「'17年3月決算が、過去最悪の175億円の赤字見通しとなった。現状のまま道内の全線を維持し続ければ、今後、毎年200億円近い赤字が生まれ、借入金の残高も'19年度に1500億円に膨らむ。旧国鉄からJRへの移行段階で国が7000億円を支援し、その運用益が毎年300億円あった。しかし、最近の利回り低下で運用益は80年代の半分にまで落ち込み経営を圧迫、破たんは必至です」(鉄道アナリスト)
そのためJR北海道は11月18日、「単独では維持困難な路線」として、10路線13区間のリストをあえて公表し、SOSを発信したのだ。
「そのうち特に廃線、バス運行を検討しているのが、輸送密度200人未満(1日1キロ当たりの輸送人数)の、札沼線・北海道医療大学-新十津川間、根室本線・富良野-新得間、留萌本線・深川-留萌間の3路線3区間。さらに輸送密度200人以上2000人未満の日高本線・釧網本線・石北本線・宗谷本線などは『JR単独で維持することが困難な線区』とし、地元自治体と鉄道を維持する手法や支援を協議する方針とのこと」(地元記者)
維持困難路線は計1237キロ、実に道内の路線の約半分に当たる。
「12月に廃止が決まった留萌-増毛間16.7キロなどは、'14年度の輸送密度がわずか39人。100円の収益を上げるのに4554円もの経費がかかる有様です。今回の輸送密度200人未満路線も、燃料代も出ない状況。赤字原因はいくつもありますが、その筆頭は収益源だった在来線特急の利用者が落ち込んでいることです」(JR関係者)
例えば、JR北海道の統計によれば、'14年度の札幌-帯広間の輸送量は1日3718人で、'91年度比の約7割。札幌-旭川で同78%、北見-網走間となると約半数になってしまう。
「この減少の最大の理由は、道内の高速道路や高規格幹線道路の整備が進み、'87年に167キロが'16年には10倍の1093キロまで延長したことで、多くの鉄道利用者が車やバスでの移動に移ったことが大きい。しかも、日頃は鉄道の維持を訴える北海道や市町村に、整備費用を一部負担した無料の自動車道が増え続けている。この施策の矛盾がJR北海道の経営悪化の一因なのです」(同)
道路の整備網が極端に進んだことに加え、追い打ちをかけるのが過疎化だ。
「道内では炭鉱事業などが全盛の頃、さらには公共事業が活発化したバブル時は人も物流も多かったが、廃坑が相次ぎ、公共事業も減ると、過疎化が道内全体で進んだ。'00年から'12年だけでも、道内人口は約20万人減。人は札幌に一極集中するか、本州に流れてしまった」(道関係者)
そもそも北海道の過酷な自然の中で、鉄道は早めの修繕が必要とされる。しかし、バブル崩壊以降、経営難から設備投資費を抑制し、老朽車両もそのまま。全道176カ所あるトンネルの中には100年以上経つトンネルが20カ所以上あり、約3000ある橋梁の1割は100年、半数は50年経過していることから、安全度に黄色信号が点滅する。今後、こうした修繕費は2600億円必要と予測されているのだ。
「JR北海道が努力をしてこなかったかと言えば、そうではない。JR発足時は1万3000人いた社員も今は7100人で、人件費もギリギリまで削っている。しかし、赤字は脱却できず、SOSを出した。これに対し高橋はるみ北海道知事は、『徹底した管理コストの削減など最大限の自助努力を。全道の交通ネットワークを形成する公共交通機関としての役割を十分認識して欲しい』と述べるだけで、結局はJR北海道に丸投げ状態。道が資金や責任を回避しているとしか思えない」(経営コンサルタント)
そんな中、JR北海道が模索する道は、欧米で主流の線路や駅舎などの施設は自治体が所有する上下分離方式。
「しかし、地元自治体も道も“ない袖は振れない”“国が何とかしてくれないのか”とそっぽを向く。廃線後はバスでもいいという声もあるが、実際問題、除雪さえできれば動く電車に対し、車は吹雪けば動けない。廃線すれば北海道の過疎化はさらに進みます。悪循環を断ち切るためにも、自治体とJRで知恵を絞るべき」(道議会議員)
道人口は現在約540万人だが、2040年には419万人に激減という驚愕の推計(国立社会保障人口問題研究所)もある。同じような境遇にあるJR四国などが第二のJR北海道にならないためにも、よき前例となる前向きな策を期待したい。