筆者高橋四丁目の本名は、高橋渡(たかはしわたる)。灯ともしころ、新橋のガード下を行きつ戻りつしていたら、「ワタル」という同名の居酒屋があったので、表敬訪問した。
そうじて親というものは、思案投げ首して子どもに名をつけるわりには、命名の由来を理解できる年齢になると、こんどは照れと煩雑さが手伝って、きちんとした説明を避けるきらいがある。わたしが親から説明を受けておらず、わたしが子に説明をしていないからそう断じたけれど、不届きの点はお許しいただきたい。名前というものは長じれば命名者の手を離れて、すっかり子どものものになっているということもあるし、思春期の子が、自分の名前に込められた親の願いを知って、端座合掌するはずもないという現実もある。
さてしかし、わたしの名前の由来は「生きるとは渡世です。上手に渡れないのなら、かろうじてでも渡りなさい。そうして世間とは高い橋なのです(高橋渡)」などという願望が込められているということではないらしいのだ。断片的な情報によると、昭和23年(わたしが生まれた年)当時、たかはしわたる、という(姓名に似た)代議士がいた。その人は、保守合同以前の民主党で勇名をはせ、運輸大臣時代には個人タクシー制度導入にらつ腕を振るい、その後、武州鉄道汚職事件を起こして逮捕され、現職大臣在任中の犯罪で有罪となったのは戦後初という記録をお持ちの、楢橋渡(ならはしわたる)氏。時の人からヒントをお借りすると、その人の浮き沈みがついて回るから、のちのちわたしの場合のように説明に窮する場合も出てくる。小学校の同級生だった英機君(東條ではない)や、秀樹君(湯川ではない)も還暦のはずだなあ、などと考えながらモルツの生ビールや、角のハイボール(いずれも180円)を、カウンターで飲んでいる。つまみは各人一品は取ることになっていて、入場料は300円なり。高橋四丁目の息子T君はプロ野球チーム「東北楽天」のファンで、仙台市の東隣・多賀城市に「高橋四丁目」という地番が実際にあったと、ホームグラウンドに応援に行ったついでに電信柱の住居表示板を撮影し、証拠写真として持って帰ってきてくれた。あなたも、フシギな人よのお。「スタンド・バイ・ミー」に出演したリバー・フェニックス(RIVER PHOENIX)というハリウッドの俳優をご存知か。あれが本名であることをご存知か。翻訳すれば「不死鳥川男」。妹は「不死鳥虹子(レインボウ・フェニックス)」。名づけた彼の両親は、アメリカの団塊世代の人でした。不肖の父四丁目も時代に準じたということになるのか、君に、ちょっとリバーと似たような名前をつけてしまって、ゴメンネ、ゴメンネ〜!(U字工事)
予算1300円
東京都港区新橋3-26-3