NHK、民放を問わず、昨今のスポーツニュースで連発されている「結果を出す」という物言いに強い違和感を覚えてならない。結果は出るものであって、出すものではない。自動詞を使うことで自分の意思を表明したいのなら、よい結果を出したいと当たり前に表現すればよいのであって、この当たり前さを嫌って非凡であろうとするのは間違いというものである。
同語反復が意思を表明(酒、酒、と繰り返せば酒を飲みたいということが相手に伝わる)するようには、このレトリックは使えない。むしろよい結果を出したいという願望と、悪い結果が出てしまう顛末こそ、もっともなじみのある浮世の沙汰ではないだろうか。それを受け入れずに、抗(あらが)うというのは料簡違いというものだ。
違和感を覚えるもうひとつのことは、食べ物の賞賛の表現としての「柔らかい」である。自然に廃(すた)れるのを待っていたが絶滅しない。実際の話、ここ「大山」のしっかりとした歯ごたえの、それゆえサバンナのライオンになったような快感を奥歯と共有しながら並みのロースカツ(840円)をしみじみおいしいと思って食すとき、「柔らかい」という表現ほど礼を失した物言いはないではないか。
激して済まなかった。申し上げたかったのは、もっと楽しい事柄であるはずだった。
上野の飲み屋街で繁盛している大山精肉店が、店内を居酒屋化して大繁盛している。牛、豚、鳥など各種の精肉をステーキ、すき焼き、焼肉、しゃぶしゃぶ、揚げ物となんでもござれ。店の入り口は串焼き立飲みでもあって、道路にはみだしたお客たちが、居酒屋大山の目印になっているといってもいいほどだ。
カツを平らげた後、試みに、やみつきメンチ(100円)を追加オーダーしてみる。からしが塗られた飾りけのない皿上の、からりと揚げられたメンチは大変結構なものであった。ならばとばかり、やみつきメンチより位の高い特製メンチ(200円)を試みる。うむ、よりジューシーになった気がする。ならばならばと、特製メンチより位の高い和牛メンチ(400円)を試みる。うむ、一層ジューシーになった気がする。
結果が出た。メンチカツという一例ではあるが、大山の料理は値段に応じて味わい深いものになるというものであった。大山は味の分化において、正比例ということが好きな店だということがわかった。以上、実験終了。
予算2200円
東京都台東区上野6-13-2