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『エア・ギア』第32巻、努力と友情の力で天才に勝利

 大暮維人が『週刊少年マガジン』で連載中の漫画『エア・ギア』第32巻が6月17日に発売された。今回も第30巻から続いて、オリジナルアニメDVD「エア・ギア 黒の羽と眠りの森-Break on the sky- Trick3」付の限定版も発売された。

 この巻は前巻からの続きである鰐島海人の回想シーンで幕を開け、初代荊の王ガゼルと海人、鰐島亜紀人の関係が明らかにされる。そしてアギトと「轟の王」アーサーの戦いに決着が付けられる。後半は御仏一茶(ブッチャ)とウェルキン・ゲトリクス(ウェル)の水中対決である。
 巨漢のブッチャは格闘では優位性を有しているが、『エア・ギア』はモーター内蔵のシューズ「エア・トレック」で空も飛べる世界である。恵まれた体格が強さに結びつかない。特殊能力を有する小柄なキャラクターが大柄なキャラクターを倒す展開がバトル漫画の定番である。現実にブッチャは何度も敗北してきた。
 対するウェルはエア・トレックを駆使するために人工的に生み出された重力子(グラビティ・チルドレン)の一人で、その中でも天才とされる。作品内でブッチャがたとえたように、ブッチャとウェルは石とダイヤモンドである。しかも、戦闘の舞台は「水棲の魔龍」(オルカ)の異名を持つウィルが得意とする水中であった。

 ウィルが圧倒的に優勢であったが、両者の戦闘は努力と友情の力で天才に対抗するという、ライバル誌の『週刊少年ジャンプ』のモットー「勝利・友情・努力」を地で行く展開となった。
 当の『週刊少年ジャンプ』では、三大原則のうちの「努力」が軽視される傾向にある。近年の人気作品は努力よりも家柄で決まる格差社会のリアリティを反映したものになっている。『ONE PIECE』の主人公ルフィは海軍本部中将ガープの孫で、革命家ドラゴンの息子である。『NARUTO』の主人公ナルトは四代目火影(木ノ葉隠れの里の長)の息子である。『BLEACH』の主人公・黒崎一護は死神と人間の息子である。それだけではないものの、彼らは皆、血統が強さの一因となっているエリートである。
 これに対し、『エア・ギア』のブッチャとウェルの対決は、努力と友情でエリートを打ち破るという往年のバトル漫画の王道的な展開となった。しかも、ブッチャの力の根源は努力で鍛えた生身の肉体である。戦闘能力がエア・トレックや玉璽(レガリア)という特殊なアイテムに左右される『エア・ギア』の世界観さえも破壊する肉体の強さ。エア・トレックを活用した技巧的な展開が多い中で、戦闘の生々しさが際立った内容であった。

(林田力)

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