社会
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社会 2016年12月10日 16時20分
抜きすぎ注意! 鼻毛の役割りと正しい処理の仕方
日ごろの身だしなみにおいて、つい気を抜いてしまいがちなのが、鼻毛のお手入れです。しばらく放っておくと、思いのほか伸びていることがあります。 仕事相手に会うにしても、女性と会うにしても、処理は必須です。でも、必要だから生えているのであって、無闇に抜いてはいけません。 今回は、看護師の大木アンヌさんに、鼻毛の役割りや正しい処理の仕方についてお聞きしました。■鼻毛の役割り 「鼻毛の役割りはおそらくご存知の方も多いでしょう。息を吸い込んだときに体内にゴミや異物を取り込まないための、フィルターとしての働きをしています。そしてもうひとつ、臭いを嗅ぎ分ける役割りも果たしています。生えている鼻毛のなかには『嗅毛』という種類のものがあります。嗅毛には嗅覚受容体が備わっていて、捉えた臭い物質を判別して脳へと伝えます」■抜きすぎは嗅覚に悪影響 「鼻毛の処理の方法は、抜くか切る。最近では、ワックスを使った脱毛が流行しています。鼻のなかにワックスを詰め、棒を差し込み、固まったら一気に抜く方法です。手軽で痛みもそれほどありません。しかし、この方法だと、先ほどの嗅毛も一緒に抜けてしまう恐れがあります。そうなると、嗅覚に支障をきたし、臭いが嗅ぎ分けられなくなることも。また、フィルターがなくなることで風邪なども引きやすくなります。さらには抜いた場所から細菌が入り込み、感染症を引き起こす可能性も否めません」■正しい処理の仕方 「もし鼻毛を抜いたのであれば、処理後はしっかりアルコール消毒をしてください。細菌が入り込んでしまうと、毛嚢炎(もうのうえん)などの症状に繋がります。なるべく、鼻毛の処理は切るようにしましょう。その際に使用するのは、カッターやハサミ。ハサミの場合も尖ったものだと、鼻の内側を傷つけてしまう恐れがあります。そうなるとまた感染症の危険性も出てくるので、専用の先の丸いものを使うようにしてください」 やはり、鼻毛は必要だから生えているのです。入念に処理しすぎて、身体に悪影響を及ぼしては意味がありません。意識するとキリがないので、鼻から出ているものを処理するぐらいがいいのかもしれません。鼻毛と上手に付き合っていきましょう。【取材協力】大木アンヌルーマニア人ハーフの看護師。家庭や恋人同士で使える簡単な医療の知識を少しでも伝えていくため、ライターとしても活動中。
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社会 2016年12月10日 14時00分
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第47回
昭和44年12月の3期目の幹事長として田中角栄が指揮を執った第32回総選挙の争点は大きく二つ、「沖縄」と「安保」であった。 時に、沖縄に関しては、この1カ月前に訪米の佐藤栄作首相がニクソン大統領との間で「1972年(昭和47年)、沖縄の核抜き本土並み返還」の日米共同声明を発表。さらには自民党が日米安保条約の自動継続を決めたことが大きく、他には大学運営法などの自民党の強行採決連発を国民がどう捉えるかも“第3の争点”となった。 一方で「選挙がメシより好き」な田中は、エラく張り切っていた。ドタバタと候補者の公認調整を片付けるや、公示前日には早くも投票日開票前用の「かく戦えり」のビデオ撮りも済ませてしまうなど、ヤルことは早かった。その上で、公示直前には記者団にこうブチ上げたのだった。 「まぁ、解散時の(自民党の)272を割るなんてことは絶対にあるもんかッ。大体だ、(沖縄返還についての)日米共同声明の解決の仕方が悪いとか不安だとか言うのは、ごく一部の被害妄想的思考にすぎん。キミたちね、自己資本だけで経営している会社は堅いように見えても、こぢんまりしていて発展性がないんだよ。大会社は銀行から借り入れて、ドンドン発展している。ボクは当分、党本部で選挙形勢をにらんで采配を振るうが、最終段階では出撃しますッ」 選挙中盤戦以後のその“出撃”ぶりは、何とも“田中らしさ”を見せつけた。公認調整を一手に握るという“幹事長特権”をフルに活かし、来たるべき自らの天下取りの手勢を増やすため、目を付けた候補へ豊富な選挙資金をブチ込み、そうした候補の選挙区に足を運んでは応援に全力投球した。時に、自民党公認の新人候補は47人。うち“田中系”は14人もいたのだった。 その応援ぶりも他の実力者のもっともらしい演説などとはヒト味もフタ味も違い、例えば、後に外務大臣をやることにもなる木村俊夫の選挙区〈三重1区〉(注・当時の中選挙区制下)へ乗り込んだときには、こんなエピソードも残している。 折から、木村が選挙区回りで後援会集会を不在にしたとき、木村の秘書がその非を詫びると「かまわんッ」の一言で集会の壇上に立ち、こんな“芸”を披露してみせた。「今晩は木村先生の代わりにこの田中がお相手するッ」。ハナシは適当に切り上げ、得意のナニワ節『杉野兵曹長の妻』ならびに『天保水滸伝』2席のサワリをウナり、歓声、どよめき去らぬ中でカッコよく退席するといった具合だった。こうした一種の「稚気」は男の武器、この“型破り幹事長”はどこへ行っても人気は上々で、もとより木村も見事に当選を果たしたのであった。 12月27日の投開票。田中が戦前に口にした絶対の自信通り、自民党は無所属当選者の追加公認を加えて実に300議席の大台に乗せた。 このときの選挙の初当選者は「花の44年組」と言われ、その後、第一線で活躍した者が多く、“田中系”には後に首相の座にも就いた羽田孜、小沢一郎(現・自由党代表)、梶山静六(元・官房長官)、渡部恒三(元・衆院副議長)等々。“田中系”以外では福田赳夫(元・首相)に近いやはり後に首相となる森喜朗(現・東京五輪組織委員長)などもいた。 中でも選挙区事情から公認漏れとなり、〈福島2区〉から無所属で当選を飾った“会津訛り”で知られた渡部恒三は、こんな思い出を筆者に語ったことがある。 「当選直後の上京で、列車で上野駅に着いた。そうしたらホームにまだ陣笠だった竹下登、金丸信のお2人が待っていて、こう言うんだ。『これから田中幹事長のところに行こう。田中さんが拉致してでも連れて来いと言うんだ』と。党本部の幹事長室へ行くと、田中さん、破顔一笑、言うんだ。『当選、おめでとう。公認できなかったことは許してくれ。今、キミを自民党公認とした。コレを取っておけ。役に立たないモノではない。頑張ってくれッ』と、公認料の300万円の札束を無理にオレの背広の内ポケットにネジ込むんだ。オレも公認を外されて面白くなかったが、結局、議員として、以後、一貫してオヤジ(田中のこと)の後をついていくことになった。人間味、政治的能力、この人を超える人は、ついぞいなかったからだった」 この総選挙での大勝は、「ポスト佐藤」へ向けて田中が最有力候補の1人であることを、改めて自民党内外に印象付ける形となった。 年が明けた昭和45年2月、ホテル・ニューオータニで行われた自民党と財界人との新春懇談会の席上、田中は壇上からこう言って神妙に頭を下げた。 「わが党が300議席を取れたのは、皆さんの物心両面からの援助のおかげでありますッ。お礼の会をやっても足りないくらいであります」 会場を出て記者団に取り囲まれると、しかし、ヌケヌケとこう言ったのだった。「オレだって、時には頭を下げるさ」 田中の天下取りへの自信は、いよいよ深まっていくのである。(以下、次号)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。
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社会 2016年12月09日 14時00分
廃止・存続で揺れる10路線 赤字続きJR北海道の暗中模索
故・高倉健さん主演の映画『鉄道員』の幾寅駅、ドラマ『北の国から』の布部駅など、名作の舞台として知られる根室本線が廃線の危機に瀕している。今年3月の北海道新幹線の華々しい開通とは裏腹に、JR北海道の経営が大赤字に陥っているためだ。 「'17年3月決算が、過去最悪の175億円の赤字見通しとなった。現状のまま道内の全線を維持し続ければ、今後、毎年200億円近い赤字が生まれ、借入金の残高も'19年度に1500億円に膨らむ。旧国鉄からJRへの移行段階で国が7000億円を支援し、その運用益が毎年300億円あった。しかし、最近の利回り低下で運用益は80年代の半分にまで落ち込み経営を圧迫、破たんは必至です」(鉄道アナリスト) そのためJR北海道は11月18日、「単独では維持困難な路線」として、10路線13区間のリストをあえて公表し、SOSを発信したのだ。 「そのうち特に廃線、バス運行を検討しているのが、輸送密度200人未満(1日1キロ当たりの輸送人数)の、札沼線・北海道医療大学-新十津川間、根室本線・富良野-新得間、留萌本線・深川-留萌間の3路線3区間。さらに輸送密度200人以上2000人未満の日高本線・釧網本線・石北本線・宗谷本線などは『JR単独で維持することが困難な線区』とし、地元自治体と鉄道を維持する手法や支援を協議する方針とのこと」(地元記者) 維持困難路線は計1237キロ、実に道内の路線の約半分に当たる。 「12月に廃止が決まった留萌-増毛間16.7キロなどは、'14年度の輸送密度がわずか39人。100円の収益を上げるのに4554円もの経費がかかる有様です。今回の輸送密度200人未満路線も、燃料代も出ない状況。赤字原因はいくつもありますが、その筆頭は収益源だった在来線特急の利用者が落ち込んでいることです」(JR関係者) 例えば、JR北海道の統計によれば、'14年度の札幌-帯広間の輸送量は1日3718人で、'91年度比の約7割。札幌-旭川で同78%、北見-網走間となると約半数になってしまう。 「この減少の最大の理由は、道内の高速道路や高規格幹線道路の整備が進み、'87年に167キロが'16年には10倍の1093キロまで延長したことで、多くの鉄道利用者が車やバスでの移動に移ったことが大きい。しかも、日頃は鉄道の維持を訴える北海道や市町村に、整備費用を一部負担した無料の自動車道が増え続けている。この施策の矛盾がJR北海道の経営悪化の一因なのです」(同) 道路の整備網が極端に進んだことに加え、追い打ちをかけるのが過疎化だ。 「道内では炭鉱事業などが全盛の頃、さらには公共事業が活発化したバブル時は人も物流も多かったが、廃坑が相次ぎ、公共事業も減ると、過疎化が道内全体で進んだ。'00年から'12年だけでも、道内人口は約20万人減。人は札幌に一極集中するか、本州に流れてしまった」(道関係者) そもそも北海道の過酷な自然の中で、鉄道は早めの修繕が必要とされる。しかし、バブル崩壊以降、経営難から設備投資費を抑制し、老朽車両もそのまま。全道176カ所あるトンネルの中には100年以上経つトンネルが20カ所以上あり、約3000ある橋梁の1割は100年、半数は50年経過していることから、安全度に黄色信号が点滅する。今後、こうした修繕費は2600億円必要と予測されているのだ。 「JR北海道が努力をしてこなかったかと言えば、そうではない。JR発足時は1万3000人いた社員も今は7100人で、人件費もギリギリまで削っている。しかし、赤字は脱却できず、SOSを出した。これに対し高橋はるみ北海道知事は、『徹底した管理コストの削減など最大限の自助努力を。全道の交通ネットワークを形成する公共交通機関としての役割を十分認識して欲しい』と述べるだけで、結局はJR北海道に丸投げ状態。道が資金や責任を回避しているとしか思えない」(経営コンサルタント) そんな中、JR北海道が模索する道は、欧米で主流の線路や駅舎などの施設は自治体が所有する上下分離方式。 「しかし、地元自治体も道も“ない袖は振れない”“国が何とかしてくれないのか”とそっぽを向く。廃線後はバスでもいいという声もあるが、実際問題、除雪さえできれば動く電車に対し、車は吹雪けば動けない。廃線すれば北海道の過疎化はさらに進みます。悪循環を断ち切るためにも、自治体とJRで知恵を絞るべき」(道議会議員) 道人口は現在約540万人だが、2040年には419万人に激減という驚愕の推計(国立社会保障人口問題研究所)もある。同じような境遇にあるJR四国などが第二のJR北海道にならないためにも、よき前例となる前向きな策を期待したい。
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社会 2016年12月09日 10時00分
韓国・朴槿恵大統領側近の“ヤリチン高官”に流れた364錠のバイアグラ
韓国の最大野党・共に民主党の金相姫議員が「大統領府が昨年12月、バイアグラを60錠購入していた」と明らかにし、朴槿恵大統領はいまや泣きっ面に蜂の状態だ。今度は胎盤注射だの、整形手術をやっていたなどの疑惑に加え、大量のバイアグラ購入まで出てきて国民の怒りは頂点に達した。 「金相姫議員は医薬品購入内訳資料を入手し、韓国の夕刊紙・文化日報に'14年1月〜'16年9月までに大統領府が購入した医薬品の一覧(バイアグラ364錠、プラセンタ注射薬150回分など)を提供し、これが報道されたもの。鄭然国大統領報道官は定例会見で『バイアグラは朴大統領のアフリカ諸国訪問を前に高山病対策として購入したが、1錠も使わなかった』と説明したことが、さらなる疑惑を呼んだのです」(駐韓通信社記者) 女性である朴大統領がバイアグラを通常服用するとは思えないが、それはさておき、疑問は山ほどある。 大統領の外遊先の3都市は、いずれも高山病にはならない標高の地であること。金議員の提出した資料には、大統領府は昨年12月に別に正規の高山病薬200錠を購入していることが明らかになっている。また、バイアグラ60錠以外に韓国国内で製品化されたジェネリックED薬『パルパル』を304錠も購入している。 バイアグラは高山病薬より75倍も高価。『パルパル』は女性の服用が禁じられており、健康状態を気にしている朴大統領が服用するはずがない…。 このように、高山病対策を論破するに十分な否定論拠のオンパレードなのである。つまり、韓国メディアは誰一人として政府の「高山病薬説」をまったく信用していない。 では一体、誰が何のためにED治療薬を“大量買い”したのか。バイアグラの高山病に対する効能について登山が趣味の生物化学の専門家も、韓国紙の取材に対し「実際に高山病を防ぐ目的で使っている登山家もいるが、臨床的に効能が実証されているわけではない」とコメントしていた。 「仮に随行職員らの高山病への予防対策だったとしても、事前に服用したら勃起してしまう。アフリカ訪問の手土産にしても不謹慎。留守がちな大統領の居ぬ間に、高官のED野郎が妓生パーティー(日本の芸者遊びの類い)をやっていた…おそらくそれが正解ではないか」(前出・記者) 朴大統領がそれを知っていて、黙認していたとしたら、その恩恵にあずかっていたと思われても致し方ないであろう。だって、大統領とはいえ“女”ですもの…。
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社会 2016年12月08日 14時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 年金カットか年金確保か
国会で年金制度改革法案の審議が紛糾している。原因は、民進党が年金改革関連法案を「年金カット法案」と呼び、政府の姿勢を糾弾しているからだ。 民進党の試算によると、改革法案が導入する年金給付決定方式が仮に2005年度から10年間適用されていたとすると、年金給付は基礎年金で年額4万円、厚生年金で14万2000円減額されたとしている。これは5.2%の減額となり、年金世代の生活を破壊してしまうというのが民進党の主張だ。 一方、こうした追及に自民党は猛反発している。党のホームページでは、年金制度改革法案のQ&Aを設けて、「今回の法案に対して『年金カット法案』という批判がありますが、本当ですか?」という問いに対して、「いいえ、ちがいます。安倍政権はデフレ脱却や賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組んでいますが、万一、不測の経済状況が起きた場合の備えとして、将来世代の年金水準を確保するための仕組みを整えます」と回答している。 民進党が「年金カット」と非難するのに、自民党は「年金確保」だと主張する。一体どちらが正しいのか。結論から言うと、どちらも正しい。民進党の主張するように、この法案は、年金給付をカットするためのものだ。 いまの公的年金給付は、物価上昇率と実質賃金上昇率のどちらか低いほうに合わせて調整される。ただし、物価上昇率がプラスで、実質賃金上昇率がマイナスの場合は、据え置きとなる。そんなことが起きるのかと思われるかもしれないが、まさに昨年がそうだった。 また、少々難しい話になるが、今回の年金制度改革法案は、毎年1%程度ずつ年金給付額を引き下げるマクロ経済スライドが、物価下落などで実施できなかった場合には、デフレ脱却時に未実施分をまとめて実施するという内容も含んでいる。つまり、経済情勢がどうなろうと、年金給付を確実にカットしていきますよというのが、今回の法案の趣旨なのだ。 その意味で、民進党の主張は正しい。しかし、年金給付の引き下げを先延ばしにすると、将来にツケが回ってくる。自民党は、その点を強調して、将来の「年金確保」法案だと主張しているのだ。 こうした与野党のすれ違いは、なぜ起きるのか。その原因は、12年前にさかのぼる。 この年に政府は、それまで積立方式だと主張してきた年金を、こっそり賦課方式に変更した。それまで、年金は保険料を支払った本人に返ると言ってきたものを、支払った保険料がストレートにその年の高齢者に支払われることにしたのだ。年金積立金の大部分を使い込んでしまったからだ。 ところが、政府はそのことで一度も謝罪をしていない。だから、今からでも政府は次のように謝罪すればよいのだ。 「皆さんが支払った保険料の積立金が、大部分を使い込んでしまいました。そのため、今後は皆さんが支払った保険料を、いまのお年寄りで山分けすることにします」 こう素直に謝ってしまえば、年金給付をめぐる争いはなくなる。毎年の年金給付水準は、集めた保険料の総額で、自動的に決まってしまうからだ。
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社会 2016年12月07日 14時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第200回 TPPを批准してはならない
次期アメリカ大統領のドナルド・トランプは11月21日のビデオ声明で、来年1月20日に大統領に就任すると同時に、TPPから離脱する意思を通知する方針を示した。就任初日に離脱を他のTPP参加国に通告すると明言したのである。 そもそも、トランプはNAFTAという自由貿易協定で困窮に陥ったラストベルト地帯(さびついた工業地帯の意)の労働者などに対し、グローバル化批判を展開することで支持を得た結果、大統領選に勝利したのだ。NAFTAにより、アメリカ、カナダ、メキシコ間でモノ、ヒト、カネという経営の三要素の国境を越えた移動が自由化された。特に問題になったのは、アメリカとメキシコの関係だ。 モノの移動が自由化された結果、アメリカの穀物メジャーが扱う生産性が高い、つまりは「安価」な小麦がメキシコになだれ込んだ。メキシコの主食は小麦である。アメリカ産の安い小麦と競争させられることになったメキシコの小麦農家は、次々に廃業していく羽目になる。 すると、ヒトの移動の自由化ということで、廃業した元メキシコ農家が雇用を求めて北上を始めた。国境を越え、アメリカ国内で「安い外国人労働者」として働くことになったのである。アメリカの労働者は低賃金で雇用されたメキシコ人労働者と、賃金切り下げ競争を強いられることになった。 さらに、カネの移動の自由化である。五大湖周辺のミシガン州、ペンシルベニア州などから、工場が続々とメキシコに移転していった。理由はもちろん「メキシコの方が人件費が安いため」である。賃金水準が低いメキシコに工場が移され、現地で生産された安い製品がアメリカに逆輸入されていった。結果的にグローバル企業の投資家、経営者、さらには「アメリカの消費者」も利益を得たが、アメリカの製造業の労働者は割を食う形になったわけだ。 トランプは大統領選挙のさなか、アメリカ政府の通商政策がグローバル化を促進させ、米国の製造業の雇用を失わせたと主張。ペンシルベニア州で演説した際には、 「われわれの政治家は積極的にグローバル化の政策を追求し、われわれの雇用や富や工場をメキシコと海外に移転させている」 と、徹底的にグローバリズムを批判した。そのトランプが大統領に選出された以上、TPP離脱は当然の選択なのである。 TPPは、2年以内に6カ国以上、GDP85%以上の国々が批准しなければ発効しない。アメリカが離脱すると、その時点でTPPは「ジ・エンド」だ。 日本の安倍総理や財界は、 「トランプ氏に翻意を促す」 と報じられているが、内政干渉である。 トランプは公約として「TPP反対」を打ち出し、NAFTAについても再交渉し、アメリカの要求が通らない場合は離脱すると宣言した上で選挙戦を戦い、勝った。アメリカの民主主義がTPP離脱を容認したにもかかわらず、 「翻意を促す」 という発想に至るその感覚が理解できない。 一体全体、いつからアメリカは人治国家になったというのだろうか。むしろ、日本の政治家や財界の要求でTPPについて「翻意」した場合、トランプは自国の有権者を裏切ることになるのだが、日本の政治家や財界人には、その程度の理解力もないのか。 逆の立場で考えればいい。日本国民が民主主義で決めたことについて、外国から「翻意を求める」と迫られた場合、間違いなく内政干渉である。日本国には、 「外圧を利用して国内を改革する」 などと、主権国家の国民としてはあるまじきことを平気で主張する連中が少なくないため、内政干渉について鈍感になっているような気がする。政治家も、財界も、もちろん国民も。 普段、民主主義、民主主義と姦しい大手マスコミが、総理や財界の「アメリカに翻意を促す」という内政干渉を問題視しないのは、本当に不思議である。要するに、自分の頭では何も考えていないか、もしくはグローバリズムは「常に善」であると、思考停止に陥っているとしか思えないのである。 さらに問題なのは、安倍政権がこの期に及んでも、TPPについて「現行の条件」で批准しようとしている点だ。 TPPについて「アメリカ抜きで進める」と主張する人もいるが、それならばなおのことTPP批准を止めなければならない。TPPの条件には、先述の通り「2年以内、6カ国、GDP85%以上」という発効条件があるのだ。アメリカ抜きのTPPを実現するためには、改めて参加国で交渉し、発効条件を変更する必要がある。批准してしまうと再交渉が不可能になる。 また、トランプは、TPPは離脱し「二カ国間貿易取引」を交渉すると明言している。すなわち今後、アメリカとの間で日米FTA(もしくは日米EPA)の交渉が始まる可能性が高いのだ。 それにもかかわらず、現時点でTPPを日本の国会が批准してしまうと、二カ国間交渉の際に「TPPの日本の譲歩条件がスタートライン」になってしまう。何しろ、日本の最高意思決定機関である国会で批准した以上、 「まずは、日本側にTPPの条件を最低でも受け入れてもらうとして、そこからどこまで譲歩できるのか」 という交渉スタイルになってしまうのだ。国会で批准している以上、そうならざるを得ない。 すなわち、安倍政権は批准しても発効しないTPPを強引に進め、将来的な交渉を不利にしようとしていることになる。 筆者はTPP反対論者である。理由は、TPPがEU、NAFTAと同様に、特定のグローバル企業、グローバル投資家の利益最大化を実現する構造改革を強制し、国民の主権を行使しても変更できないようにする「グローバリズムの国際協定」だからだ。 とはいえ、TPPが終了したとしても、アメリカとの間で日本国民の国益を損なうFTA・EPAが成立してしまうのでは、結局は同じ話になってしまう。 日本国の国益を真剣に考えるならば、TPP批准プロセスは現時点で停止するべきなのだ。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2016年12月07日 10時00分
1150年前の古文書が発信 M8南海トラフ&首都直下のW連鎖緊急警報(2)
南海トラフ地震について、国は最悪の場合、近畿地方で27メートル(三重県鳥羽市)、四国34メートル(高知県黒潮町)、九州17メートル(宮崎県串間市)の津波が襲い、死者は32万3000人に上ると想定しているが、その最悪の場合をさらに上回る可能性もある。 「次の南海トラフ地震も前回のエネルギーが残っていることから、東海・南海・東南海で連動する可能性が高いでしょう。西の方は日向灘まで地殻が割れる可能性もある。とにかく、とてつもない巨大地震になるのではないでしょうか」(前出・島村氏) 日本時間で11月13日に起きたニュージーランドでの大地震からわずか9日後に起きた、福島県沖を震源とする地震規模はM7.4。これは東日本大震災以来、最も大きなものだった。 「東日本大震災は、前回のニュージーランドで発生した大地震(カンタベリー地震)から17日後に発生している。この連動性を唱える専門家もいます。西北に向かって動いている太平洋プレートは、これまで巨大地震を度々起こしていますが、押す力は北から南まで同じなのです。その圧力がかかった結果、プレートの弱い部分が割れて地震が発生する。南海トラフか関東直下か、どちらが先かは分かりませんが、福島県沖の地震は前兆にすぎない。いずれにせよ、本命とも言うべき南海トラフ巨大地震が近く発生するという見方が多くあります」(前出・サイエンスライター) 東日本大震災の際は、本震から4日が経過した3月15日、静岡県東部の富士山直下で震度6強の地震が発生している。これは東日本大震災に誘発されたものと見られ、貞観地震が起きた時と同じく、今後においては関東直下型→南海トラフという連鎖が十分に考えられる。 首都直下型については、最近の調査で東京23区内にも活断層が存在することが分かっている。日本活断層学会の幹部は本誌の取材にこう語っている。 「ボーリング調査の結果などをもとに調べたところ、JR田端駅近くから飯田橋駅付近を通り、外濠に沿って四ツ谷駅付近に至る延長約7キロの飯田橋推定断層が存在すると疑われます。その周辺には九段推定断層や市ヶ谷推定断層も平行して存在すると見られ、銀座や浅草、築地、月島などにも複数の推定断層があると思われる」 もし、これらの断層が日本海溝付近や南海トラフで発生した地震に誘発されて動いたとしたら、どうなるのか。 「首都直下地震が起きると、内閣府は多くて1万3000人が犠牲になると発表していますが、関東大震災(1923年)では約10万5000人が死亡もしくは行方不明になったとされている。高度に発展した現代であっても人口が密集した首都圏において、“おそらく犠牲者は100万人単位ではないか”とする専門家もいるほどです。加えて、南海トラフ地震では想定で32万人が死亡するとされている。連鎖が起きた際の経済損失は計り知れず、国がマヒ状態に陥る中、復興にも相当な時間がかかるでしょう」(前出・サイエンスライター) 貞観時代から約1150年。W連鎖はあるのか。
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社会 2016年12月06日 14時00分
小池百合子都知事が安倍首相にケンカを売る 東京五輪負担「第三劇場」
小池百合子東京都知事が、今度は安倍官邸を相手にケンカを吹っかける−−。そんな情報が、師走の永田町を駆け巡っている。その材料は、東京五輪予算。「小池劇場第三幕」は、これまでの豊洲新市場や五輪会場問題より、はるかに激しいバトルとなりそうだ。 8月に自民党候補などを破り颯爽と女性初の都知事に就任するや、メディアを独占し続けてきた小池氏。しかし昨今は、トランプ旋風や韓国・朴槿恵大統領のスキャンダルにかすみがち。豊洲問題では11月25日、会見で元市場長など18人の減給処分などを“けじめ”として発表したが、盛り土を止めさせたのは誰なのか、ピンポントまでの絞り込みについては曖昧なままだ。 都知事就任から100日の“ハネムーン期間”も終わり、このまま行けば新年を迎えると同時に小池ブームも消えそうな気配。そんな中、小池氏周辺は「これからが本番。最大の“ショー”が年末から年明けに起こる」と息巻いているという。 「ジワジワと増え続ける五輪予算で、官邸と激突を仕掛ける。招致時の'13年当時、森喜朗氏が会長を務める大会組織委員会は開催費総額を7340億円としていたが、都政改革本部調査チームの最新試算では3兆円にまで膨れ上がった。このうち仮設施設などの5000億円はスポンサーやチケットの売り上げで組織委がまかなうと見られ、残りの2兆5000億円は東京都と国で分担することになる。現段階で都の負担は3104億円ですが、今後を考えれば5000億円前後になる勢いで、これを押し返すか削らなければならない。小池氏はこれで、官邸とド派手にケンカをやり合う」(小池氏周辺関係者) 当初、1538億円だった都の五輪施設整備費は、一時4584億円に膨張。慌てた都が計画を見直し、'14年11月時点で2241億円に圧縮。その後、新国立競技場建設費の4分1に当たる448億円の負担が増え2689億円となった。しかし都は、選手村基盤整備費や有明アリーナの用地費などを五輪準備局以外の局に予算をもぐりこませており、結局、現在の総額3104億円になってしまった。 「その仕業が組織委なのか国なのかは不明だが、ほかにも様々な予算が巧妙に隠され、今後も次々に明るみに出ることは必至。そこで小池氏は徹底した洗い直しを行い、極限まで都の負担を削減した上で、“必要不可欠なコストは国が出すべき”と、安倍官邸に乗り込む腹を固めたようです」(都政記者) しかし安倍首相としては、1000兆円を超す大赤字財政の中、1円でも出費はしたくない。都が五輪費用に3兆円試算を弾いた直後、麻生太郎財務相などは閣議後の会見で「東京五輪は『日本五輪』ではない。私どもとしては、入国などでサポートするのが基本的立場。(上積み費用は)都と国際オリンピック委員会で協議してもらうのが一義的なことだ」とクギを刺したほどだ。 「実は、この発言が小池氏の闘争心に火をつけたという。そもそもリオ五輪の閉会式に自ら出向いてマリオに扮し、美味しいところを総取りしたのは安倍首相。そんな官邸の“カネは出さないが顔と口は出す”といった姿勢に激怒したのです」(都関係者) ただし、ケンカを売る本当の狙いは、小池旋風の復活にある。再び前出・小池氏周辺の話。 「小池氏は来夏の都議選まで今の高い支持率を保ち、シンパからの立候補者を多数擁立させ都議会勢力を一変させたい。新党立ち上げについてもしかりです。そのためにも、“都民ファースト”を掲げ、官邸とやり合う大ゲンカは、“小池劇場第三幕”として恰好の注目材料となる」 小池氏を駆り立てる根底には、橋下徹前大阪市長が事実上率いる日本維新の会の争奪戦もあるという。 「小池氏が維新と連携をすれば、敵対する都議会自民党のドン・内田茂氏率いる一派をけん制することもできる。しかし、安倍首相にしてみれば、憲法改正など政権運営の選択肢拡大において、維新は大事な政党。対小池氏となった場合、弱腰を見せるわけにはいかない」(前出・記者) この争奪戦の一端について、全国紙政治部記者はこう言う。 「橋下氏が小池氏の『希望の塾』の講師を直前で断ったことについては、ギャラの値引き云々で揉めたことになっている。しかしこれは、維新と小池氏の急接近を警戒する側の工作という説が根強い」 同記者によれば、もともとは橋下氏が同じ関西出身で政治手法も似る小池氏にシンパシーを抱き、連携を図ろうとしていたという。 「それに最も警戒を抱いたのは菅義偉官房長官。『希望の塾』の講師になれば、一気に小池氏・橋下氏の連携が濃くなり、周囲もそう見るようになる。これを阻止したい菅氏が、最も太いパイプの松井一郎大阪府知事を使ってストップさせたという話もある」(同) しかし、これで小池氏と橋下氏に亀裂が入ったかと言えばノーだという。 「2人は今も密に連絡を取っている。しかし一方で、安倍首相も橋下氏と連絡を取っていることは間違いない」(前出・小池氏周辺関係者) 今後の小池氏の行く末を決めそうな“第三幕”。果たして安倍官邸への噛み付きで、上昇気流に乗ることはできるか。
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社会 2016年12月06日 10時00分
1150年前の古文書が発信 M8南海トラフ&首都直下のW連鎖緊急警報(1)
《夜、地震す、この日、関東諸国の地、大いに震裂す。相模・武蔵は特にもっとも甚だしとなす。その後、五六日も、震動いまだ止まず、公私の屋舍、一つとして全きものなし。あるいは地の窪陷して、往還不通ぜず、百姓の圧死すること勝げて記すべからず》 これは平安時代、菅原道真ほか貴族や学者が858年〜887年の出来事を編纂した歴史書『日本三代実録』(三代=清和天皇、陽成天皇、光孝天皇)の一節だ。878年11月1日、関東地方南部を中心に大きな地震が襲った(相模・武蔵地震)。『三代実録』を見ても《この日》の揺れのすさまじさが伝わってくる。 「専門家の間で、この相模・武蔵地震の震源域は神奈川県中部を走る伊勢原断層で、関東直下型だったという見方が強い。地震の規模はM7.4、最大震度が7程度だったと推定され、記録にもあるように家屋倒壊、さらに火災も加わって多くの死者が出たという。京都からの視点で記されている可能性が高いことから、かなり広い範囲にわたり余震が続いていたという見方ができます」(サイエンスライター) 当時の日本列島は地震の活動期に当たるとされ、巨大地震が立て続けに起きていた。 869年には三陸沖で貞観地震(M8.3以上)が発生。地震と大津波で1000人以上が犠牲になったという。同時期には鳥取県でも大地震が起き、その前年には兵庫県でM7の播磨地震、貞観地震の9年後には冒頭の相模・武蔵地震、そして18年後の887年、ついには南海トラフで東海・東南海・南海の3連動タイプの仁和地震が発生している。 この時代の地震活動について、地震学者で武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏が説明する。 「貞観時代と、地震が活発に起きている現代が同じような地震活動期だと言われるが、それに関しては、さらに学問的な検証が必要です。しかし双方、巨大地震によって日本列島の地下の基盤岩が動き、地震が起こりやすい状態にあることは間違いありません。今、首都圏では直下型地震がいつ起こっても不思議ではない状況にあるし、海溝型の大地震の可能性もある。さらに、二つの地震が一気に起こる可能性さえあるのです。江戸時代の18世紀から19世紀にかけても地震が頻発していましたが、20世紀は少なく、それが当たり前の状態となっていた。しかし、東日本大震災によって、地震が頻発する時代に戻ったと思われます」 前述の通り、関東直下型と思われる相模・武蔵地震は三陸沖の貞観地震の9年後。今年は東日本大震災から6年がすぎた。西日本で熊本地震に鳥取中部地震、さらに福島県沖でも大きな地震が発生していることも不気味だ。 『日本三大実録』には、当時全国で発生した天変地異についても記録されている。 例えば、863年の中越地震については、《越中越後等の国、地大いに震ひき。陵谷ところをかへ、水泉湧き出で、民の蘆舎をこば(壊)ち、圧死する者多かりき。これより後、毎日常に震ひき》。激しい揺れで地割れが起きて至る場所から地下水が噴き出し、民家の倒壊により多くの人が圧死したという。 それらの記録の中で興味深いのは、やはり仁和地震の様子を克明に著した記述だ。現代語訳すると以下となる。 《午後4時頃に大地震が起き、数刻を経ても震動が続いた。天皇は仁壽殿(殿舎)から出て紫震殿の南庭に移動した。そして大藏省に命じて七丈の幄(仮小屋)を二つ建てさせ、御在所とした。役所の倉屋および東西京の民衆の家は相当部分が転倒・倒壊し、その下になって殺された者が多い。あるいは失神して頓死した者もある。10時頃にまた地震が三度。全国(五畿内・七道諸国)でも、この同日に大地が大いに震えた。官舍が多く損壊し、海潮が陸に漲ってきて、その津波によって溺死したものは、数えることができないほどである。そのような津波の被害の中でも、摂津国の被害はもっとも甚だしいものがあった》 「この時の地震の規模はM8〜8.6とされている。地震動による被害もさることながら、驚くのは津波被害の大きさです。南海トラフで起きた地震にも関わらず、摂津国、大阪・兵庫にまで巨大津波が押し寄せたという。『日本三代実録』は、仁和地震の1カ月後に終了しているのですが、それまでの間にも余震と見られる記述が多くある。相当な被害が出たと思われます」(前出・サイエンスライター)
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社会 2016年12月04日 14時00分
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第46回
「この難局を乗り切ることができるのはオレしかいない」の自負のもと3期目の幹事長に就任した田中角栄は、その“ヤリ手”ぶりをいかんなく発揮した。 就任翌年の昭和44年1月からの通常国会は、何とも異常なものだった。野党の抵抗も強かった大学運営法(大学運営臨時措置法)、健康保険法改正、国鉄運賃法改正など重要法案が多く、自民党の衆院での単独・強行の採決は実に15回、参院でも5回というありさまだった。徹夜国会もまた衆院で4回、参院で2回といった具合。健康保険法改正では本会議採決を巡って衆院の正・副議長のクビも飛んだのだった。そうした中での田中の国会運営の最大の難関は大学運営法であった。 折から、前年1月に東大医学部での登録医師の反対、また青年医師連合を認めようとするストライキを発端として、各地に大学紛争としてのデモなどが広がった。これはやがて社会問題化し、田中にとってはこの問題の沈静化、解決は「待ったなし」を突き付けられた格好だった。社会、公明、共産の野党3党は「この法案は大学改革に名を借りた治安立法である」と強く反発。一方で、同じ野党の民社党が自民党に理解を示すなどで対峙する図式となった。 田中は終始、強気で、ここでも最終的に強行採決による法案成立の姿勢を崩さなかった。衆院ではモメ抜いた揚げ句ようやく通過、参院でいよいよ成立するという緊迫場面を、当時、田中幹事長秘書として間近に見ていた早坂茂三(後に政治評論家)が、その著『政治家田中角栄』(中央公論社)の中で「田中が国会運営でこれほど激高した場面を私は知らない」として、重宗雄三参院議長に本会議の開会ベルを押させるシーンを次のように生々しく述懐している。【8月3日(日)。午後5時過ぎ、幹事長室】 二階堂副幹事長 重宗の態度がおかしい。 田中幹事長 あのジジイは、ぶったたいてやる(廊下に飛び出して参院議長室に駆け込む)。 重宗議長 角さん、あんた、オヤジ(佐藤栄作首相)を無視してやることはないというハラだったのじゃないか。あんた、オヤジにちゃんと打ち合わせてやっているのか。 田中幹事長 ナニ言ってんだ、ジイさん。あんたたちはもう子供が全部でき上がっているから、そんな極楽トンボでいられるんだ。学生を子に持つ日本中の親たちは、一体どうするんだ。自分たちの食うものも削って、倅や娘に仕送りしているんだ。ところが、学校はゲバ棒で埋まっている。先生は教壇に立てない。勉強する気の学生は試験も受けられん。こんなことで卒業できるのか。就職できるのか。みんな、真っ青になっているんだ。気の弱い学生は大学にも行けず、下宿でヒザを抱えているんだ。だから、いいからジイさん、早くベルを鳴らせ。やらなきゃ、このオレが許さんぞ。 重宗議長 まあ、角さん、そうガミガミ言うな(重宗議長、保利茂官房長官に電話)。(電話で)保利さん、角さんが何と言ってもやれと言っているんだ…。 結局、重宗議長はこの田中とのヤリトリから約2時間後、本会議開会のベルを鳴らすことになり、午後8時8分、ようやくモメにモメたこの大学運営法は可決、成立となった。 この法律の施行によりやがて全国の大学紛争は下火になっていったが、田中は法案成立から1週間後の『毎日新聞』で、なぜ強行突破の国会運営を行ったのか、断固たる自らの政治姿勢を次のように“開陳”したのだった。 「議会制民主主義は、多数決原理の承認と、少数意見の尊重を二つの柱としているが、社会党はことイデオロギー問題をみる場合、多数決原理の承認を拒み、少数意見の貫徹に固執する。もし、自民党が社会党の抵抗に屈し多数決原理の適用にためらえば、政権を担当するわれわれが国民に公約した政策の実行は困難となり、政治は停滞、国会はただ制度として砂の上でだけ存在するにすぎなくなる。その結果、国権の最高機関たる立法府に対する国民の信頼感は、著しく低下することが避けられなくなる。 議会政治はもともと、国会制度だけでなく、国民の直接選挙による政党批判と一体のものとして成立しているものだ。衆院4年間の任期中に、与野党が多数決原理の承認と少数意見尊重を前提とし、多数党の責任で政治を行うのは当然である。その政治が国民多数にとって現実的な不利益を招いたとすれば、次の総選挙において国民は必ず公正な審判を下し、必要とあれば政権担当者の交代を求めるであろう。私は、議会制民主主義の生命線がここにあると信じている」(昭和44年8月10日付) ここでの田中の話の通り、この年12月、佐藤首相は衆院を解散、総選挙をもって国民に信を問うことになった。さて、国会は佐藤政権の一連の政権運営にどう判断を下すのか。選挙の指揮を執る田中の前には、またまた新たな二つの懸案が立ちふさがることになるのである。(以下、次号)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。
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