国産車を乗り回し、韓国にも旅行していた。また、6〜7人の従業員を住み込みで働かせ、月々約10万円の店の借地料も遅れることなく支払っていたそうです。ただ、一方で『店に迷惑をかけた』と従業員らを罵倒してサラ金から借金させ、金を取っていたとの噂も飛び交っていたのです」 また、伸也容疑者らは'07年に知人に2000万円の借金をしたが、「月額50万円ずつ返済し、'10年には完済した」(前出・地元紙記者)ともいわれているのだ。 もっとも、こうした豪快な性格は、当然ながら伸也容疑者だけではなかったようだ。 「実は、知佐容疑者は従業員の間でも“女帝”とみられていた。中森明菜似の美人だった同容疑者は、一説には中洲のクラブホステスだったとも伝えられるが、数万円もする出前の寿司を取って宴会したり、かなりの浪費家だったとの話がある。店では従業員らに『女将さん』と呼ばせるほどの姉御肌だったというが、捜査関係者はこの点にも注目しているのです」(同) 事件の解明はいつなのか。
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社会 2014年04月26日 17時59分
LCCはあてにならない? 格安航空会社ピーチが機長不足で大量欠航
LCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションは4月24日、5月19日から10月25日までの間、最大2088便が欠航する恐れがあると発表した。 その理由は、病欠する機長が要員計画上の想定を超えて発生し、予定した新規の機長の確保が当初見通しを下回ったためという、なんとも情けないもの。 すでに、5月19日から6月30日の間の448便の欠航が決定。7月以降については、4月末に判断するが、機長の確保ができなかった場合は2000便を超える大量欠航が発生する。 欠航が決まったのは、関空と札幌、仙台、松山、福岡、鹿児島、那覇、ソウル、香港を結ぶ路線で、乗客約1万6000人に影響する。すでに航空券を購入済みの客に対しては、他の便に振り替え、もしくは払い戻しの対応を取る。運航中止による減収は30億円に上る見通し。 井上慎一最高経営責任者(CEO)は「このような事態が2度と起こらないよう、今後は余裕をもった採用と運航の計画を立てたい」と謝罪した。 似たような例としては、北海道・札幌市を拠点とする航空会社エア・ドゥで、機長の体調不良により、3月6日〜12日までの7日間で、計14便が欠航する事態が起きたが、それはあくまでも一時的なもの。 これだけの長期にわたっての大量欠航は前代未聞。しかも、機長の補充がままならいためとなると、もはや論外。 すでに、航空券を予約、購入済みの客にとっては、旅行や出張の予定を変えざるを得なくなり、はなはだ迷惑千万な話だ。(蔵元英二)
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社会 2014年04月26日 11時00分
九州パニック 巨大噴火で起きる鹿児島・川内原発事故
原発再稼働の動きが加速する中で、最も早く再稼働するとみられている鹿児島県の川内原発。ところが、ここへきて難問を抱えていることが火山学者らの指摘で判明した。 「過去に桜島、阿蘇山、霧島では、最近起きている噴火とはスケールの違うケタ外れの超巨大噴火が発生している。また、鹿児島湾北部で窪地を構成する姶良(あいら)カルデラも、今から約3万年前に大噴火を起こし、その火山灰は関東地方でも10センチの厚さに降り積もったとされる。特にこの姶良カルデラではマグマの蓄積が進行し、噴火がいつ起きても不思議ではない状況だというのです」(サイエンス記者) 問題は、超巨大噴火が起きた場合、火砕流が川内原発を襲う可能性が高い点だ。 地元記者が言う。 「昨年、原子力規制委員会が原発の火山対策をまとめた。それによると、姶良カルデラで起きた3万年前の大噴火の堆積物が、川内原発から3キロ弱の地点で5メートル以上の厚さで確認されています。規制委の島崎邦彦委員長代理も、火砕流が原発敷地内に及んだ可能性が高いとの見方を示している。つまり再稼働などできない状況なのですが、スルーされているのです」 火砕流が川内原発を襲った場合、どうなるのか。 武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏が言う。 「高温で速度の速い火砕流が原発を襲えば、防御は不可能です。九州電力は再稼働に当たって慎重に審議しなければならないのに“超巨大噴火が起こる可能性はかなり低い”と、判断が甘い。もし大噴火が起これば、電源喪失や想定外のことが起こる可能性が高いのです」 国内には他にも、こうしたリスクを背負った原発が存在する。泊原発(北海道)、伊方原発(愛媛)、玄海原発(佐賀)だ。 「阿蘇山は、約30万年前から9万年前までの間に、4度の超巨大噴火を起こしています。9万年前の噴火では火砕流が九州全体を覆い、山口県や四国にまで到達したと考えられている。つまり、九州北西部の玄海原発だけでなく、四国西端の伊方原発まで到達することも考えられるのです」(前出・サイエンス記者) 日本は懲りずに同じ過ちを繰り返すのか。
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社会 2014年04月25日 11時45分
12歳の女子中学生にわいせつ画像送らせた山梨の消防士に停職処分
東山梨消防本部(山梨県甲州市)は、女子中学生にわいせつな画像を送らせたとして、3月に逮捕され罰金の命令を受けた男性消防士(30=同市塩山上井尻)を、4月16日付で停職6カ月の懲戒処分とした。また、監督責任を問われ、当時の上司だった総務課長を訓告、課長補佐を厳重注意の処分とした。 消防士は昨年12月8日午後8時50分から9日午前0時10分頃までの間、宮城県内に住む当時中学1年の女子生徒(12)に、わいせつな画像を撮影するよう指示し、タブレット型端末を使って画像5枚を送信させたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、3月13日、宮城県警大河原署に逮捕された。 同月31日、消防士は同法違反罪で、仙台簡裁から罰金50万円の略式命令を受け、今回の処分に至った。 2人はスマートフォン(多機能携帯電話)の無料通話アプリで知り合った。女子生徒はネット接続できる学習用のタブレット端末を使用していた。同月9日、写真に気付いた女子生徒の母親が同署に相談して発覚した。 同消防本部によると、消防士は「住民や同僚に申し訳ない」と話しているという。小笠原宏消防長は「市民、関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます。公務員倫理と再発防止の徹底に努めて参ります」とコメントしている。 消防士は勤続7年で、総務課に所属し、備品の調達などを担当。勤務態度はマジメで、特に問題はなかったという。(蔵元英二)
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社会 2014年04月24日 16時00分
才色兼備の元カノを刺殺 社内不倫男が爆発させた“怒りのジェラシー”(3)
事件直前、亀田は仕事の上でも佳代子にかなわなくなってきていた。佳代子が社長に進言して始めた成果主義による給料制で、佳代子は最上位のSランクに位置していたが、亀田は最低ランクのDランクに下げられ、別の支店に飛ばされる辞令も出ていた。 亀田は佳代子と別れてからくすぶっていた複雑な感情がよみがえってきた。佳代子と出会わなければ妻と別れることもなかったし、年功序列の給料が下げられることもなかったろう。いずれ佳代子は理想の結婚相手を見つけてさらに上り詰めていくに違いない。その姿が目に浮かぶようだ。そんな薔薇色の人生は阻止してやらなければならない。 亀田は入念な殺害計画を練り始めた。殺す場所は佳代子がいつもバイクを止めている遊歩道がいいだろう。退社時間の頃には、人通りも少ない。自分の店は近くのショッピングセンター内にあるので、午後8時まで営業中だが、勤務時間中に抜け出して襲えばアリバイが成立する。別の服装に着替えればいいだろう。 事件当日、亀田はナイフやハンマーを用意し、段ボール箱に凶器を隠して業者を装い、ショッピングセンターの搬入口から出た。 現場に向かうと、スマホをいじりながら歩いている佳代子を見つけた。後ろから近づいてハンマーを振り下ろそうとした時、振り返って「キャーッ!!」と叫ばれた。その口をふさぐために押し倒し、用意していたナイフで首元を刺した。 凶器は回収して退散。元の道を戻って仕事場に帰ったが、誰にも怪しまれなかった。佳代子が死んだことは、佳代子の勤務先の店長からの電話で知った。 「オレが犯人だと疑われているんだ。最後に接触したのはオレだが、絶対にやっていない!」 4日後、彼女の告別式には亀田も参列した。ところがお棺の彼女と対面した途端、彼女の目がカッと見開き、「必ずあなたを追い詰めてやる!」としゃべったのだ。もちろん他の人には何も聞こえない。目の錯覚だったのかもしれない。 だが、それから亀田は佳代子の幻影に追われるようになった。どこにいても彼女に見られているような気がするのだ。その翌日、亀田は警察に自首した。 亀田は公判でも泣きながら謝罪したが、げに恐ろしきは“男の嫉妬”である。亀田は「用意周到に準備した計画的かつ悪質な犯行」と断罪され、懲役15年を言い渡された。(文中の登場人物は全て仮名です)
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社会 2014年04月24日 11時45分
兵庫県庁職員がバスで前方座席の女性の尻触る
県庁職員がいったい何をやっていることやら…。 兵庫県警葺合(ふきあい)署は4月17日、神戸市営バスの車内で、前に座っていた女性の尻を触ったとして、県迷惑防止条例違反の疑いで、兵庫県国際経済課副課長の男(55=同県神戸市兵庫区)を逮捕した。 逮捕容疑は、16日午後2時20分〜35分頃、神戸駅前発市民福祉交流センター前行きの神戸市営バスの車内で、同市中央区を走行中、同市北区に住む保育士の女性(43)の尻を触ったとしている。 同署によると、男は前の座席に座っていた女性の背もたれと座面の間から、なんと、右手を手首まで突っ込んで、女性の尻を数分間触ったという。 女性が席を立つと、男は慌てて手を抜こうとしたが、指3本が抜けずに残っていた。尻に異変を感じていた女性が問いただすと、男は「すみません」と認めた。女性はバスの運転手に相談し、近くの交番に通報した。 女性によると、「ムズムズした感覚があったが、まさか、こんなところで触られるはずがない」と思っていたというから、さぞやビックリしたことだろう。 県によると、男は企業の海外進出の支援などを担当しており、犯行当日は勤務ではなく、休みを取っていた。 それにしても、前の座席の背もたれと座面の間に手をこじ入れて、痴漢をはたらく手口など聞いたことがない。絶句するしかないか…。(蔵元英二)
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社会 2014年04月23日 15時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第73回 一貫して間違えている安倍政権の労働政策
大本の思想、発想、もしくは考え方を間違えてしまうと、その後はどれだけ頭をひねっても、誤った解決策しか生み出せない。 現在の安倍(晋三)政権の労働政策は、まさに根本が歪んでしまっているため、見事なまでに一貫して間違えている。 安倍政権が推進する各種の労働規制を一言で書くと、 「規制緩和により労働市場に新たな労働者を放り込み、労働者間の競争を激化させることで実質賃金を下げる」 というものになる。 日本国民は'97年に橋本(龍太郎)政権が緊縮財政の強行というミスを犯した結果、15年以上もの長きに渡るデフレによる実質賃金の低下、つまりは「貧困化」に苦しめられた。その「デフレ脱却」を標榜して誕生したはずの第二次安倍政権が、驚くほどの熱心さで実質賃金を引き下げる政策を推進しているわけだから、呆れ果ててしまう。 安倍総理は4月4日の経済財政諮問会議、産業競争力会議の合同会議において、 「女性の活躍推進の観点から外国人材の活用について検討してもらいたい」 と、耳を疑うような発言をした。 すなわち、家庭の家事や育児の分野に外国人労働者を広く受け入れ、専業主婦の女性が働きに出るように制度を変えろという話だ。 また、安倍総理は3月19日の時点で、専業主婦がいる世帯の所得税を軽減する「配偶者控除」の縮小、廃止を検討するように指示している。 安倍総理は「働く女性は素晴らしい。主婦はダメ」という価値観でも持っているのだろうか。そうであるならば、随分と差別的な話である。 個人的には、専業主婦だろうが、キャリアとして働いている女性だろうが、輝いている女性は輝いているし、輝いていない女性は輝いていないと思うわけだ。各女性が持つ価値観を大切にし、それぞれが主婦なり、仕事をするなり、好きな道を選ぶことが可能な環境を作るというならばともかく、「女性は仕事に出るべき」という価値観に基づく政策を、一方的に押し付けようとしているわけだから、傲慢でもある。 4月4日の合同会議では、掃除や洗濯、育児などの家事や家族の介護を理由に、仕事に出ることができない女性が220万人いるとの試算が公表された。 つまるところ、経済財政諮問会議や産業競争力会議の「民間議員(実は単なる民間人)」のお歴々、あるいは安倍総理大臣は、220万人もの女性を労働市場に送り出せば「就職できる」と考えているのだろうか。220万人分もの雇用需要が余っているならば、我が国はとうに完全雇用を達成していることだろう。 要するに、現政権は「労働者を労働市場に供給すれば、仕事がある」と勝手に思い込んでいるのだ。まさに、典型的な「セイの法則」的勘違いである。 新古典派経済学の「基盤中の基盤」を成す考え方、すなわち「セイの法則」は、一言で説明すると「供給が需要を創出する」になる。製品やサービスは、供給すれば必ず客が買ってくれる。ということは、人々が職を求めたとき、必ず仕事があるということになるわけだ。 すなわち「完全雇用」は常に成立している。冗談でも何でもなく、新古典派経済学者は「非・自発的失業は存在しない。失業者は全員が自発的失業者である」と考えているのだ。 非・自発的失業者が存在しない、すなわち「失業問題がない」環境下であるならば、専業主婦の女性が働きに出れば、必ず仕事があるという話になる(たとえ220万人でも!)。 とはいえ、現実の世界ではセイの法則は成り立っておらず、完全雇用も実現していない。扶養控除の廃止等の政策で専業主婦の女性を労働市場(注・低賃金労働市場)に送り出した日には、我が国の労働市場の競争は激化の一途をたどり、日本国民全体の賃金水準も抑制されてしまう。ゆえに、国民の貧困化が進む。 外国人労働者の問題も同じである。外国人に「育児」を任せるなどという、おぞましい発想は論外だが、現在、人手不足が顕著になっている一部の産業(土建、運送など)においても、外国人は役に立たない。理由は、日本語による堪能なコミュニケーションが不可能であるためだ。 確かに土木、建設、運送、IT開発等で人手不足は深刻だが、求められているのは「日本語に基づく円滑なコミュニケーションができる専門職」なのだ。 普通に考えて、30万人近くも存在する「働けるにもかかわらず、生活保護を受けている日本国民」(あるいはNEETと呼ばれる若い世代)をトレーニングし、資格を取得させ、労働市場に送り出すべきだと思うわけだが、なぜ安倍政権からは女性、外国人労働者といった話が出てくるのだろうか。 理由はもちろん、現在の日本において、 「余計な労働規制の緩和はしない。人手不足が深刻化している産業に対しては、賃上げ及び『働けるにもかかわらず、労働市場から退出している日本国民』をトレーニングし、労働市場に送り出すことで対応する」 という、至極真っ当な政策を実施してしまうと、国民の実質賃金が上昇を始めてしまうためだ。 すなわち、日本国民が豊かになっていくという話なのだが、 「そんなことをしたら、企業の国際競争力(価格競争力)が低下する!」 と主張する「民間人」が、民間議員として経済財政諮問会議や産業競争力会議に入り込み、政策をリードしているわけである。 筆頭は、もちろん人材派遣大手パソナ・グループの取締役会長である竹中平蔵氏である(現在の安倍政権が検討する労働政策が実行に移されれば、パソナのビジネスもさぞや増えることだろう)。 筆者は「自分は保守派だ」などと名乗らず、名乗る気もないが、少なくとも安倍総理はいわゆる「保守派」と呼ばれる政治家の一人だったのではなかったか。 いや、むしろ保守政治家の代表のように「見えた」安倍総理が、外国人労働者、移民を増やし、家庭のあり方まで変えかねない労働政策を推進している。 「冗談ではない。そんなことをしてもらうために、安倍自民党を選んだのではない」 と、自民党に投票した日本国民こそ、猛烈に反対するべきだと思うわけである。三橋貴明(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。